NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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別離

 目の前に映るのは、九尾に貫かれたクシナとミナト。

 その痛々しい姿に駆け寄って、手を伸ばそうとするもその場から動けない。声も出ない。

 

 その場から動けないシャナに対して、九尾の顔が挑発するように歪む。そして、両親の体をわざと痛めつけるように爪を太くしていく。血反吐を吐いて苦しむ両親。

 

 やめて、やめてぇえ!!!

 

 声にならないシャナの絶叫が闇のような空間に響く。だが、その声は九尾に届かない。やがて、二人の体が血潮となって消える。ボタボタと両親だったものが地面に広がる。 

 

【どうしてお前の親は死んだ?】

 

 声が聞こえ振り返れば、仮面の男がナルトを抱いて立っていた。そして、オビトとリンの亡骸がその男の足元に転がる。

 

【お前には圧倒的に足りないからだ、力が】

 

 ナルトを離して!

 

【ほら、お前の力がないばかりに、全てお前の手から零れ落ちていく】  

 

 男は、ナルトの包まれた布を鷲掴みにして、握りつぶした。その時飛んだ血が顔にかかる。そして呆然と立ち尽くすシャナを前に、足元に転がったオビトを踏みつけ睨む。

 

【これで、わかっただろう。愛など不要、お前が求めなければいけないのは力のみ】

 

 ころす。ころしてやる!!!

 

【そうだ。その目だ。俺と同じ力を以て、成すが良い】

 

 仮面の男が、自分の仮面を外そうとしたとき。シャナの意識は、白い光に包まれた。

 

 

 

―――――――

 

 眩しい光で目がくらむ。それに、体中が岩のようで一切動かない。

 それでも動こうと力を入れていると、突然女性の驚いた声が聞こえた。

 

「先生! 意識が戻りました! 先生!!」

 

 急に騒がしくなり、何人か部屋に入ってくる。その頃には、目も少しづつ慣れてきてここが病院のベッドの上だと分かった。薬品の独特なにおいに顔をしかめていると、男性の医療忍者がシャナの目に光を当て、瞳孔の動きを確認、脈を測ったのち質問してくる。

 

「私の指が何本か言えるか?」

「……に」

 

 喉が全く動かずかすれた声しか出ない。何がどうなったのかわからず、泣きそうになる。そして、先生から説明を受ける。ナルトの誕生日から今は、2か月経っていること。シャナは、あの日、死に掛けたまま二か月間入院していた。

 お父さんとお母さん、それにナルトはどこにいるのと、シャナは聞いた。その言葉を聞いた医師たちは、みな複雑そうな表情をしていた。

 

「それは、ワシから説明しようかの」

 

 そして、彼らが答えるより先に、病室に三代目火影が入ってくる。医師たちは頭を下げようとするが、三代目がそれを制して、少し二人にしてくれるかと頼み、病室で二人きりとなる。

 病室の椅子に腰かけた三代目火影は、シャナの様子を見た後、ゆっくりと話しかける。

 

「お前にとっては、受け入れがたいかもしれんが……波風クシナとミナトは、あの九尾の封印に携わった後に、亡くなった」

 

 聞きたくなかった事実。知っていた。父と母の体温が消える瞬間まで一緒にいたのだから、もう二度とあの温もりはシャナを包み込んでくれない。ほろほろと涙が流れるシャナ。

 

「なる、と……おとう、とは?」

 

 弟はどうなったのだろう。弟の事は命を懸けて守った。けれど赤ちゃんは弱い。もし、ナルトの身に何かあったらと動悸が止まらなくなる。

 

「そうじゃな。お前の弟、ナルトの事じゃが、無事じゃ。クシナやミナト、そしてお前が命を懸けて守り切った」

「……ほ、んと?」 

「本当じゃ。今日もミルクをたくさん飲んでいると聞いたぞ」

「いか、なきゃ」

 

 三代目は、体を起こし直ぐにでもナルトの所に行こうとするシャナを片手でベッドに押さえつける。

 

「待つのじゃ。お前の体では無理だ。それに、大切な話があるのじゃ」

「……」

 

 三代目は、厳しい眼をしながらシャナに里で決まった事を教える。その内容が、シャナの意志に反し彼女の怒りを招くと分かりながらも。

 里中を荒らしまわった九尾のせいで、里は半壊するほどの被害を被った。

 その怪物を封印されたナルトは九尾の人柱力となり、本来保護者である両親を失う。残ったのは同じく幼子のシャナのみ。

 故に四代目火影の血縁者であるナルトとシャナの身を守るため、二人が四代目の娘と息子であるという情報が秘匿される事となった。

 そして、ナルトが九尾の人柱力である事実は、絶対に他言禁止で話せば厳罰に処させれる。

 

「なんで、そんなの、おかしい、ばね」 

 

 さらにひどい知らせは、シャナはナルトと暮らすことが出来なくなった。九尾の人柱力であるナルトと幼いながらも写輪眼を開眼しているシャナ。この二人を同じ環境に置くことを危惧する勢力があり、ナルトは、保護者を探している最中で、シャナはすでに決まっているという。

