NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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うちはシャナ

 

 目覚めてから半年余りをリハビリ生活に費やし病院を退院したシャナは、うちは一族に引き取られた。

 そこから4年ほどの時が過ぎて、もう8歳だった。

 

 あれから背も伸び、同年代の中なら高いほうで、常に青い写輪眼で生活していた。服装も、背中にうちはの文様を縫い付けられたものを着ており、年齢の割に大人びた表情で美人と美少女の中間と言えた。今でもゴーグルを額に付けてはいるが、人の視線を恐れることはなくなった。

  

 当初はうちはフガクの家に預かられる筈だったが、フガク家には、今年生まれたばかりの赤ん坊であるうちはサスケがおり、その泣き声を聞いたシャナがナルトを強く意識し始める。不安定な精神状態で、両親の死や望まない弟との別離を意識することで体調を著しく悪化させる事態が発生。

 他の家に預けることが必要と判断された。同じく万華鏡写輪眼を開眼していた忍、うちはシスイの居る家に預けられた。

 

 万華鏡を持つシャナが暴走したとき抑えられるのは、同じ万華鏡を持つものというのが一族の認識だった。

 シスイ家に預けられたシャナは、それは大人しい子供だった。かつての幼さは鳴りを潜め、まるで居ないかのように息を殺して生活していた。

 シスイの両親は、心に傷を負った少女が自分のタイミングで打ち解けてくれるようにと気を使っていた。 

 

 

「(優しい人たちってのは、わかるってばね)」

 

 体力の回復したシャナだったが、新しい家族に馴染めなかった。二人が死んだとしても、二人の代わりなんていない。優しくしてくれるし、シャナの事を最大限気を使ってくれていた。悪い人たちではない。突然現れた子供を引き取り、自分の子のように育てようとしてくれる。

 その気持ちを感じて、二人の手助けなどは、行った。恩返しとして、少しでも気持ちを返したいと思っていた。

 けれどシャナの心には、ナルトしかいなかった。泣いていないだろうか、お腹空かせていないだろうか、怖い目にあっていないだろうか、そんな考えがずっと頭をよぎる。

 

 退院直後は未来視をナルトのために使っていたが、今では生きていることくらいしかわからない。離れている期間が長すぎたからか、徐々にナルトの未来を見る事が難しくなる。

 そして、会いに行くことも難しかった。 

 

 うちはの集落を歩いて行き、集落の端にたどり着いたシャナだったが、この集落から出る事が出来ないのだ。何もない空間だったが、シャナが進もうとすると結界として機能し、強固な壁となった。この結界はうちは一族の集落の出口全てに張り巡らされていて、子供のシャナに突破は難しい。

 一度何者かがシャナを誘拐しようとした事件があり、その際は、義兄となった、うちはシスイによって助け出された。  

 

 なぜ攫われたかと言えば、シャナは夢遊病を患っており、何度も眠りながら家に帰ろうと無意識で彷徨っていたからだ。それ以外にも、何度か里の掟を破って、ナルトと接触しようとしたことも10回ほど。

 狙われ、脱走癖や夢遊病など、危険要素があまりに多く、施された結界だった。

 もちろん保護者が居れば外に出ることも許されるが、シャナは檻に閉じ込められたと感じていた。

 

 だけれど、シャナはうちはの集落でなら自由は許されており、自由に修行に打ち込むことが出来た。弟に会いに行けない、なら力をつけるしかない。両親の仇は、またナルトを狙って訪れる。それを退けるだけの力が必要だった。

 未来視ではなく、直感がそう訴えかけていた。

 

 やれることは、強くなることだけ。そう思いながら毎日修行を行っていた。

 

(それに、私は弱かったころとは違う) 

 

 忍者アカデミーに通わなかったシャナ。正しくは、うちはの集落から出られない上に、ナルトが通っている同じ場所にシャナが通うことはできなかった。

 元々ミナトとクシナの指導で、アカデミーの授業は必要なかった。むしろ力を求めるシャナには無駄な時間にすら感じられた。

 それにシャナは、数年間の修行期間で確実に力をつけていた。修練場にて、両手を合わせて術を発動する。

「粒遁・天輪の術(りゅうとん・てんりん)」

 

