今日も何時ものように修行をしていたシャナ。今日はシスイとイタチは任務で外しており、自分の修行というより、サスケの修行の手伝いだった。
「シャナ姉ちゃん、いくよ。火遁・豪火球の術!」
溜池の上でサスケが火遁を発動するが、小さな炎しか出ない。とてもではないが豪火球というより、小火球の術が良い所である。サスケが父親より教わった術だが、イタチのように上手にできないと相談されたのだ。
シャナはめんどくさいと断ったが、イタチ達がいない以上、シャナしか頼れる相手がいないと延々とせがまれた為、修行を見てやっているのだ。
「才能ない」
「相変わらず酷い言いよう。なんで、おれ、兄さんみたいにできないんだろう」
シャナは、水面でチャクラによる歩行練習をしながらサスケの術を見るが、あまり進歩していない。
「イタチは天才。サスケは凡才。真似するほうがおかしいってばね」
「ひど過ぎない?」
シャナの態度にサスケがむくれる。だがシャナは気にしていないとばかりに自分の修行に集中する。片手で逆立ちをしながら水上で腕立て伏せをする。シャナに足りないのは、やはり体である。チャクラのコントロールと体力と筋力をつけるために修行を行う。
サスケは、仕返しにシャナの方向目掛けて、火遁を発動しようとする。
「甘い。火遁・豪火球の術」
「うわぁああ」
シャナは、水上で印を素早く結び、術を発動。
サスケの放った炎を遥かに巨大な炎でかき消し、サスケはしゃがみこんで炎を躱す。
「豪火球はこうやる。わかった?」
「当たりそうでそれどころじゃなかったよ!?」
サスケの講義に「お前は私の弟子じゃない。手取り足取り教える時間がもったいない」と冷たく突き放す。
「……サスケは、成功のイメージが頭に焼き付いて、自分の力量を忘れているんだってばね」
「俺が落ちこぼれってこと?」
「そう。イタチに勝ちたいのはわかる。でも年齢も経験も、何もかも違う」
「……シャナ姉ちゃんは、俺に俺のペースでやれって言ってるの?」
「そうとしか言ってないってばね」
シャナの言葉を読み取れたのは、サスケが小さい頃から一緒に居たからと言える。シャナは冷たく、いつも突き放そうとするが、見放したことはない。いつもヒントはくれるし、危ないときは助けてくれる。
本当は優しい人だというのは、わかっていた。距離を取りたがるくせに、面倒見がいい、めんどくさい人。それがサスケの認識だった。
態度に腹は立つが、嫌いではない。どちらかと言えば、サスケはシャナが好きだった。
「集中力が大切。サスケには特に」
「わかった。……火遁・豪火球の術!!」
深呼吸し、落ち着いてチャクラを練った火遁の術は、シャナほどではないが、先程よりも大きな火球となった。その光景を見ていたシャナは、頷いていた。
成功したことでシャナの顔を見るサスケだが、シャナはやることはやったと自分の修行に専念した。
チャクラの少なくなったサスケは、溜池の傍で腰掛ける。暇になったサスケは、シャナにアカデミーの話を始めた。
全てを聞き流していたシャナだった。
だがシャナの修行は、サスケのある言葉で終わりを迎えた。
「そういえば最近さ、変な奴に絡まれるんだ」
「サスケが生意気だからだってばね」
水上逆立ち腕立て伏せをしていたシャナ。
「ナルトって奴なんだけど。なんか里の大人から嫌われてるのかな。いつも怒鳴られて、睨まれてるんだ」
サスケの声と同時にシャナは、バランスを崩して溜池に落ちた。急にシャナが水に落ちたことでサスケはびっくりするが、水から上がってきた彼女の顔を見て恐怖に歪む。
シャナは脅すつもりはなかったが、サスケを問い詰めないわけにはいかなかった。
「サスケ、その子の事、聞かせてくれる?」
「あ、あんまりしらない。小さい頃からアカデミーに居たとか、問題児だとか、親が居ないとか、一人で住んでるとか……よくわかんないけど、大人達が遊んじゃダメとか言ってるのは聞いた」
「そう。サスケから見て、その子は、幸せそうだった?」
「……全然。なんか、かわいそうだった」
