シャナとグライアが楼蘭の空を飛翔すると楼蘭の建物の屋根が次々と変形し、クナイを発射する絡繰などの罠に変貌する。対空射撃を受ける二人だが、グライアが炎の翼でシャナと自身を覆うことで飛来するクナイなどはすべて溶けて無力化される。
傍で飛んでるシャナが火傷一つ負わないのは、獄遁という彼女だけの血継限界のコントロール力の高さゆえだろう。
炎の翼をはばたかせながら、飛翔するグライアとシャナは、アンロクザンと戦闘が行われて酷く破壊された地域を目にする。その戦いの後には、波風ミナトの班員である秋道一族と油女一族の二人が倒れていた。
かなり激しい戦いがあったようだが、アンロクザンの巨大傀儡に負けてしまったのだろう。
「木ノ葉の忍負けてもうとるやん。サーラは大丈夫なんか!?」
「私の影分身が守ってるってばね。それに、木ノ葉最強の忍者が控えてるってばね」
自分の影分身が消えていない上に、まだ自分の信じる父が居ると断言するシャナ。グライアは、シャナが誰かをそこまで評価するタイプに見えなかった。だが強い憧れと好きな日をを思い浮かべるようなシャナにグライアが変な想像をする。
「その目をキラキラさせ取るところ悪いけど、あの金髪の兄ちゃん、もしかして好みのタイプやったん?」
恋する乙女のような態度のシャナに若干引き気味のグライア。
「違うってばね!? 私のお父さんだってばね。まぁ血の繋がりはないんだけど」
「え? あ、あぁ。どうりで似たような術使うと思ってたわ」
楼蘭に侵入してきた木ノ葉の忍の中で一番厄介だったのが金髪の忍だった。口寄せによる瞬間移動と掌に球体を作る術で手を焼かされていたのだ。普通に考えれば共通点しかなく、グライアは納得した。年齢的にも彼女の保護者であれば違和感がない。
つまり彼女もまた孤児だったのだろう。その後、木ノ葉の忍に拾われたのだろう。
「木ノ葉の黄色い閃光が私のお父さんだってばね」
「自分、木ノ葉の青い閃光やったよな。なるほど、後をついどるんか……見つけた。いくで」
「了解だってばね」
上空から、楼蘭に開いた大穴を見つけ、それがアンロクザンが地面を潜っているのが原因だと分かった。状況はだいぶ悪いと踏み二人は、一気に加速して大穴へと侵入した。
「邪魔や!!獄遁・八熱」
途中瓦礫で埋まった場所があったが、グライアが左手を前に伸ばし獄遁の灼熱のチャクラが槍のように前に伸び、それらが瓦礫を蒸発させながら大穴を貫通。そこをシャナとグライアが通過した。
そして穴を抜け超巨大なドームにたどり着く。広大な空間で中に巨大な塔があり、其処には龍脈から抽出されたチャクラが漲っていた。そこで波風ミナトとシャナの影分身が激戦を繰り広げている。
「「須佐能乎!」」
「なんだぁ!?」
巨大な傀儡が影分身と波風ミナトと、その背後にいるサーラを狙ってチャクラ砲を放とうとしていたので、二人は須佐能乎を発動。凄まじい負荷がかかるが二人とも完全体須佐能乎を発動。阿修羅とポセイドン型の須佐能乎2体が巨大な腕を振るって巨大傀儡の頭部を殴り飛ばす。巨大傀儡より巨大な二体の拳を受けて、ドームの外壁に叩きつけられた傀儡は動かなくなる。
「お待たせだってばね」
「シャナか。え、なんで彼女まで」
「仲間に出来た。影分身ご苦労様だってばね」
シャナの反対が現れると影分身のシャナは、その場で消える。そこで影分身の経験値を獲得する。楼蘭の住民を引き連れ、安全地帯に避難させた後に、サーラの考えによって龍脈を封印しようと企んでいるらしい。それを察知したアンロクザンが大暴れしながら道を阻んできているという。
だが、もう一つ嬉しいニュースがあった。
「おと、いや、師匠。螺旋丸と飛雷神の術教えてくれたんだってばね?」
「あぁ。君には必要だと思ってね。未来の僕は、どうやらきちんと教えてあげられなかったようだし」
