NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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 あけましておめでとうございます。


雪姫忍法帖9

 

 前日の戦いの疲れが取れぬまま、目を覚ましたシャナ。ちょうどサクラが呼びに来たところだったので船の一室に集められた。

 

 事情を聴くためだ。明らかに相手は、映画の主演女優や撮影スタッフに襲い掛かってきたわけではない。

 全てを知っているのは、雪絵のマネージャである三太夫只一人だろう。

 

 全員の視線に耐えながら、三太夫は、明らかに彼女を睨んでいる雪絵に申し訳なさそうに事の顛末を話し始める。 

 

 女優富士風雪絵は、偽名であり本当の正体は、雪の国の先代当主の娘、風花小雪であるという。彼は先代の家臣でありクーデターによって雪の国を乗っ取った風花ドトウを倒すべく、雪の国から逃げ延びた小雪を探していたという。

 そして、ようやく小雪が富士風雪絵と言う名の女優として生きていることを知った彼は、雪絵のマネージャーになり、こうして雪の国に連れ帰る事が目的だったのだ。

 

 映画撮影云々も、雪絵をこの国に連れてくるための口実に過ぎなかった。

 利用してしまったことについて土下座しながら詫びる三太夫。だが、どうしても雪絵と共に雪に国を取り戻さなければいけなかったと告げる彼の切羽詰まった様子には誰も何も言えなかった。

 

 雪絵こそが彼らにとっての希望であり、明日なのだ。

 彼は雪絵に対して再び頭を深く下げ、懇願する。

 

「小雪姫様、ドトウめを打ち倒し、この国の新たな主君となって下され!! この三太夫、命に代えても姫様を御守りいたします! どうか! どうか!!」 

 

 雪の国の民を救うため、共に立ち上がってくれと言う三太夫。その言葉を隣で聞いていたナルトは、既にやる気満々のようだ。明らかに任務の範疇を超えた仕事になるが、三太夫の話を聞いた今彼には、彼らを放っておくという選択肢などない。

 ここはみんな一丸となってドトウを打ち倒すと信じていた。

 

「嫌よ、そんなのはお断りよ」

「しかし、雪の国の民雄が」

「そんなの関係ないわ。お断り」

 

 雪絵の言葉は誰よりも冷たかった。雪に閉ざされたのは国だけでなく、雪絵の心もなのだ。

 

「いい加減諦めなさいよ。あんたなんかが頑張ったってドトウに勝てる訳ないじゃない! 馬鹿じゃないの!」

「諦めろなんて、簡単に言うんじゃねぇよ。このおっちゃんは自分の命をかけて夢を叶えようとしてんだ。馬鹿呼ばわりする奴は、俺が絶対許さねぇ!」

「ナルト君……」

 

 何があろうとお断りだという雪絵の言葉と態度に、ナルトが机を叩いて立ち上がる。ナルトの言葉と三太夫の言葉に感銘を受けたのか、監督であるマキノが語り始めた。

 

「諦めないから夢は見られる。夢が見られるから未来は来る。ふん、いいね。風雲姫完結編に相応しいテーマじゃねぇか」

「監督? まさか撮影続けるつもりですか!?」

「だから言ったじゃねぇか、この映画化けるって、考えてもみろ。本物の姫様を使って映画を撮るなんて、そうあるチャンスじゃねぇだろ」

「ちょっと!」

 

 監督の言葉にスタッフたちも大きな賭けだと理解し始めているらしい。雪絵だけが周りと意見が食い違い、酷く狼狽えている。

 さらに追い打ちをかけるように護衛であるカカシは、既に選択肢は一つしかないと告げる。敵に正体が知られた以上、逃げ切るのは不可能。ならドトウと雪忍を倒すしか道はない。

 もう逃げる事はできないと宣告された雪絵の表情は、絶望の底にいるようだった。息をしているはずなのに、呼吸ができないような息苦しさに倒れそうになる。

 

「よっしゃ! 風雲姫は雪の国に帰って、悪の親玉をぶっ飛ばす。ハッピーエンドだってばよ」

 

 そんな彼女の味方はいなかった。一人を除いては。

 

「行くか行かないかを決めるのは雪絵さんだってばね。マネージャーのおじさんや雪の国の民がどうとか、それが雪絵さんの命をかける理由にならなくない?」

 

 シャナだけが雪絵の肩を持つ。満場一致と言った空気が少し変わっていく。

 

