空間の揺れと共に、それがシャナ達の傍に落下した。地響きすら感じさせる衝撃とともに現れたのは、メイド服を着た紫のメッシュが入った赤髪の女性。右腕が機械製の義手であり、その義手に巨大な斧を装備している。
何よりも特徴的なのが、シャナと同じ青い写輪眼を持っている事だろう。
自分が抱きかかえるサーラと全く同じ顔をしているが、その写輪眼からくる威圧感が、彼女が宿敵であるとシャナに伝える。
いよいよ探していた敵が見つかったのだ。この自分を睨み殺さんとする女こそが、グライアだ。
(前も思ったけど、今回はいよいよ挫けそうになるな。なんだってばね、この化け物じみたチャクラ)
写輪眼でグライアの内包するチャクラを見て、シャナは勝利を諦めそうになる。尾獣のチャクラよりもはるかに大きいチャクラをグライアは、循環させている。
光の柱に呑まれる前であれば、暴走して何度も爆発していた筈のチャクラを見事に操っている。それらに火の性質変化を加えているのか、膨大な熱として周囲にはなっている。その熱だけで周辺の木々は焼失し、建物も熔解を始めている。空気が焼け付き、周囲にいた人傀儡たちもたちまち炎上したのちに灰になる。
シャナが少しでも近づけば火傷しかねない熱量を放ちながらも、本人は涼しい顔をしている。さらに驚くべきは、シャナの抱きかかえているサーラにはその熱波が一切当たっていない。非常に繊細なコントロールでもって熱を持ったチャクラを完全にコントロールしている。
【何だこの怪物は】
ジョウゼツも同じ意見らしい。熔遁という溶岩をも操る事の出来る血継限界が存在するが、ここまで熱と言うエネルギーそのものを操る術は、認識がない。
写輪眼がなければ、膨大な熱を纏ったチャクラに触れて、生涯を終えているだろう。
「誰か知らんけど、うちの姫さん、返せやボケェ」
斧を振り上げるグライア。彼女の言葉に引っ掛かるところはあったが、今は逃げるしか道はない。サーラを抱く手に力が加わり、横に大きく飛ぶ。
グライアの振り下ろした斧から、彼女の纏う膨大な熱量の纏ったチャクラが放たれ、地面を熔かす。膨大な熱による斬撃を放つグライアに対してシャナは、踵に形成していた粒遁の刃を蹴りと共に放つ。三日月形の光刃となったそれが、グライアに迫る。
当然、グライアのチャクラの鎧による障壁で防がれるのは予定済みだ。
「なんやこれ」
グライアは、シャナの予想と違い素手で高温で全てを焼き切ってきた粒遁の刃を受け止めた。一切熱を感じていないようで、そのまま粒遁の刃を握り潰した。
(粒遁の熱よりもグライアのチャクラの温度の方が高い!)
シャナとの距離を詰めようとグライアは、前かがみになる。
状況が不利と感じ、シャナは大きく後ろに跳ぶ。サーラ姫を抱えながらであるため、最高速度は出せないができる限りの速度で距離を取る。そして、抱きかかえ方を変えて印を結ぶ。
「火遁・灰積焼!」
本来であれば灰を吐き出した後、口内に含んだ火打石で着火する術だが、今回の用法は違う。莫大な熱でも燃えない灰を利用して、グライアの視界を覆った。
「これで、距離を取るってばね」
「待ちなさい! あの人は、私の」
未来視が発動する。シャナの頭部が背後から放たれた光に撃ち抜かれる未来。咄嗟に片手でサーラを支えながら左手で粒遁・天輪廻を発動。シャナの張った煙幕から飛来する予定の粒子砲を迎え撃った。
シャナの予知通り、斧を消し右手にマスケット銃を持つグライアから粒遁の銃撃が放たれる。その粒子砲がシャナの頭部を貫くより先にシャナから放たれた粒子砲が迎え撃つ。
回転を加えられた貫通力特化の天輪廻がグライアの粒子砲をかき分け、貫いた。そのおかげでシャナには粒子砲が届かない。さらに、粒子砲同士でぶつかり合っても威力減衰しなかった天輪廻がグライアを襲う。
「ふん」
「お、ふざけ」
虚しくもグライアの左手によって受け止められた粒子砲。威力を殺しきることはできなかったが、数歩後ろに下がっただけで耐え抜き、粒子砲を握り潰したグライア。そして悠々自適とシャナに狙いをつけ、マスケット銃を向ける。
(やばい、天門のマーキングが出来てない)
粒子砲をぶつけ合ったせいで、シャナの粒遁とグライアの粒遁が反応。紫色の粒子となったせいで、シャナの天門の術のマーキングの役割が果たせない。そんな状況で跳んでしまったために粒子砲を防ぐ余裕がない。
一か八か隠し玉を使おうかという場面で、異変が起こる。
前しか見ていないシャナの背後に、仮面の男が飛雷神の術で現れた。そして、シャナが気が付いて対処するより先にシャナの肩を掴んだ男は、グライアから発射された粒子砲が辿り着く前に飛雷神の術で予めマーキングした場所にシャナとサーラを伴って飛んだ。
「く、また逃げたんかいな!」