NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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 今回長いです。


木ノ葉 後編

 シャナは、うちはの結界を突き破って木ノ葉の里を駆けまわっていた。

 未来視を最大限に活用し、追っ手の存在を回避し続け、半日も里中を探し回っていた。自分に残された家族である弟。ナルトの存在を。

 

 アカデミーなどを探しても見つからず、ナルトが出歩いている事がわかる。

 

「ちくしょう。ナルト、どこにいるんだってばね」

 

 体力とチャクラに自信のあったシャナも、さすがに半日走り続けた上に、隠密を繰り返していたことで消耗していた。未来視は、人探しには向いていない。可能性をしらみつぶしに見ていては、情報量で脳が先に焼き切れてしまう。

 地道に足で探すしかない。

 

 そうして夕方になった時、ようやくナルトを見つけた。赤ん坊の姿しか記憶にないが、顔はクシナに似ており、髪は父そっくりの少年。間違いなくシャナの弟であるナルトだった。

 

 大きくなった弟の姿を見て、涙がこぼれそうになるが、木ノ葉の忍に殴られそうになっている姿を見て、足が動いた。

 ナルトを保護するために男を無効化しようとしたが、その仲間達も出てきて3人に囲まれる。

 

 男たちの言う通り中忍~上忍クラスの実力はありそうだった。けれど、酔っている上に舐め切っているのか、動きに統率性のかけらもない。

 シャナは冷静に、冷酷にこの3人に処罰を加える。まずは足を斬り動けなくし、次は両腕を無力化。その後は、拷問してやるつもりだった。

 弟の危機に対して、自分が案外冷静に対処している事に少しだけ驚く。酷い怒りで沸騰しそうなのに、脳は冷静に事を運ぼうとする。

 

 冷静というより冷酷と言ったほうがいいか。そんなこと考えていると、不安そうな表情のナルトが裾を掴んでいた。

 

「や、やりすぎだってばよ」

 

 やり過ぎてはいないと思う。力の使い方を間違えた大人達に処罰を与えただけだ。それもほんのさわり部分。だけれど、ナルトが怪我をしているのを見て、怒りが一時的に霧散する。先に治療してやりたいと思い携帯用忍具を開こうとした時、未来視が発動する。

 無意識に発動した未来視は、この場所に手練れの忍達が駆けつけてくる未来。

 

「……そう。ごめんだけど背中に乗って。はやく!」

 

 すぐに離れなければいけないとナルトを背負って、木ノ葉の森へと逃げ込む。この場所なら暫く追手はこないと知っていたから逃げ込んだ。

 

「ぜぇ、ぜぇ」

「大丈夫?」

 

 疲労困憊になり、無様にもナルトの前で仰向けに倒れてしまう。体を鍛えたつもりだったが、やはりまだまだ修行が足りないと実感する。

 

「なんでこんな山奥に来たんだってばよ」

「騒ぎを嗅ぎつけて……忍が集まる。それに、怪我してるでしょ?」

 

 息を整えて、ナルトの様子を見る。手のひらが擦り剝けている。あの男達にやられたのだろうか。

 

「ほんとだってばよ。さっき、こけたときに」

 

 ポーチから包帯と消毒液を取り出し、それでナルトに処置していく。消毒液が染みたのか涙目になるナルト。でも痛いと弱音を言わない姿にいじらしくなって頬を撫でてしまう。

 

「なんで、たすけてくれたんだってばよ」

 

 包帯を巻いてあげると、ナルトはそんな質問をしてくる。子供が襲われていた。だから助けるというのがおかしいのだろうか。

 しかし、シャナには思い当たる節があった。誰も自分を助けてくれないと感じた時、人を頼ることを止めてしまうのだ。故に、ナルトは人に助けられるという体験をしたことがないのだろう。 

 

「そう、約束したから」 

「約束? ふーん」

 

 シャナは約束したのだ。父と母に。ナルトを守ると。これまでは守れなかった、けれど今からは違う。

 この子を助けなければいけない。 

 