 シャナの頭上に青い光が集中。シャナの狙いに合わせて、丸太に巻きつけられた的を丸太ごと吹き飛ばし、膨大な熱量で蒸発させる。発射後、シャナと的の間の地面は熱で溶け、その威力を物語っていた。

 

粒遁・天翔(りゅうとん・あまがけ)の術」

 

 シャナの体が青い光に包まれ、かつてのミナトの瞬身よりも速く、一直線に移動する。目的地は、うちはの修練場の山の天辺である。あまりの速さに自分の写輪眼であっても、何も見えなくなる。そんな速度を出しても安全に移動できるのは、青い写輪眼で視力ではなく、未来視によって視界を確保しているからと言える。

 光速程ではなくとも亜音速で目的地にたどり着いたシャナ。瞬時に衝撃波が修練場を襲い、周囲を壊滅させてしまう。

 

「……やりすぎったってばね」

 

 粒遁。シャナの持つ火、風、雷の性質変化を同時に起こして発動する術である。自身を粒子に変換し、亜音速で移動する術や、粒子を凝縮、それを相手に向かって発射する術。どちらも強大な運動エネルギーと熱エネルギーを持った術へと至った。チャクラを粒子に変換しそれを操る。

 非常に攻撃的で、手加減が出来ない弱点はあるが、遠距離+時空間忍術クラスの移動能力という力を得た。

 この術に関しては、仮面の男からナルトを救いたいと思って発現した。それを自己改良したのだ。

 青い写輪眼と同じくシャナしか持ちえない武器として。3年間の修行期間が掛かったものの、ようやく物にできた。ただ、コントロールがうまくいかず、衝撃波と小火の連続である。

 敵を倒すことにおいては、優位だが、仲間と戦うには向いていない。けれど、一人きりになったシャナは、それで良いと思い込んでいた。

 

 更に父ミナトのクナイを持って粒遁のチャクラを流していく。

 

「粒遁・天刃」

 

 粒遁で生み出した青い刃。無理やり刃の形にしたチャクラの粒子は、激しく振動を繰り返し膨大な熱を持つ。それを修練場の木で試し切りすれば、抵抗なく木を焼き切れた。斬れた跡は燃え、その熱量を物語っている。持続は長く出来ないが、一撃必殺の刃としての新術。

 3つの術を生み出したシャナだったが、彼女の目標は、ミナトだった。

 黄色い閃光。その速さと強さを再現したい。父のような強い忍になりたいのだ。

 

「わぁ。かっこいいねシャナ姉ちゃん」 

「?」

「危ないな。気を付けてくれ」

 

 突然背後から声を掛けられビックリしたシャナがクナイを向けてしまう。そのクナイを受け止めた人物がいた。シャナのクナイをクナイで受け止めたのは、うちはフガクの長男であるイタチ。声をかけたのは弟のサスケだった。

 兄の背中にぴったりくっついているサスケとイタチは修行の為に来たのだった。

 

「イタチ、サスケ」 

「シャナ姉ちゃんの術、いつもすごいよね」

「正直、やりすぎだけどな。また、シスイに怒られるぞ」

 

 シャナの術をかっこいいと褒めるサスケと修練場の荒れ果てた姿を見て苦言を零すイタチ。正反対の対応をする兄弟。イタチとは小さい頃からの知り合いで、サスケは赤ちゃんの時から知っている。

 昔のシャナは、2歳くらいのサスケの御守をしたこともあった。イタチとも修業する関係でこの2人とも付き合いが長い。

 

 イタチの言葉の通り修練所に急いで現れた人物がいた。

 

「お、さっきの爆音、やっぱりお前かシャナ」

「……イタチ」

「何? おい、イタチ、なんてことをしてくれたんだ」

「いや、俺は」

 

 現れたのは、うちはシスイ。うちは一族の中でも手練れ中の手練れで里からも注目されている忍である。一応、シャナの義兄となっており、彼女の師匠でもある。彼の登場と周囲の荒れ果てた状況から、罪をイタチに擦り付けた。

 イタチは言葉も出ないようで、シスイに詰め寄られていた。

 

「シャナ姉ちゃ~ん」

「……おにぎりでどうだってばね?」

「いいよ。困った顔の兄さんも面白いし」

 

 サスケの咎めるような顔に、賄賂を提案。兄の困り顔というレアな顔を見てサスケは、了承する。

 シスイは、一通りイタチに詰め寄ると、納得したのかイタチを解放する。

 

