NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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楼蘭12

 

 幼き頃。グライアという少女に自意識が芽生えた時。目の前にあったのは、奪い合う大人達の姿。彼女が育ったのは長きにわたる戦争によって疲弊しきった国だった。

 

 皆が生きるのに必死で優しさなど持ってない。ただ、そんな中でグライアが生き残れたのは、女である事と子供であること、そして生まれつき体が頑丈だったことが原因だろう。

 その国の奴隷商に拾われた彼女は劣悪な環境で育てられた。育てられたというよりは、飼育されていた。

 どれだけ怪我をしても直ぐに再生する体質の彼女は大人たちのストレスの捌け口にされていた。

 

 そんな中で強い憎悪を覚えるのは仕方のない事だった。数年過ごした後、彼女は青い写輪眼を発現。さらに万華鏡写輪眼を得たことで、その瞳術によって自分を虐げてきた大人達を建物ごと燃やし尽くした。

 

 自分が黒い炎を発動させたことを知り、それに怯えながら逃げて死んでいく大人達を見た時、彼女は奪う側に回っていた。

 

 そこからは奪うだけの毎日だった。

 自分の力が何かは知らないが、大人達はもちろん、武装した兵士でさえも彼女の足下に及ばなかった。彼女は自分が虐げられ失ったものを埋め合わせしようと欲望のままに生きた。

 

 食べ物や衣服、家や財宝に至るまで、欲しいと思ったもの興味を持ったものは根こそぎ手に入れた。けど、欲望は尽きることはない。

 

 その規模が徐々に大きくなり、その国では満足できなくなった。そこで成長した彼女は他国を巡りながら略奪を繰り返した。だが手に入れても直ぐに興味を失ってしまう生活が続く。

 そんな折、彼女の力を利用したい連中が現れ、金で雇おうと言い始めた。

 手に入れるだけの毎日に飽きていた彼女は、雇われるままに戦った。圧倒的な力でもって村を焼き、街を焼き、国を焼いた。

 

 その間だけは楽しかったのだが、やがて彼女を恐れ、誰も戦おうとしなくなる。また深い欲望が沸き起こってしまう。

 その欲を満たさねば生きていけない彼女。だが欲を満たせばすぐに別の欲が沸き起こる。彼女は壊れていたのだ。そこで彼女は、自分を雇った者たちを襲い、恐怖に陥れ彼ら全てに手を結ばせた。

 

 その連合軍との戦いも演じたが、結果は火を見るより明らかだった。

 圧倒的な力で勝利してしまった彼女と戦おうとする者は誰も居なかった。彼女が近寄れば、皆が全てを捨てて逃げてしまう。

 

 全員が諦めてしまった。また満たされない日々が始まる。彼女は興味があるものを探し、古代の遺跡などにも足を運び、今で言う宝具や武具を手に入れる。いくつかお気に入りとなるものが見つかり定期的に遺跡巡りを行うようになった。

 人々にとってまさに嵐のような存在となったグライア。

 

 そんな彼女はいつもと同じように略奪を繰り返していたが、他国から流れてきた集団との出会いでが運命を変える。

 謎の武装勢力がグライアの居る街付近を通り、その中にある巨大な移動要塞が欲しくなった彼女は、それを奪うために足を運んだ。略奪者を前に防衛行動に出た武装勢力だったが、彼女に敵うはずもなく次々に戦力を削られていく。

 そんな中、一人気になる相手が現れた。

 

 金髪で右目に火傷を負い、隻眼ではあるが麗しい女性騎士だった。白い鎧を身に纏いサーベルを片手に現れた彼女は、何とグライアと同じ青い写輪眼を持っていた。

 

「随分と暴れてくれたわね貴方」

「素直に渡したら暴れる事もないんやけどな。それで何? あんたがウチの相手をする言うんか?」

「相手、そうね。してあげてもいいのだけれど、お姉さんの相手があなたに務まるのかしら?」

 

 青い写輪眼持つ彼女の物腰は柔らかだったが、目から突き刺すような殺気を感じ、冷や汗をかくグライア。自分が初めて恐怖というものを感じたことを自覚した。

 