サスケの言葉に嘘はない。素直にそう思ったのだろう。シャナはサスケに何ももう言うつもりはなかった。ありがとうとだけ伝えて、シャナはその場から瞬身の術で消える。
彼女の向かう場所は、うちはの集落の外だった。
(なんで、木ノ葉なんて信じてしまったんだ)
自分がこのうちはの中にいる限り、ナルトの事は大丈夫だと思っていた。実際、うちはフガクに尋ねれば、問題ないと聞かされた。問題ない。それはいったいどういう意味でだ。
シャナは自分の思っていた大丈夫と大きく違うナルトの現状に怒りや、憎しみが抑えられない。
自分のように、大人に保護されて静かにだが、幸せに過ごしてくれていると思っていた。自分が姉だと名乗れなくても、愛情を受けて、笑いながら生きているんだと思ってた。
人柱力として生まれたナルト。なら里の為に九尾を体内に封印してくれた英雄。そう扱われてると思った。口に出せなくても、里から感謝を受けていると思っていた。
だから、ナルトの障害になる奴らを倒すために力を磨いた。ナルトは幸せだから、私がそれを外から守ってあげるんだって。
なのに、自分が優しさを受けている間、ナルトは大人達から忌み嫌われていた。保護者もなく、今は5歳の弟が一人暮らし。大人達からは、九尾の人柱力ということで怒りを向けられている。
大人しくうちはの集落に留まっていた結果がこれだ。大人たちの都合のいい事実だけを伝えられ、真実には触れていなかった。
シャナが大急ぎで集落の端にたどり着くと、結界に阻まれる。苛立ちから、頭突きで結界を破ろうとする。当然結界は破れず、シャナの額から血が流れる。
「何が問題ないだ!? 私の弟が里に忌み嫌われている? ナルトのおかげで、今平和に生きられている奴らが? ゆるさないってばね」
結界に阻まれるも、シャナは止まるつもりはなかった。
(すぐにでもナルトを迎えに行こう。そして二人で里を出る。そして後は、木ノ葉の里を滅茶苦茶にしてやる)
里を抜ければ追われる事になる。けれど、シャナは逃げ切る自信があった。
(人柱力のナルトを欲しがる所はどこだろう。自由にはなれないが、保護してくれる里はあるはず……やはり雲隠れにでも行ってみるってばね)
木の葉の里がナルトを迫害するなら、出て行ってやる。それがシャナの考えだった。望み通り出ていき、ナルトを欲しがるであろう雲隠れにでも保護してもらおうと考えた。雲隠れが選ばれた理由は、人柱力や血継限界を優遇し、育てる施設がある。そして木ノ葉に並ぶ忍五大国の一つだったからだ。
おそらく人柱力のナルトが一番過ごしやすい場所であると、シャナは秘かに思っていた。
そんなシャナは、両手を合わせてチャクラを練る。里との決め事、里の事情、里の人々、そんな事はどうでもよくなった。里がナルトを守らない以上、シャナが里との取り決めを守る必要はない。
「こんな結界で、私を閉じ込めようだなんて、100年早いってばね!! 粒遁・天翔」
結界を破れば、瞬く間に警務部隊や里の忍達にシャナが抜けだしたと知られる、けれど立ち止まる理由にはならない。
シャナは、体を粒子に変換しながら、亜音速で結界を突き破る。衝撃波が、うちはの集落を襲うが、怒りで頭がいっぱいになったシャナは、被害を気にしない。どのみち壊すのである。早いか遅いかだけの違い。
いつもは思慮深い彼女だったが、心の平静が完全に壊され、衝動のまま体が突き動かされていた。
すぐに結界が破られたことは、警務部隊に知れ渡り、木ノ葉の重要指定人物、うちはシャナの捜索が決まる。
しかし、彼らに見つかる前にナルトを探せばいいと木ノ葉の里へ潜伏するシャナ。
風のように木ノ葉を駆ける彼女は、変化の術で暗部の忍の仮面とフードに包まれた格好に化ける。
暗部の姿なら、正体を隠せる上に、緊急事態の今なら、シャナを捜索している体で里を探れるからだ。
(ごめんナルト。すぐに、すぐに、行くってばね)
シャナは、未来視を使い、追手に捕まる未来から逆算。捜索網の隙間を縫ってナルトの探索を始めた。