NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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楼蘭9

 シャナと行動を共にしていたサーラ。

 シャナは、別行動する前にこっそりと耳打ちされた情報を何度も頭で整理していた。

 

 未来から来たムカデが過去を改変しているとみられる現在。シャナの居た正規の歴史が大きく改変されている可能性がある。サーラには犯人を突き止めると言っているが、本当はムカデという歴史の異物を早急に排除する必要がある。

 シャナに与えられたのは、ムカデと接触した場合の速やかな排除作業。

 当然、ラーナがグライアだった場合は彼女を排除しなければいけない。

 

(問題はグライアがこの時代で、どれだけ強くなったかだってばね)

 

 記憶にある彼女レベルなら問題はない。ただ、粒遁を使う上に、見たこともない熱を操る術を見るに、何度も修業に勤しんだ自分を凌駕している可能性も無視できない。

 

 考えすぎかもしれない。だが、青い目の写輪眼を持つ者は、総じて化け物揃いなのだ。更に伸びしろも。

 

「ねぇ」

 

 シャナは歩きながら、想像できる限りで新生グライアとの対決を思案する。未来視を使う方法もあるが何時、何処で戦うかもわからない相手の未来を見ようと思えば、チャクラがいくらあっても足りない上に脳が沸騰する。

 

「聞いてますか!?」

「え? あ、ごめんってばね。って何この状況」

「見ての通りです! 動かないでください。動けば引き金を引きます」

 

 サーラが大声で怒鳴った事で思考に沈んでいたシャナの意識が戻り、視線を戻すとサーラが複数人のお粗末な武装をし覆面を被った女性たちに包囲されていた。意外にもサーラは、何処からか取り出した銃器を構えて対応していた。サーラが武器を持っていると思っていなかったのか女性たちは、警戒して近寄れていない。

 護衛対象が狙われているため、シャナもいち早い事態終息をと動き始める。

 

「女王様、安心してくれってばね。お前ら、運がなかったってばね」

「ひぃ」

「あ」

「きゃあ」

 

 シャナはこちらを怯えた目で見る女性たちに写輪眼で幻術を見せた。そして幻術で縛られた彼らの首を落とそうと刃に手をかける。

 訓練も受けていない暴徒ごときにシャナが人質を取られようとも遅れは取らない。

 

「やめて!! お願いだから母ちゃんを殺さないで!!」

 

 シャナが刃を振り上げたタイミングで、隠れていたであろう子供が現れ立ち塞がる。急に子供が前に出てきたことでシャナは動きを止める。すると、金縛りに掛かっていた女性たちが全員力なく床に座り込んでいく。さらに裏路地から続々と子供達や女性陣が現れる。

 全員がくたびれており、どうにも凶悪な暴徒とは違った様子だった。何よりも目に敵意がなかった。

 

 彼女たちは互いに抱き合いながら怯えるような目でシャナとサーラを見ている。

 

「貴方達はいったい何者なのです」

「返しておくれよ。私たちの家族を、お願いだから」

 

 サーラの質問に対して泣き崩れる女たち。彼女らはサーラに対して家族を帰してくれと言い続ける。 

 あまりな状況にシャナとサーラの両名ともに困惑。とにかく彼女たちを落ち着かせようとする。

 

「武器を下ろしますから、落ち着きなさい。シャナ、あなたもです」

「あ、はい」

 

 銃を先に太腿のホルスターにしまったサーラがシャナに武装解除を命じる。それに素直に従ったシャナだったが、意外にも武器を構える姿が様になっていたサーラの姿を思い出し、こっそりと耳打ちをする。

 

「女王様って、武器つかえたんだってばね」

「ラーナが教えてくれたんです。あくまで護身用です」

 

 そう彼女は言っているが、彼女の持っているのは間違いなくグライアが使っていたチャクラ砲だろう。撃てば、目の前の女子供など跡形も残らない。

 

 女性たちは、サーラ達が敵意を示さないことで納得したのか、それぞれ覆面を取って素顔を現す。彼女たちのリーダーとおもしき女性が代表として前に出る。

 

