NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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 急に視点が大きく変わります。


青い写輪眼

 雨隠れの里。常に雨の降る空とパイプ塗れの標高の高い建物が立ち並ぶ里。

 その建物の屋上で涙を流している人物が居た。黒い生地に赤い雲が描かれたマント姿だが、マントが大きすぎて引き摺っている為、裾がボロボロになっていた。その手には、女の子の人形の手が握られており、だらんと地面に横たわっていた。

 

 その人物は、非常に小柄で、まだ5歳程度の少女だった。黒い髪と紫の瞳を持ち、紙でできた薔薇の髪飾りでツインテールにした少女は、空を見ながら大きな声で泣いていた。曇り空に響き渡る少女の叫びにも似た泣き声。その音はまるで雨隠れの里中に響くようなものだった。

 大泣きしている少女の背後に、空から降りてきた一人の人間。

 

「また泣いているのか」

「ううぅ、うう、だって、十蔵が、十蔵がぁ」

 

 少女の傍に舞い降りた人物は、少女と同じ服装でオレンジの髪に、黒いピアスが顔に数多く刺さった面持ちをしていた。額当ては雨隠れのもので傷が入り、その目が特殊だった。

 眼球全体が紫の波紋模様で覆われており、忍界においてもそのような目を持つものは、全くいないだろう。何故なら彼の持つ目は、忍の祖と言われた六道仙人が開眼したという輪廻眼だからだ。

 

「十蔵は、任務の為に殉職した。我々暁の人間が、その死で泣くことは許されない」

「ペインのバカァ、うううぅうう、ああああん」 

 

 ペインと呼ばれた男の注意を聞いても、泣き止まない少女。ペインは泣き止まない少女を泣き止ますことは不可能と感じ、その場で印を結ぶ。

 

「うぅう、う? 雨」 

「暁の人間が泣くことは認めない。だが、この雨なら涙も見えなければ泣き声も掻き消える。小南が心配している。気が済んだら戻れ、風邪を引かれては敵わない」

 

 大雨が降り始め、少女の声をかき消す。そしてしゃがみ込んで雨に濡れた少女の涙を拭うと、ペインはすぐに踵を返して、建物の中に入っていく。

 その後ろ姿を見た少女は泣くのを止め、涙を拭いながら彼についていく。

 ペインの背後にちょこんと揺れるツインテールは雨を吸って、重くなっていたのか、よく揺れている。

 

「もう泣かないのか?」

「また泣くと思うけど、今は泣かないの」

「そうか」

 

 ペインの輪廻眼と目を合わせた少女は、彼から目をそらして部屋の奥に走っていく。部屋の奥では何人かの人間が待っており、それぞれペインと同じ服装で漢字の刻まれた指輪をしていた。

 

「小南!」

「コダマ。また外に出ていたのね。ずぶ濡れじゃない。それにまだペインの目が恐いのね」

 

 頭に紙でできた薔薇をつけた小南と呼ばれた女性は、駆け寄ってくる少女の水気を、体から出した紙の束でふき取る。水気をふき取られた少女は、小南の袖をつかみながら、部屋にいる人間たちを見る。

 

「ふふ。あら、目元が赤いわね。泣いていたのかしら?」

 

 コダマと呼ばれた少女の顔を見て、そう言ったのは蛇のような舌を動かす男性。名を大蛇丸という、伝説の三忍と呼ばれた一人だった。彼は蛇のような目を光らせながら、コダマを見つめる。それは好意的というよりは、興味深い生き物を見るような目だった。

 その視線に縮こまる少女。小南が大蛇丸に注意しようかと思った時、彼の顔面に鉄の刃のついた機械の尾を向けた人物がいた。

 

「やめろ大蛇丸」

「優しいのねサソリ。貴方らしくもない」

「そのガキが泣き始めたら、またうるせぇだろうが」

 

 サソリと呼ばれた男は。金属の尾を持ち、巨大な体を持ちながら背が低いという異形だった。彼が大蛇丸と睨み合っていると、ペインが制止した。

 

「そこまでにしておけ。これからの方針を話す」

「チッ」

「命拾いしたわね」

「お前ら、どれだけ時間を無駄にさせる気だサソリ、大蛇丸。とことん、俺をイラつかせやがる」

 

 二人がまだもめそうになっていると、頭巾姿でマスクをした大男がいら立っている。その殺気に二人も気が付き、三つ巴になる。睨み合う三人。

 

「もう一度しか言わない。大人しくしろ」

 

 ペインの言葉に、三人は殺気を収めて大人しく話を聞こうとする。そしてようやく、傭兵集団暁の会議が始まったのだった。

 その会議の内容は、2名の戦死者を出したことで、新しいメンバーの勧誘と新たなツーマンセルの組み直しだった。彼らの会議を文字通り部屋の隅で聞いていた少女。

 やがて会議が終わり、それぞれが部屋から退室する。

 

「サソリ、角都、ありがとう」

 

 少女は、サソリと角都に走っていき礼を言う。だが二人とも不愛想にするだけだった。サソリは何も発することなくその場から退室し、角都は自分を満面の笑みで見上げる少女を見下ろす。

 

「あまりイラつかせるなコダマ。……だが、あの野郎には気を付けておけ」 

 

