正式に下忍認定されたシャナを含む第4班。一週間ほど経ってから、ようやく招集が掛かる。
事前のミーティングを終え、試験官であったヤマトが隊長として就任。
フォーマンセルとして任務に向かうことになったのだが、この班にはいろいろな弱点があった。
「すぐ終わる依頼が良いってばね」
「すぐ終わる依頼じゃと?」
任務を受けるために4班の面々は、依頼受取所に足を運んだ。そこで任務を受領する際に、初めての任務ということで三代目火影が、任務の説明を行い、Dランクの任務の中からどれがいいかと尋ねた。
その問いにシャナが答え、お使いの任務を選んでいた。
確かにそれなら一時間もかからずに終わるだろう。というより忍者にお使いを依頼する方がおかしい気もする。
「これでいいのか? 誰も受けないと思っておったが」
「遠出とか効率悪いってばね」
「私も、なるべく簡単で疲れないのがいいかな」
シャナの性格が一つの例だろう。効率を求める志向性ゆえか、任務にやる気を示していない。もう一つは、八雲の体力のなさである。強力な幻術使いである反面、アカデミーに入学できないほど体力のない彼女は、遠出の任務などに向いていない。
「俺がおつかいなんてしていいのか?」
「手袋してるならいいんじゃないかな?」
もう一つは、先天的な毒虫使いのトルネは、選べる任務に限りがあるということ。全員が問題を抱える中、シャナの強い推薦もあり、お使いの任務を受領した。
木ノ葉の下忍の中で、最強の実力を持つ第四班。
その実力は、迅速な御使いという任務で発揮されたのだった。
「じゃ行ってきます」
「失礼します」
「10分で終わらせてやるってばね」
4班の3人が出発し、残されたヤマト。さすがに上忍をお使いの任務につけるのは、もったいないため、別の任務を割り振られたからだ。
「心配か?」
「いや、心配はしてません。あの三人、意外と相性がいいみたいで、いいチームだと思いますよ」
「お前も殺されかけたからな」
「それは言わないでください。性格的には、シャナが変わってると思いますが、八雲とトルネが大人しいので、基本的に帳尻は取れますからね。引っ張っていくのはシャナで、最終的な決定はトルネが下すといった感じでしょうか」
ヤマトは、試験やミーティングでの彼らを見てそう言う感想を抱いた。
トルネが冷静なタイプなので、彼に相談するのが、基本になっているようだった。
「八雲は少し消極的な所もありますが、これは改善されると思います」
「うむ。あの子にとっても最善の結果になったようじゃな」
忍になれないと決まった八雲の表情は暗かった。だが今は、下忍になれたことを喜び、なにより仲間が出来たことがうれしかったのだろう。
トルネも持って生まれた特異体質のせいで、一族の中でも避けられ、アカデミーに入学できなかった。
本人も仕方ないことだと諦めていたが、心のどこかで、繋がりを求めていたのかもしれない。
降ってわいた下忍昇格試験で仲間が出来た。
全員が孤独を感じたことのある班員であり、共通点が多い。同じ境遇故に通じ合ったのだろうか。
「この先は、どうなるかは、お楽しみですかね」
「そのようじゃな。必要とあれば支えてやってくれ」
ヤマト自身も、幼い頃から木遁の使い手であり、根に居たことから、普通の子供時代を過ごさなかった。特異な力に振り回されてきた経験は誰よりもあり、三人を理解してあげられるのは、彼しかいないというのが三代目の見解だった。
――――――――
その日の御使い任務は、30分ほどで終了した。何事もなく終了した後、3人は解散する運びになり、シャナは二人に別れを告げて、大急ぎで、うちはの修練場に向かった。八雲は、シャナと話がしたかったのか複雑そうな表情だが「また明日」という言葉に機嫌を直していた。
うちはの修練場、うちは一族の事件以来、誰も寄り付かないそこは、絶好の訓練場所。