「シャナ姉ちゃん何言ってるんだってばよ。三太夫のおっちゃんの話聞いてなかったのかってばよ」

「聞いてた。だから、なんでその人の夢の為に、雪絵さんが危険な所に行かなかやならないんだってばね? それに彼女は騙されて連れてこられた。勝手につれてきてもう逃げ場がないから、戦ってくれ? あまりにも虫が良すぎるってばね」

「なんで、そんなこと言うんだってばよ! それに風雲姫の姉ちゃんだって、本当は」

 

 ナルトがシャナの言い分に腹が立ったのか、ズイズイと雪絵に向かって歩いて行く。シャナは雪絵を庇うようにナルトの前に立つ。

 

「それに私たちの任務は、撮影の護衛だってばね。あえて護衛対象を危険地帯に進ませるのが、護衛のやる事だってばね?」 

「そうはいうが、敵に狙われている以上、俺達は逃げる事は出来ない。これは事実だ」

「私なら、雪絵さんを連れて逃げる事も出来るってばね。雪絵さんが狙いなんだから、映画スタッフの皆さんも少しは安全だと思うけど?」

 

 シャナは、自分の力なら雪絵を逃がせると宣言する。しかし、シャナの消極的な態度に業を煮やしたナルトが、彼女の襟首をつかんで怒鳴る。

 

「そんなこと言って、姉ちゃんは本当はこえ―だけなんだろ! あいつが強くてもう戦いたくないってなってるだけだってばよ!! また、つえ―奴がいたら逃げて、何度も逃げるのかよ。俺は、そんな姉ちゃん、見たくなかった」

 

 グライアとの戦闘で負傷したシャナ。それ故に逃げているのだと憤る。ナルトの中でシャナは、常に最強だった。だから、そんな腑抜けた姉を見たくない。その思いでいっぱいだった。弟から見損なわれているシャナだが、『馬鹿ね』と言いながら、ナルトの腕を捻りあげる。折れる寸前まで捻りあげられたナルト。

 

「う、ぐう」

「シャナさん、折れちゃう! やめて!!」

  

 サクラが制止しようとしたが、シャナはナルトの胸部に小さな螺旋丸を食らわせ、壁まで吹き飛ばした。威力を抑えられているとはいえ、ナルトは胸を押さえて動けなくなってしまう。流石に部下を攻撃されたとあっては、カカシもシャナ相手に武器を向け得ざるを得ない。

 

「落ち着けシャナ」

 

 クナイを向けられ、カカシに威嚇される。だが、シャナはカカシの威嚇を無視する。サクラに介抱されているナルトを見下ろしながら、シャナは言葉を紡ぐ。

 

「別にグライアの相手をするのは、問題ないってばね。今度やれば私が勝つから。けれど、私がグライアの相手をしたら、雪絵さんを守れる戦力がない事がわからないってばね? 感情に従って動くのは勝手だけれど、お前は弱いのよナルト。

 夢を見るのは構わない。夢を追うのも構わない。けど、死んだら終わりなの。自分に出来る事と出来ないことを見誤れば、死んじゃうのよ」

 

 今こうして無様に蹲っているように。そして、シャナの言葉は、ナルトだけでない。サクラやカカシにも深く突き刺さる。ここまで言って理解できない彼らではない。シャナは雪絵が行くと言わない限り、協力しないと宣言している。

 任務の放棄にも見えるが、この場合、正統性はシャナにある。映画スタッフの護衛が、一国の国取りに変化しているのだ。それを続行する理由も義務もシャナにはない。

 

 第七班は、依頼人の事情や心境に寄り添う傾向がある。それは隊長であるカカシの人柄ゆえだろう。だが、シャナは第四班の人員。任務は可能な限りやり遂げる責任感はあるが、その責任感は、今回ナルト達と意見を別つ溝となっている。

 

 

「雪絵さん、少し外の空気を吸いに行くってばね」

「え、えぇ」

 

 雪絵の手を引いて出ていくシャナ。その後ろ姿を見送った全員。最初に言葉を発したのは、マキノ監督だった。

 

「おっかねぇな。けど、確かに気合を入れるには、覚悟をしなきゃならねぇ。三太夫さんよ、少しだけ、雪絵に考える時間をやってくれねぇかな」

「……そうですね」

 

 雪絵の性格を知っていれば、彼女がどういった選択をするかはわかり切っていた。しかし、雪絵にシャナが味方した以上無理強いは出来ない。 

 

 その後、シャナと甲板に出ていたシャナと雪絵が戻った。そして、雪絵から告げられたのは皆が想像にしない言葉だった。

 

「嫌だけど、進路を雪の国に進めていいわ。けど、私が戻るって言ったら戻って」

 

 

 

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