少し時間をさかのぼり、戦闘を開始したシャナとグライア。粒遁の刃は鋼鉄であっても熱で切り裂く必殺の刃。故に巨大な剣を盾にするグライアを剣ごと両断しようと企んだ。
しかし、シャナの刃は、グライアの義手が展開する高密度のチャクラ障壁によって打ち消される。雪忍よりも遥かに出力の高いチャクラの鎧義手によって、通常のクナイでの戦闘を強いられてしまう。だが速さで圧倒すればいいと、巨大な剣を盾にシャナの攻撃を防ぐグライアに肉薄する。
金属と金属がぶつかり合う。巨大な剣と鞭と言う接近戦には不利な装備のグライアを持ち前の機動力で押していくシャナ。だが、シャナの写輪眼は、口元に笑みを浮かべるグライアをしっかりと捉えていた。
(何か来る)
シャナの予想通りグライアの巨大な剣が、本性を現す。彼女のチャクラによって赤く発光した剣は、幾重のパーツに分離、重力に逆らって無数のプレートがグライアを取り囲む。
「剣じゃないのか」
「誰も剣なんて言うてへんで、これはウチのお気に入りの一つやで」
柄だけを残して宙に浮かぶ無数のプレート群になったグライアの武器は、彼女の意思に応えるように高速でシャナへと飛来する。磁遁に似た能力で、シャナに襲い掛かるプレート。これも遺跡から彼女が発掘した宝具である。持ち主の意思で自由自在に組み合わさり、盾にも剣にも飛び道具にもなる万能の武器、須天王。
「くそっ粒遁・天輪」
近距離戦を挑めば、プレート群に四方八方から襲われるため、後ろに引いたシャナは、チャクラの障壁を貫通できると未来視で知った天輪の印を結ぶ。生半可な威力では防がれるが、最大限チャージすればグライアを倒せると知った。
様子見をするグライアはシャナの邪魔をしなかった為か、一撃必殺の最大チャージした粒子砲を放つことに成功。
「踊りや、獲恤」
粒子砲に対して鞭を振るったグライア。只の鞭に亜音速で迫る高温の粒子砲を受けきれるはずがない。当然ただの鞭ではなかった。グライアの鞭は、粒子砲に触れるなり、それを吸収。鞭が変化し、シャナの粒遁と同じ物質を纏う鞭に変化する。
それをシャナに向かって振り回す。
(これは、まずい)
身をかがめて鞭を避けたシャナだが、髪の毛を鞭に切られてしまう。鞭によって腰まであった髪が肩までの長さにされ、グライアを睨む。
「粒遁やっけ? これええな」
粒遁の威力を楽しむように鞭を振り回すグライア。鞭の扱いは達人級で触れただけで氷山が真っ二つになり、人体など紙のように切り裂いてしまう武器を振り回し、シャナを追い込んでいく。
シャナは写輪眼で鞭の軌道を見切りながら回避に徹する。迂闊な攻撃で敵の武器を強化してしまい、緊急に対策を練らなければいけない。
グライアの振るう鞭は、触れたチャクラを吸収し、その術の性質に変化するという性質を持っている。だから遠距離攻撃は、鞭に吸収され、今のように鞭の威力を底上げしてしまう。
近距離は、無数のプレートによる防御と攻撃の雨、中距離は、鞭による休みのない攻撃、そして更に距離を取れば。
「なら、護琉魂や」
シャナが鞭の攻撃を回避していると、十分な距離を取れたため、再び銃を用いて射撃を開始するグライア。遠方から一撃必殺級の射撃が連射されては、シャナでも回避しきれない。
「粒遁・天翔!! 影分身の術」
チャクラ砲の連射を、青い閃光となった高速移動で空中に回避。更に影分身を使用し、3人に分身する。空中に飛んだシャナを写輪眼で捉えていたグライアは、その速度に驚くが、反応できない訳ではないと高を括っていた。
だが分身したシャナがそれぞれ違う術を使ったことで、動きが変化する。
「火遁・業火滅却」
「銅輪転生爆」
「粒遁・天輪」
咄嗟に出せる最大火力で3つの属性を放つシャナ。グライアは、その段階で粒遁・天輪のみを同じ属性になった鞭で弾き、残った泡遁の絨毯爆撃を展開したプレートで相殺。残った高火力の炎を右腕のチャクラの鎧で受けとめる。
雪原を全て包み込むような火力に包まれながら、チャクラの障壁によって身を守るグライア。
(一つの属性しか盗めへんのバレたか)
相手の術を盗む鞭。だが、当然弱点もあり、術の規模や数によっては吸収できない。特に複数の属性での同時攻撃であれば、どれか一つしか一度に盗めない。どの術を保持するかは選べるので、強力な術を吸収すればそれを保持するのが正解だろう。
だが、初見でその弱点を攻略してきたシャナに対する警戒心が強まる。
「けど、甘いで、ええ術なんやけど、私の右腕は特別やさかい、チャクラの無駄遣いや」