 次の瞬間には、黒い炎が女を焼き尽くさんと発生する。しかし、黒い炎はすべて女が発動した障壁に阻まれる。それどころか地面や空中に発生した障壁がグライアを襲うように展開する。

 黒い炎が効かないことが分かった以上、所持していた宝具を用いて攻撃を開始するグライア。鉄壁の防御を誇る女騎士相手に苛烈な攻めを続けるが、結界が厚すぎて攻撃が届かない。

 今まで戦闘らしい戦闘をしたことがなかったが、生まれて初めて見る好敵手との戦いが、グライアの戦闘能力を爆発的に育てていく。

 

「まるで生きた爆撃ね貴方」 

「しょうもないもんに閉じこもりおって! これでどうや!!」

 

 宝具での攻撃を次から次に防がれ、結界での直接攻撃に業を煮やしたグライアは、本能的に須佐能乎を発動。巨大なチャクラで構成された巨人が女騎士の結界を打ち砕き、攻撃を完全に防ぐ。その勢いのまま前進し、須佐能乎で女騎士を叩き潰そうとする。

 

「それは、いったい」

 

 女騎士は結界の数を増やし物量で防ごうとするが、暴れまわる須佐能乎の攻撃力には、藁の楯も同様。自分に振り下ろされる須佐能乎の拳を防げないと悟る。そこでサーベルを腰に構え、一時の脱力の後に、一閃。

 

「は!?」

 

 女騎士の居合術は、須佐能乎の巨大な腕を一刀両断。腕を切断されたグライアは驚き、追撃を仕掛けてくる女騎士の動きに対応できない。

 

 須佐能乎の守りを気にしないような見事な一太刀で右肩から先を切断される。腕を飛ばされたグライアだったが斬られた箇所が膨大な熱と共に再生をはじめ、左腕に持った蛇腹剣で女騎士を切り裂こうとする。

 しかし、彼女の万華鏡写輪眼でも見切れないほどの素早い斬撃が蛇腹剣を細切れにし、彼女の左足を切断。追撃にと腹に蹴りを貰ったグライアは吹っ飛ばされ、床に転がる。

 

「ぐぅ」

「腕も足も切ったのに、再生しているの?」

 

 斬られた箇所は熱を発しながら再生し、すぐに立ち上がったグライア。認めたくはなかったが、目の前にいるお女騎士は、接近戦で言えば自分が足元にも及ばないほどの高みにいる。

 

「こんな屈辱は子供の時、いらいや! ああああー!!!」

「こうやるのよね!」

 

 怒りに身を任せ、須佐能乎をさらに巨大な第三形態まで進化させる。そして巨大な矛を持った形態にして、それを女騎士に振るう。その攻撃に対して女騎士も対応するように須佐能乎を発動。巨大な斧を持った牛のような須佐能乎とポセイドンのような須佐能乎が激突。

 互いに能力の詳細は知らないが、目の前の強敵との激縁で才能が開花。二人の須佐能乎は何度も何度もぶつかり合い、その被害は天災の域に達しようとしていた。あまりに暴れすぎ、女騎士の守っている要塞にも被害が及びかけたことで、女騎士が突然須佐能乎を解除。

 何をするのかわからず動きを止めるグライア。

 

「どうやら。探していた一人はあなたみたいね。貴方名前は?」

「あ? 急になんやねん……グライアや」

「いい名前ね。私はラビリンスよ。

 なんて説明したらいいかわからないのだけれど、私の目には繋がりが見えるのよ。人と人の想いや血の繋がりなんかが糸として目に映る。これは今の所はずれたことはないわ。そして、今私とあなたに、血の繋がりを示す糸が見えているの」

「……」

 

 糸を見たことはないが、グライアも時々別の世界線を目にしたことがある。普通の人とは違う視線を目の前の女も持っているという事だろう。

 それが事実なら、二人は姉妹という事になるのだろうか。

 