「失礼いたしました。マサコと申します。我々はサーラ様に、お願いがあってここに来ました」

「先ほど言っていた返してくれと言うやつですか。お前たちは私に一体何を返せと言うのですか?」

「それは…」

 

 サーラが質問をするのとほぼ同時。外では花火が打ちあがり、大勢の人々が盛大なパレードを楽しんでいる声が聞こえた。急に喧騒なパレードが開かれ、夜になり暗かった楼蘭を明るく照らす。

 

「綺麗。下から初めてパレードを見ましたが、とても美しいですね」

「状況分かってるのかってばね?」

「このパレードはアンロクザンとラーナが勧めてくれました。母を失い悲しんでいた私を民と共に励ましてくれているのです」 

 

 美しいパレードだという事には、シャナも同意した。もしこれがプライベートならシャナも素直に楽しんでいただろう。なんならトネリと一緒に来たいとさえ思えた。

 

「それはおかしいんだな」

「? 何がおかしいのです」

 

 サーラの言葉を聞いた女子供たちの中でも少しぽっちゃりとした少年が呟いた。

「皆、サーラ様の事を操りの姫君ってバカにしてるんだな」

 

 楼蘭の民の口から語られる真実に、サーラは酷く狼狽える。そして、少年の隣にいたマサコも少年の言葉遣いを叱りながらも「ですが、すべて真実です」と申し訳なさげに語る。

 

「なぜ、そんな話が」

「我々は皆、ある日突然、家族を連れていかれたのです。サーラ様の命令で」

「え、酷くね?」

「嘘おっしゃい! そんな命令したこともありません」

「嘘じゃないんだな! 俺のとーちゃんも兄ちゃんもつれていかれちゃったんだな! じ~ちゃんたちが王宮に直談判にも言ったんだ。けど、皆帰ってこなかったんだな」

 

 サーラが嘘を言っている様子もないが、彼女たちの言葉も表情や声色から嘘ではないと思える。

「あくまで噂ですが、この国のどこかで、戦争の為の兵器を作らされていると聞いています。だから、皆でサーラ様に直接お願いするしかないって」

「ありえない。そんな訳ないです! だったらなぜ、あれだけ多くの民が、私の事を熱狂的に慕ってくれてるのです」

 

 サーラはパレードを指さし、彼女たちの言う言葉はすべて嘘だと否定する。

 しかし、シャナはパレードを目を凝らして観察し、静かに首を横に振った。

 

「女王様、あれは、民なんかじゃないってばね」

 

 シャナは、手裏剣を取り出し、それにチャクラを纏わせながら投擲。それらは楼蘭中に広がるパイプから伸びたチャクラ糸を切断。すると、パレードに参加していた民たちが動かなくなり、地面へと崩れ堕ちた。人体とは思えない乾いた音がし、その首がサーラの足元へと転がる。

 

「え、なんで」

「やっぱり、これは傀儡だってばね。これだけじゃない。あの大勢の民皆が傀儡で出来たまやかしだってばね」

 

 ショックを隠せないと言った表情のサーラ。彼女の心の中で何かが崩れていく。追い打ちをかけるように衝撃の事実が語られる。

 

「それに、ラーナ王女が大臣と組んで、王位を狙っているって話も聞いた事があります」

「おいらも聞いた事あるんだな」

「嘘よ。アンロクザンが私を裏切るはずがありません。それに、ラーナが、ラーナが、きっと違うんです! あの娘が」

 

 そんな真実は聞きたくないとばかりに、サーラは駆け出した。自分を構成していた世界が足元から崩れていく。それは想像を絶する恐怖を与えてくるのだろう。シャナは、サーラを追いながらもかける言葉が見つからなかった。

 シャナの足なら、すぐに追いつけるはずだった。シャナがジャンプしながら移動していると突然の未来視が起きなければ。

 

(左足が砲撃で吹き飛ばされている)

 

 シャナの先見の写輪眼が無意識で発動。それは、シャナが死ぬ未来に直結する兆候。未来を見たシャナは、その未来で見た光景から、奇襲を予想。

 

「影分身の術」

 

