NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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秘密のデート

 

 任された任務を素早く片付け、木ノ葉に休暇届を出したシャナは少し浮かれていた。機嫌よく鼻歌を歌いながら家事を終え、出かける支度をしている。

 

「これでいいかな」

 

 忍装束ではなく、八雲に教えてもらった服屋で買った私服姿のシャナ。今日はトレードマークであるゴーグルをしておらず、代わりに頭にサングラスを載せていた。余所行きのお嬢さんと言った格好のシャナ。珍しくおめかししている理由は、一つだろう。

 

 弟は、朝早くから任務に出掛け、誰も居ない部屋に行ってきますとだけ告げ、部屋を出るシャナ。そんな姿を追跡している存在が居た。

 

(姉ちゃん)

 

 非常に複雑な心境ながらも、姉を騙す悪党が居れば、ぶん殴ってやろうと考えているナルト。そのためには、姉を追跡するしかない。けれど、自分のやってることがおかしいと感じる理性はあるため、酷い葛藤を抱えている。近くにはサクラも控えており、インカムでの連絡を取り合っている。

 一方で八雲は、一人木ノ葉の繁華街にいた。大体の被害報告が繁華街で声をかけられたと証言があり、ターゲットが現れるのを待つ作戦の様子。

 

 ターゲットの特徴だが、変化の術を使っているのかいろんなタイプの男性であり、唯一の共通点が右腕に刺青があったという報告だけだった。感知タイプの八雲なら相手が変化を使っていればすぐに探知できる。

 

 二手に分かれての捜査が始まった。 

 

---

 

 大通りを通り、木ノ葉の自然公園に歩みを向けるシャナ。それを追跡するナルトとサクラ。明らかなデートスポットに向かう姉にナルトが戦慄。サクラもサクラで少し楽しそうにしている。

 

「ちゃんとオシャレして、お化粧もきちんとしてる。これは間違いなくデートね」 

「絶対デートじゃないってばよ」

「あんたもしつこいわね。ほら、あの噴水で待ち合わせしてるのよ」

「うぐ」

 

 ナルトの希望的観測は、サクラによってばっさり切り捨てられる。しかし、シャナが公園についてから誰も来ないのだ。待ち合わせをしているようだが、相手が来ない。まさか悪い男に騙されているといううわさが本当なのかと、二人の頭に過る。

 仮に相手が来たとしても許容できないナルトだが、姉を待たせた上で、放置するとあれば渾身の螺旋丸を叩き込んでやると意思が固まっていく。

 

「そのシスコン、早く卒業した方がいいわよ。あれ、誰か来たみたい」

「あいつが、姉ちゃんの」

 

 サクラが噴水に腰掛けているシャナに近づく男性に気が付き、その様子を観察し始める。シャナが待っていたのは、遠くからで顔が良く見えないが、銀髪でシャナと同年代の男性。 

 

「なんか、顔が良く見えねってばよ。サクラちゃんはどう?」

「変ね。私も顔は見えてるのに、ぼやけて見えるって言うか」

 

 サクラとナルトは遂に現れた男の顔を拝もうとしたが、何故か認識できない。

 

「でも、シャナさん嬉しそうね。あの人、あんな表情もするんだって」

「……(本当に、楽しそうだってばよ)」

 

 どこか胸の内に寂しさを覚えたナルト。二人に血の繋がりはない。二人を繋ぐのは、家族の絆だけだ。けれど、姉に新しい家族が出来た場合、自分はどうなるのだろうという不安が彼を襲う。

 

「……大丈夫よナルト。シャナさんの事だから、彼氏ができてもあんたの事は、誰よりも大切にしてくれるわよ」

 

 ナルトの心境を察したサクラがフォローを入れる。シャナとの会話は、数える程しかないが、ナルトから聞いた話で彼女の弟に対する溺愛具合は知っている。

 

「シャナさんたち動いたわよ」

「へへ、わかったってばよ」

 

 シャナ達が移動し始め、繁華街の方角へ向かったのでナルト達も後をつけていく。シャナ達は、繁華街の劇場に足を運んでいた。

 

「意外と、デートコースしっかりしてるわね」

「姉ちゃん、映画とか好きだからなぁ」

 

 公開日には、休暇を取ってまで出掛けるくらいにはまっている趣味である。何度も何度もナルトは誘われた経験がある。ただ対象が映画館に入ってしまった以上、追跡が困難になる。

 

「サクラちゃん俺らも中に入らねぇと」

「うーん(サスケ君とこういうところ来てみたかったなぁ)」

 