「なぜ俺が……」

「さて、諸君。今日も修業するぞ」

 

 シスイとイタチの両者は忍であり、アカデミー生のサスケと自己流忍術使いシャナの指南役でもあった。正確には、シスイの下に3人の弟子がいる状態だった。

 4人はそれぞれ忍術、体術、手裏剣術の修行をしていた。

 そしてイタチが修練前に見たシャナの術の説明をすると、シスイが困り顔でシャナを見る。

 

「遂に完成させたのか?」

「瞬身のシスイ、破れたり、最速は私」

 

 シャナは、自分の義兄が”瞬身のシスイ”という二つ名を持っている事にライバル心を抱いていた。亡き父ミナトこそが木ノ葉で最速だと信じていた。

 

「いいや、まだまだだな」

「?」

 

 木の葉の黄色い閃光の娘。それを8歳のシャナは誇りに思っていた。誰かに語ることも出来ない誇り。クシナとミナトの長女であるという過去が、シャナという少女の人格形成の根幹となっていた。

 自尊心も育ったシャナは、母親に似て負けず嫌いでもあった。

 瞬身の術でシャナの背後を取ったシスイに倣って、瞬身の術で背後を取り、クナイを向ける。

 

「瞬身の術は、俺のほうが上かな」

「ち」

 

 しかし、シスイはさらに速く動いてシャナの背後に回って頭を撫でる。身体能力の面、特に体術の面でイタチとシスイには及ばない。逆に術の威力に関しては、火力重視のシャナが現役の忍である彼らを上回っていた。

 

「もう一度、やるってばね」

「仕方ないな。いくぞ」

 

 たがいに写輪眼でにらみ合い、忍組手を始める。青と赤の瞳が交差しながら、拳と蹴りが交差する。体格差で圧倒的に負けているシャナだったが青い写輪眼に光が灯り、未来視を可能とする先見の写輪眼を使用する。

 

(相変わらず、頭が沸騰しそうになる)

 

 写輪眼でも追いきれないシスイの動きを、未来視で予習することで、全て解る。見るのではなく、識る。先見の写輪眼を発動したシャナは、シスイの攻撃を全て紙一重で回避し、何発もカウンターを入れていく。

 

(こいつ、急に) 

 

 シスイの拳を首の動きだけで避け、胴体に二発拳を叩き込む。むせそうになったシスイだったが直ぐにシャナの胴体を狙って蹴りを繰り出す。しかし、両手で足を受け止められ、上段蹴りで顎を狙われる。ギリギリで両手でガードしたが、ガードと同時に腹を殴られる。

 たまらず後ろに飛んだシスイだったが、先回りしていたシャナの蹴りが背中に入る。

 

「くっそ、例の奴か」

 

 何発も貰っているシスイだが、ようやくウォーミングアップが終わったとばかりに素早い動きでシャナに迫る。シャナはその動きにも完璧に対応する。だが、攻撃に回る余裕はなく、二人して修練場の森に駆け込む。

 木々を駆け抜けながら、縦横無尽に迫るシスイの攻撃を回避し続ける。

 互いに木の上を飛びながら、二つの写輪眼の交差は、さらに能力の高い万華鏡写輪眼同士のにらみ合いになる。青い歯車の万華鏡と赤い四枚刃の手裏剣の万華鏡が光を散らす。

 互いに動体視力も向上した状態で読み合いによる攻防が続く。

 

「やるなシャナ」

「話しかけんなってばね! ぐっ」

「あ。まずい!」

 

 シスイの言葉に答えた瞬間、集中力の切れたシャナの右頬にシスイの腕がクリーンヒット。シャナは、木の上から落下。 

 慌てて追いかけたシスイだったが、地面に倒れ伏したシャナが煙を上げ丸太に変わる。

 

「変わり身か」 

「そうだってばね!」

 

 不意を突かれたシスイの頬にシャナの右足がクリーンヒット。木に叩きつける。

 

「やられた。降参、降参だ」

 

 木に叩きつけられ、チャクラで木に張り付いたシスイは、頬を押さえながら降参宣言をする。綺麗に一本取られた上に、止めなければシャナはさらに攻撃を仕掛けてくるだろう。

 

「シスイ。後は頼んだってばね」

 