「いつも、こんな生活しているの?」

「そうだってばよ。なんでかしんねぇけど、里の奴らは、俺の事を認めてくれねぇんだ」

 

 聞きたくなかった事実。ナルトにとって迫害は、生活の一部になっていた。父さん母さんはナルトの未来と里の未来両方を守ったのに。里の人間たちは、ナルトを九尾の化け狐と扱って苦しめる。

 

「辛い?」

「しんどいってばよ」

 

 本心だろう。5歳の子供にそう言わせる里とはなんだ。こんな里に未来なんてあるのだろうか。シャナは自分の思い出したくない過去とナルトの現状を重ね合わせてしまう。

 

「姉ちゃんは、俺の事……姉ちゃん?」

 

 するとナルトは、シャナに疑問を投げかけようとした。だが、ナルトにふと「姉ちゃん」と呼ばれたことで感情のダムが決壊する。ずっとそう呼ばれたかった。九尾の事件さえなければ、ナルトも父と母に囲まれ、幸せに生きていた。

 すぐに自分が姉だと名乗り出ようか。

 

(私の事なんて知らないはずだってばね)

  

「え、なんだってばよ、腹痛いのか? 姉ちゃんって」

「なんでもない。大丈夫だってばね」

 

 ナルトはシャナを心配して背中を摩る。その優しさに、涙が止まらなくなる。必死に泣き止もうとするのに、色んな感情が渦巻いてしまう。

 優しい子だと思った。どれだけ非難されようとも本質的には、母や父のように優しい子なのだ。

 シャナはおもむろにナルトの肩を掴んでこう尋ねた。

 

「君は、木ノ葉の里を出たくない?」

 

 あぁそう言ってくれたら、命を懸けてでも里の外に逃がしてあげよう。ナルトの中にもあるだろう復讐の炎。恨みだって晴らしてあげる。こんな里に意味なんてない。

 

 

(里を抜けて、暮らしやすい所に行こうナルト。私は死ぬかもしれないけど、貴方だけでも救われる)

 

 シャナは、先見の写輪眼で里抜けをした未来を見た。九尾を逃がすわけにはいかないと総出で追ってくる忍達。シャナの力でも死は免れないが、ナルトを逃がすことには概ね成功する。

 

「里を出るって、どういう意味だってばよ」

「そのままの意味だってばね。木ノ葉の大人達は、皆あなたの敵。ならこんな里にいる意味なんてない」

 

 夕日が沈む前になら、里を抜けられる。

 

「でもさ、でもさ、それってもう木ノ葉には戻ってこれないんじゃ」

「うん」

 

 シャナの言葉にナルトは、考えを巡らせる。即答されると思っていたのに渋っていた。

 

「俺ってば、……俺ってば……」

「嫌なの?」

 

 詰め寄りそうになった。

 

「俺は、木ノ葉の里の奴らは嫌いだってばよ。……あの目が特に嫌いだ」

「わかるってばね。大人のああいう目は、私たちからしたら怖くて仕方ない」

 

 シャナの心に刻まれた傷。奇しくも同じ運命を歩んでいる姉弟。故に同じ思いだと思っていた。

 

「でも俺は、逃げないってばよ」

「逃げていいんだよ。お前が、お前が苦しむ必要なんて」

 

 ナルトは、火影岩を見ながら、シャナに言った。

 

「俺ってば、一度逃げたら、ずっと逃げなきゃいけなくなる気がする」

 

 確かにそうだ。木ノ葉を抜けたとしても、ナルトを迫害する人間達というのは絶対にいる。人柱力である以上、避けられない運命というものがある。

 今逃げれば、また逃げることになるかもしれない。未来を見られるシャナであっても、ナルトの未来全ては見られない。逃がすことはできても、シャナにはナルトを支え続けることはできない。結局のところ解決する見込みはない。

 

「だったら、俺は、逃げたくないってばよ。俺は、ずっげー忍になって、火影を超すんだ。そしたら、里の奴らだって俺を認めてくれるはずなんだ」

「火影になるってこと?」

  