 ナルトに手を引かれ映画館の中に入ったサクラ。シャナに気付かれないように、変化で変装し、一番後ろの座席に座ることでシャナと謎の男を観察する。

 映画が始まる前に、シャナが男と何かを話して談笑している。シャナの方が映画について何か伝えているらしく、パンフレット片手にはしゃいでいるようだ。

 デートを楽しんでいる姿を見て、ナルトが体を掻きむしっている。

 

「あんたどうしたのよ」

「なんか、こう、小っ恥ずかしいていうか、むず痒いって言うか」

 

 非常に重症なナルト。みっともないからやめなさいと嗜めるサクラ。そして、二人が入った映画館の隣の茶屋で寛いでいるシャナとトネリの姿があった。

 

―――――

 

「シャナ、映画見なくてよかったのかい?」

 

 銀髪に全盲のため目をつぶっているが美形なトネリ。普段の大筒木の衣装では目立つため、予め用意した服を着ている。今日はシャナから、デートに誘われて月から舞い降りていた。

 心眼によって映像も認識できるトネリは、シャナの案内の下、映画館へ来ていたのだが、誰かが後をつけている事を察知。

 それを彼女に伝えた結果、影分身に映画を鑑賞させ、撒くと言う作戦を決行した。

 

「映画が終わり次第、影分身に消えるように言ったってばね。そしたら経験値だけが戻ってくるから、映画と同時に別の事も出来てお得だってばね」

「なるほど」

 

 影分身を用いたダブルデート作戦。術を考案した二代目ですらたどり着けない領域だろう。一度のデートを二倍楽しめる。

 お茶を飲みながらご機嫌のシャナは、里の観光をしようと提案。

 

 二人で昼間の木ノ葉の里を歩く。トネリが自分の一族に伝わる幻術でシャナと自分への認識を薄くしていることで有名人のシャナでも普通のカップルにしか見えない。

 

「私、実は、こうやって里を巡ったことないんだ」 

「それはまた、どうしてだい?」

 

 理由は単純だ。シャナは、自由が制限されていたし、自由になった後は、木ノ葉の事が嫌いだったからだ。シャナから奪うだけ奪った里に楽しみなどなく、強くなることにしか興味がない子供時代を過ごした。ある程度成長してから、ようやく娯楽や息抜きを知り、少しづつ里に対する嫌悪感も薄れてはいる。

 全員が悪人に見えていた時代から、気に入らない人間とそうではない人間と分別できただけ成長と言える。

 しかし、嫌いなことに変わりなく、あえて、里で遊ぶという事をしなかった結果なのだ。

 

 たまたま辿り着いた場所で祭りが開催され、初めて出店というものを経験中の二人。シャナもお祭りに来た経験などなく、月に住んでいるトネリは言わずもがな。

 手裏剣投げの出店では、現役忍者であり手裏剣が得意なシャナが最高得点をたたき出す。ただ、ボウガンを用いた射的では、全弾外すという醜態をさらす。

 

「あの店絶対、細工してるってばね」

「そうかな? 僕は普通に取れたんだけど」

「もう一回、やってくるってばね!」

「もうやめた方がいいよ」

 

 4回もチャレンジして一発も当てられないという結果に終わる。一方でトネリは何でもそつなくこなしていた。その結果、きちんと商品を受け取っている。それが悔しくて何度もチャンレンジしてしまったのだ。

 食事も出店で済ませようと決め、どうせなら家で食べれないものを集中的に買っていくシャナ。その途中で、初めて見た綿あめに視線が惹かれる。

 

「綿あめって、不思議だってばね。なんで砂糖がこんな雲みたいに」

「地上の食べ物はどれもユニークだね。テーブルマナーもいらないなんて新鮮だよ」

 

 綿あめを食べて偉く感動しているシャナ。一方で異文化に触れ、驚いているトネリ。彼は月の大筒木一族として由緒正しい血統で跡取りである。食事も豪勢な料理が多く、祭りの食べ物のような立ち食いするものは、経験したことがない。

 二人で初めての体験を重ねていく。新鮮味とお祭りの雰囲気を満喫する。 

 

「金魚か」

「そんないっぱい取って、どうするつもりだってばね」

 

 金魚すくいにチャレンジし、その後は休憩のため人気のない場所で座る二人。

 金魚すくいで一匹しか取れなかったシャナと違い、トネリは20匹程取ってしまい、貰った袋がいっぱいになっていた。大量の金魚を持て余していたトネリ。彼は何を思ったのかその場で袋を破り、掌から発生させた泡の中に金魚を泳がせた。

 泡の中は水で満たされており、窮屈そうだった金魚たちは、泡に守られながら空を悠々と泳いでいた。

 

