シャナ達が光の柱に消えたあと、第四班の面々は、次から次に乱立する建物や何処から現れたかも不明な傀儡兵に襲撃され、激戦を繰り広げていた。
しかし、突然の地響きと共に広大な国家は全て砂へと変わり、傀儡兵たちもボロボロに崩れ去っていった。
「えぇ、今度は何!?」
「わからないが、異変が終わったんだろうか」
トルネ達も傍で木遁を使って身を守っていたヤマトも周囲の警戒を促し、消えたシャナの捜索をしようと言う。だが彼らが捜索するよりも前に、当然空からシャナとグライアが落ちてくる。
二人とも気絶しているのかこのままでは地面に叩きつけられるだろう。
「木遁の術。なんで二人が」
二人が落下する地点にヤマトが木遁で柔らかな葉っぱのクッションを作り出し受け止める。
シャナが無事そうで安心するが、グライアも気を失っており、何があったのか確認する前に、木遁で拘束するのを忘れない。
少し全員で休んでいると、シャナが目を覚ました。
「あれ、皆だ。私帰ってきたんだってばね?」
「シャナ!! もう、どこにいってたの! ずっと探してたんだけど!!」
「私もいろいろ忙しかったんだってばね。戦って戦って、戦って」
チョークスリーパーをかけられながら尋問されるシャナ。苦しみながらもどこかスッキリした表情で、光の先で戦闘があったと説明する。その戦闘でムカデをグライアとの共闘で撃破し殺害したことをヤマトに報告する。
大まかな説明だが、戻ってきたのが二人だけでムカデの姿はない。それが何よりの証拠だろうと、ヤマトは任務の達成を理解した。
「ムカデの件はわかったよ。それより彼女をどうするかだ。今回、彼女は敵だったし、国際指名手配されているから、木ノ葉に連行するにしても報告を先にしなきゃ行けないし」
シャナと互角のグライアをどう連行すればいいのか考えるヤマト。
連行するという話を聞いたシャナが「連行しない」と告げる。
「急にどうした。一度共闘したから、情でも湧いたのか」
特別グライアを警戒しているトルネ。彼女が目を覚まし、暴れるようなことがあれば仕留める準備をしている。八雲はシャナにチョークスリーパーを継続しながら、シャナの意見に耳を貸そうとしている。
「連行するのはいいけど、私は手伝わないってばね。それでもやるの?」
シャナは任務はムカデの暗殺であり、グライアを殺すことも捕まえる事もする気がないと宣言する。確かに任務はないが犯罪者を野放しというのも問題だ。
だがなによりも問題なのは、シャナが手を貸さないという状況でグライアを完全に抑え続けられるかという問題。冗談でなく、シャナはグライアが暴れても一切気にせず木ノ葉に帰ってしまうだろう。
そういうところがあるのがシャナだ。トルネと八雲が居れば、どうにか抑えられるはず。けれども危ない賭けになる。
「この人起きたら襲ってくるの?」
「それはないと思うってばね。泣き出すかもしれないけど」
シャナの言葉に3人共首を傾げていると、人の気配が近づいているのを感じた。その方向を見れば、赤毛の女性二人がこちらに向かって歩いてきた。服装は民族衣装で片方がシャナ達と同年代で、もう片方がその母親と思われた。
「「「「!?」」」」
彼女たちの顔を見た4人が言葉もなく驚く。その顔が今まさに拘束され眠っているグライアそっくりだったのだ。母親の方は、少し駆け足で歩いてきながら、シャナの顔を見て驚き、次に気絶しているグライアに駆け寄る。
「ちょ、ちょっと。彼女は危険人物です。迂闊に近寄っては危ない。それに、貴方方は何者なんだ?」
ヤマトが彼女たちを制止する。見るからに一般市民だが、グライアを起こされては敵わない。しかし、そんなヤマトをシャナが手を掴んで止める。
「感動の再会だから。野暮なことしちゃいけないってばね」
「え!? 全く意味が解らないんだけど」
「女王様だってばね。そっちからすると久しぶりだってばね」
シャナが親しそうに話しかけると、女性は少し懐かしいものを見るような目で見ながら頷いた。
「随分と長い間、この日を待ってました。お元気そうですねシャナ」
「私は、今帰ったばっかりだからボロボロだってばね。早くグライア起こしてあげるってばね」
「シャナ。自分が何を言っているのかわかってるんだな」
「そうだよ。急に変なこと言って……責任取れるの?」
「まかせろってばね」
シャナがとんでもないことを言うのでトルネと八雲が止めようとするが、シャナの真面目な表情を見て、女性を通す事に決めた二人。
グライアの傍まで近づいた女性、サーラはグライアの頬を撫でる。頬を撫でられたグライアがくすぐったそうにした後、目を覚ます。