「へぇ、ウチは一人だけかと思っとったが生き別れのお姉さまがおったんか。それはびっくりやな」

「私もよ。それに後3人いるわ」

「5人姉妹なん? 両親随分と仲良しみたいやな。それで、今そんなこと言うてどないするつもりや? 姉妹やから殺さんといてっていう命乞いと取ればええんか?」

「違うわ。お姉さんが本気を出せば、あなた死んじゃうもの」

 

 明らかに侮られている。その言葉を聞いた時、既に攻撃を始めていたグライア。須佐能乎の鉾を投擲し、彼女を貫こうとした。

 

「雷牛彗星(アステリオス)」 

 

 だが、独特の居合の構えを取るラビリンスと名乗った姉は、突然閉じられた右目を開くと、緑の結晶で出来た牛の角を発生させ、更に電撃を纏い、鉾と須佐能乎とグライアの右腕を切断した。亜音速を超える稲妻そのものとなった居合抜刀術。それを受けたグライアは、酷く驚く。

 

「ぐぅう、ああああ。なんでや、こないな傷」 

 

 右腕を切られた痛みで声を荒げるグライア。だが、彼女の体に起こった異変に気が付いたのは、すぐだった。斬られた腕が再生しないのだ。いつまでも血が流れ、グライアは貧血のような症状を抱える。

 どんな傷でも再生してき能力が効果を発揮しないのだ。

 その意味が解らず、腕を抑えながらラビリンスを睨むグライア。

 

「たまたま上手く行ったわね。貴方とその腕の繋がりを絶ったわ。もうその腕は再生しない。不死身であろうとも、私の剣からは逃げられないわ」

 

 自分の能力が封じられ、相手の攻撃で首なり心臓なりを斬られれば死んでしまうという事実。生命の危機に初めて瀕した。

 

 もう一撃さっきのが来ると思った瞬間。グライアは、敗走を余儀なくされた。須佐能乎と天照の炎で周囲を爆炎に包み上げ、逃走を選んだ。

 

 あまりの屈辱に、自分の喉を書き切ってしまいたい衝動に駆られたが、それでも生存本能に従い敗走した。

 

「次はお前を殺したる」

 

 そう言い残すことが精いっぱいだった。

 人生で初めての敗北を感じ、彼女の生き方が大きく変わった瞬間だった。逃げ延びた後は、治らない右腕を諦めて傷を焼き、止血。

 生きる目的にラビリンスへの復讐が刻まれた。そして、その復讐心を募らせながら、彼女らが忍五大国のある大陸に渡ったとの情報を聞き、それを追うように雪の国に向かったのだ。

 

 そこで雪の国の忍の技術を提供される代わりに傭兵として雇われ、そこでもう一人の姉妹と出会った。そこでも激戦を繰り広げるがまたしても敗北。

 

 ラビリンスやシャナに負けたことで、自分に何が足りないのか考える日々が続いた。彼女たちには家族があり、守るものがあった。欲しいものは何でも手に入れてきた彼女にとって唯一手に入らなかったものを持っていた。そんな考えにまで及ぶことがあった。

 空虚で常に飢えている自分。それを満たす事が出来るのだろうか。今でこそ復讐という目的があるが、それすら終えてしまった後は、また求めるだけの日々が始まるのだろうか。

 それが少し怖くなってしまった。

 奪うだけで、何も手元に残らない日々が再来するのかと。そう思った時、少しだけ彼女は生き方を変えようかとも思った。

 

 そのタイミングでコダマやリトラという妹たちに出会ったのだった。二人と過ごした時間自体は、穏やかでありながら少し満たされるような感覚があった。助けられた恩もあったが、同じ特徴を持つ彼女たちとの交流だけは悪くなかったのだ。

 

 それから忍五大国で何度かシャナとぶつかり合うことがあったが、勝敗はつかない。そんな中で自分の体質からくる寿命を克服しようと楼蘭の情報を掴み、其処で利害が一致したムカデという抜け忍と共に足を運んだ。

 

 だが運悪くムカデ討伐に派遣された妹と戦う羽目になり、其処で瀕死の重傷を負った。再生能力は既に暴走しており、死にたくない一心で万華鏡写輪眼の持つ時空間忍術を使ってしまった。元々自分の体には一切効力を発揮しないものだったが、封印から解き放たれた龍脈の膨大なチャクラの中で時間を操作した代償は大きかった。