「何その変な使い方? 金魚鉢の術?」

「元々狭い水槽から出られたのに、さらに狭い場所に入れられて可哀そうで」

 

 決められた生き方しかできない金魚に自分を重ね合わせている。自分は大筒木ハムラの一族出身で、定められた運命を全うすることに誇りを持っている。だがそれと同時に他の人生に憧れてしまうのも人の性だ。

 

 シャナに出会わなければ、こんな考えはしなかっただろう。偶然出会い、トネリの人生に唯一といってもいいほどの刺激と羨望を与えてくれる少女。

 父親以外には、傀儡しかいない生活に訪れた嵐のような彼女。何度も会い話をしたり、交流を深める内にトネリは自分の気持ちが恋だと知った。父に初めて会った女性だから意識しているだけだと言われたが、それは違う。

 彼女と時を重ねるごとに、愛しさが膨れ上がってくる。良い所も含めれば悪い所もある。だが、全てひっくるめて愛しいと感じていた。

 今日のデートも、シャナから誘われたことで父の反対を押し切って昼間から地上に降りている。

 

 トネリの泡に入り空を泳ぐ金魚を「綺麗だってばね」と眺めるシャナ。

 

(君は僕の正体を知ったら、どういう反応をするんだろうか)

 

 月の大筒木一族は、大筒木ハゴロモの作った時代を見定め、それをリセットする役割を持つ一族。過去に何者かが月に封印されていた外道魔像を口寄せしたことで、地球のリセットに舵を切ってしまっている。そんな中で、唯一の跡取りであるトネリが、ハゴロモの一族の末裔であるシャナに好意を持っている。

 これは一族に対する裏切りだと言われた。トネリには、一族が地上の日向一族に求めた許嫁が居る。本来ならその女性を月に招き入れ、地上を一掃するはず。

 

(だが、出来ない)

 

 一族の使命と同じくらい、譲れないものとなっている。

 

「トネリ、トネリ」

「あ、ごめん」

 

 後回しにしているだけと分かりながらも、彼女との時間を大切にしたくて、今に集中した。シャナが時計を見て、そろそろ映画が終わる頃だと言った。影分身達が自分で術を解除すれば、その経験は本体へと帰ってくる。

 だから、映画の感想でも話そうと言われ頷く。

 そして、実際に映画館で映画を鑑賞した影分身達が消える。そして、映画館での記憶が流れ込み、シャナとトネリは二人とも、顔を真っ赤にした。

 

「「っ!?」」

 

 隣に座っていたシャナが飛び上がり、パニックになっている。一方でトネリも影分身の経験を体感し、どうすればいいのかわからなくなった。

 

「なにやってるんだってばね、私とトネリの影分身!?」

 

 シャナ達の影分身は、映画を本体に代わって鑑賞。その内容がアクションと恋愛映画の融合だったため、変に意識しあう二人。特にラブシーンを見てから、気まずかった。そして、その興奮が冷めぬまま映画を終える。

 どうせ消えてしまう影分身である自分たち。どうせだから本体に悪戯をしないかとシャナ(影分身)が持ち出した。押しに弱いトネリ(影分身)も、少し面白そうだと思ったのか、映画が終わり、ナルトとサクラも外に出たことを確かめ、消える前に、映画のような深いキスをした。

 2分以上もの間、キスしていた二人は、笑いながら消え、その小っ恥ずかしい感情と経験が本体に流れたのだ。

 二人とも唇を押さえ、艶めかしい感触に悶えている。シャナはよくキスをするが流石に、ディープキスの経験はない。ものすごく恥ずかしくなり、トネリより悶えている。

 

「もう二度と影分身デートしないってばね!」 

「賛成。これは良くない」

 

 影分身でのデートは盛り上がった影分身が暴走する。その副作用を身に染みて体感、二度とやらないと誓う。その後は互いに互いを意識し、どうしても口元を見てしまう。

 

 やがて、トネリが帰らなければいけない時間となる。影分身達のせいで映画の感想どころではなく、少し惜しい気持ちになったシャナ。今日は彼女からキスする事も出来ず、いよいよ別れが迫っていた。

 

「楽しかったよシャナ。また一緒に出掛けたいと思うよ」

「私もだってばね。それで、その」

 

 顔を真っ赤にしているシャナを見て、トネリが笑い、次に覚悟を決めたような顔になる。急に真面目な表情になったトネリに驚くシャナだが、彼に抱き寄せられ、そのまま唇を奪われた。影分身達とは違い、短いものだったが、力強く抱きしめられシャナは抵抗できず、彼の思うままになっていた。