「ん? あ? あれ、ウチ。負けて……あんた、オカン? え、うお」
「おかえりなさい。ラーナ」
グライアは、寝ぼけているような状態から自分の頬を撫でながら、大泣きしている女性に驚く。その顔は母親であった先代女王にそっくりだった。だけど、グライアは一目見てわかった。彼女が自分の愛したサーラであると察し、拘束を引き千切って抱き着いた。
「姫さん、あんで、なんで、ウチ、帰ってきたはずやのに」
「落ち着きなさいラーナ。たぶん貴方のおかげです。貴方達が帰った後、必死に生きてきました。結果的に楼蘭は滅んでしまいましたが民を守ることは出来ました。今は民と一緒に別の土地で生きているのです。
それでもあなたが帰ってくるのをずっと待っていたのです」
成長し年を重ねたサーラは、本当に愛おしそうにグライアを抱きしめた。グライアからは一瞬の出来事でもサーラからすれば何十年待ったことだろうか。
ずっと待ち続けていたのだろう。彼女が帰ってくるのを。
だが本来の歴史では、サーラは死んでいた。だが今こうしてサーラが生きている理由がグライアにはわからない。
しかし、そんなことを気にする間もなく、涙があふれ、サーラの胸でなりふり構わず大泣きしてしまう。もう会えない筈だった。既に死んでいるはずだった家族を抱きしめ、グライアは心から泣いた。
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泣き止んだグライアは、サーラの背後にいる自分と同じ顔をした少女を見た。
「だ、れ?」
「あ、叔母様。私は母の娘です。名をセーラと申します」
「むすめ? ひめさん、けっこんしたん? うぅう、おめでとーーおおぉお」
「まだ泣きますか。昔はこんなに泣き虫じゃなかったでしょうに。家に帰ったら家族を紹介します。後、息子が一人と娘が二人もいるんですよ」
「よく見たら、老けとる」
「ぶん殴りますよラーナ」
意外と子だくさんだったサーラ。それを聞いてグライアは頭の整理がついていない様子だった。だが、目の端に映る第四班の存在が、サーラの言う日常に戻るためには邪魔になる。
「ヤマト」
「隊長だよ。何だい?」
「帰ろってばね。左腕折れてるし、ボロボロで病院行きたいってばね」
感動の家族の再会に水を差すなと目で訴えかけるシャナ。ヤマトは木ノ葉隠れの上忍として、今取るべき行動は何かと考えているが、シャナが腕を見せると本当に折れているようで急いで病院に行く必要があるだろう。
「わかった。トルネ、八雲、シャナを連れて病院に行くよ。グライアの移送もシャナが居ないと無理だし、これは仕方ないね。けれど、警告はさせてもらう」
ヤマトは、グライアとサーラ達の方に歩いて行く。
「どういった事情があるかはわからないが、国崩しのグライア。君の事を我々は任務の為見逃すことになった。けれど、もし木ノ葉の国境内で君が姿を現せば、我々は容赦なく君を排除する」
あくまで警告。グライアの今の様子を見て、危険性は低いと判断した。何よりも彼女との敵対をシャナが断固として拒否している。シャナは、問題児ではあるが任務には責任感を持っているし、闇雲に我儘を言うタイプではない。
我儘なのは確かだが、それを信用する信頼を彼女と築いている。故に警告だけで終わらせた。
木ノ葉には、ムカデ殺害だけを伝えればいい。グライアについては、知らぬ存ぜぬで貫こう。それがヤマトの考えだった。どの任務でも圧倒的実力で解決する教え子たちの後始末こそがヤマトの仕事だ。
もう慣れたものだ。それだけを伝えてシャナ達の所に戻ろうとしたが、シャナが歩いてグライアの前まで移動する。そして、しゃがみ込みながらグライアと目を合わせる。
「なんや」
「目真っ赤だってばね。私たちは帰るから、一つ警告。もし次この大陸で悪さしたら、すぐに駆け付けて殺してやるってばね。じゃ、元気で。女王陛下も元気で」
シャナにしてはさっぱりした別れ。それでもしっかり釘は刺しておく。
そして、今日を持ってグライアとシャナの因縁は終わったと宣言した。もうシャナにはグライアと戦う理由はなく、グライアのシャナに対する復讐も過去の激戦で終わった。だからこそ、全てを水に流すと目で語った。
欲望に振り回され暴れたグライアは、家族を得たことでその欲望が満たされた。なら、もう彼女が誰かから奪うことはない。
本来の歴史ならサーラは死んでいる。だが今回の事件でグライアが過去に滞在した時間が長すぎた影響か、彼女は本来の歴史よりも逞しく生きた。だからこそ、未来が少しだけ変わってしまっているのかもしれない。シャナは自分の未来視による時空間への影響をさほど感じない事から、奇跡ともいえた。