 シャナは信じられなかった。ナルトは、自分の考えを持っていた。それはシャナの想定とは遥かに違うものだった。ナルトと自分の考えの違いに恐怖すら感じた。

 迫害されるなら逃げればいい。それがシャナの考えだ。逃避はなにも間違いではない。シャナはいつも困難を避けてきた。けれどナルトはシャナと違う。壁が立ちはだかればぶつかるしかない。

 

 壁を察知して迂回してきたシャナに、壁と向き合うナルトの考えは理解できない。

 

(なんで、ナルトはそんなに強く生きられるんだってばね)

 

「そうだってばよ。火影は、俺の夢なんだ」  

 

 沈みかけた夕日の光が、火影岩を照らす。そして、四代目火影の顔岩を強く照らした時、シャナはナルトが父によく似ていると思った。自分の夢を語り、屈託なく笑う弟。

 自分の両親を知らないのに、父と同じ火影を目指すという弟。

  

「こんなこと、誰にも言ったことないのに、なんか姉ちゃんには、言いたくなったってばよ」 

 

 自分の夢を語るナルトは照れていた。初めて口に出した夢を聞かされたシャナはひどく混乱する。まっすぐに自分の事を見る目。本気で言っているのだ。

 

 人柱力のナルトが、迫害されているナルトが、火影を目指す。それがどれだけ茨の道なのか、目の前の少年は理解しているのだろうか。地獄のような修業をし、どれだけの成果を上げても、ナルトは認められない。力をつければつけるだけ批難され、隔離されるかもしれない。

 そんな夢を追い求める弟を止めてあげるのが自分の勤めだろうと、シャナはナルトを気絶させてでも連れ出そうとした。弟はまだ幼い、だから私が。

 

「俺ってば、まだまだ弱いけど姉ちゃんみたいに強くなって、いつか姉ちゃんのことも守れるような火影になる!」

 

 ナルトを気絶させようとしたシャナの手が止まる。止まってはいけない。ここはナルトの意思を無視してでも連れていかなければいけない。なのに、なのに。

 

(動け。これは全部ナルトの為なんだ。恨まれたって良い、ただ姉として最初で最後に弟の世話をしたいだけ)

 

 シャナの写輪眼には、弟の姿の背後に、彼と寄り添う父と母の姿が見えた。いるはずがない、ただ弟の面影から父と母を投影してしまっただけだろう。なのに、ナルトから父と母を感じ取ってしまった。

 二人の意志を受け継いでいるナルトの様子に、両親の表情は穏やかだった。

 里の為に命を懸けた二人。自分は里を平気で捨てられるのに、弟のナルトは、里を守るという意思を宿している。

 

(でも、でも、こんな地獄に……)

 

 こんな地獄に弟を置き去りにしたくない。けれど、父と母の遺志を継いでいるナルトの夢を否定する言葉が出ない。ナルトを守ると決めたのに。

 

「姉ちゃん、また泣いてるのか?」 

「これだけは答えてほしい。辛い道になる、なれないかもしれない、人生無駄にするかもしれない。それでも、無謀にも、火影になるっていうの?」

 

 シャナはなぜ自分がこんな質問をしたかわからない。どう考えたってナンセンスだった。頭では連れて逃げる事しかないと思っている。

 なのに胸の奥で、強い衝動がシャナの考えを否定する。ナルトを守る。それはどうやって守ることなのだろう。

 父と母に託された弟を守るとは、両親の本当の願いとはなんだろうか。

 

「絶対になる!」 

(あぁ、この子は、父さん母さんの血を継いでる)

 

 自分の独りよがりな面に気が付いた。そしてこの子は、非常に頑固で負けず嫌いなのだろう。迫害から逃げたくて仕方なかったシャナと違い、見返すそれがナルトの考え。母と同じく、決して負けない強さを持っている。

 

(私の最善は、ナルトにとって)

 

 自分の考えを優先し、ナルトの気持ちを考えていなかったのは、シャナも里も同じだった。

 日が沈む瞬間、シャナの未来視が勝手に働いてしまう。これは本当にランダムで発動する眩暈のようなものだった。

 