 シャナは指で十字の印を組みながら2人の分身を生み出す。影分身の一体がシャナ本体ともう一人の分身の足場になって二人を逃がす。すかさず、足場になったシャナの影分身が粒遁の奔流に呑まれて、消滅する。

 

「お前は、女王様を頼むってばね」

「わかったってばね」

 

 シャナの本体は、生き残った影分身をサーラの護衛に当て、自分は襲撃者を見上げる。

 

「ようやくゆっくり、お前の相手が出来そうだってばね。な?グライア」

「グライア? 誰やねんそれ。まぁどうでもええわ。とっとと姫さん返してもらおか」

 

 盛大なパレードのど真ん中でシャナとメイド服姿のラーナが対峙する。

 

「それは出来ない相談だってばね」

「ほんなら、無駄口叩く前にいねや」

「起きろジョウゼツ!! 仙人モードだってばね」

【ん? あぁおはよう。目覚めるなり、修羅場のようだな】

 

 グライアが両手に銃を構え、銃口をシャナに向ける。シャナは、布の状態で休眠に入っていたジョウゼツを身に纏い、両手を合わせる。不敵に笑みを浮かべるシャナに対して、彼女のチャクラの質が変わった事を写輪眼で理解したラーナは、容赦なく引き金を引いた。

 シャナのチャクラが不自然に膨れ上がったタイミングで引き金を引いたグライアの銃からは、2本の粒遁の奔流が放たれた。

 

「遅い」

 

 両サイドを粒子砲が塞ぎ逃げ道がなくなるシャナ。しかし、シャナは発射と同時に前進。グライアの反応速度を超える勢いで粒遁螺旋輪虞を叩き込んだ。螺旋輪虞を叩き込まれ、その場に留まれずに吹っ飛ばされる。吹っ飛ばされるときにラーナの青い写輪眼で捉えたのは、下瞼に隈取が現れたシャナの顔だった。

 

「かっはっ」

 

 ラーナの義手の機能であるチャクラの障壁は、傀儡兵の使われたものよりも格段に性能が向上している。けれども仙人モードになったシャナの能力は通常時の比ではない。見た目こそ、少し化粧をした程度の変化しか起きていないが、チャクラの量や質、操作技術や感知能力、更には耐久力や膂力など、比べ物にならない。

 チャクラの鎧の防御を容易く貫通し、なおかつ写輪眼でも捉えきれない動きで先制攻撃を見舞った。

 

 仙人モードになったシャナの動きは、写輪眼でも追うことは不可能。

 

「こないなもん、ぐ」

 

 腹部に押し当てられ、なお自分を吹き飛ばそうとする粒遁螺旋輪虞を銃で破壊しようとしたラーナ。しかし、シャナが指を弾くと螺旋輪虞の輪っかの部位が拡散。ラーナの上半身を袈裟斬りにした。そして、真っ二つになったラーナの体を膨張し始めた螺旋輪虞の本体が飲み込もうとした。

 通常ならそれで終わる。だが、突然螺旋輪虞そのものが燃え始め瞬時に焼失。膨大な熱がパレードを彩っていたオブジェや傀儡の観客が燃え上がる。

 

「やっぱり、再生するんだってばね」

【常軌を逸している回復力だ】 

「やってくれるやないかボケェ」

 

 膨大な熱の発信源はラーナだった。過去にグライアの行っていた膨大な熱による再生と放熱による火炎地獄。どう考えてもグライア本人だとシャナは認識していた。 

 真っ二つになった体は、瞬時に繋がり、彼女の纏う熱は、近づくものを全て燃やしていく。むしろ、熱量に関しては、過去よりもはるかに高い。

 仙人モードを使っているシャナであっても、泡遁の膜で熱から身を守らねば近付く事すらできない。

 

「く、なんや、頭が、おまえ、うちのなんや?」

 

 熱を放ちながら、銃口を向けるラーナだったが酷い頭痛が彼女を襲う。傷を負うたびに、うずく脳の痛み。生れ落ちてから患っていた病気だ。怪我をして、傷が勝手に治癒する特異体質の副作用だと言われていたが、いつも頭痛と共に幻覚を見た。