 光に呑まれ、時間を逆行する中で体が若返ったのだ。それもすさまじい勢いで若返り、赤ん坊の姿にまで逆行。その年齢まで若返った結果か、記憶まで失ってしまった。

 

 そして、時間移動が終わり、完全な赤ん坊となった彼女は、偶然そこに居合わせた楼蘭の女王に拾われた。彼女や彼女の実の娘と見た目が瓜二つという偶然もあってか、グライアはラーナという名前で愛し育てられた。

 

 二人の赤子は、双子のように扱われ、喧嘩をすることも多かったが仲良く成長した。

 グライア自身も二人を愛していたし、過去を忘れ只の子供になっていたため、二人と楼蘭が世界の全てだった。楼蘭の住人には、正体不明の彼女を怪しみ嫌うものもいたが彼女は気にしていなかった。

 

 何より赤ん坊の頃から写輪眼を発現し、幼少期には須佐能乎まで使えるようになったがために、彼女は楼蘭で誰よりも強かった。幼子が持つには大きすぎる力故に、女王からは力をむやみに使ってはいけないと注意深く教育されていた。

 しかし好奇心に負け、妹のサーラとの遊びで術を使ってしまうこともあったが、一度二人そろって大やけどをしたことがあったため、それ以降は力を使うことは無くなった。

 

 唯一、彼女の体に起こる現象だけが悩みの種だった。龍脈からチャクラを無尽蔵に取り込んでしまう体質だっためか、術を使わなくなるとすぐに体が熱暴走を始めるのだ。

 

 幸いに楼蘭の王族には、彼女のような体質が存在し、対処法もあったため、自分で症状を抑える方法を伝授された。幼き頃は女王が代わりにコントロールを担い、今では自分で完全にコントロール出来ているはずだった。

 

 片手での生活も何年も続けていれば慣れてくるが、やはり不便なのには変わりなかった。そんなある日、楼蘭を訪れたアンロクザンと名乗る男が現れた。

 彼は未来世界でのムカデであり、グライアとは違う時間に飛ばされていたのだった。彼は片腕のグライアに義手を作成すると言い、それを受け入れた女王によって王宮に招かれた。

 そこでアンロクザンから傀儡の術を教わり、念願の義手を手に入れた。それからも義手の調整や忍界大戦の予兆が見える事で楼蘭の防衛に傀儡兵士の動員を助言したアンロクザンが正式に大臣として招かれる。

 

 そこからは軍拡も進んでしまうが、経済が発展した影響で数年で楼蘭は強大な軍事力を持つに至った。そのせいで忍五大国からも警戒されることになった。

 

 何度かサーラとラーナを誘拐しようと忍達が暗躍したこともあったが、ラーナの戦闘能力の前に全員が生きて帰ることはなかった。だが王女たちが狙われる事は国としても危機感を感じ、彼女たちはアンロクザンの作った暗器仕込みの義手やチャクラを放つ銃器などを配布された。特に銃器の扱いは二人とも非常にうまく、ラーナが遠距離射撃が得意なのに反して、サーラは速射が得意と、互いに武闘派の資質があった。

 

 国としては成長している真っただ中、サーラが後継者教育の一環である授業を受けている間に暇だったグライアは、母である女王の元へと足を運んでいた。

 

「おかん、ちょっとええか?」

「ラーナ。いつも言っていますが言葉遣いには気をつけなさい。それに今は臣下も居るので陛下と呼びなさい」

「そんなん誰も気にせんもん。なぁ」

 

 彼女は会議に出ていた臣下たちに尋ねるが、女王の厳しい視線に苦笑を零す。彼女が女王に会いに来るのはいつもの事なので誰も止めはしないのだ。むしろ、近頃会議に上がるアンロクザンの軍拡路線と女王の反対意見による殺伐とした空気が和んで助かるとすら思っていた。

 誰もがそんな日常が過ぎるだけだと思っていた。

 