影分身のシャナは、移動中にミナトから術についての説明を受けていたらしい。シャナが独自の術を使う理由を尋ねれば、自分の術を見よう見まねで使っているだけだと言われれば師匠としては、未来の弟子に伝えない訳にはいかなかった。
「ありがとうだってばね」
既に失伝した術を、愛する父から直接教わったシャナは酷く感動していた。
一方でサーラと対峙したグライアは、サーラの無事を確認するなり、不愛想に背を向ける。
「ラーナ。あなたなんで」
「怪我したくないんやったら下がっとき。それにウチは、ラーナちゃう。ウチは、グライア。国崩しのグライア、金さえもらえばだれでも殺す傭兵や。先代女王を殺した裏切り者に近寄ったあかん」
ぶっきら棒に振舞い、制帽を深くかぶり表情を見えなくするグライア。たとえ事情があったとしても、女王を殺した事実は変わらず、何よりも彼女に嫌われたくない思いで隠蔽していたのは自分なのだ。だから別れる事は辛くない。それでも彼女を守る事が出来るのだから。
未来世界で飢えていた、家族の愛というものを与えてくれた彼女たちに対してできる最大限の恩返しと罪滅ぼしが、目の前のアンロクザンを倒し、楼蘭の平和を守る事だと決心する。
そのために、彼女は愛する家族と決別を選ぶ。
しかし、グライアに駆け寄ったサーラは、その腕を掴む。
「お待ちなさい。アンロクザンからすべて聞きました。何があったのかを。お母さまの事はあなたのせいではありません」
「同じや。それにいままでの関係は全て、偽りや」
「違います! 貴方は裏切り者なんかじゃありません。私もあなたの話をきちんと聞いてあげるべきでした」
「あんたは悪ないよ。隠してたのはウチやし、お母さんを殺されたのに、冷静になれって方が無理や」
「お母さまは貴方にとってもお母さまではないですか。だから、誰よりも苦しんでいたのでしょう。わかりますよ。私たちは、ずっと一緒に過ごしてきたのですから」
「あかんねん。それじゃ、あかんねん」
「私はラーナ、いえグライア。貴方を赦します。だから、貴方まで失いたくないのです。私達の過ごした時間を思い出を、偽りなんて言わないでください」
「ぐ、ふぅ」
サーラの言葉に、グライアは深く被った帽子の中で目頭が熱くなって涙を流す。グライアの記憶が戻った今でも、彼女の中にラーナという存在は確かに残っており、ようやく胸のしこりが取れた思いだった。
この娘には敵わない。そうひしひしと体と心に染みた。
「わかった。その言葉後悔せんか?」
「はい。後悔しません」
グライアは、傍にいるサーラを抱きしめる。それに対してサーラも静かに涙を流す義姉を抱きしめ返した。二人の間にあった溝が埋まる瞬間だった。二人が抱き締め合っていると、殴り飛ばされていた巨大傀儡が再稼働し、ドームを這って動き始める。
胸元から巨大なチャクラの弾丸が2発、発射される。その狙いは、グライアとサーラだったが、シャナと波風ミナトの二人が瞬身の術で割り込む。
シャナが粒遁螺旋輪虞で迎撃し、ミナトはクナイを前に構える。するとクナイと螺旋輪虞に触れた巨大なチャクラ球が別の場所に瞬間移動する。一発は楼蘭の上空であり、もう一発は楼蘭郊外に突き刺さったクナイの傍で爆発する。
シャナは未来視でこの不意打ちが見えていたために、予め天井目掛けて粒遁・天輪を発動。ドームを貫き、楼蘭の上空へと光の閃光が登っていた。その粒子を起点に攻撃を飛ばしていたのだ。
「おと、師匠。これであってるってばね?」
「すごいな。一度でやれるとは思ってなかった。けど、無茶をしてはいけない。術は鍛錬して身に着けてから実戦で使うように」
「はい」
ミナトとシャナが行ったのは飛雷神・導雷であり、相手の攻撃を飛雷神の術でマーキングした場所に飛ばす術だった。父ミナトから教わり、それを間近で見ながら吸収していくシャナ。まだマーキングを何処にも設置できていないので、粒遁・天門で代用する事にはなっているが、その精度はミナトと遜色ない。
攻撃を飛ばしたシャナとミナトがグライア達の傍に着地する。