 シスイの敗北宣言を受けたシャナ。すぐに先見の写輪眼を解除し未来視を止める。膨大な量の未来、さらにシュミレーションを行っていたシャナは、限界になり気絶する。

 今度こそ本当に木から落ちたシャナをシスイがキャッチ。

 木の上を飛んで修練場に戻る。

 

「あ、兄さん、帰ってきたよ」

「忍組手じゃなかったのか? 急に森に走ってびっくりしたぞ」

「悪い悪い。ヒートアップしちゃってな」

 

 シスイが抱えているシャナを見てサスケが「寝ちゃったの?」と尋ねるがシスイは首を横に振る。実際気絶していたシャナも直ぐに目を覚ましていた。

 目を覚ました彼女は手を額に当てて、苦しんでいた。

 

「頭割れそうだってばね」

「青い写輪眼の未来視も、問題ありだな」

 

 シャナを木陰に寝かせたシスイ。同じく横に腰かけたシスイ。二人でイタチの手裏剣術を見ながらシャナの能力について確認する。

 

「はじめは嘘だと思ってたけど、お前の目は本当に未来を見ているな。見切りは俺を遥かに凌駕している。動きも格段に良くなるのは、最適解を見つけているんだったか」

「そう。私の見た未来に自分の動きを合わせるだけ、正しくは未来の私をコピーするの」

「先見の写輪眼、いい能力だな」

 

 時間にして最大4分。それがシャナが先見の写輪眼を使える時間。未来視の膨大な情報を処理できる限界時間であり、体も無理な動きに悲鳴を上げて動けなくなってしまう。その代償に見合うだけの力であり、4分間はシャナに攻撃を当てることは火影ですら難しい。というのがシスイの見立てだった。

 未来を見通す写輪眼ということで、シスイが付けた名前が先見の写輪眼だった。

 一度先見の写輪眼相手に全力で攻撃を仕掛けたことがあるが、シャナにかすり傷すら付けられなかった。

 シスイも1発も貰わなかったが、プライドは大きく傷ついた。

 

 シャナも弱点を理解して未来視の精度を落とし、減らすことで脳の負担を減らす工夫はしている。しかし、今の所上手く行っていない。精度を落とせば、絶対回避とも言える力が回避能力の向上に落ち着いてしまう。 

 先ほどシスイの一撃を食らった時のように、格下相手はともかく格上には、致命的だ。

 さらに先見の万華鏡写輪眼、より分析能力の上がった状態では、1分も持たなくなる。洞察力は向上するも今の所、使い道がわかっていない。

 通常であれば万華鏡写輪眼には、両目に同じか別々の特殊能力が宿るものだが、シャナはいまだに万華鏡の瞳術を発揮できていない。

 

「イタチもお前も若い世代の勢いが凄すぎて、自信なくなるよ」

「……あ、サスケ!」

 

 シャナはイタチの手裏剣術を見て真似しようとしてるサスケを大きな声で呼び止める。

 

「え、何?」

「怪我するからやめときな」

「大丈夫だよ」

「いや、サスケ。まだお前には」

 

 イタチも止めようとするが、サスケは言う事を聞かず空中での手裏剣術を真似し、盛大にバランスを崩して落下。足首をくじき、イタチにおんぶされながら帰ることになった。

 イタチの背で涙目のサスケ。シスイとシャナも家に帰ることになり、4人でうちはの集落を歩いていた。

 

「だから止めとけって言ったってばね」

 

 シャナはサスケの未来を見て止めたのに、サスケが言う事を聞かなかった事に怒る。だがうちは一族では、シャナの他にシスイしか知らない未来視。

何も知らないサスケが素直に言うことを聞くはずがないのだ。

 

「だってぇ。シスイもシャナ姉もイタチ兄さんも、みんな凄すぎるんだよ。俺だけ……」 

「サスケ。お前は一番幼いんだ。焦ることはない」

 

 そう言いながら4人はそれぞれの家に帰った。うちは一族の若い世代であり、次代のうちはの優秀さは、結束の強いうちは一族の大人達も自慢にしていた。彼らの力があれば、うちはは安泰だと。

 だが同時に、うちは内でシスイやイタチ、そしてシャナをある目的で利用しようとする流れがあった。

 

 今日のような一日は、そんな運命に翻弄される嵐の前の静けさだった。

 

 

 




明日は投稿できるか怪しいです。
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