 たった一人。アンロクザンだけは怪しい笑みを浮かべていた。臣下たちが全員席を外し、二人きりになった女王とグライアは、お茶菓子を飲んでサーラの授業が終わるのを待って過ごしていた。

 いつものように母である女王と交流していた時、ドクンとグライアの体に異変が起こる。異常な動悸と熱が発生する。急激に体調が悪くなったグライアは、息ができなくなった。

 

「!?ラーナ。どうしたのです」

「あつい、あついぃい、からだが、もえるぅ」

 

 急激に体が熱を発し、周囲のものを燃やしてしまう。その熱気はすさまじく、女王は近付けなくなる。だがどんどん体が熱を発することでグライアは地獄の苦しみを味わい、涙を流しながら無意識に女王へと手を伸ばした。女王は一族に伝わる術でラーナの苦しみの原因であるチャクラ吸収症を治療しようと熱に阻まれながらも近づいた。

 

「今すぐ助けてあげますからね。うぐ」

 

 そんな時、彼女の体を巡る熱が更に暴走。右手の義手に仕込まれた仕込みが誤作動を起こし、女王の胸を貫いた。女王は刃に貫かれ、苦しみながらもサーラの体に手を当て、その苦しみを和らげようと術を使った。

 

 グライアの体調が回復する頃に、女王は力尽きて倒れた。意識が戻ったグライアは、自分の義手が母を貫き、夥しい出血と冷たくなった母の体を見て絶叫した。その声を聴いてアンロクザンが現れた。

 

 状況を見てグライアが女王を殺したことは明らかであり、本来ならグライアは国王を殺した罪に問われるだろう。だがそんな事よりグライアは母を殺してしまった罪悪感と妹であるサーラになんと言えばいいのか分からずパニックになる。

 そんな彼女に優しい声を掛けたのアンロクザンだった。

 

「大丈夫です。ラーナ様。私が手を貸しましょう。全てお任せください」

 

 そう言った彼は、女王の殺人を他里の忍による暗殺事件へと話をでっち上げた。女王の遺体は、先に棺桶に入れて置き、彼女そっくりの傀儡と幻術を使っての人形劇を行った。女王は朝の会議中に忍によって暗殺される姿を臣下たちに見せる事で、自然に事件を処理した。

 そして女王が殺された今、楼蘭は他国より狙われていると国民に示すことで軍事拡大の支持を得る。さらに摂政として幼きサーラ女王を支える地位を得た。 

 

 残されたグライアは、女王殺害の罪を償う事も出来ぬまま、妹への強い罪悪感に苛まれながら生きてきた。さらにアンロクザンに弱みを握られたことで、彼との間に力関係が成立してしまう。義手の調整の際に、龍脈を操る体質について徹底的に研究する手伝いをさせられた。

 もし断ればサーラに自分の罪を打ち明けると脅されれば、従う他なかった。それでもサーラを一番に考えており、命を懸けてでも妹だけは守ろうとアンロクザンを彼女も利用していた。

 

 国民が虐げられる事態になっても、できうる限り彼女なりの支援はした。待遇も本来なら使い潰すようなものだったところを、きちんとした労働環境にしたり、働き手の居ない家庭への支援など、積極的に行っていたのも彼女だ。

 

 幼いサーラを支えるために、あえてメイドの立場となって影武者のように振舞ったグライア。やり手だった女王が死に、幼い女王しかいない国へと手出しをしようとした者は多かったが、戦闘訓練を積み、忍術を修めた末に粒遁を発現させたグライアに敵はいない。

 自分こそが彼女の最強の盾になると、術を磨いた彼女だったが粒遁を使うたびに、頭痛と共に見覚えのない記憶が頭をよぎることが多かった。

 そのことに不安を感じながらも日々生きてきた。

 

 その後は、シャナが訪れるまで記憶を失っていたままだったのだ。

 

――――――――

  

 そんな話をしながら、グライアはシャナと共に一度、王宮にある自分の部屋に戻っていた。かなり駆け足だったが、現状アンロクザンがサーラを狙っているため急がない訳にはいかない。

 

 自室にたどり着いたグライアは、右腕の義手を憎たらしく睨み付け引きちぎる。

 

