雪絵に連れられ、一同が巨大な空間に足を踏み入れると、其処には、敵の頭であるドトウが鎮座していた。
「ご苦労だったな小雪」
ドトウの登場に一同が警戒を強めていると、雪絵が一人彼の元へと走り出した。それを止めようとカカシが手を伸ばすが、雪忍のナダレがクナイを投擲、カカシの道を阻む。シャナならいけるとかと目配せするが、シャナは首を横に振る。
何故なら、ドトウの玉座の傍には、グライアが佇み、シャナを注視しているからだ。
ドトウの元に駆け寄った雪絵は、迎え入れられるようにドトウの元に歩み寄る。そして、六角水晶を手渡した。突然の行動に一同は言葉を失う。その静寂の中にドトウの高笑いが良く響いた。
雪絵が一同に振り返る。
「みんな忘れてたのかしら、私は女優なのよ」
「その通りだ。全ては雪絵が計画した事。この女は、自らの助命の為に、お前たちを捨てたのだ。哀れだな、木ノ葉の忍達よ」
雪絵の裏切りに「なんでだってばよ!」とナルトが悲痛な声を上げる。
「だから、言ったでしょ。私は、女優なんだって!!」
「ぐ、小雪、貴様」
小雪は、完全に油断しきっていたドトウの腹部を隠し持っていた小刀で貫いた雪絵は裏切ったのではない。裏切った演技をしただけなのだ。父の仇であり、三太夫の仇であり、この雪の国の仇であるドトウを倒すために。
雪絵に刺されたドトウは、驚きながらもその太い腕で雪絵の首を鷲掴みにする。
「小娘が、生意気によくも」
雪絵の細い首など簡単にへし折ってやるとドトウが力を籠める。
「雪絵の姉ちゃん!!」
「わかってたのよ、なると、ここにかえってくるときは、しぬときだって、けど、あなただけは、つれていく」
雪絵が死力を尽くしてドトウの体を押しやり、足を踏み外したドトウと雪絵は3階にも相当する高さの玉座から飛び降りる事になる。
「ナルト、走るってばね!!」
ドトウと雪絵が落下すると同時に、シャナがナルトに指示を飛ばす。声を聞いた瞬間には走り出していたナルト。落下すれば最悪死ぬ高さ。故に考えている暇はない。
「あかんで、感動のシーンは静かに見るもんやで」
策もなく駆け出したナルトにグライアのチャクラ銃の銃口が向けられる。発射されれば、ナルトの頭部は消し飛んでしまう。迎撃しようにもシャナは印を結ぶ時間もなく、既に間に合わない距離にいる。
だが、グライアの写輪眼は、口角の上がったシャナの表情を見て、引き金を引けなかった。彼女の生存本能からくる勘は正しかった。突然、シャナの姿が煙となって消える。
玉座に足を踏み入れたのは、シャナの影分身だった。そして、影分身が消えたことで得た位置情報を本体であるシャナが経験値として得る。
本体であるシャナはドトウの城の外にて、クナイ2本を使い、粒子刀同士を共鳴させ巨大な粒子の刃を形成していた。一太刀で巨大な城を一刀両断できる規模の術を発動。
「粒遁奥義・天羽々斬!!」
戦闘に参加せず、チャクラを練りあげ術の精度を高めた一撃必殺の刃が、城の外からグライアを狙って振り下ろされた。
城を両断する一太刀は、城にいた雪忍達のチャクラの鎧など意に介さず蒸発させ、グライアへと迫る。完全な不意打ちに天井を見上げたグライアは、チャクラの鎧ではなく、須佐能乎を顕現させることで対処する。第三形態へ到達した須佐能乎で粒子の刃に拮抗しようとするが、強固な須佐能乎の体をシャナの粒子刀は、溶断してゆく。
「くそぉお!!」
グライアは、須佐能乎ごと城の床を突き破って、地中へと叩きつけられた。
奇襲攻撃に成功したシャナは、息を整えながらナルト達の救援に向かおうとした。
―――
「雪絵の姉ちゃん! しっかりしろってばよ」
「ナルト?」
雪絵にいち早く駆けだしたナルトは、彼女を受け止める事に成功していた。そして、意識を失っていた雪絵が覚醒すると怒鳴る。
「姉ちゃんは死んじゃいけねぇ人間なんだってばよ」