通常のチャクラの鎧なら業火滅却で貫通できたかもしれない。だが、グライアの義手は、放浪の中で見つけた古代遺跡の発掘品を幾つか流用した特注品。特に出力に関しては、雪忍のものよりも4世代は進んでいる代物だ。
「ん? ごほっかはっ、? しもた!」
チャクラの鎧で身を守っているはずなのに、急に眩暈が起こり、息苦しさが彼女を襲う。何十秒も周辺一帯を炎に包まれていれば、当然、酸素が無くなるのだ。知らずのうちに酸欠状態に追い込まれ、それが狙いだと気が付いたグライアは、展開したプレートを組み合わせスケボーのような足場にして、空を飛ぶ。一刻も早く酸素を確保せねばと炎を抜け出す。
「待ってたってばね。粒遁・大玉螺旋輪虞」
先見の写輪眼でグライアが炎からの脱出に選ぶポイントを把握していたシャナ。すでに巨大な螺旋輪虞を作り上げ、絶好のタイミングでジャンプし酸素を求めて飛んできたグライア目掛けて、それを叩き込んだ。
炎で視界が悪い中、突然上からたたき込まれた大玉螺旋輪虞。その破壊力を正面から受け止めてしまったグライア。チャクラの鎧の障壁が瞬時にひび割れる。
「やってくれるやんけ!!」
自分のチャクラを義手のコアに流し、チャクラの障壁を強化していくが、遅い。一度ひび割れた障壁を修復は出来ない。一点集中の破壊力の前に障壁が砕け、グライアの体は地面に叩きつけられるように飛ばされ燃え盛る炎へ落ちていった。
影分身を消し、地面に着地したシャナ。高火力の出し続けで息切れしながらも、炎に包まれたグライアの最期を看取る。
「むかつく、せっかく、伸ばしたのに……」
短くなってしまった髪を触りながら、柄にもなく悲しんでいた。理由があって伸ばしたわけではない。ただ、大好きであこがれの人を真似ただけだ。なのに、泣きそうになる。自分の感情が理解できず、困惑するシャナ。
「安心しいや、すぐに首も落としたるさかい」
「お前、まだ」
炎の中から平然と脱出してきたグライア。大玉螺旋輪虞を受けながら、衣服が少し破れただけで本体にダメージが入っていない。
「プレートと鞭を犠牲にして耐えたってばね?」
軽傷な理由は明白だった。シャナの大玉螺旋輪虞を二つの武器を犠牲にして、威力を殺したのだ。チャクラの鎧に二つの武器を犠牲にし、さらにクナイ程度なら簡単に弾ける素材でできた軍服で防ぎ切ったのだろう。
その証拠に、グライアの持つ鞭は、柄しか残っておらず、厄介なプレートも元は100枚近くあったのに3枚しか残っていない。
「そうやで」
「じゃ、残ったのはあの筒だけだってばね。すぐに終わらせてやるってばね」
残る武器は、チャクラ砲を連射する無茶苦茶な筒だけ。それさえ攻略すれば、グライアは丸裸も同然。右腕の義手も所々ひび割れ、破損している事から先程の防御力を発揮は出来ないはず。
そう思い何かをされる前にクナイで首を搔っ切ってやろうと前に踏み出すが、シャナの写輪眼は、不審なグライアの動きを目で追う。
何も持っていなかった掌で壊れた義手を撫でれば、義手の傷が無くなる。さらにプレートを撫で、最後に鞭の柄を撫でる。
義手と同じくバラバラになっていた武具が時間を巻き戻すように再生する。再び無数のプレートと属性を纏う鞭をシャナの迎撃に当てるグライア。
「くっそ、お前の能力、御年神か」
プレートの攻撃を後ろに飛んで回避、中距離になり鞭の連打が迫るが、冷静に粒遁の刃を纏わせたクナイで弾いて飛び跳ねながらグライアを観察する。
「御年神言うん? 覚えとくわ」
鞭とプレートでの攻撃を止めたグライア。その両目は、ターゲットスコープのような模様の万華鏡写輪眼へと変化している。その両目の内どちらかの能力なのだろう。シャナと同じく時間を戻す御年神を宿しているのは。
相手が万華鏡になった段階でシャナも万華鏡写輪眼を発動。瞳術での戦いには瞳術で対応するのがシャナの対写輪眼のセオリーだ。
「自分は歯車か。いろいろ模様が違っておもろいんやね万華鏡写輪眼言うんわ」
「基本は千差万別だってばね」
万華鏡を使われる前に倒せる予定だったのに、グライアの想定以上のしぶとさに、チャクラの残りが半分を切ってしまっているシャナ。何度もチャクラ砲を放っているグライアは疲れた様子もない。それどころか常時チャクラ量に変化が見られない。
現在消費したチャクラ量だけでも、ナルトのチャクラ総量を超えているはずなのにだ。並外れたスタミナの弟よりも圧倒的にチャクラが多いというのだろうか。
何か種があると思い、その真相解明のため、シャナは先見の万華鏡写輪眼の発動に踏み切ったのだった。