 九尾封印の際、シャナの見せた力を目撃した忍は多く、彼女の力も重大な警戒の対象となった。

 大き過ぎる力を2つも制御することは不可能というのが里の上層部の判断だった。もしどちらかが暴走して、もう片方も釣られたとあれば、被害は甚大となる。

 

 だからこそ、二人は別々に育て、引き合わせてはいけないと決められたという。

 

「か、える、なると、の、ところ」

 

 そんな大人たちが勝手に決めた決定、従わないと。シャナは、ベッドから無理に起き上がろうとする。やはり、そうなったかと三代目が止めようとすると、シャナは瞳を写輪眼に変化させる。

 青い写輪眼を初めて見た三代目は、驚くが更なる驚きがあった。シャナの写輪眼の文様が歯車の文様へ変わる。それは万華鏡写輪眼であり油断していた火影は、幻術にかけられる。

 金縛りのような動きを制限するだけの術だが、猿飛が固まっている間に、シャナは点滴のガートルを支えにして、家に帰ろうとする。

 

「待つのじゃシャナ(やはり、万華鏡写輪眼を開眼しておったか)」

 

 しかしそこは三代目火影。幼子の幻術などすぐに解除し、シャナの手を掴む。三代目は、シャナの万華鏡を見て、うちは一族の中でも才能あるものしか辿り着けない力を持っている彼女の危険性を認識する。

 だが同時に、それだけの辛い体験がこの細く小さな体に降りかかったのかと、哀れみもした。

 

「はなして、はなしてよぉ」

 

 シャナが暴れて腕を振りほどき、扉の前に立つと病室に一人の男性が入ってくる。

 

「三代目。説得は失敗したようですな」

「フガク。まだそうとは決まっていない」

 

 シャナは、青い万華鏡写輪眼で部屋に入ってきた男を見る。その人物は、以前にシャナの写輪眼を見てくれた、木ノ葉刑務部隊の隊長、うちはフガクだった。

 

「信じられない。万華鏡写輪眼を、本当に」

「どいて、どいてっ、てばね!」

 

 ドアの前に立つフガクの足を必死に押すシャナだったが、ピクリとも動かない彼に腹が立って、幻術を掛けようと瞳を見る。だが、フガクは幻術にかからずシャナの万華鏡写輪眼を、同じく赤い三枚刃の手裏剣の文様の万華鏡写輪眼で見つめ返す。

 青と赤の万華鏡写輪眼が対面し、互いに驚いている。うちはフガクは、忍界大戦の際に、親友の死を見たことで万華鏡写輪眼に開眼していた。

 万華鏡写輪眼の開眼する条件、親しい者の死……シャナの開眼理由は両親だろう。

 

「俺も同じ目を持っている。だから、それは通用しない」

「……」

「波風シャナ。お前は今日より、姓をうちはと改め、うちはシャナと名乗ってもらう」

 

 シャナの保護者候補。それは、うちは一族だった。最初は、ダンゾウが写輪眼、それも万華鏡写輪眼、さらに須佐能乎にまで辿り着いている力を我が物にしようとした。

その才覚を求めダンゾウ一派が暗部養成施設”根”で預かると言い始めた。だがそれを止めたのは猿飛ヒルゼンと、このうちはフガクだった。

 ダンゾウの思惑は、ミナトとクシナに託されたシャナを悪用する行為に他ならなかった。ダンゾウは今回の九尾事件で、里との間に亀裂の出来たうちは一族がクーデターを起こそうとしていると察知。

 一族単位と言えども、うちはは強力な戦力。だからシャナをうちは一族に対する切り札にするつもりだった。

うちはを殺すには、うちはをぶつける。単純だが合理的な案だった。

 それにシャナは波風ミナトの娘だと里中に知れ渡っており、シャナを育成すれば、それだけで次代の火影候補となりうる。戦力としても政治としても美味しい存在だった。

 

 それにストップをかけた三代目とフガク。フガクは、シャナが予てより写輪眼を持つことを知っていたと言い、写輪眼を持つ以上うちはの一族に名を連ねるべきだと血の正当性を主張。元々顔見知りであり、血継限界を守る意味でも、うちは一族預かりにしたいと告げる。

 うちはでなら、シャナに力の使い方を教え制御できると告げた。

 

 同じくダンゾウに預けることに反対派の三代目も、うちはと里の亀裂を知っていたため、ダンゾウと違い少なからず血族として迎えてくれる、うちはにこそ預けたいと告げた。それによってうちはの意見を通し、彼らの不満を少しでも解消できればいいと考えた。 

 結果は、里の過半数の意見を貰い、うちは一族へ預けられることとなった。

 

「いや」

「そうでなければ、お前は二度とナルトに会えなくなる。これは事実だ」

 

 シャナが、うちは一族を拒んだ場合、里の孤児院へ預けられることになる。だが、その場合、ダンゾウという男がどんな手段を使ってでも手に入れようとするのは明白。

 その場合、どんな結末が来るかわからないフガクではなかった。

 