 

――――――――

 

 遠い未来、大人になり火影になったナルトが家族に囲まれている光景。ぼやけて詳しくは見れないが、はるかに遠い未来の気がする。 

 数多くの辛く切ない未来の中で、唯一輝く未来。それを目指すというナルト。

 

―――――

 

(そんな未来もあるんだ……) 

 

 シャナがナルトに伸ばした手は、彼に小指を差し出していた。ナルトは、シャナの小指を見て、不思議そうに眺めている。

 

「なら約束しようってばね。指切り」

「ゆびきり?」

「こうやって小指と小指で繋いで、絶対に約束は守るって誓うの」

 

 ナルトは喜びながらシャナと指切りする。

 

「何があっても火影になる。男の子に二言はないってばね?」

「うん! まっすぐ自分の言葉はまげねぇ! 約束するってばよ!」

「そっか。私も応援するってばね」

 

 二人の姉弟は、初めて指切りをした。シャナは母と初めて指切りした日を思い出す。そして言葉に出さないが、心の中でナルトに約束をした。

 

(少しの間だけ我慢してってばね。必ず私が迎えに行くから。私も絶対にお前を守る)

 

 少しの間、ナルトはつらい思いをする。それは確定だ。日も暮れてしまい、もう里抜けは不可能。

 力だけでなく、家族としてナルトを守る。それが父と母の願いだったのだろうか。シャナが一番望み、失ったもの。はじめから持っていなかったナルトに与えてあげる事こそ、自分の役目。

 

 シャナは、ナルトを抱きしめた。突然抱き締められたナルトは、「え、えぇ?」と困惑しているが、温もりに飢えていたナルトもシャナを抱きしめる。

 ナルトも次第に瞳に涙を溜め、やがて泣き出してしまう。悲しい訳でもないのに、力いっぱい泣いた。

 

 泣き止んだ二人は、お腹が空いたため、森と川で魚や木の実を取って焚火で焼いて食べた。二人とも軽い会話をしながら食事を楽しんだ。シャナは弟と初めての食事、ナルトにとっては、自分を認めてくれた人との食事。

 しばらくするとナルトは眠ってしまい、シャナはナルトを膝に寝かせながら、頭を撫でていた。

 火遁で焚火を起こし、弟の寝顔を眺めていると、ある人物が森に現れた。

 

「再会は、済んだかのう?」

「三代目火影、お前は、この場で殺してもいい」

 

 シャナは、クナイを向け粒遁の刃を伸ばし、離れた位置にいる三代目火影の首に向ける。

 だが、火影との間に割り込んだ人物がいた。

 

「やめろシャナ」

 

 割り込んだ人物は、右手に雷のチャクラを迸らせながら、火影に危害を加えれば殺すと殺気を向けてくる。その人は、シャナのよく知る人物、銀髪に覆面姿だが左目だけ写輪眼を持つ男、父の弟子であるコピー忍者、はたけカカシだった。

 

「カカシ。その術うるさいってばね。ナルトが起きちゃう」

 

カカシの術は、チチチと音を立てているため、眠っているナルトを起こすなと怒る。だが火影に刃を向けたシャナを警戒しない訳にはいかない。

 火影やカカシが此処にいるのは、シャナがナルトを攫い、里の忍を襲ったという報告を受けたからだ。

 

「カカシ、下がっておれ」

「しかし!」

「なぁに、少し話をするだけじゃ。のうシャナ」

 

 三代目は、カカシを下がらせ、シャナの前に腰かける。シャナはずっと三代目火影を睨んだまま、大人しくしている。

 

「お前の言いたいことは良く分かる」

「黙れ」

「……全てワシの責任じゃ。ナルトを、ワシは守れんかった」

「そう、お前はなにも守れない。断言するってばね。お前の死は、きっと無意味だ」

 

 シャナは、意地悪そうにそう言った。ナルトを膝枕していなければ、三代目の顔面を殴りたいほどだった。

 