「仲直りの最中で申し訳ありませんが女王陛下。あの巨大な怪物は二人に任せて我々で龍脈の封印を。二人とも任せたよ」
「そうですね。グラ、ラーナ。女王として命じます。そちらのシャナと協力してアンロクザンを」
「はいだってばね」
「ええで。一先ずあのクソやろうはぶっ飛ばしたる!!」
ミナトとサーラが龍脈の封印に向かい、シャナとグライアの二人は巨大傀儡と対峙する。だがそこでシャナは違和感に気が付いた。先程までと違い、巨大傀儡が一回り大きくなっているのだ。しかも、徐々に大きくなっていく始末。
「グライア。なんかデカいってばね」
「楼蘭は、この数年で傀儡技術で建物が構成されてる。つまり、こいつの素材が国中にあるっていう事や」
「つまり、ちまちまやってたら、じり貧になって負けるってばね?」
「自分は特にな。ウチは、いくらでもチャクラがあるから問題ない。けど、いつか限界は来ると思う」
「でも、封印ならすぐに」
周囲の建物を取り込んで既に5倍近いサイズになっている巨大傀儡。それを見上げる二人は、龍脈の封印を急いでほしいと考えていた。だが突然シャナの背後にミナトが現れる。
「封印終わったってばね?」
「それが大問題発生だ。龍脈の湧き出る起点に強大な結界が施されている。それをオレの本体と女王陛下で解こうとしているが難航している。恐らく、ムカデの仕業だろう」
「チャクラの流れが、龍脈を保護する結界にも割かれとるんやな。うちとあんたの全力攻撃でも結界を突破できるかやね。仮に出来たとしても、今度は龍脈を制御する術式が壊れる可能性もあるな」
「じゃどうするんだってばね。傀儡は壊しても再生するし、結界は壊せないし……いや、方法はあるってばね」
「一先ず、ムカデの傀儡を食い止めてくれ。結界はオレの手で何とかやってみよう」
そう言い残してミナトの影分身が消える。つまり巨大傀儡相手に防衛戦を余儀なくされたらしい。だがシャナとグライアの考えは違った。
「無限に再生するし、無限に大きくなると言っても、使ってるのは楼蘭の龍脈だってばね。龍脈からは半永久的にチャクラが供給されると言っても、一度に抽出できる量には限界があるはずだってばね」
「正解や」
【無理な巨大化や再生は、逆に燃費を悪化させる要因となっている。ならば、君たち二人で、巨大傀儡を破壊し続け、奴の恐怖を煽りさらに巨大化させれば、結界に回すチャクラが足りなくなるという事か】
「そういう事や。けど、生半可な火力じゃ意味ないで。やるからには全力で行くんや」
既にグライアは、獄遁モードの翼を最大限展開、最大出力を発揮する気らしい。
一方でシャナは、少し思案したのちに、両掌を合わせて両足を大きく開きながら踏み込む。そして、夥しいチャクラを練り始める。
【やるんだなシャナ】
「仕方ないよ。制御は全部任せるってばね!!」
ジョウゼツとシャナの融合した仙人モード。その更に一つギアが上がった。
「【仙人モード……弐式】」
シャナとジョウゼツが意識を集中させると、彼女のクリーム色の髪が燃えるような赤い色に変わり、額に文様が現れる。そして、シャナの纏うチャクラが通常の10倍以上に膨れ上がった。全身から粒遁の粒子が舞い散り、台風のような突風を発生させている。まるでオーバーロードを起こしかけているような姿だが、シャナのチャクラはさらに膨れていく。
そのいきなりのチャクラの上昇にグライアが驚いていると、シャナは彼女に言った。
「この姿は、5分も持たない。その間にぶっ倒すってばね」
仙人モード弐式。それはシャナ達の切り札ともいえる奥義である。シャナの粒遁は、普段攻撃で使うものとチャクラが超圧縮された末に物質化したものがあり、後者は非常に効率よくチャクラを保存して置ける。シャナの一日分の全チャクラを一粒の粒子に凝縮する事すら可能なほどで、戦闘時以外は常にチャクラを粒子に変化して、ジョウゼツの中に保存しているのだ。
その溜め込んだチャクラ全てを一気に元のチャクラに還元。