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時は流れ第四班と共に木ノ葉に戻ったシャナ。病院に運ばれ、想像以上に怪我がひどく治療を受け入院する事が決まった。ちょうどそのタイミングで砂隠れの風影が誘拐され、それをナルト達が奪還したと報告を受ける。
病室でお見舞いに来たヤマトが、果物籠を持ってきながら説明してくれていた。
八雲とトルネは生憎別任務に駆り出されてしまい、彼が訪ねてきたのだ。
「我愛羅君、生きて帰ってこれたんだってばね」
「そうだよ。それに春野サクラが砂がくれのチヨバア様と協力し、赤砂のサソリを撃破。もう一人、昔君が腕を切り落としたデイダラをカカシさんとナルトが倒したそうだよ」
「あいつらかなり強かったはずだけど、意外とやるってばね」
暁の戦力は、シャナでも油断できない脅威と認識している。それを撃破した第七班の話を聞いてシャナは素直に称賛した。
そこから本題とばかりに、ヤマトが続ける。
「そこでサソリからサクラが、大蛇丸についての情報を確保したらしい」
「大蛇丸に繋がったんだってばね?」
「そうだよ。本来なら、第七班で大蛇丸の所在を掴む任務が発令される筈だったんだ。うちはサスケについて思い入れのある彼らがね。ただ部隊長のカカシ先輩が万華鏡写輪眼を使った副作用でしばらく動けなくなって、代わりに僕が第七班を率いる事になったんだ」
五代目火影からの命を受けたというヤマト。第四班を率いているヤマトなら経験も十分だし、なにより木遁使いの彼ならナルトの中の九尾が暴走しても抑えられる。その上での人選だった。もう一つ、先の任務でナルトの中の九尾が暴走の兆しを見せたというのも理由だった。
それを報告しながら、シャナが飛び出していかないか心配だったがシャナは落ち着いて話を聞いていた。
「ヤマト隊長」
「隊長だよ、えぇ!? 何急に」
「ナルトのことよろしく頼むってばね。サスケに関する事だしナルトの事もあって一緒に行きたいけど、九尾が不安定なら、私は一緒に行けない」
ナルトの中の九尾が暴走すれば、シャナは感情を制御できなくなる。それが任務の失敗につながると分かっていたからだ。ならば一番信頼できる大人に、ナルトを頼むとシャナは決めていた。
自来也とカカシも信頼しているが、一番付き合いが長く一度もシャナを裏切らなかったヤマトになら、シャナは安心してナルトを預けられる。
「わかった。僕の命にかけても、ナルトを守るよ」
「死んじゃだめだってばね。それにナルトもそんなに軟じゃない筈だってばね」
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ヤマトが病室を出ていってから、しばらくしたら、病室のドアが勢い良く開かれた。
「ねええちゃーーーん!!」
「お、ナルト!? どうしたんだってばね」
病室に入ってきたのは、ナルトだった。ナルトは一度病院にカカシを運び込んでから帰宅。帰宅するとシャナが大怪我をして入院していると大家に聞かされたため大慌てで戻ってきたのだ。
そのせいで息が荒れて、汗だくになっていた。シャナはそんな弟を見て、手拭いで汗を拭ってあげる。
「なんで、入院してるんだってばよ。俺ってば、びっくりして、気が気がじゃなくって」
「いやー、敵に、雪の国にいたグライアって覚えてる? あいつがいてさ」
シャナの説明を受けたナルトは、雪の国で対峙した青い写輪眼を持つ赤毛の女を思い出した。恐ろしいほど強く怖い相手だった。それとまた戦ったのだという。
「俺が一緒だったら、姉ちゃんだって怪我しなくて」
「ナルトが居ても変わらないってばね」
「いや、俺ってば、暁の一人も倒したくらいすげー強くなってるんだってばよ」
「私一人で二人倒してるもん」
「ぐぬぬ」
シャナは実力について嘘は言わない。それがわかってナルトは姉のかわらない態度に安心しつつ、丸椅子に腰かけた。するとシャナがベッドの上で座りながらナルトの頭を撫でた。
「俺ってば、子供じゃねぇってばよ」
「そんなこといってるうちは子供なんだってばね。ひひ」
撫でられるのを嫌がるナルトだったが、シャナの折れている腕を見て抵抗を止める。
「それでナルト。姉ちゃん入院生活で暇してるんだってばね。今回の任務で何があったとか、話してくれると嬉しいな」
「いいけどよ。あのさ、あのさ」
ナルトは少し興奮気味に砂の国であった話を始めた。シャナとナルトの語らいは、病院の面会時間ギリギリまで続いたのだった。