NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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うちは一族抹殺事件 後編

シャナは、イタチが何をしてここにいるかを知っているようだった。イタチは最後のターゲットが自分から来たことに驚くも、好都合だと考え、シャナを睨む。

 刀を構え、殺気をシャナに向けるイタチ。

 殺気に当てられても動じないシャナは、青い写輪眼でイタチを睨み返す。だが警戒しているのか手裏剣は両手に構えている。

 

「シスイの遺志を継いだ結果がこれだってばね?」

「何故お前がそれを知っている」

 

 シャナは、イタチ相手にシスイの話をする。

 

「私は、数日前からシスイが死ぬことを知っていたってばね」 

「どういうことだ」

 

 イタチは知らなかった。シャナの青い写輪眼の秘密を。未来を見る写輪眼、先見の写輪眼を知っているのは義兄であるシスイのみだったからだ。

 

「私が何も知らないと思っていたのかイタチ?」

「ほう。お前が知っているというか、うちは一族のことを」

「フガクは、何も言わなかったのか」

 

 急に父親の名を出されたイタチが、嫌な予感がしたのか、万華鏡写輪眼でシャナを睨みつける。

 

「クーデターの戦力に私も数えられていたからな。もちろん断ったけど」

「本当に知っていたのか。呪われた一族のことを」

「……ナンセンスな一族だってばね」

 

 そう言い切ったシャナに、イタチは口元に笑みを浮かべる。同じ考えを持っていたからだ。酷く自虐的な笑みだった。

 

 クーデター。それは木ノ葉に不信感と不満を持ったうちは一族の計画していた作戦。

 里の上層部を万華鏡写輪眼を持ったフガク、そしてシスイにより制圧する予定だったがシスイは死亡。代わりに息子のイタチとで制圧。無血革命を起こすつもりだった。

 シャナは、万華鏡写輪眼を持っているため、うちは一族の大人達は、木ノ葉の里に対するクーデターの戦力扱いをしていた。だがあまりに幼いこともあり、フガクが阻止した。

 大人達だけで進められていたクーデター計画こそが、今日イタチによって引き起こされた、うちは虐殺事件の原因だった。

 

「けど、気持ちはわかるってばね。私にも大切なものがある」

「お前にか? お前は誰にも興味がないんだと思っていた」

「うちはに居ないだけ。私の事をお前は何も知らないってばね」

 

 イタチはシャナの事を確かに何も知らない。シャナの両親は見たことがあるが、弟の存在までは知らなかった。 

 

「それでは、シスイの死を知っていたとは?」

「言っても信じないだろうけど、私の目は特殊だってばね。あの人が死ぬことを予知したから、忠告はしておいた。けど、無駄だったってばね」

 

 シスイの事を話すシャナだったが予知などという言葉を信じるほど、イタチは甘くない。だが、この自分を殺しに来た相手に突拍子もないことを言う神経も理解できない。

 

「到底信じられないな。もし予知など言うものがあるなら、お前は俺の前に出てこず、隠れていたはずだ」

「なんでそう思うってばね?」

 

 イタチの挑発的な言葉にシャナも怒気を込めて聞く。

 

「何故か? お前は俺には勝てない。俺と向き合えば、死ぬのに出てくるはずがないだろ?」

「あぁ。そういうことか。私がお前より弱いって言ってるってばね」

 

 シャナは激怒していた。自分の力を侮られることに対して、人一番敏感な彼女は、すぐにでもイタチに襲い掛かろうかと考える。

 確かにイタチの言う通り、今日のようなことが起こるのはわかっていた。だから身を隠すことも十分可能だった。けれどある理由とサスケに対するイタチの行いに腹がたった。だから出てきたのだ。

 

「そろそろ、終わらせよう。言い残すことはあるか」

「何を勘違いしてるか知らないけど、私を殺すなんて100年早いってばね」

「そうだな、だが俺の術の前では100年は一瞬だ。月読!」

 

 イタチが、一瞬で終わらせてやるのが救いだと万華鏡写輪眼の瞳術を発動する。

 自身と目の合ったものを、自分の精神世界に引きずり込み。あらゆる法則が術者の思い通りに構築される世界では、時間の流れすら自在。実際は1秒しか経っていなくても、精神世界では3日過ごさせる事も出来る。

 その幻術をかけ、シャナのみ動きを完全に封じたのち、殺すというのがイタチの策だった。痛みは感じる間もなく死んでいる。

 

「ぐ」

 

 だが、油断しきっていたイタチは、青い閃光となったシャナの掌底を腹部に受け、吹っ飛ぶ。地面に転がったイタチはすぐに起き上がるが、咳き込みながらシャナを見て、目を大きく開く。

 