 それはクリーム色の髪と青い写輪眼の女。そんな人間、楼蘭におらず、ラーナ本人も幻覚だと思い込んでいた。だが、今こうしてきちんと向き合っている相手。

 

 自分がいつも見て居た幻覚と合致する存在を見て、ラーナは問わずにはいられなかった。

 

「お前、本当に私がわからないのかってばね?」

「知らん。お前なんか見たこともないわ。けど、うちは、ウチはお前を知っとる。なんなんやこれは」

 

 酷く興奮した様子のラーナ。シャナは、ラーナが嘘をついているのか訝しむが、様子が変なのだ。ラーナの迷いが影響しているのか、彼女の周囲を漂う火炎が大きく揺らめいている。

 

 ラーナの粒子砲で放たれたチャクラの粒子と粒遁螺旋輪虞に使用した粒子が干渉し、紫色の粒子となって周囲を漂う。この粒子に触れると、シャナやラーナの青い写輪眼は、通常の写輪眼となって特殊能力を失う。現に、粒子の中心にいるラーナの写輪眼は、赤い色を帯び始めている。

 

(どうにか、干渉を避けたくて泡遁を使ってみたけれど、どうやら効果は薄いってばね)

 

 シャナの写輪眼も少しだけ朱に染まり始めている。直接触れなくても空間に漂う紫色の粒子の濃度によって、彼女たちの特異な写輪眼は効力を失うようだ。

 

「私の名前は、うずまきシャナ。木ノ葉の忍で、お前の」

「ウチの?」

「たぶん妹になるってばね」

 

 シャナの正直な告白に、呆けた表情になったラーナだったが数秒で立ち直る。

 

「お前に聞いたウチがアホやったわ。どうでもええわ、ここで殺して、姫さんを回収するだけや」

 

 何故か酷く呆れられ、殺害予告を食らうシャナ。ラーナの雰囲気自体は、結構緩めだが、殺意は本物のようで、先程まで揺らいでいた火炎が消える。

 

【気をつけろシャナ。炎が消えたわけではない。純粋な熱だけになって存在している。もしこの熱を帯びたチャクラに触れれば、お前でも瞬時に蒸発するぞ】

「だってばね」

 

 ラーナの深呼吸と共に、彼女の纏う熱が翼のような形をとる。すると、暴風と共に熱波がシャナを襲う。

 

「えぐいってばね」

【水分が全て蒸発しているのか】

 

 その熱波の凄まじさは、大通りにあった巨大な噴水の水が瞬時に干上がり、噴水そのものが融解するほどだった。すさまじいまでの熱に特化した術。それを操るのが今のラーナなのだろう。

 

 シャナは仙人モードで、ラーナ相手に有利を取ったつもりだった。だが、ラーナの方も強化手段を持っていたのは誤算もいい所だろう。

 

「それ、なんだってばね」

「特に名前はないよ。まぁ、強いてつけるんやったら、獄遁・焔凪なんてどうや」

 

 熱そのものを纏っているラーナに接近戦は自殺行為。それを理解したシャナは、仙法粒遁・天機を発動。円盤状に形成された粒遁の刃は、高速回転しながらラーナに投擲される。

 

 粒遁螺旋輪虞のようにラーナに接近した瞬間発火する粒遁の円盤だったが、燃え尽きる事はなかった。

「なんやこの術」

 

 ラーナは、凝縮した熱チャクラで構成された翼で天機を受け止める。見た目だけでなく、防御や攻撃にも使えるのかと観察するシャナ。一方で高速回転する円盤に灼熱の翼を散らされるラーナ。翼が舞い散るが、円盤の勢いを殺す事が出来ない。

 

(何層にも折り重なった上に、高速回転しながら内側から粒子を放出しとる。これは熱で防ぐのは効率が悪いな)

 

 粒遁自体が燃えにくい高温な術の為、熱対策を施した術となればなおさらだろう。ラーナは強引に翼の面を走らせるようにして、円盤を空に向かって軌道修正した。

 ラーナが相手の術を研究している隙に、シャナは人差し指をラーナに向け、粒遁・天輪廻を発動。指先から細長い粒遁が発射される。こちらもラーナのチャクラ障壁を平然と貫通。