「けど、私にはあれしか国の為に出来る事が」
「そんなの逃げてるのと一緒だってばよ」
心中を咎めるナルト。その言葉に罪悪感を感じたかのような雪絵だったが、次の瞬間、刺されたはずのドトウが起き上がり、ナルトを殴り飛ばした。
「こんな玩具みたいな刀では、儂は殺せん」
着物を脱いだドトウの全身は、黒いチャクラの鎧にて覆われており、刃が刺さることはなかったのだ。彼は小雪を抱えこむ。
「これが最新式のチャクラの鎧だ。なんだ、グライアはやられたか? まぁいい。では小雪、行くとしようか、虹の向こうへ」
ドトウのチャクラにより鎧の背部にある翼が展開し、空へと勢いよく飛翔した。シャナの作った城の切れ目から外に出て行く。
「待て!」
ナルトがロープ付きのクナイを雪絵目掛けて投擲。雪絵はそれを受け取るように腕に巻き付ける。そして推進力を得て飛び出したドトウに引っ張られるようにナルトも空高く飛び上がった。
それにタイミングを合わせるように、シャナの破壊した城が崩落を始める。
「先生、ナルトが」
「サクラ、一先ず外に出るぞ」
崩落に巻き込まれては敵わないとカカシとサクラも城の外に抜け出した。そして、空を飛んでいくドトウを確認し、それを追おうとする。
「おっと、これより先にはいかせん」
「ナダレ」
サクラとカカシを阻むように崩落から逃げ延びていたナダレと冬熊ミゾレの両名が立ち塞がる。
「カカシ先生、こっちの男は私が相手します」
「く、無駄だ小娘が」
ナダレの相手をカカシに任せ、大男であるミゾレにクナイを投擲しながら、距離を取るサクラ。それに乗ったミゾレは、スノーボードのような器具に乗り雪を駆けていく。
「威勢のいい部下だなカカシ。だが、すぐ死ぬことになるぞ。助けなくていいのか?」
「サクラは、とても強い子だ。心配はいらないよ。それよりも、お前自身の心配をしたらどうだナダレ」
カカシの挑発に乗るように、ナダレも飛び出し二人は、何度も刃を交えながら雪山を登っていく。
――――――
一方、崩れた城の跡で、雪忍達に囲まれていたシャナ。生き残った雪忍達に包囲されながらも、善戦は続ける。だが必殺の術を最大威力で発動したためか、チャクラで火傷してしまい、術の精度は落ちてしまう。そして、距離を取りながら忍具で攻撃してくる連中に時間を稼がれてしまっていた。
本来なら雪絵を追いたいところだが、粒遁の発動がしばらくできなくなっており、回復を待つしかないのが現状だった。
「まぁこのくらいの数なら、問題ないってばね」
「なんだ、うぁあ」
「うあああ」
「ぐあああ」
少しづつ刈り取ればいいと、殺気を向けた時。突如、チャクラのフィールドが城の跡地全体を追う規模で展開された。どこから発生したのかわからないほど膨大なチャクラで展開されたチャクラ障壁。ドーム状に展開されたそれは、シャナを包囲していた雪忍達のチャクラの鎧に干渉。それによって破損したチャクラの鎧が爆発。
元々、チャクラの鎧の発するチャクラ障壁同士が衝突すると、オーバーロードして爆発するという弱点があった。それによって雪忍達は自分を守る鎧によって爆死して全滅した。
しかし、ドーム状に展開されたチャクラ障壁は健在であり、莫大なチャクラで展開する大元は、無事という事だ。
馬鹿げた出力で、しかも一方的に他のチャクラの鎧を破壊する特別製のチャクラの鎧。
シャナは血の気が引くのを感じ、ちらりと地べたを見た。
すると、地響きと共に地面から、全身ボロボロのグライアが這い上がってきた。
「お前、何で生きてるってばね」
軍服は、焼け爛れ、体中に火傷を負いながらも、グライアは生きていた。手加減なく一撃で殺すつもりで発動した術の奇襲攻撃。それすら凌がれるのは想定外と言わざるを得なかった。
ダメージは甚大な様子だが、戦闘は可能らしい。