「馬鹿な、それは」

「万華鏡写輪眼。私が開眼したのは、3歳の時だってばね」

 

 最強の幻術、月読は、同じく万華鏡写輪眼を持つシャナの瞳力の前に敗れた。瞬時に月読を解除したシャナ。シャナの幼少から使い続けている写輪眼の瞳術は、うちは一族の歴史から見ても最高峰という他なく、洞察力もさることながら、幻術に対する耐性に関しては、無敵とも言えた。

 そしてシャナは、青い万華鏡写輪眼でイタチを見つめながら続ける。

 

「3歳だと、そんな馬鹿なことが」 

「事実だってばね。私の両親が死んだとき、九尾事件の時に開眼したんだってばね」

 

 イタチは、想定外の事態に頭を働かせる。イタチの目的は、うちは一族を皆殺しにする代わりに、弟だけは助けるよう契約した。弟を救うためだけに、一族を捨てる覚悟を決めていた。

 それは概ね成功していた。クーデターなど起こせば、サスケも含めて全滅する未来を変えるために、自分を犠牲にした考えだった。

 だが、最後の最後で、とんでもない伏兵が居た。

 

「力を偽っていたのか」

「使いこなせなかっただけだってばね。まぁ組手の時は、手を抜いていたのは事実だってばね。イタチは知らないと思うけど、全力の私はシスイに一度も負けたことがない」

 

 うちはシスイは素晴らしい忍で、イタチの兄のような人物。何度も模擬戦をし、その実力は自身以上だと認めていた。そのシスイより強かったのは、自分より年下の少女なのだから、世の中よく分からないと感じた。

 

「自分の知識と思い込みで、お前を過小評価していたのか、俺は」

「少なくとも目に関しては、お前は私に勝てないってばね」

 

 両手を合わせて粒遁の用意をするシャナ。イタチは火遁の印を結び、先に術を発動する。イタチの豪火球が迫るが、シャナはそれを気にせず粒遁・天輪を発動。集束された粒子は、熱と速度を持って豪火球の術を貫通。イタチに命中する。そして、イタチの上半身が消し飛んだと同時に、煙を上げて消える。これは影分身による陽動だったのだ。

 そして、火遁の影に隠れて接近したイタチの本体。イタチを見ているシャナの背後には、手裏剣。逃げ場はなかった。その刃がシャナの体に触れる瞬間、シャナの体が青い光に包まれ、目に留まらぬ速度で移動する。

 

「ぐ」

 

 亜音速での高速移動。その衝撃波が手裏剣とイタチの体を吹き飛ばした。風圧で体に裂傷を負うイタチだが、空中でシャナの移動先をとらえ、火遁・鳳仙花の術を発動。

 

 炎が再びシャナへと向かい、光から元に戻ったシャナの体を焼き尽くす。

 

「よそ見すんな」

 

 しかし、炎が当たったのは、シャナの影分身だった。本体は、イタチの背後に回り込んでおり、彼の背中を蹴りつけた。

 地面に叩きつけられたイタチだったが、落下する寸前に受け身を取り、距離を取る。

 

「粒遁・天倫!」

 

 空中でチャクラ粒子を集束、粒子砲を発射するシャナ。イタチは瞬身の術でシャナをかく乱しようとするが、シャナの万華鏡にはすべて見えている。着地前に2発ほど発射し、全てイタチにギリギリ当たらない位置に着弾する。

 

(強い。これほどか)

(やっぱり優秀だってばね。上手く躱してる)

 

 全弾避けられたシャナは、森に身を隠したイタチを追う。一方イタチは、シャナの強さを感じ、森で息を潜める。シャナの実力を見誤っていたイタチは、残り時間が短いことを考える。

 このままでは、シャナを殺すことが出来ない。それは、サスケのみ生き残らせる目論見がうまくいかないことを示す。これではダンゾウとの取引が成立しなくなる。

 

「自分の弟に、殺しに来いと言っていたが、それがお前の望みなのかってばね!」

 

 シャナは森にいるであろうイタチに話しかける。シャナは、イタチとサスケの会話を聞いていたからこそ、ここに現れたのだ。

 

「はっきり言ってやる。復讐心を抱えながら、生きたような奴はろくでもないやつになる。私のような心に欠陥を抱えた人間になってもいいのか?

 それにお前は泣いていた。身を削ってまで、弟に恨まれてまで、成したいことって何だってばね!