 そう一言だけ残して、角都も部屋を退室する。残ったのは、ペインと小南、そして新入りのメンバーである、元木ノ葉の忍、うちはイタチだけだった。薄暗い部屋で目立つ紅い写輪眼は、少女と同じ目線に立ち、彼女に謝罪をした。

 

「十蔵の事、すまなかった。俺が傍に居ながら」 

「イタチ。もう大丈夫」

 

 誠意を込めた謝罪をコダマは受け入れる。彼女にとって大切な人の死だが、イタチのせいでないのはわかっているのだ。

 全ては争いのある世界が悪い。そう理解しているのだ。だからこそ争いを無くすために世界に痛みを与えることで戦争を排除しようという暁にいるのだ。

 

 正しくは、暁の理念を生まれつき叩き込まれ育った少女。

 

(世界に痛みを。それが平和)

 

 完全に理解しているとは言い切れないが、コダマの人格形成は、間違いなくペインの思考のそれだった。 

 

「コダマも頑張って世界が変わったら、十蔵も嬉しいもんね」

 

 純粋な笑顔を向けられる。その顔は、暁の行動で世界が一度焦土になるような地獄を再現することを知らないようだった。だが、イタチの感じた感想とは違い。少女は理解している。

 世界を憎み、世界を一度壊さなくてはいけないと。小鳥が死ぬだけで泣くような泣き虫の少女は、心から世界の崩壊を望んで生きているのだ。そこでどれだけの人が死に、泣き叫ぼうとも、大義の為には仕方ないのだ。

 

「だから気にしないで」

「?(これは)」

 

 少女が目を開いた瞬間、イタチの写輪眼が驚きで揺れる。イタチはあまりコダマという暁という組織に最初からいた少女と関わっていなかった。任務の合間に会うだけだったが、黒髪の少女の顔立ちが、どこかサスケに似ている気がしていた。

 だからこそ知らなかったのだ。

 

「なぁに?」

「その目は」

「コダマの写輪眼だよ?」

 

 コダマが写輪眼を持っていることを。そして暗闇の中で発する色が青であるということを。

 木ノ葉にいる、あの少女と同じ目を持つ存在。純粋で幼いながらに写輪眼に宿っているのは、明確な憎悪だった。

 

(あいつといい、コダマといい、青い写輪眼を持つ者とは)

 

 イタチは、この少女の存在も警戒しなければいけないと意思を固めたのだった。イタチとの会話を終えるとコダマをペインが呼び出した。

 

「コダマ」

「うん」

 

 コダマはペインの輪廻眼が怖いのか目をそらしている。あのぐるぐるが苦手だというのは、彼女がよく口にしている。怖いというくせに、何かあれば彼の背中を追っているのだ。

 

「お前には任務に向かってもらう」

「任務?」

「そうだ。ゼツと共に湯の国に迎え。そこで、ある人物を殺してこい」

 

 ペインの任務は、目の前の少女が受けるべき任務とは程遠い。その指令内容を聞いていた、食虫植物のような外殻、その中に白と黒の半身ずつという奇妙な姿をした生き物。黒と白のある内、白いゼツが、不思議そうに尋ねた。

 

「コダマには早いんじゃないの?」

「黙れ。リーダーの命令は絶対だ」

 

 白ゼツの言葉を黒ゼツが否定する。間違ったこと言ってないのにと拗ねた白ゼツ。一方コダマは、目を輝かせながらワクワクしている様子だった。

 

「この女を殺してこい」

 

 ペインが写真を見せる。その人物は、火の国の大名家の令嬢だった。彼女の暗殺依頼こそが任務だった。

 

「帰りの護衛に木ノ葉の忍を雇うらしいが、下忍を含めたフォーマンセルだ」

「その人たちも殺せばいいの?」

「必要ならな。無理ならターゲットだけを殺せ。ゼツ、お前は手を出すな。お前は撤退の時にだけ手を貸してやればいい」

 

 ペインの命令を受けたコダマは、何度も頷いて了承。自分の実力を見てくれるつもり

「いってきます!」

 

 ビルの屋上に向かって走り出し、階段を駆け抜けて屋上に到着する。そこで自分のツインテールを引っ張れば、それが黒い翼へと変わる。変化ではなく、これがコダマの持つ能力の一つなのだ。

 

「行くよー!」 

 

 翼をはばたかせたコダマは、瞬時に飛びあがり雲を超え、晴れた空へとたどり着く。生物的でありながら、生物離れした飛行能力で、少女は湯の国を目指した。

 

 その光景をビルから見ていたゼツ。彼女の飛んで行った方向を見て呟いた。

 

「あの子ってさ。地図読めるんだっけ?」

 

 その問いには誰も答えなかった。明後日の方向に飛んで行ったコダマを見て、ゼツは地面と同化しながら、彼女の後を追った。

  

 

―――――――

 

 全力で空を飛行するコダマは、ふとイタチとの会話を思い出していた。

 

「イタチの言ってたアイツってだれだろうねぇ? 青い写輪眼って心で言ってたもんね? うーん、まぁいっか」

 

 青い写輪眼。その奇妙な瞳術が対峙するのは、その後すぐだった。

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