 だが、うちはとしてならシャナにもナルトと会う機会も訪れる。

 姉弟としてではなく、木ノ葉の忍として会えることはあるだろうと、考えていた。

 

「……」

「お前達が一人前の忍となれば、再会させると約束しよう」

「……ナルト、あい、たい、よ」

 

「シャナよ。永遠の別れではない、しばしの間、離れて暮らすだけじゃ」 

「……おま、え、たち、みんな、きらいだ、ぜったい、ゆるさない」

 

 大人たちの都合。シャナとナルトに配慮しようとしたものの、姉弟を引き裂く決定。シャナは感情のまま暴れそうになるも、暴れた未来を見てしまう。

 それは未来というには暗く、辛い生き方になる。そしてナルトには一生会えなくなる。

 それにシャナは、生きる目的があった。永い眠りの中で、何度も見せられた大切な人の死。その元凶である九尾と仮面の男を殺すという目的が。そこに弟を奪った人間たちが追加されただけなのだ。

 どんな事をしてでも弟を守り、両親を奪った一人と一匹を殺し、里の大人達もただでは済まさない。報いを受けさせる。

 

 シャナの恨みは深い。その写輪眼は、憎悪と怒りで更に強くなっていた。

 ミナトとクシナの愛娘、シャナ。両親の愛を受けた彼女は、木ノ葉隠れの里の住人達を家族と思い未来に引き継ぐ、”火の意志”を受け継いではいなかった。

 両親に託された弟を守ること。【託されたものを何があっても守り通す】これが、シャナの忍道となった。

 

「では、これからはよろしく頼む」

 

 フガクに差し出された手を、シャナは無視してベッドに戻る。

 今は回復しなければいけない。強くなるために。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 少し時間が流れた未来。

 夕暮れの木ノ葉の里。歴代火影たちの顔岩が夕日に照らされ、もうすぐ夜が来る。

 木ノ葉隠れの公園。そこでは子供たちが遊具で遊んでいた。

 

「へへぇ~んだ。絶対捕まらないってばよ!」  

「もう、何時間、鬼ごっこするのさ、僕お腹すいちゃったよ」

「たく、めんどくせぇ」

「最後まで鬼だった奴は、アカデミーにお菓子持参だからなシカマル」

「ワンワン!」

 

 4人の子供達と一匹の子犬が公園で鬼ごっこをしている。楽しそうに遊んでいる子供達だったがやがて、彼らの親が迎えに来る。公園の入り口に

 

「キバ、赤丸。そろそろ帰るよ」

「母ちゃん、じゃあなお前ら、行くぞ赤丸」

 

「シカマル。そろそろ帰るぞ」 

「わりぃなナルト、先に帰るわ」

 

「チョウジ。行くぞ」

「うん、またねナルト。父ちゃん、今日の晩御飯なんだろう」

 

「お、おう」

 

 4人中3人が、それぞれ家へと帰る。そして取り残されたのは、黄色い髪の男の子だった。顔に髭のような文様があり、青い目をした少年。彼は、公園のブランコで親と帰る友達の姿を眺める。そして寂しそうな表情をしていた。

 だが遅れて公園に走ってくる影を見て顔を上げる。

 

「遅れてごめん。一緒に帰ろうかナルト」

 

 俯いていた顔を上げた先にいたのは、淡い紫の瞳であり、髪はクリーム色でサイドテールに、木ノ葉の額当ては首元にかけており、額にはオレンジのゴーグル。服装は、青い忍装束のきれいな女の人。

 その人物が髪の毛をかき上げながら、ナルトに手を伸ばす。

 ナルトの表情は明るくなり、「おそいってばよ」と照れながら手を取った。二人で手をつなぎながら、ナルトと女性は、夕方の公園から出ていく。

 

「ナルト、ご飯何食べたい?」

「あのさ、あのさ、ラーメンが食べたいってばよ!」

「またぁ? まぁ今日は遅いし、一楽食べにいこっか」

 

 二人は、夕飯を食べようと一楽を目指して歩く。誰かと手を繋いで歩く、迎えに来てくれる、何より、家族がいることに嬉しくなったナルト。

 

「へへへ」 

「何笑ってるんだってばね?」

「何でもないってばよ。姉ちゃん」

 

 木ノ葉の里を歩きながら、ナルトのアカデミーでの悪戯した話など聞いて「じゃ明日の修行の内容厳しくしなきゃね」と告げる。それには嫌そうな顔をしたナルトだったが、自分の話を聞いてくれる姉と繋いだ手に力を籠める。

 

 そうしてラーメン屋”一楽”につくと、店長のテウチと娘のアヤメが二人を歓迎する。

 

「お、ナルトにシャナか。いらっしゃい」

「おっちゃん、俺、とんこつ味噌チャーシュー大盛り」

「私は、野菜ラーメン大盛りで」

 

 二人の注文に「あいよ」と店主は答える。そして、二人でラーメンを食べて、家に帰る。そんな日常の風景だが、二人の姉弟の顔には笑顔があった。

 

 そんな未来の一ページ。

 

 

 

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