そこに走って辿り着いた時、二人の先客が居た。
「遅いぞ。何をしていた」
一人は、シャナが遅刻したことに不満気なサスケ。もう片方は、「ずっと待ってたってばよ」と文句を零すナルトの二人だった。
「任務だってばね。お前達との約束の為に、最速で終わらせたんだってばね」
これは真実だった。最速記録を更新したとはっきり言われたからだ。本来は、今日依頼を受けるつもりがなかったのに、ヤマトからの招集で仕方なく任務を受けに行っただけなのだ。
「お前が遅れたせいで、このウスラトンカチと待つ羽目になった」
「サスケ、喧嘩売ってんだったら買ってやるってばよ!!」
喧嘩腰のナルトがサスケに掴みかかろうとするが、シャナが止める。二人に無駄な体力を使わせる訳にはいかないからだ。
「さて、今日も修業をつけてやるってばね。とりあえず二人まとめて掛かってこい」
今日も修業が始まる。サスケとナルトは、シャナが写輪眼で睨み付けてくると立ち上がって、クナイを構える。この2対1の戦闘訓練は、シャナと二人の戦闘能力差を考慮した結果、行われるものだった。
―――――――
そもそもなぜナルトとサスケがシャナと修業しているかと言えば、事情があった。
サスケの修行をつけることは、イタチとの約束で決まっていた。退院したサスケから日時を指定され、そこでサスケが強くなるための修行を始めた。
基礎能力の向上をメインに、毎日数時間行っていた。
そんな日々が過ぎた中で、ある日ナルトがシャナにアカデミーの話をした。
「最近、サスケの奴が、強くなってるってばよ。あの野郎、秘密の特訓とかしてるんだってばよ!」
自分から勝手にサスケに向かっていくナルトには、サスケが強くなっていくのを肌で感じられたようだ。サスケが強くなっていると聞き、自分は間違ってなかったと喜ぶシャナ。
「してないしてない。姉ちゃんが修行見てあげてるだけだってばね」
シャナの言葉にナルトの目は大きく見開かれ、彼女に詰め寄る。
「姉ちゃんがサスケの修行見てるってどういうことだってばよ! 何でサスケなんかと」
「え、っと姉ちゃん元々、養子だって話したってばね?」
「あ、うん」
「姉ちゃんは、うちは一族の血を継いでるから、この写輪眼だって持ってるわけだってばね。それで、サスケは親戚みたいなもので、姉ちゃんが修行つけてあげてたっていう」
シャナの説明にナルトは不満だったらしく「ずるいってばよ!」と憤慨する。だがシャナもサスケだけを特別扱いしてるわけではない。本来はナルトも一緒にと思い誘いを掛けたこともある。
「ナルトが姉ちゃんの誘い断ったんだってばね!」
「だって~、恥ずかしいってばよ」
「だったら姉ちゃん悪くないってばね」
さすがに理不尽だと怒れば、ナルトの語尾が弱くなる。明らかに非が自分にあると考えたのだろう。けれど引き下がれないらしく、「俺も姉ちゃんと修業する!」と宣言。サスケとの修行についてきてしまった。
サスケの事をライバルだと決めているナルトからすれば、サスケだけが強くなるのは我慢できなかったらしい。
当然、突然ナルトを連れて行ったため、サスケが怒る。
「なんでそいつが居やがる」
「それはこっちのセリフだサスケ! よくも俺の姉ちゃんにこっそり修行頼みやがったな!」
「姉ちゃん?……そういうことか」
サスケは以前シャナが言っていた弟という存在を思い出し、それがナルトだと理解した。確かに、うずまきだと名乗っていた。
「お前の弟が、こんなウスラトンカチとはな」
「あん?」
「こいつは、アカデミーでもドベだ。はっきり言って時間の無駄だ。俺の修行についてこれるわけがない」
「なんだと!? 誰がドべだ!」
「なんだよ本当の事だろうが、ドベ」
喧嘩を始めたナルトとサスケ。性格的に合わないと思っていたが、煽るサスケと煽り耐性のないナルト。どう考えても相性が最悪である。
