NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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楼蘭2

 

 狙撃から身を隠すように楼蘭の街を歩くシャナ。仙人モードは、解除しており、衣となったジョウゼツはリュックのような姿になって背負われている。

 巨大な建造物が多く、全てを観察するには、多くの時間が必要だろう。だが何よりも不可解な事があった。

 

「なぁ、人が全然いないっておかしくないってばね?」

【町の規模からしても、人口密度が低いと言わざるを得ない。それになにより、建物のほとんどが蛻のからで生活感がないな。吾輩が思うに、長らく人が住んでいない建物が多くを占めているのだろう】

「人がいなくなったから、楼蘭は滅亡したってことか」

【いや、人がいなくなるにしても、建物や道路があまりに整備され過ぎている。普通は、荒廃の跡があってもかしくない】

 

 つくづく奇妙な街だと観察を述べながら、探索を続けるシャナ。すると、道路を清掃している様子の土偶のような傀儡人形の姿が見え、建物の陰に隠れる。

 

「傀儡だってばね」

【ここまで大きな都市を傀儡で整備しているのか。なるほど、シャナ、傀儡に伸びているチャクラ糸が建物の至るか所にある。この街は、傀儡が恐ろしく発展し、労働力のほとんどが傀儡で賄われているようだな】

 

 ジョウゼツの指摘通り、空を無数の傀儡が飛びながら見回っているようだった。偶々シャナが訪れた場所が巡回から外れていただけで、傀儡たちの数と規模はすさまじい。

 何よりそれだけの傀儡を動かすチャクラの量と使用者が傍にいずとも動いている傀儡の自動化には驚くしかない。

 

「この街銃を巡ってるチャクラ、龍脈のチャクラだってばね」

 

 自分たちが飲み込まれたチャクラと同質のものが街に満ち溢れている。

 

「けど、傀儡ばかりで人が一人もいないのは不自然だってばね」

【何処かに集まっている可能性もあるな。もう少し探ってみるんだ。ただ、吾輩はそろそろ休眠に入る。しばらくは一人だ】

「了解だってばね。おやすみ」

 

 休眠というのは、ジョウゼツが活動できない時間の事である。元々自分では動けない生物だったジョウゼツが現在では体を変化させてシャナと融合するなどの活動を行っているが、どうしても休息が必要であり、その為に深い眠りにつくのだ。

 全く目覚めない訳ではないが、強制的に起こすでもしない限り長時間眠り続ける。

 

 仙人モードが実質使えなくなるのでシャナとしては、戦力低下となる。だが、仙人モードは奥の手であり、普段の戦闘力が高い彼女には問題にならない。

 

 一人行動となったシャナは、解決すべき問題を思い出していく。 

 

「とりあえず、帰る方法の探索。それと同じく柱に吸い込まれたムカデの捜索、後は、グライアもどうにかしないといけないってばね」

 

 必殺の一撃を食らわせたので、死んでいるかもしれない。だが、直感として生きていると確証している。一撃を食らわせはしたが、それで殺せたとは思わない。

 

「あの塔が一番怪しいんだけど、結構遠いってばね」

 

 例の狙撃地点である一番大きい塔。あそこが一番怪しいのだろうと接近を狙うが、次第に傀儡の数が多くなり上手く進めない。

 強引に突破することも可能ではあるが、今はシャナの居た時代ではない。下手に暴れまわれば歴史にどういった影響が出るか。誰よりも時間の流れを感じ取れるシャナにはそれが懸念である。

 

 そして、思うように進めない理由は、もう一つあったのだ。

 

(隠密行動は苦手なんだってばね)

 

 基本的にド派手な術を使い一撃で敵を滅ぼすシャナの隠密適性の無さだろう。一応平均的な技量は持っているが、中忍下位クラスでしかない。

 戦闘特化故に、隠密という忍として必須のスキルが育たなかったのだ。

 傀儡人形たちの巡回程度なら回避できるが、それでも進行には支障が出てくる。

 

「なんか疲れてきたってばね。あそこで休憩しようかな」

 

 傀儡たちの巡回が比較的手薄な広場を見つけたシャナ。彼女がそこに足を踏み入れると、その地帯周辺だけ龍脈のチャクラが遮られていることが写輪眼で判明する。

 

 広場自体は、特に異変はないが地面から生える5つの筒状の物体が気になる。

 それに近寄り観察するとガラス製の窓があり、どうやら地下に外の光を送る構造物のようだった。

 