肩で息をしながら、グライアは役に立たなくなった衣服を脱ぎ棄て、お腹を出したインナー姿となる。
「実際危なかったわ。けど、天照で粒子を燃やしたのが功を奏したって訳やな」
「く」
須佐能乎では、天羽々斬を防げなかった。そこでグライアは、瞬時に自分が生き残れる”可能性”を青い目の写輪眼が持つ能力で導き出した。シャナが知らないだけで、グライアにもあるのだ。人とは違う彼女だけの視界が。
シャナの未来を見る先見の写輪眼とは違い、もしもそうだったらという可能性(パラレルワールド)を見る事の出来る能力。並行の写輪眼。それがグライアの能力。
条件が多いものの、グライアはシャナと全力で戦い勝った可能性を見たのだ。シャナと違い、オートで発動せず、見る可能性も指定しなければいけないが、その精度は完璧と言えた。そこで天羽々斬を破った世界線を見たことで、粒子刀を黒炎で燃やすことで自身の蒸発だけは防いだのだ。
とはいえ、黒い炎で大火傷しており、無事とはいかなかった。
「もう、回復してるってばね」
「あぁ。これか、チャクラを馬鹿食いする服が燃えたからな。こんな火傷、2分もあれば治るで」
以前戦った時と同じく、グライアのチャクラは、徐々に増幅し始め、生命力が高まったのか傷が煙を吹きながら回復していく。人間離れした再生能力と瓦礫に埋まりながらも腕力のみで這い出てきた怪力。グライアの能力の一つなのだろうが、彼女の言う通り衣服を捨てたことでチャクラの増加が著しい。
そして、今こうして話している間にも、常人なら死んでもおかしくないチャクラを放出して周囲をチャクラ障壁で覆っている。
そのチャクラ量はまさに無尽蔵と言える。シャナは回復させてはいけないと術を発動しようとするが、術が発動しない。
「今までの障壁と違って、これは内側で術を発動できなくする機能や。私の障壁の中で術が発動できると思うなや」
「お前、本当にめんどいってばね」
銃口を向け、引き金を引いたグライア。万事休すかと思われたが、カチンと引き金が鳴るだけで、チャクラ砲が発射されることはなかった。
「嘘やん」
何度も引き金を引くグライアだが、チャクラ砲は、発射されない。どうやら障壁内では、グライアの使う武具の機能も効果を失ってしまうのだろう。一度も試したことのない機能を使ったことで、その副作用を理解していなかったグライア。
ぶっつけ本番がここにきて、マイナスに働いた。
「今だ」
シャナは、グライアの特殊な武器が機能しないなら、チャンスがあるとクナイを持って駆け出す。猛スピードで接近するシャナを見たグライアは、拳を握り、地面を殴りつける。
すると、地面が吹き飛び、クレーターを形成する。その際に飛来した瓦礫を見切って回避していくシャナ。
回避しながら、これまでのグライアの戦い方を考察する。これまで使ってきた武器や防具はすべて、常人なら即死するチャクラ消費量のアイテムばかり。それを使用できなくなった事で弱体化するかと思われたが、その予想は外れ。
無駄遣いできるほど、いや、無駄遣いしなければならないほど莫大なチャクラを全てフィジカルに振る事が出来るとすれば。それは、シャナのそれを遥かに凌駕する。
瓦礫に視界が防がれた瞬間、距離があったはずのグライアが一歩で接近。五代目火影綱手に匹敵するかと思われる怪力で瓦礫ごとシャナに拳を振るった。
怪力の一撃で砕け散った瓦礫が散弾銃のようにシャナに襲い掛かる。
身のこなしでそれを避けるが、グライアが地面の瓦礫ごとシャナに蹴りを放つ。地面をえぐる蹴りを受ける訳にはいかないと、瓦礫を回避し、煙幕を張って身を潜めるシャナ。
僅か一秒間の攻防だが、シャナが圧倒的不利なのは、明確だった。
「隠れたか」
瓦礫を殴り、地面をえぐる蹴りを放ったグライアの手足はボロボロだったが、彼女の細胞は自己再生を始める。
最終決戦が今始まった。
天羽々斬 すなわちライザーソード。