爆発的にチャクラがあふれ出す。だが人間であるシャナには、体内に保持できるチャクラの限界が存在し、その爆発的なチャクラの増加には耐えられない。
けれど仙人モード時の強化された肉体であれば、そのチャクラの増加に耐えられるのだ。さらに衣服として融合しているジョウゼツが制限を解除して自然チャクラを取り込むことで保存したチャクラ全てを仙術チャクラに変換が可能となる。
特に自然そのものであるジョウゼツの自然チャクラを取り込む速度は、異常の一言である。もしシャナが膨大なチャクラを持っていなければ瞬時に石に変わってしまう。しかし、今はシャナ自身が膨大なチャクラタンクであり、ジョウゼツとシャナの能力は加算ではなく乗算していく。
当然弱点もあり、制限時間があり、一度発動すると貯蓄粒子から還元されたチャクラをもう一度貯蓄する事は出来ず、少量ずつの使用も不可で攻撃用の粒子にしか変換できないため、一度発動すると途中で解除は不可能。
発動したが最後、シャナのチャクラをほとんど使いきった上で、経絡系などにもダメージが残る。丸一日はまともにチャクラが練れなくなるのだ。
しかし、リスクに相応しい効能もあり、それこそがシャナの術の出力を10倍以上に引き上げる事だろう。
「作戦は一つ。あいつを封印に近付けさせない上で、再生できなくなるくらいバラバラにするってばね」
「ほな、いこか」
シャナとグライアは同時に須佐能乎を発動。段階を経て完全体須佐能乎を顕現させる。山より大きいと思われる二体の巨人。それらは、巨大化し続ける巨大傀儡を掴んで、一気に地上へと飛び上がった。
『おのれ、邪魔をするな!』
ドームを貫き、地上へ取れてこられた巨大傀儡は、二人の須佐能乎目掛けてチャクラ砲を発射。至近距離で爆発したせいで、二人の須佐能乎は地面へと叩きつけられる。そして空に浮かび上がっていた巨大傀儡は、さらに楼蘭に建設された無数の塔から龍脈のチャクラを取り込み、地上にある楼蘭の街を吸収して、巨大な翼と形勢、空中にて巨大化を始める。
「粒遁奥義・天羽々斬!!」
「獄遁・八熱!!」
完全体須佐能乎の巨体から、グライアの獄遁である熱の槍が投擲。さらに6本腕のシャナの須佐能乎は、それぞれ一本一本の超巨大な粒遁の刃を持って巨大傀儡を切り裂いた。
二人の攻撃は、チャクラ障壁をものともせずに貫通。巨大傀儡の体に穴をあけ、切り刻むことに成功する。しかし、相手も無限の再生能力を持つ傀儡。すぐに傷が修復し始め、お返しとばかりに両腕からチャクラ砲を発射。二人の須佐能乎が巨大な槍と粒遁の刃でもって打ち払う。
その規模は、既に忍者のものというよりも尾獣同士の争いに近い。
「仙法・粒遁超大型天機!」
シャナの須佐能乎は、6本の腕で巨大な粒遁の円盤を6枚精製。それらを一斉に投擲。巨大傀儡は迎撃にチャクラ砲を発射するが、それらすべてが円盤の凄まじい切断力の前に寸断。迎撃に一切威力を落とされることなく巨大傀儡の体を破壊。さらにシャナが指を弾けば、一気に拡散。巨大な粒子の爆発となって傀儡の体内から破壊していく。
『無駄なことおぉ』
「えぐい術持っとるな」
「私ばっかりにやらせるなってばね」
「ええで」
その言葉を受けてグライアもチャクラを最大限練り込む。須佐能乎がミツマタの鉾を天に掲げれば、グライアのマントに封印されていた100を超える宝具の数々が浮かび上がる。
「刀剣影分身の術」
100を超える武具の数々が影分身によって10倍に増える。それらを全てチャクラ糸で繋ぐことで操作し、巨大傀儡に突き刺す。だが、相手が巨体過ぎて攻撃の威力はないに等しい。
「内側から爆ぜろ」
チャクラ糸を伝って、莫大な獄遁のチャクラが流れ込み、巨大傀儡の内部に一気に拡散。巨大傀儡は内部から一気に膨れ上がって爆散する。多大な被害を受けた巨大傀儡は飛行が不可能となり、地面に落下する。
『何処までも邪魔をするか。だが全て無意味だ。確かにお前たちは強い。だがこの楼蘭全てを支配する俺の敵ではないわ!!』
