ボルトたちの事件が終わり、木ノ葉の里は少しづつ安定を取り戻していた。大きな事件も起きず、忍達の尽力もあり、五大国最強の隠れ里の名目は少しづつ、回復していく。
そんな情勢の中、火影の執務室に集められた忍達が居た。
五代目火影の招集されたのは、うずまきナルト、春野サクラ、鞍馬八雲の3人が集められていた。突然の招集とメンバーにそれぞれ疑問を覚える。
「良く集まってくれたな。今日招集したのは、ある任務をお前達に請け負ってもらいたいからだ」
「また変な任務じゃないのかってばよ」
五代目火影の綱手を遮るナルト。だが自来也との修行の旅の準備期間中に受けたのはどれも微妙な任務ばかりだったのだ。今回もどうせ、というナルトの予想は当たっている。
しかし、サクラが五代目火影相手に愚痴をつづけるナルトの後頭部を叩く。
「この馬鹿、綱手様がまだ話してるでしょうが」
「痛いってばよサクラちゃん。あれ、そういえばなんで、八雲の姉ちゃんも呼ばれてんの?」
下忍だけでなく、中忍の八雲も呼ばれているのは確かに変だ。
「それについても説明する」
今は里は、終戦後の婚活ムードになっているらしい。特に若いくノ一の婚姻も多く、里の減った人口が戻っていく一種の自浄作用ともいえる。それだけなら問題ないのだが、最近木ノ葉の里で若いくノ一を狙ったスパイが蔓延っているという情報が入る。
手練手管でくノ一を惚れさせ、骨抜きにしたのちに機密情報を聞き出す手口だという。その被害を受けている人間が何人もいて里でも問題になっているという。
「それで、なんで俺が呼ばれたんだってばよ」
「この話には続きがあってな、お前のよく知る人物が、次のターゲットかもしれないんだ」
綱手にそう言われ、ナルトはサクラと八雲をジト目で見る。
「違う。お前の姉、うずまきシャナが次の狙いかもしれないという話だ」
「え?」
呆けるナルト。驚くサクラ。心当たりのありそうな八雲と言った面々。綱手は本題に入ると話をつづけた。
元々は里内でくノ一を狙ったスパイの話が上がっただけだったのだが、其処で話に上がってしまったのが他でもないシャナだった。
里の人間達もシャナの性格と悪評は、把握している。年頃とはいえ、色恋とは程遠い彼女に疑いが掛ったのは、木ノ葉の大名家の跡取りのせいだった。全く接点がないような人だが、木ノ葉の大名家は、第四班を気に入っている者も多く、護衛の指名依頼が良く来る。
そのこともあって第四班のメンバーは、破格の依頼料によって裕福なのだ。そこで知り合った大名家の坊ちゃんがシャナに一目惚れしていたらしい。
その入れ込みようは本気で、輿入れの話を持ち掛けてきたほどだと言う。木ノ葉の上層部は、当然貴重な戦力と血継限界を持つシャナを手放したくはない。
そして、シャナ自身も輿入れの話は断ったのだ。それだけなら大名家の若君の失恋と言う話なのだが、その断り方が問題だった。
「私、彼氏がいるから大名家には行けないってばね」
そうぶっちゃけたシャナ。その場しのぎの方便かと思われたのだが、大名家の若君は諦めがつかず、調査を依頼してくる始末。里としてはそんな依頼を受けるのはいかがなものかと思われたが、ここ最近のシャナの行動と目撃証言が入った。
そこでタイミング悪くスパイ疑惑が絡んできたと言うわけだ。シャナは里の機密は知らないが、うちは一族である彼女を篭絡すれば、それだけで血継限界が手に入る。力では無理でも、そういう方法もあるという事だ。
「嘘だってばよ。姉ちゃん、そういうのわかんないタイプだってばよ」
一緒に暮らすナルトの証言。確かにナルトから見えれば姉は、強さは桁違いだが、恋などしないタイプに見える。だが、それは女性陣に否定される。
「そんなことないわよナルト。シャナさんだって恋の一つや二つあったっておかしくないわよ」
「でもさ、でもさ」
「ごめんナルト君。私、シャナが好きな人いるって話聞いてる」
ナルトの希望は八雲の援護射撃で鎮圧される。燃え尽きたように床に倒れるナルト。シャナのブラコンと比例するようにナルトもシスコンなのだ。故に、姉に恋人がいるかもしれない事実は、彼の精神を大きく削り取る。
八雲の話を聞いたサクラは「やっぱりー」と興奮気味だが、そこで今回の問題点であるスパイの疑惑が浮かび上がる。正体不明のシャナの恋人とは誰かという問題だ。
「木の葉の人間なら問題ない。だが、もし他里の人間や、スパイなどという事になれば、大きな問題につながる」
しかし、里の人間がシャナを問い詰めた場合。起こりえるのは、彼女の怒りを買うことだ。任務以外では里の意向を無視するシャナが、里を見捨て、抜け出す可能性だってある。只でさえデリケートな問題で、色恋が絡めば忍と言えど人。
色恋が原因で里抜けが起こる例は数多く、紛争につながった事例すらある。そして、シャナの血筋である、うちはがその悪い例の代表なのだ。
シャナの実力を考慮すれば、止められる人間は木ノ葉にいないだろう。故にシャナではなく、その恋人の方を調べる事になった。そこで集められたのが3人というわけだ。
情報の漏洩を防ぐため、綱手の弟子であるサクラ。シャナと同じ班で彼女を裏切らない八雲、そして弟であるナルト。仮にシャナにばれたとしても、彼女が手を出さない人選でもある。
「でも、火影様、さすがにシャナの事を裏で調べるっていうのは、その」
「気持ちはわかる。あくまで、スパイの調査と言う形で動いてもらいたい。もしシャナが被害者だとわかれば、お前なら説得も可能だろう」
うちはである事実を抜いても、シャナを欲しがる勢力は多い。そう言った手合いに武力以外で身を守る手段がないシャナは、堅牢に見えて藁の楯だ。そういったことを教えられる人間がシャナの傍にいない事が原因だが、元を正せばシャナの人間不信は、木ノ葉が原因。
「わかりました。けど、スパイじゃなかったら、私はシャナの恋を応援しますからね! 二人とも行こう」
八雲は綱手にそう伝え、サクラが動けないナルトを引っ張って執務室から出ていく。昔の八雲なら、火影相手にこんな言葉は残せない。シャナと一緒に成長したのが原因か、悪い所が移ってしまったのかもしれない。
八雲たちが居なくなったことで、静かになった執務室。綱手は窓の外を見る。
「何故お前までショックを受けているんだ自来也?」
綱手の視線の先には、シャナの話を聞いてショックで四つん這いになっている自来也が居た。ばれないよう潜んでいたが
「何故も何もあるか、儂にとってあの子は、孫のようなもので、儂立ち直れないかもしれん」
本気で落ち込んでいる自来也。自分の愛弟子の愛娘。血の繋がりはないが、小さい頃から可愛がっている子が成長し、好きな人がいるという事実は、彼に大きなショックを与える。
「もしシャナを狙ったスパイなら、儂が直々に始末してやる」
「お前は別の仕事があるだろうが。……あくまで女の勘だが、シャナはつまらない男に惚れるような女じゃないさ。さ、お前はお前の仕事をしてこい」
綱手に仕事をしろと追い立てられ渋々、木ノ葉を離れる事になる。次、自来也が戻った時がナルトとの修行の旅に出る時だ。