 翼で守られていない部分を狙ったのだが、ラーナは何と素手で粒遁の光線を受け止めたのだ。

 

「こ、ないなもん!」

 

 力づくで貫通力を高めた天輪廻を弾いたラーナ。反撃にと手に持った銃を発砲。シャナに向かって粒子砲が放たれる。それを横に飛んで回避したシャナ。傀儡の燃えカスに紛れるように駆け出したシャナを追うようにラーナも駆け出す。

 

 そして、パレードを間に挟んでラーナとシャナによる銃撃戦が行われる。お互いに攻撃は似通っていた。連射速度と手数はシャナが圧倒的であるが、ラーナの一撃はどれも規模が大きく、パレードそのものが抉り取られていく。

 

【シャナ!】

「く」

 

 数十秒ほど撃ち合いが続いていると、ラーナの粒子砲が遂にシャナを捉える。粒子砲にシャナが飲み込まれる前に、ジョウゼツが自分の意志で粒遁・天壁を発動。シャナの全身が超高濃度の粒子に包まれ、圧縮が甘い粒子砲が弾かれていく。

 楼蘭に初めて来たときにも使った術である。参考にしたのは、もちろんグライアの使っていたチャクラの鎧の障壁である。

 膨大なチャクラの消費が必要なため、長時間の展開は仙人モードであっても不可能。しかし、シャナは、ある裏技によって粒子となったチャクラを貯蓄している。それはジョウゼツが莫大なチャクラを貯め込むことが可能な特異性を持っていたためであった。シャナは日常生活を送りながらも常にジョウゼツにチャクラを与え貯蔵する事が出来るのだ。

 さらに粒遁の開発者である彼女によって発見されたチャクラ粒子の性質も要因の一つとなった。チャクラ粒子はチャクラが物質化するほど高密度で練りあげられることによって発生する。それを直接ジョウゼツに貯蓄することで通常のチャクラよりも何百倍もの容量のチャクラを貯蔵が可能となっていた。

 

 膨大なチャクラの貯蔵を可能にしたシャナと龍脈からチャクラを引き出し続けるラーナの争いは長期化してしまい、何百発も打ち合いながら10分以上の時間が経過する。

 

「貯蔵量はあとどれくらいだってばね」

【6割と言ったところか。あまり大技を連発すれば、いずれ底をつくぞ】

「奥義で行くってばね」

【話を聞かない奴だ。いいだろう。吾輩がコントロールする。お前は全力で繰り出せ】

 

 撃ち合いでは、グライア相手に命中させても致命傷にならない。そこでグライアの回復力を上回るダメージを与えるしかない。粒遁螺旋輪虞を受けても即死しない相手となれば、半身を完全に吹き飛ばすくらいしなければいけない。

 血のつながった青い写輪眼を持つ姉妹達と戦う際、無意識に止めを刺すことを避けるシャナ。しかし、グライア相手は完全に別であった。

 手加減なく自分を殺しに来る相手。シャナも同じく手加減無用で挑まねば、事切れるのは自分自身だ。

 

 それと同時に文字通り全力で殺し合える相手に、シャナは無意識に笑みを浮かべている。選択を間違えれば自分がいつ死ぬかわからぬ戦いだが、自分の持てる全てをぶつけられる相手。それが目の前にいて昂らない筈がない。

 シャナは太腿に備え付けていた短剣を取り出し、それに粒遁チャクラを流し粒子の刀身を形成。二振りを合わせる事で共鳴させた刃は一気に拡大。城すら一刀両断できる粒遁奥義・天羽々斬を発動。

 

「ぶった切ってやるってばね」

「こなくそがぁ!」

 

 通常、粒遁奥義・天羽々斬は、戦闘中に使える技ではない。威力はピカ一であるが、前準備に時間がかかるのだ。特に2本の粒子刀の粒子を共鳴させるのに時間がかかるため、仙人モードと言えども、瞬時に発動は出来ない。だがシャナの仙人モードは、ジョウゼツとの融合型。ジョウゼツに粒子のコントロールを一任することで発動速度の高速化が可能。

