NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

109 / 152
雪姫忍法帖4

 

 カカシによって眠らされた雪絵が既に出港した船の上で目覚め、その状況に声を上げる騒動の数十分前。

 船は貨物船であり、映画のセットも兼ねており、朝から忙しく撮影の準備が進められている。そんな中特に忙しく動いているのが、メイクや衣装を担当する女性スタッフだった。

 激しく駆け回りながら用意を整えていく。その熱意はもはや殺気と言っても差し支えなく、男性スタッフから護衛であるカカシとナルトも恐れる程だった。

 

「まさかこんなことになるとはね」

「まさかのまさかだってばよ」

 

 スタッフが大忙しなのは、急遽追加された登場人物のメイクの為である。そして、彼女たちの力作が完成し、スタッフの前にお披露目される。

 

「羅刹役のシャナさん、準備終わりました~」

 

 スタッフに連れ出された人物は、ばっちりメイクを施され、黄色い着物を纏ったシャナだった。状況に困惑しているのか、少し不安げで頼りない。だがスタッフたちがシャナの顔を見ると「「「おー!」」」と声を上げる。化粧と髪型のせいか、20歳くらいの大人っぽい女性に見える。

 そして、シャナの姿を見た監督が自分の勘は間違ってなかったと自慢げである。

 

「綺麗っすね。まさに想定してた羅刹のキャラピッタリっすよ」

「役に会う女優が居なくて没になったが、最終章の撮影でこんなぴったりな娘さんが現れるなんて、やっぱりお天道様は見てるってことだな」

「うわ~、シャナさん本当に綺麗。……カカシ先生? どうしたの?」

「いや、その大変身しててびっくりしてな」

 

 カカシは、シャナの姿を見て、物思いにふけっていた。

 

(ミナト先生にも、みせてやりたかったな。あのちんちくりんが、もうこんなに立派に)

 

 何故か娘が嫁に行く前の父親のような心境に浸るカカシ。思わず涙が出そうになるが、そもそもなぜこんなことになったかと言えば、昨日の監督の思い付きが原因である。

 

 うずまきシャナと会ってみて、この子は使えると思った彼は、風雲姫シリーズの没キャラを掘り起こし、彼女に役のオファーを行ったのだ。

 

 しかし、シャナは乗り気ではなく「映画は好きだけど、自分が出たいとは思わない。むしろ、自分が出たら作品が崩壊してしまう」と即断った。だが、決して譲らぬ姿勢で説得され続けたシャナ。二時間も粘られたうえに、監督の作品の試写会への招待と雪絵のサインを確約されたことで、渋々承諾してしまった。

 それからはあれよあれよという間に着飾られ、今の状態になっている。

 

 そして、シャナの準備が終わったタイミングで昨夜に拉致同然で連れてこられた雪絵が目覚め、大きな声で今の状況に突っ込んでいた。

 

 雪絵は目覚めると、船の上で観念したのか台本を読みながらメイクを施されていた。やがて富士風雪絵は、誰もが知る風雲姫へと変わっていった。

 そして、役に入り込んだ彼女は、もはや別人と言っていいだろう。唯一の問題である泣きの演技は、目薬で代用しているが、それ以外は本物と言える仕上がりだった。

 

 その様子に感動しているシャナは、隣に座るナルト達にその感動を伝えている。

 

 そして、いよいよシャナの出番が来る。

 演技は素人のシャナが、どのような演技をするのかスタッフ一同も注目している。

 

(えっと、えっと、なんだっけ、監督に言われたことは)

 

 すぐにセリフが出ず、危うくカットになるかと思われたが、シャナは監督に指示された言葉を思い出していた。

 

『お前さんは演技はしなくていい。ただ、自分がどれだけすごいかを見せつけるだけで構わない』

 

 風雲姫一行の前に現れた新たな敵、羅刹。それを演じるシャナ。

 役者たちに向き合うシャナの雰囲気が一変する。自分こそが強いと言わんばかりな強気な瞳で、風雲姫一行を獲物として睨む。

 

 演技だと分かっているのに、役者たちは冷や汗をかき、向けられた殺気に戸惑う。

 

「風雲姫、それにその一行。其方らの活躍は聞いてはいるが、それもここまで」

「姫様御下がりください!」

「ここは我らが」  

 

 俳優たちが演技に入り、武器を向けるが、その瞬間羅刹は目の前におらず、瞬身の術で背後に回り込みながら、衣装の小道具である大きな団扇を風雲姫に向ける。

 

「「「?」」」 

「さらばじゃ風雲姫」

「そうはいきません!」

「まだ、目は死んでおらぬか。よかろう、決着はこんな狭い船の上でなくともよい。先に行って待っておるぞ」

 

 振り下ろされた団扇を、風雲姫が剣で受け止める。そして、剣を払いのけられ、船の船首まで距離を取った羅刹。たがいに向かいあう風雲姫と羅刹。風雲姫と睨み合い、何かを察したのか羅刹が団扇を振るい、突風が発生し彼女の姿が消えるという場面でカットが入る。

 

「おぉーーー」

「合成なしでここまでできるなんて」

「シャナさんお疲れ様です!!」

 

 スタッフたちは、合成技術もなしに実力だけで映画の演出をやってのけたシャナに感動している。瞬身や風遁を使い、優れた身体能力で場面を盛り上げた様は感動だろう。忍で言えば当然の技術でも、彼らからすれば、魔法のように映った事だろう。

 役者たちも本物の殺気や、現実離れした動きに終始気圧されてしまっていた。

 

「これで、よかったってばね?」

「あぁ。羅刹の強者の風格と風使いってキャラクターを完璧に表現出来てた。それにもう一ついい事があった」

 

 マキノ監督はシャナの演技を称賛した。寒気すら感じさせる存在感と自信を発揮したシャナ。映画を彩る要素としては完璧であったし、役になり切る才能があったのか、演技も問題ない。さらにいいポイントが、富士風雪絵に起こった変化だろう。

 シャナとのシーンを撮り終えるなり、すぐに台本に目を通し、演技のイメージを改めて見直している。真面目に撮影に取り組む姿勢が見られ、スタッフも驚いている。

 

「どうやら、嬢ちゃんの演技が雪絵の役者魂を刺激したらしいな。あいつは、どう振舞おうが根っからの女優だ。それが画面から存在感を奪われそうになって、危機感から覚醒したんだな。おう、雪絵が燃えてるうちに進めるだけ進めるぞ」

 

 監督の想像通り、雪絵はシャナの本物の強さを見せられたことで、役者魂に火が付いた。主役は私であり、風雲姫としても役者としても負けられないのだと。雪の国に行くことを拒んでいた雪絵はおらず、いつも以上に役に入り込み、実力を発揮していく。

 

 ただ問題は、ライバル判定されてしまったシャナが雪絵から役に入り込むため、役と同じく敵として距離を置かれたことだろう。雪絵の大ファンのシャナは、物理的に距離を取られ、話しかけられないことで深く絶望していた。

 

 そして、一日の撮影が終わり、次の日の朝に問題が起こった。

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。