「それ取っていいんだってばね?」

「さっきのウチが暴走した原因がこの義手や。昔話で同じような状況があったやろ? 今回ではっきりしたんや」

 

 グライアは煮えたぎるような憎悪を目に宿らせていた。彼女の推理は、真理にたどり着いていた。

 過去に女王を殺してしまった事故。あれはアンロクザンによる故意の事故だったのだ。彼はいつでもグライアの義手を利用して、彼女のチャクラを暴走させる事が出来たのだ。

 そして暴走してコントロールを失った義手を傀儡の術で操った事で、女王を殺害させたのだ。政治的に邪魔になった女王を排除し、女王を殺した濡れ衣をグライアに被せ、自由を奪い、国政に疎いサーラを操り人形にした。全てあの男の策略だったのだ。

 

 グライアは厳重に錠が施された大きな金庫を開ける。そこには、かつて彼女が使っていた義手や装備が丁寧に並べられていた。年代を重ねているはずだが、まるで新品のような輝きを放っている。

 

「武器庫?」

「正確には、ウチがこの時代に来た時に持ってた武器や。おかんは、いつかうちの役に立つかもしれんと保存してくれてたんや」

 

 そういいながらグライアは、保管されていた元々彼女が使っていた義手を取り出し腕に取り付け始めた。そして、纏っていたメイド服を脱ぎ一糸まとわぬ姿となる。その姿を隣で見ていたシャナは、驚愕する。

 

「胸デッカ」

「自分も結構デカいやろ。ほっとき」

「それはそうだってばね。でもデカすぎるってばね。下着とかどうしてる?」

「オーダーメイドや。じろじろ見んといてや」

 

 シャナ自身もかなりのサイズではあるが、今まで見た中でグライアが一番大きくつい感想を零してしまった。そんな暇はない筈だが、軽口を交わし合う二人。

 やがて着替え終えたグライア。

 

「ようやく見慣れた格好だってばね」

「ウチと言ったら軍服やろ……おかん、サーラは必ずうちが守ったるから、堪忍やで」

 

 グライアは未来と同じ、軍服に身を包んでいた。さらに武器庫に保存されていた無数の武器を封印術を使って収納した。昔馴染みの姿に戻ったグライアは、自分の武器を確かめてから、部屋に飾られた家族写真を手に取る。それを眺めたのちに机の上に倒し、部屋を出て、王宮の出口の門を開く。

 

 すると周囲を無数の傀儡兵が取り囲み始める。その数が尋常ではなく、100機近い数がシャナとグライアを捉えている。

 

「熱烈な歓迎だってばね」

「ほんまにな。サーラ追っとるはずやのに余力をこっちに割けるんか」

「こいつらにチャクラ使ってたらキリがないってばね。どうする?」

 

 シャナの問いに愚問だと言わんばかりに、銃を構えるグライア。さらに背中のマントが大きくはためき背中から凄まじい勢いで熱を纏った炎の翼が展開される。

 

「制御できるようになってるんだってばね?」

「完璧や。あのしょうもない仕掛けがなかったらな。シャナ周囲に人はおるか?」

「いないってばね」

 

 写輪眼と仙人モードの感知能力で、グライアがこれまでで最高の出力とチャクラ吸収率をしていることがわかる。しいて言えばグライアの強化形態、獄遁モードである。

 

「獄遁・焔凪!!」

 

 膨大な熱で構成された翼が振るわれ、猛烈な熱波となって傀儡兵たちを襲う。傀儡兵たちも内蔵されたチャクラ障壁発生装置によって防御しようとするが、その熱気を防ぐことは出来ずに装甲が発火したのちに熔解する。

 ほぼ一撃で周囲全てを燃やし尽くした規模に、シャナは今後これと戦う事になるのかと頭が痛くなった。

 

「ドロドロに溶かしたさかい、しばらくは再生は無理やろ。いくで」

「空から行くのか」

 

 露払いは終えたとばかりに、背中から発生するチャクラの翼をはためかせ上空に飛び上がったグライア。彼女を追うようにシャナも粒遁で翼を形成し飛翔する。

 

 

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