 さらにシャナが新たに手に入れた特殊な短剣。勾玉のマークが描かれたそれは、トネリから贈られたチャクラ刀であり、それ自体にシャナの粒子を貯蔵も可能なうえに、粒子コントロールをサポートする機能まであったのだ。

 

 そのため、今のシャナは通常攻撃と変わらない速度で、奥義の発動を可能としている。

 

 巨大な粒子刀が振り下ろされ、グライアは両手に持った拳銃型の粒子砲で迎撃するが全て粒子量の桁違いな天羽々斬に弾かれる。

 しかし、巨大な刃が触れる寸前に、グライアは須佐能乎を発動。ポセイドンのような形をした須佐能乎は、巨大な粒子刀を白刃取りにした。シャナの粒遁は、須佐能乎と言ううちは一族の奥義に対する決定打となる技。膨大な熱とその威力で須佐能乎の守りを貫けるため、相手が須佐能乎を使える相手であれば、好機となりうる。だが、ラーナのそれは軽くそれを受け止めた。

 しかも、雪の国で戦った際に天照で防がれた経験がある。そのため、今回は層を何重にも重ねた耐熱使用だったにもかかわらずだ。

 

「須佐能乎でガードできないはずだってばね!?」

【よくみろ】

 

 ジョウゼツの言葉通り写輪眼で深く観察すると、ラーナの背中から放出されていた翼のような熱エネルギーの塊が須佐能乎と混ざり合っていた。

 巨大な須佐能乎によって白刃取りされた刃が、その膂力によって握り潰され形を保てずに霧散する。霧散した粒子とグライアが放っていた粒子が共鳴し、周辺一帯の高濃度の紫色の粒子が漂う。

 

「もう未来視は使えないってばね」

【実に興味深いな。だが、奥義がこれでは、手段を選んでられないな】

 

 奥義を簡単に捌いたラーナに、シャナの顔に疲労が浮かび上がる。ジョウゼツも目の前の女性が本当の危険人物だと認識を強めた様子だ。

 

 一方で拳銃を腰のホルスターにしまったラーナは、酷い頭痛に耐えながらシャナを見ていた。

 

「さっきの術、やっぱり見たことあるわ。それに妹いうんも、その力を見たら、あながち嘘やないんかもな。けどな、ウチの家族は姫さんだけや。あの子を帰さへんいうんやったら、親やろうが妹やろうが、ぶっ殺したるわ!!」

 

 ラーナの感情に呼応するように、ラーナと繋がっていた須佐能乎の背中から炎の翼が生え、周辺一帯を膨大な熱が包み、周囲に存在する石畳などが蒸発していく。

 

 須佐能乎そのものがラーナの熱のチャクラで構成され、その熱気はこれまでで最大級であった。

 シャナは、大きく後ろに飛んで距離を取りながら両手を合わせる。 

 

「須佐能乎!! ジョウゼツ! 一撃でやるってばね!!!」

 

 身の危険を本能で感じたシャナは、須佐能乎を発動。6本の腕を持つ須佐能乎がそれぞれの腕で巨大な螺旋輪虞、仙法粒遁・超大玉螺旋輪虞を形成する。さらに命令を受けたジョウゼツが膨大なチャクラ粒子を操作することで螺旋輪虞が変形、6枚の円盤を生み出す。

 

【「仙法粒遁・大天機」】

 

 ジョウゼツとシャナの本気を見て取ったのか、ラーナも須佐能乎の武器である三又の鉾を天に掲げ、その上に巨大な火球を生み出す。小さな太陽ともいえる術を生み出したラーナとシャナはほとんど同時に技を繰り出そうとした時、何処からともなく濃密なチャクラの奔流であるチャクラ砲がラーナの須佐能乎に命中。

 当然ながら、今のラーナの須佐能乎にそんなものは通用しない。だが、その攻撃を受けた時、ラーナは酷く困惑しながら、その攻撃主を見た。

 

「……姫さん」

 

 ラーナに攻撃を仕掛けたのは、瞳から大粒の涙を流しながらも、銃口を愛する家族に向けたサーラ女王であった。

 

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