今まで以上に巨大化した傀儡。ついにそのサイズは、シャナとグライアの完全体須佐能乎を鷲掴みに出来る規模まで膨れ上がった。そのサイズに流石のシャナ達も冷や汗をかかされる。
「化け物か」
「くるで!」
もはや武器はいらぬとその巨大な腕を振るうことで、ガードに転じたシャナ達を須佐能乎ごと殴り飛ばして、彼女たちを砂漠に突如発生した樹海へと叩きつけた。
グライアの治療のために作った樹海がクッションとなり、ダメージを負うことはなかった二人だが、もはや楼蘭そのものとなった超巨大傀儡を見上げる。
「なぁ。これ、個々に殴っても効果薄ない?」
「ここまでデカいとそうかも。けど、私達で協力する術とか……いや、待てよ。お前のチャクラコントロールなら出来る、かも」
シャナ達は、想定外のアンロクザンの力に対抗するべく決定打を見出す。シャナとグライアの二人が全力で術を発動すれば倒せる可能性はある。だが、未来視でそれが成功しない未来もあった。だが二人が手を合わせる戦法。それは考慮されていなかった。
そして偶然にも影分身が父ミナトから教わった方法が、この状況に噛み合っていた。
父ミナトの開発した術。螺旋丸。その奥義ともいえる使い方。螺旋丸を使える者同士で似たチャクラ性質を持つ者だけが使える奥義。対極螺旋丸。二人の螺旋丸の威力を何十倍にも高めるそれを、シャナとグライアの今のチャクラで発動すれば、その威力は計り知れない。
唯一の懸念点は、グライアが螺旋丸を使えない事だが、写輪眼を持ち、現在では抜群のチャクラコントロールができる彼女ならあるいは。
シャナの言葉を聞いて、グライアは少し考えながら、自分の写輪眼の持つ視界に意識を向ける。並行世界を覗き見る事が出来る彼女だからこそ、シャナと同じ境遇で忍術を学んだ世界線を見た。
そこでは、シャナのように螺旋丸を学んでいる自分がおり、その技を盗む。
並行世界から自分の技能を自分に写し、盗む事が出来る。それこそがグライアの青い写輪眼の真の能力である。当然代償も多く、写し取る事が出来るのは月に一度が限界である。あまりにはく離した並行世界はそもそも見えないため、完全ではない。
「こうやな」
グライアは螺旋丸を左手で作り上げる。それを見たシャナがジト目で彼女を見るが、条件は整ったとして両手を組んで印を結ぶ。
「木遁・木分身の術」
ジョウゼツと融合がより密接になっている仙人モード弐式の状態でだけ、シャナもジョウゼツの中にある特殊な細胞由来である木遁を使用が可能となる。そして2つ木を生み出しそれらに自分の姿を取らせる。
シャナの木遁分身は、まだまだ未熟でシャナの形をしただけで木のまんまである。
しかし、それらは全て須佐能乎を発動。完全体須佐能乎の姿をしており、仙法・粒遁超大型天機を発動。超巨大傀儡相手に12枚もの粒遁の円盤を投擲して時間を稼ぐ。
「細かい調整は、私がやるから、ありったけのチャクラを螺旋丸に練り込むってばね」
「言うたな。ほなら、遠慮せえへぇんで」
シャナとグライアの須佐能乎は、右腕と左腕で超巨大な螺旋丸を作り出す。さらにそれを掛け合わせることで、徐々に巨大な螺旋丸を精製していく。シャナの青い螺旋丸とグライアの炎の混ざったような赤い螺旋丸が混ざり、紫色の螺旋丸が生まれる。
徐々に膨れ上がる螺旋丸をシャナの6本腕の須佐能乎がコントロールし、グライアは引き出せる限りのチャクラを螺旋丸に供給していく。
『ええい鬱陶しい……、なんだその術は』
木遁分身2体の完全体須佐能乎を相手していたアンロクザンは、シャナとグライアの合体忍術を見て危機感を募らせた。その術に使われたチャクラ量は、既に人間の扱う量ではない。
『しかたない。これは五大国を黙らせるための兵器だったが。お前達で試し打ちしてやろう』