 

 私はお前の事が嫌いだ。でも、サスケに対する気持ちだけは認めていたのに」 

「お前にはわからない。お前が俺の何を知っている!!」

 

 森の奥からクナイの雨と共にイタチが飛び出してくる。シャナは、クナイを手裏剣で全て迎撃し、間を縫うように迫る刃をクナイで受け止める。激昂の表情をしたイタチが、何度もシャナに刃を振るう。

 その勢いに押され、シャナは防戦一方になる。

 女性と男性の筋力の違いか、シャナの体が木に叩きつけられる。木に叩きつけられたシャナに詰め寄り、クナイで刀を受け止めた彼女を壁に押さえつけるイタチ。

 

「お前を始末すればサスケは助かる!! そのために、俺は一族を捨てたんだ、これ以上邪魔はさせん!」

「私にもお前の考えはわからない。けど、唯一共感する所があった」

 

 イタチの腹に蹴りをお見舞いし、木の上に垂直に立ったシャナは、イタチに手裏剣を投擲。すぐに避けたイタチだったが、シャナは手と口で咥えたワイヤーを操作する。操手裏剣の術でイタチを追い詰め、木に拘束する。

 ワイヤーで固定されたイタチは、刀でワイヤーを斬ろうとするが、シャナの手裏剣によって刀を木に固定される。

 

「弟を思う気持ちだけは同じだと思っていたのに。お前は選択を間違えた」

「何を言っている。お前に弟なんて」

「いるってばね。私には会いたくても会えない弟がいるんだってばね。いいかイタチ、私たちが、勝手に弟の将来を考えたって、それは可能性を潰すことにしかならない。

 サスケはこれからどう生きていくと思う。恨みと憎しみを抱え、大好きだった自慢の兄を殺す人生。そんなことを望んでいると思うのか」

 

 シャナは2年前、ナルトの未来を自分の考えで決めようとした。もし、あの時思い止まらなければ、イタチと同じく、弟の人生を歪めてしまうところだった。確かに最善ではある、だがそれが望みではないのだ。

 シャナにとってイタチの行動は、理解はできる。うちはのクーデターによって、一族全員が滅びるくらいなら、弟だけでも。そう考えたのだろう。

 けれど、それでもサスケに後始末を押し付けるような行為は許せなかった。

 

「何も知らない小娘が、俺が何も考えなかったと思うか、すでに手詰まりだったんだ」

「なら、サスケにだけでも真実を伝えるべきだったってばね。どのみち恨まれるのなら」

「それでは、サスケは俺を殺せない! サスケは、うちはに残された最後の未来になる。そして将来、抜け忍になった俺を殺せるだけの力を持てば、サスケはうちは一族を亡ぼした敵を討った英雄となる。

 それこそがサスケの人生を考えた結果だ。だから、ここでお前は死ねシャナ!」 

 

 滅びるしかない一族を再興する手段、それはイタチの脚本した復讐物語。その主人公にサスケを配置することだった。

 イタチに詰め寄っていたシャナだったが、突然イタチの体が爆発。目の前にいたイタチは影分身であり、彼はそれを爆発させることで、回避不可能な攻撃を仕掛けた。

 大爆発という規模のそれは、間違いなくシャナを捕らえた。その一部始終を写輪眼で見ていたイタチは、木の影から現れる。

 

 強敵だったがどうやら時間までに始末できた。写輪眼を解除したイタチは、チャクラ不足とスタミナ切れを感じていた。影分身にチャクラを割き過ぎたと、相手の手ごわさに溜息を吐く。

 

「気が済んだか?」

「……嘘だ」

 

 イタチの素直な感想だった。ゼロ距離の大爆発。跡形すら残らない規模の爆発だったのに、シャナは生きていた。それも無傷で。

 シャナの体は、青いチャクラでできた骸骨のような巨人に覆われており、6本腕の巨人は、腕を組みながらイタチを睨んでいる。

 

「私はお前より強いよイタチ」

「……そのようだな。殺せ」

 

 今のイタチにシャナを殺すことはできない。そうイタチ自身が認めた。その瞬間、シャナは青い巨人を解除する。まるで敵意などなかったように、シャナも写輪眼を解除し紫の瞳に戻る。

 

「なぜ、殺さない。俺はお前に敗れた」

「私の目的は、お前の真相を聞き出すことと、シスイの両親の敵討ちだ」

 

 そういって、シャナは、イタチの右頬をぶん殴った。殴られたイタチは驚くも、倒れはしない。

 

「これでいい。あの二人は復讐に取りつかれてしまった。だから、この結末は、よかったのかもしれない。だが私にも義理はある。この一発で済ませてやるってばね」

 

 豹変した夫婦は、シャナから見ても心苦しかった。そして、サスケに対する考えと思いを聞いてしまった今、争う理由はなかった。

 

「もう時間切れなんだろ?」

「……」

「悪いが、私はナルトの所に帰るため、死ぬわけにはいかないってばね」

「ナルト……、そうかお前の弟というのは、九尾の」

 

 ナルトを九尾と言われたことで腹が立つが、今は怒ってる暇はないのである。

 