しかし、シャナからすればナルトもサスケも大差ないのである。圧倒的な実力差から、二人への評価を下すシャナ。サスケの事は認めているし、ナルトの事は大切に思っている。だが力という面において、シャナはお世辞を言わない。
正確に判断を下し、伝える。それは強さにプライドを持つ彼女が持つ価値観だろう。だから特に悪意なく、口を開いた。
「アカデミーのドベは事実だってばね。姉ちゃんも先生から聞いてる」
「えー」
「ふん」
「でも、サスケもうちはじゃドベだってばね」
「はぁ!?」
落ち込んだナルトと反感を覚えたサスケ。シャナの言葉を理解できなかった。
「私からすればナルトもサスケもドベ同士、底辺だっていってる」
「ちょ、姉ちゃん、いくらなんでも」
「喧嘩売ってるのかお前」
別に喧嘩は売っていない。シャナは強者であり、強者は弱者にケンカを売らない。ただ冷静に実力を評価しているだけだ。うちは一族は、シャナ、サスケ、イタチしか公式で存在しない。ならサスケはうちは一族のドベなのだ。それも圧倒的に。
アカデミーでは優秀でも、シャナからすればお遊戯に等しい。お遊戯がうまいサスケを強者として見る。それは不可能だった。
「修行するって言ってるのに誰が居るからとか、関係あるのかってばね? お前がそんなこと気にする必要ないってばね」
「お前」
「ナルトもだってばね。腹が立つなら強くなればいい。余計なことしてる時間はないってばね。何か難しい?」
敵意はないが、甘えは一切ないシャナ。最愛の弟だろうが、託された親戚の子だろうが関係ない。強くするためなら、何だってする。
「二人同時でいい。ドベ同士大差ないからな。かかってこい」
シャナの挑発ともとれる言葉に、サスケが怒り、クナイを持って駆け出す。サスケが武器を持って姉に襲い掛かった姿を見て、ナルトが止めようとするが反応が間に合っていない。
「はぁああ!!!」
クナイを大きく振りかぶり、シャナの喉を狙うサスケ。シャナはその動きを青い写輪眼で洞察。クナイをギリギリで回避、サスケの腹に膝をお見舞いする。
「ぐ」
体がくの字に曲がったサスケの首筋に、素早い手刀を叩き込み、サスケの意識を刈り取った。気を失い、地面に倒れ伏したサスケを見下ろしたシャナは、今度はナルトに向かって「かかってきなさい」と誘う。
「え、あ、えぇ」
サスケが一瞬で気絶させられた光景に言葉を失うナルト。ナルトも姉が強いのは知っていたが、ここまで一方的な強さを持っていると思っていなかった。
「強くなりたいんでしょ? サスケはいつもこの修業に耐えてるってばね。お前はそこで見てるだけってばね?」
いつまでも掛かってこないナルトにシャナがそう言えば、負けず嫌いなナルトは拳を握り、シャナに向き合う。ナルトにだって目標がある。その目標の為に強くならなければいけない。
「いくってばよ」
「うん」
ナルトは全速力でシャナに向かって走り出そうとし、瞬身の術で急接近したシャナの上段蹴りを顎に受け、脳震盪を起こしてふらつく。
ふらついたナルトの髪を掴んだシャナは、自分の膝に引き寄せて、ナルトの顔面を蹴る。鼻血を出して倒れたナルト。さすがに追撃はいらないと思い、シャナは地面に突っ伏した二人を起こそうと、水筒の水をかける。
「はっ、な」
「ごほ、ごほ、ぶへ」
飛び起きたサスケと水でむせたナルト。両者は自分を見下ろす青い写輪眼を見て、実力の違いをはっきり理解する。
何をされたのかもわからない。相手との差を実際に感じながら、ナルトは甘えを捨て、サスケは意地を持って睨み返す。
「どうする? 休憩要るってばね?」
サスケとナルトは、シャナの問いに立ち上がることで答える。
「まだまだだってばよ!」
「同感だ。お前に一発は入れてやる」
闘志をたぎらせる二人。シャナは、そんな二人との修行を2時間も続けたのだった。