巨大傀儡は、空高く飛び上がると胸の部分を大きく開き、そこから高圧縮されたチャクラ砲を放った。それを受け止めようと木分身2体が完全体須佐能乎で迎撃に向かうが、その威力の前に須佐能乎が消滅。木分身も木っ端みじんになってしまう。
だが、それが二人に到達する前にシャナ達の合体忍術が完成した。既に作り出された螺旋丸は完全体須佐能乎より大きく、その余波だけで周囲の砂漠に嵐が起こる。
「「超大玉対極螺旋丸」」
シャナとグライアの須佐能乎が地面を蹴って飛び出し、それぞれが背中に翼を生やして飛ぶことで、対極螺旋丸を飛来する超巨大傀儡のチャクラ砲に突っ込んだ。
対極螺旋丸とぶつかったアンロクザンの隠し玉は、瞬く間にかき分けられ、シャナとグライアの侵攻を阻む事が出来ない。アンロクザンの必殺の一撃を意に介さず突き進む。
『おまえらに俺の計画を阻まれてなるものか!?』
チャクラ砲が効かないと見るや、今度は圧倒的質量でシャナ達を潰そうと突進してくるアンロクザン。だがその突進を受けてもなお、シャナ達の対極螺旋丸の威力は衰えず、楼蘭そのもののような巨体を浮き上がらせた。
『ありえん。ありえぬ!!!』
「お前はこの国にいらん!!」
「はぁあああーーー!!! 終わりだってばね!!!」
『やめろぉおお!!!!!!----------』
二人の渾身の一撃が、超巨大傀儡の体を分解していく。そして、ついに不死身の怪物かと思われたアンロクザンの傀儡が打ち上げられた対極螺旋丸の威力の前に木っ端みじんに消し飛んだ。その余波でシャナ達は地面に叩きつけられ、楼蘭の空で大爆発が起こった。
地面に叩きつけられた二人は、須佐能乎も出せないほど疲弊しており、爆風をもろに浴びる羽目になった。
――――――
その大爆発が、楼蘭を揺らす頃。龍脈を封印しようとしていたサーラ達。シャナ達の闘いの規模が大きすぎて、常に地震に襲われる中でも必死に結界を解こうと尽力していた。
「あの二人、どれだけ好き勝手戦ってるんだ」
「ラーナは、私の敵に手加減はしません。ですが、二人ならアンロクザンを倒せるはずです。私たちは、龍脈を封印して奴の悪足搔きを封じなければなりません」
そんな話をしていると、龍脈の封印式に施されていたアンロクザンの結界が少しの間薄くなる。
「今だ。螺旋丸! 女王陛下、中に」
「はい!」
弱まった結界の起点に螺旋丸を叩き込んだミナトは、サーラの手を取って、彼女を龍脈の封印式まで連れていく。そこでサーラが一族に伝わる術で龍脈を封印した。
それを確認したミナトは、更に自分が龍脈に封印を重ね掛けする事で、二度と悪用されないようにすると言った。サーラはその言葉に少し悩むも、今国民に必要なのは龍脈の力ではないと判断した。
龍脈があれば、それこそアンロクザンのような輩が楼蘭に来る可能性がある。それだけは避けなければいけない。
故に封印に賛同しようとした矢先。ミナトの顔の隣をチャクラ砲が通り過ぎる。咄嗟に飛び退いて警戒するミナトの前には、ボロボロの姿のグライアがいた。
「何を」
「悪いけど、封印はさせへん」
「いいえ、龍脈は封印します。これは私達には」
「姫さんは黙っとき」
先ほどまで味方だったグライアが敵対した。その表情はどこか申し訳なさそうであった。そして、彼女を止めようとしたサーラに写輪眼で幻術を掛ける。幻術を食らったサーラは意識を失い倒れそうになるが、ミナトが支える事で怪我をすることはなかった。
ミナトは気を失ったサーラを見た後に、グライアに尋ねた。
「君の目的がわからない。君は何がしたんだ」
「言うても判らんよ」
既にボロボロのグライアだが、まだまだ戦う力は残っている。彼女をどう相手にすればいいか考えていると、飛雷神の術で同じくボロボロな姿のシャナが現れる。
すでに仙人モードは解除されており、纏っていたジョウゼツも休眠に入ってしまった。残ったチャクラも極僅かという状態だったが、この未来は既に見えていた。だからこそ遅れる訳にはいかなかった。
アンロクザンを倒した後に、グライアと真の対話をするために。