「弟に会いたいのか?」

「会いたいから、頑張ってるんだってばね」

 

 自分の力はすべてそのために磨いている。だが、うちはのクーデターが発覚し、弟への被害を止めるために時間を使い過ぎた。どうにかクーデターを阻止できないか考えていたが、今回は時間切れだった。

 だからこそ、真意を知った今、イタチと敵対する理由がなくなった。イタチもシャナを殺せない。

 なら、お互いに利用しあうべきなのだ。

 

「取引をしないかシャナ」 

「何を望んでる?」 

 

 シャナの問いにイタチは、答える。

 

「俺は、どのみち木ノ葉の上層部に釘を刺す予定だった。そこに条件を加えるだけだからな。望むのは、サスケを鍛えてやってくれ、お前なら出来るだろう」

「……サスケに、お前を殺させる手伝いをしろと?」

「そうだ。俺より強いお前なら、弟を任せられる」

「私はお前の考えに否定的なんだけど」

 

 シャナはイタチの考えが気に入らない。なのに、その手助けをしろとはどういうことだと詰め寄る。

 

「お前がサスケを見守ってくれるなら、俺は里の上層部にお前が弟と暮らせるように、譲歩させる事が出来る」

「……」

「俺は抜け忍となり、ダンゾウ達に俺との契約を違えれば里の機密を漏らすと伝える。そうなれば、奴らは従わざるを得ない」

 

 シャナは思案する。未来視を使ってその結末を追えば、確かに成功する確率は高い。

 彼女の様子を見ていたイタチは、シャナの目が写輪眼ではなく、ただ青くなっていることに気が付いた。

 

「その青い瞳、それがさっき言っていた予知か?」 

「そう。私は未来視が出来る。それに写輪眼を組み合わせて、使えるのが私の写輪眼。シスイが言うには先見の写輪眼」

 

 シスイらしいなとイタチが笑う。

 

「イタチ。その条件を飲んでもいい。だけど、私はサスケの意思を無視しない。あの子の考えを優先し、任せることにする。それに復讐者を育てるつもりはない。私はあいつを強くするだけだ。その方針に文句は言わせないってばね」

 

 サスケが復讐を望まなければ、シャナはサスケを鍛えない。これだけは譲れない。弟分として、可愛がっていた子でもある。なるべく冷たく接してはいたが、それでも親しい存在なのは間違いなかっただろう。

 そんな子に、復讐を背負って生きる宿命は、重すぎるのだ。

 純粋なサスケは、何色にも染まってしまう危うさがある。そして染まったが最後戻ってこられなくなる。

 

「それでいい。後は頼んだ……」

 

 イタチはそう言い残し、その場から消える。おそらく里の上層部へ、向かったのだろう。シャナは、イタチが居なくなった所で、膝から崩れ落ち全身の痛みに耐える。

 

「く、ぐううう、あああ」

 

 ギリギリの勝負だった。後数秒イタチが留まれば、シャナは無防備な姿を晒すところだった。最後に使った術は、シャナの持つ最大の防御と攻撃方法。イタチの不意打ちを完膚なきまでに防ぐことで、力を誇示する目的で使った。

 だがその代償が、全身の細胞を針で刺されるような激痛。地獄のような苦しみがシャナを襲う。シャナは修行を繰り返し、この術を発動可能となったが、持続時間が短く、代償が大きすぎる。

 けれど、イタチに諦めさせなければ、この交渉は引き出せない。そして、イタチを殺してしまうことにつながる。

 

 数十秒ほど副作用に苦しんでいたが、ようやく動けるようになったシャナは、地面に倒れているサスケの様子を見る。土埃で汚れた頬を拭いながら、シャナはうちは一族で起きた事件を察して駆けつけてきた、木ノ葉の忍達に保護されるまで、その場から動かなかった。

 何も変えられなかった今回の事件、シャナは空を見上げながら今は亡きシスイの遺言を思い出していた。

 

「もし、俺がお前の未来視通りになったら<<イタチの事を頼む。あいつは器用だけど、何でも抱える癖があるからさ。いつか潰れてしまいそうで心配なんだ>>」

 

 シスイの遺言。それはイタチがサスケの事を頼んだ事と同じだった。 

 

(うちはの男どもは……めんどくさいってばね)

 

 互いに誰かを大事にし、それをシャナに託して消えるのだ。シャナはそれを断れない。繋がりを求めて大切にしているのはシャナも同じだから。

 唯一変わった事と言えば、シスイもイタチも、自分以外の誰かに、思いを託せた事だけだろう。

 

 こうして、うちは一族は、抜け忍うちはイタチを除けば、2人の子供だけを残して壊滅したのだった。

 

 

 

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