「歌?」

 

 構造物から微かに女性の歌声が聞こえ、シャナはここに来て初めての人間の気配に接近を選ぶ。指先から粒遁の刃を形成。その刃の熱でガラスの人が入れるだけの穴をくりぬいた。

 

 中は地下施設になっており、崩落したのかかなり瓦礫で荒れていた。その瓦礫の上で、歌を歌う赤紙の女性を目撃する。その顔を見た瞬間、シャナは粒遁螺旋輪虞を右手に精製。

 

 女性の顔を見たシャナは、それがグライアであると確信。対処する暇もなく不意打ちを叩き込もうと飛び出す。幸い、相手はシャナに気がついていない。

 

「くらえ、粒遁螺旋輪虞!!」

 

 あと数センチでクリーンヒットする。奇襲の成功にシャナの顔は、にやけ始める。ファーストアタックを持っていけば、しばらくはシャナのペースで戦えるからだ。

 しかし、彼女の奇襲は横から割り切んできた謎の人物によって失敗に終わる。

 

「っ!?」

 

 突然シャナの前に現れたのは仮面をつけた成人男性。服装からして忍のようで、油断していたとはいえ、シャナの意識外から急接近をこなして、シャナの腕を掴む。そして空中でシャナを投げ飛ばす。

 

 投げ飛ばされたシャナは、地下施設の壁を螺旋輪虞で破壊してしまう。その衝撃波でグライアと同じ顔をした女性は異変を察知。

 

「きゃあ!! うそ、なに、殺し屋? 助けてくださいラーナ!!」

 

 自分が狙われていると気が付いたのか慌てて地下施設の入り口らしき階段へ逃げ込んでいく。

 彼女が逃げると同時に、砂埃の中からシャナが飛び出し、自分を投げ飛ばした仮面の男を写輪眼で睨み付ける。

 

 仮面の男とシャナは地下施設の壁に直立しながら様子を窺いあう。

 

(こいつ、さっきの動きからしてもかなり速い忍者だってばね)

 

 そう思った瞬間には、男は既に目の前から消える。シャナの写輪眼であっても捉えきれない動きだった。シャナは、万華鏡写輪眼を発動。自分と同等クラスの速度で動く仮面の男を捉え、反撃に出る。腰に携えていた双剣を取り出し構える。結晶のような刀身を持つ双剣で仮面の男を迎え撃つシャナ。

 

 シャナの反応を見て仮面の男もクナイを片手に構え接近。

 

(本当に速いってばね)

 

 クナイと双剣は何度も何度も火花を散らす。シャナの最高速度に男が平然とついてくるのだ。そしてシャナもまた男の奇襲を全て目で見て捌いていく。自慢の速度が仮面の男と同格な事にいら立ちが募っていくシャナ。

 仕切り直そうにも印を結ぶ隙を相手は与えてくれない。

 一見ピンチなシャナだが、仮面の男も攻めあぐねている。男も決して余裕という訳ではない。無理に距離を詰めているのは、シャナの持つ写輪眼を相手に下手に距離を取る危険性を理解しているからだ。そして、直感からシャナに術を使わせるのは危険だと察知している。

 青い写輪眼と言う未知の能力者という点も警戒心を高める要因となっている。

 

「須佐能乎!」

 

 ノーモーションで繰り出せるシャナの術である須佐能乎の発動で、シャナは仮面の男を引きが剥がすことに成功する。 

 須佐能乎の腕による打撃を回避した男は、シャナが印を結ぶのを確認して自身も印を結んでいく。

 

(こいつの速度から見て、下手な術は当たらない。速射性の高い天輪廻の連射による制圧がベスト)

 

 指先に粒遁を溜め、それを仮面の男に照準するシャナ。その瞬間、仮面の男が影分身を発動。的が増えてしまう。

 

「粒遁・天輪廻」

 

 散開した分身達を一体一体、シャナの粒子砲が貫き消し去っていく。既に未来視も使い、相手の軌道を予知している為、一発も外すつもりはなかった。 

 残り二体となった段階で一体がクナイを投擲。それと同時に撃ち抜かれ消滅するがシャナに迫るクナイは消えない。

 ただ投げられただけのクナイは回避すればいいと回避するシャナだが、自分の眼前を通り過ぎたクナイに見覚えがあった。

 刃がミツマタになっており、柄に忍愛之剣と書かれたクナイは、奇しくもシャナの父の遺品と同じもの。クナイに意識を向け過ぎたと最後の一人に目を向けると仮面の男が消える。