「本当なら、こんな里滅茶苦茶にしてやりたいってばね。けど、この子の夢を奪う訳にはいかない」

 

 三代目は、シャナの目を見て取引を持ち掛けられていると気が付いた。上忍中忍を8歳の少女が再起不能にしたという報告は聞いている。

 全員医療班に搬送されるほどの重傷を負っていた。的確に急所を突いた戦術。

 

(ミナトやクシナの遺した片割れ。ここまでとは) 

 

 里に不信感と復讐心を抱えたこの子が、里で最も強くなる可能性を秘めている。それは、木ノ葉の里が、シャナという存在を怪物へと変えている証拠。

 火影という責務に忙殺され、さらにダンゾウの動きや他里の動きに目を光らせていた間、シャナという少女は怪物へと変貌していた。本当に大切なものに目を向けていなかった。

 ホムラやコハル、ダンゾウといった同期の者たちを信用しすぎていた。ナルトの事を頼んだ者たちに裏切られた。しかし、それはヒルゼンの怠慢というほかなかった。良かれと思い、したことの多くが、この姉弟に地獄を見せていた。

 

 ナルトの件が、シャナの逆鱗に触れたことは間違いない。シャナはナルトを連れて里から出ようとしていた。里に対する不信感と、ナルトを守るという使命感、そして憎しみ。全ての要素がその決断を迫らせた。

 ここでシャナを捕らえる事はできるだろう。

 だが、これ以上ミナトとクシナが遺した二人を追い詰めたくはなかった。それに今度は、ナルトが暴走しないとも限らん。たった半日とはいえ、ナルトにとってシャナは重要な人間になったはず。

 

(今更償うことは出来ん。だが、もう見て見ぬふりは出来ん)

 

「望みを聞こう。ワシが直接管理する。……だが、まだ一緒に暮らさせることは出来んぞ」

「お前らの首……冗談だってばね。ナルトの身柄を守れ。数年でいい。数年で私はすべてを解決する。そうだな、カカシとその部下を護衛にしろ」

 

 シャナは三代目火影に要求を並べていく。交渉材料となるのは、シャナの能力。里中が捜索に出たのに、二人は最終的に夜遅くまで里に潜伏できたこと。結界を平気で突破する術や、上忍クラスを打ち倒す戦闘力。そして、万華鏡写輪眼。

 力での脅し。子供であるシャナには、それしかなかった。当然長くは続かない。けど、三代目火影の影響力のあるうちに、全てを整える。そのための時間はあった。

 

 シャナは望みを伝えていく。

 ナルトの身を守れ。ナルトを利用させるな。ナルトの事を考えてくれる大人を身近に置いてやれ。などを伝えた。そのすべてがヒルゼンによって約束された。

 特に護衛の人選は、もともと知り合いのカカシを選んだ。火影直属の暗部であるカカシなら、裏から守るくらいは可能だろう。

 

「お前の事は望まんのか?」  

「望まない。私は自分で解決できるってばね。

 それに、ナルトはこれからも辛い目に遭い続ける。……それを思えば、私の苦しみなんて軽いもの」

 

 シャナの願いは、全て聞き入れられた。そして、今回の騒動も、三代目火影の権限でもみ消すと宣言した。幸い、ダンゾウは他里に会談に出かけているため、今のうちに全てを終わらせておくと言っていた。

 夜遅くになり、そろそろ家に帰らなければいけなくなった。 

 

 だが、シャナは「まだ帰らない」と言い張る。約5年の月日をかけて出会った姉弟。別れが惜しいと思うのは当然かと考える三代目。だが、いつまでも一緒に居ることはできない。

 シャナは、三代目に「今何時だってばね」と尋ねる。

 

「今は、ちょうど日付が変わったところじゃな」

 

 三代目は、懐中時計を胸から出しそう告げた。すると、シャナは、ナルトの髪を撫でながら、額にキスをした。突然そんなことを始めたシャナに驚く三代目だが、シャナは気にしない。

 