 ようやく解放されたシャナは、何が起こったかわからず困惑している。

 

「シャナ。僕は、君の事を愛している。だから、約束する。必ず君を迎えに来る」

(えぇ! 嘘、トネリってこんな)

 

 二人の関係の主導権を握っていると思っていたシャナ。なのに想定外の反撃を受け、彼に感じたのは嫌悪ではなく、頼もしさと愛だった。主導権を握られるのは嫌いだが、彼の場合は嫌な気がしない。

 そして、母クシナとの会話を思い出していた。

 お父さんとの出会いについて、普段は優しくて少し頼りない人だったけど、いざというときは意志が強く本当はすごく頼れる所に惚れてしまったと。 

 

「私も、トネリ好きだってばね。本当に」

「よかった。では、また月の出る夜に」

 

 とんでもない爆弾を投下してトネリは、時空間忍術で月へと帰ってしまった。残されたシャナは、夕焼け空でもはっきり見えるほど顔を真っ赤にしながら、帰路に向かうのだった。

 

 一方でスパイ事件の顛末だが、こちらは比較的早く解決していた。捜査に乗り出そうとした八雲に声をかけてくる輩がいた。その人物がトルネにそっくりだった。

 しかし、トルネとは違い軽薄そうで、馴れ馴れしい。相手の好みにドンピシャな姿に变化する術なのだろうか。

 自分の好きな異性がピンポイント過ぎて恥ずかしくなった八雲はスパイの誘いに乗り、疑似デートをすることになった。

 

 だが被害者たちと違い、好きな相手の姿でも、中身が違いすぎて腹が立つ八雲。相手は彼女が照れているだけだと勘違い、更にスパイからしても八雲は美人で好意を抱き、路地裏に誘い強引に口付けを迫った。

 

(女の敵!)

 

 八雲が幻術で生き地獄を味合わせようかと思ったとき、路地裏にトルネが慌てて駆けつけた。

 

 また偽物かと八雲が怒るが、現れたトルネは、男の胸倉を掴み、怒鳴りつけた。その声と態度で本物だと勘付いた八雲。男は抵抗したが八雲が「逃さないで」と叫ぶなり、弾丸のように一撃で制圧。

 

 その後、木の葉の警らに引き渡される運びとなる。

 何故トルネが助けに来たかといえば本当に偶然だった。ガイ先生が任務で不在の為、代わりにガイ班の面々と任務に出たトルネ。

 戦闘能力とスタイルが師であるガイと同じため無理なく運用できると言うことで臨時に部隊長を務めることが多かった。そしてガイ班との任務を終え、家に帰ろうとしていた。

 その時、八雲が見覚えのない輪郭が歪む男と一緒に路地裏に入っていくのが見えた。

 

 何やら幻術のようなものを纏う男に連れられていく彼女を見て、追いかけねばいけないと走り出し男を取り押さえたのだった。今にして思えば、思考を放棄した突発的行動だったと反省する中、八雲が無事で良かったと安堵する自分がいる。

 

 お互い任務終わりということもあり、久しぶりに食事に誘われた八雲。棚からぼた餅な展開にも、チャンスを逃す事がないよう喰い付き、二人で夕飯を食べに行った。

 

 そして残ったサクラとナルトペアはというと、シャナに追跡を振り切られ、任務の続行が不可能となる。

 唯一わかったことは、シャナにボーイフレンドが存在すると言う事実のみ。それだけで人生が終わったようなショックを受けるナルトをサクラが励ましていた。そしてあまりの落ち込み様に見かねた同期の忍び達が焼肉に誘い、いつもの調子を取り戻すのだった。

 もちろん火影へ報告をするも、綱手は相手がスパイでない以上、個人の色恋に介入は無用だと上層部と大名に白紙の報告書を叩きつけたらしい。

 

 そして、全てが解決したと思われたとき、火影のデスクの上にある任務の依頼書が置かれていた。

 

「まだ任務があったのか……これは」

 

 綱手が取った依頼書には、護衛の任務が記されており、内容はある映画撮影の為、雪の国へと向かう際の護衛と書かれている。

 だがただの護衛ではないようで、BランクからAランク任務に引き上げられ手練を要請されていた。

 

 綱手は、それに心当たりがあった。

 

「雪の国か。確か、他の大陸国で悪名高い女傭兵グライアが雇われたという噂が原因か」

 

 もし噂が本当なら、今出せる最大戦力を投入せざるを得ないだろう。そう考え綱手は、第7班の資料とシャナの資料を手に取った。 

 




 女傭兵グライアさんは、オリキャラです。名前だけは、大激突 5 に登場してます。
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