 

「消え、く」

 

 姿が消えると同時に未来視が強制発動。ほんの数秒後に仮面の男が避けたクナイに時空間忍術で移動する未来を見る。そこで不意打ちを食らう未来を見たシャナは、背後に回り込まれた瞬間に自身も発射した粒遁の粒子を起点に転移。

 仮面の男とシャナの両名が時空間忍術でポジションを取り換える結果となった。

 

「今のは」

 

 絶好の機会だった不意打ちを透かされ、更にその方法が自分と同じような時空間忍術だったことで仮面の男もシャナの異質さに気が付いていた。元々写輪眼対策の術である”飛雷神の術”が通用しない事実に。

 

 シャナが仮面の男の動きに素早く対処できたのは、木ノ葉崩しの際に二代目火影の飛雷神の術と天門の術で対決した経験からだ。 

 

 冗談抜きにシャナ並みの移動速度と時空間忍術の使い手が前にいる。それは何を意味しているのか。

 

「君は……っつ!」

「ここからギアを上げていくってばね。精いっぱい食らいついて来いってばね」

 

 シャナから放たれたのは明確な殺気。そして、強者と戦える喜びにも似た闘争心。目の前の仮面の男は、シャナの理想とする父、木ノ葉の黄色い閃光と似た性質を持っている。ならば、疑似的にとはいえ、父超えをするチャンスなのだ。

 父の事を敬愛しているシャナだが、実際の所、父すら超えたいと思っていた。それこそ極上の獲物のように感じる程に。

 

「粒遁螺旋輪虞!!」

「っ。螺旋丸」

 

 両者ともに似た性質の術を発動。更に駆け出し時空間忍術での瞬間移動を繰り返す。トップスピードな上に瞬間移動も加わり、黄色い彗星と青い彗星が何度もぶつかり合うかのように地下施設で火花が散る。

 

 飛雷神に続いて螺旋丸を使ってくる仮面の男にシャナは驚きながらも、瞬間移動を繰り返しながら一撃を叩き込み続ける。一方、シャナの瞬間移動の種が粒子だと見抜いた仮面の男は、粒子の漂っていない位置にクナイを投擲しては、其処へ瞬間移動を繰り返す。

 両者一向に譲らない戦い。

 

 一度の衝突でシャナの螺旋輪虞の威力が螺旋丸を超えると悟った仮面の男。正面からではなく逸らすように側面から螺旋丸をぶつけ続ける事で威力を殺すことで対抗している。

 

 二人とも徐々に速度を上げていき、衝突の回数が増えていく。

 

(めっちゃ楽しい!)

 

 得意分野で拮抗する相手に刺激され、アドレナリンが分泌されているシャナ。既に相手の正体が誰かよりも上回ることを目的に戦ってしまっていた。

 あえて時空間忍術でのスピード勝負に拘っているのも悪癖と言える。普段なら仲間の誰かがシャナをクールダウンさせるはずだが、今は誰も居ない。

 故に気持ちよく腕比べをしているシャナは、自分に迫る危険に意識が向いていなかった。

 

「部分倍加の術」

 

 突然巨大な手がシャナを鷲掴みにしようとする。空中で制止できないシャナだが、空間を漂う粒遁の粒子に瞬間移動して回避する。腕の持ち主は、ふくよかな体つきをした男性であり、こちらも仮面をつけている。その割り込んできた攻撃主に反撃しようとするも、仮面の男がクナイの投擲と共に距離を詰めてくる。

 

「秘術・蟲玉」

「うわ、きも!」

 

 巨大な腕を回避しながら、肉薄してくる仮面の男を捌いていくシャナ。そんなシャナに無数の蟲が襲いかかかる。包囲するように襲い掛かってきた蟲を天門の術で回避するシャナ。しかし、地下施設の壁一面を飲み込む勢いで広がる蟲の群れによる包囲網の拡大は無視できない。

 思考が決着よりも地下施設からの離脱に切り替わる。

 

「粒遁・天輪廻」 

 

 空中で人差し指を天井に向け、粒遁の光線を発射。光線は天井を貫き小さな孔をあける。

 

「今回は、邪魔が入ったってばね。けど、今度は仕留める」

 

 シャナは仮面の男に指をさしながらそう宣言して、天井を貫いた粒子へと瞬間移動した。

 

 

 

 

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