「誕生日おめでとうナルト。姉さん、まだ帰れないけど、必ず迎えに行くからね」

 

 そうしてシャナは、自分の懐に持っていた父ミナトのクナイを取り出して、ナルトの手に握らせた。大切にし、肌身離さず持っていたクナイをナルトに預けたシャナ。

 ゆっくりとナルトを起こさないように立ち上がり、「帰るってばね」と告げた。

 

「カカシ」 

「ハッ」

「シャナを送ってやれ」

 

 傍に控えていたカカシが三代目の指示で再び現れる。ナルトは、三代目が連れて帰る故、カカシはシャナを送り届けろと命じる。その命令を受けたカカシは、少し悩んだ後、シャナを連れてうちはの集落へと向かう。既に里の警戒態勢は解除され、シャナが出歩いても誰も気にしなかった。

 しばらく会話のなかった2人だったが、シャナからカカシに口を開いたのだった。

 

「久しぶりカカシ」

「……あぁ。確かに久しぶりだな」

「オビトも久しぶりだってばね」

 

 シャナの言葉にカカシは、何も言えなくなる。シャナは、青い写輪眼でカカシの左目を見てそう言った。カカシに移植されたオビトの写輪眼に向けて呼びかけたのだ。

 やはり、シャナはオビトの事を忘れてはいない。同時にオビトの死の原因となった自分を恨んでいるのだとはっきり感じる。

 

「冗談だってばね」

「いや、いいんだ」

「皆居なくなっちゃったってばね。カカシも私も」

 

 シャナは、カカシを恨んでなどいなかった。これは本当だった。オビトとリンの死からカカシは一度もシャナに会ってはいなかった。そしてミナトとクシナも失い、シャナとカカシは、大切な人をすべて失った共通点があった。

 ただ、カカシに会いたいという感情はあったのだ。同じ痛みを知るものとして、痛みを共有したかったのか、慰めたかったのかは、シャナにもわからない。

 ただ、寂しかった。それは間違いなかった。

 

「ナルトの事、頼むってばね」

「俺にそんな役をさせて平気なのか? 俺はオビトとリンを死なせておめおめと帰ってくるような……」

「私だってお父さんとお母さんを目の前で死なせたってばね」

 

 それは違う。そうカカシは叫びたかった。だが強い後悔の念を宿した声色に、そんな言葉は慰めにもならないと知る。自分の力不足を悔いているのだ。三歳だった少女が。

 

「ずっとカカシに頼めないのは、わかってる。だから数年でいいの」

「数年でどうする気だ」

「全部黙らせるってばね。……私、強くなったってばね」

 

 確かに。カカシはそう思った。さっき向き合った時、本気でカカシが仕掛ければ、カカシは死んでいたと感じる。錯覚かもしれない。けれど、この少女は、そう思わせるだけの自信と強さを持っている。

 

「でも、もっと強くなる。火影すら超えるほどに」

 

 三代目に交渉していた不気味な少女はそこになく、将来の夢を語るような子供の顔で、少女はカカシに宣言した。

 

「だから、お願いだってばね。やることが多いの」

「あぁ。任せろ」

 

 うちはの集落についたシャナは、警務部隊に囲まれながら、カカシに手を振って別れた。その後、シャナは、2年後の<<あの事件>>まで、うちはの集落から出ることはなかった。

 

 




 ナルトなら、逃げ道を用意されても逃げない。それが私の見解ですかね。里抜けを示唆しながら、原作に戻って申し訳ない。

 仮にナルトを気絶させて、里を出ていた場合は、シャナとナルトは生き別れになります。ナルトは、雲隠れの忍になり、ビーを師匠として仲良くなる。そして暁の尾獣狩りにも挑みます。
 
 けれど、暁のメンバーには、青い写輪眼の女性が居て、一度死んだ後、記憶喪失で生き返った彼女は、仮面の男に与えられた月の目計画の為にナルトと戦うルートに入ります。

 九尾の英雄 対 暁の閃光 ルートですかね。妄想は以上です。
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