長くなりました。
青い写輪眼同士の邂逅。それは同時に開戦の合図だった。
「粒遁・天輪」
シャナは、チャクラ粒子を頭上に3個ほど作成。全て集束させ、同じ目を持つ異形の少女に発射していく。殺気を感じ取った異形の少女は頭から生えた翼で空高くに離脱。空中から真下にいるシャナを観察しようとするが、次々に発射される天輪を空中で避けていく。
(なんだあいつは。なぜ同じ目を持っているってばね)
護衛対象を背に、空を自由に飛び回る少女を狙い撃ちにするシャナ。だが、写輪眼での洞察力を以てしても、亜音速で発射される術の速度を以てしても一発も当てられない。全てギリギリで回避され、空から青い写輪眼がこちらを見通しているように感じられる。
明らかな様子見。こちらの出方と実力を伺っているのだろう。
「ひぃい」
「そこから一歩も動くな。わかった?」
シャナは悲鳴を上げて縮こまっている女性にそういうと、彼女は頷いて答える。下手に動き回られたら面倒なのだ。空という有利を取られている以上、シャナの攻撃は当たらないだろう。
「粒遁・天倫……乱舞!!」
巨大な天輪を10発ほど頭上で集束。全て一度に発射する。発射された粒子の弾丸は、空で待機していた少女に向かって飛ぶ。
「おっきくても当たらないよー」
写輪眼を持っていた異形の少女は、空中で素早く回避し、余裕の表情である。相手を馬鹿にしたような態度にシャナは内心腹が立つが、すぐに指をはじく。
それを合図として、少女に回避されその頭上にまで飛んだ巨大な粒子の塊。それらは瞬時に破裂し、無数の小型の天輪となって空から少女に降り注いだ。
「いやーーーー!!」
さすがに空から降り注ぐ粒子弾の雨に悲鳴をあげながら回避していく少女。写輪眼の持つ動体視力と運動神経を駆使し、どうにか全弾回避しようとした時、背後に現れたのはシャナ。
粒子弾の雨は囮であり、本命は青い閃光となって空に飛びあがったシャナ自身だった。写輪眼対策の一つ、背後を取る。それは見事に成功したのだった。
「え? ぐ」
空中に飛びあがったシャナは、少女の頭から生えた羽を粒遁の刃で切断。さらにその顔面に蹴りを食らわせることで、異形の少女を地面に叩き落とした。切り裂かれた翼からは羽が舞い散り、少女は、地面に勢いよく落下。
自然落下で着地したシャナは、右手に粒遁を纏ったクナイを構え、様子をうかがう。
(なんだ今の蹴った感覚。鋼鉄でも蹴った気分だ)
異形の少女の体が、思った以上に固く、蹴ったシャナの足の方がダメージが大きかったのだ。右足は赤く腫れ、うかつな攻撃だったと後悔する。
自分の足を調子を確かめていると、土煙の中から無数の羽根が飛来する。猛烈な速度で向かってくる羽根を写輪眼で観察する。それぞれが非常に鋭くなっており、一本一本がクナイよりも殺傷能力が高そうであった。そして、羽根の先端に液体が付着しており、毒もありそうだった。
目で見て回避するシャナ。全部合わせて50本の羽根が飛来する。それらは点ではなく面で攻撃する目的のようで、回避するシャナだが躱しきれない羽根が何本もあった。
それらを手に持った粒遁の刃で切断し、当たることなく回避していく。
「ばぁ!」
「何!?」
全て回避したと思った矢先、背後から現れた異形の少女。右手でシャナのクナイを持つ手を弾き、先程のシャナと同じ動きでシャナの後頭部を蹴り飛ばす。頭を蹴り飛ばされたシャナは、木に叩きつけられる。
「ぐ、く」
頭を強打したことで、シャナは脳みそが揺さぶられる。そして痛みに表情をゆがめる。間違いなく目の前の異形の少女は、シャナのしたことをコピーしてきた。
木に手を当てながら立ち上がるシャナ。ダメージが重いシャナとは違い、異形の少女は、自分の巨大な手をにぎにぎしながらシャナに向かって話しかけてくる。
「ねぇねぇ。貴方の目ってなんで私と一緒なの? お揃いなの?」
「……(なんだこいつ、不気味だってばね)」
「不気味じゃないよ。コダマだよ」
「……(コダマ? 名前か?)」
「うん。コダマって言います。よろしくお願いします!」
ぺこりと頭を下げたコダマ。毒気を抜かれそうになったシャナだった。だが、瞬時にコダマと心の声が会話している事に気が付き、火遁の印を結び口から炎を吐き出す。不意打ちにもならない攻撃だが、相手と距離を取り、分析する時間が必要だ。
なにより第四班の面々が到着するまで時間を稼げればいい。
「距離取りたかったの?」
(化け物か)
火遁の炎に怯むことなく、巨大な獣の腕を盾に前進してくるコダマ。コダマの腕は、炎に強いのか一切燃えることなくまっすぐシャナに接近する。
青い写輪眼同士が急接近し、互いの巴模様が見える距離まで近づく。巨大な腕では、接近戦は苦手だろうとシャナが新たにクナイを取り出す。
「お前」
「化け物じゃないの! コダマだよ!」
クナイで首をはねようとしたが、巨大な獣の腕は、少女の意思で小さくなり、シャナのクナイを持った手を受け止める。すさまじい怪力で両手首を握られたシャナは動けなくなる。小柄のくせに、フィジカル面でシャナを上回るコダマ。
シャナに切られた頭の翼は、既に回復を始めているのか、煙をあげながら徐々に生え始めている。
「コダマ?」
「コダマ」
自分は化け物じゃないと言い張る少女。化け物と呼ばれたことにご立腹の様子。だけど妙に緊張感のない戦い方をするせいで、やりづらくて仕方ない。
(心読めるのかってばね?)
「うん。読める」
馬鹿なのだろうか。自分の能力を自分から明かすとは。だが、心を読む写輪眼。それがどれほど脅威かは、言わなくても判るだろう。唯一頭が弱いのが救いではあるが、それでも異形の体からくる怪力と俊敏さ、毒のある羽、危険生物であるのは間違いない。
シャナが天翔で移動した距離から考えて、増援はまだ来ないだろう。
「お姉ちゃん名前はなんていうの?」
「さぁ、心読めばいいんじゃない?」
シャナの目をじっと見つめるコダマ。なぜ名前を聞く必要があるのだろうか。心を読めるなら、素性も読めるのでは? そんな問いが頭に浮かぶが、コダマから目をそらす。
「こっちみてよぉ」
「(やっぱりか)」
心を読めるなら、先程空中での不意打ちが成功した理由がわからない。ということは、コダマの読心は、青い写輪眼で相手の目を見る事が条件なのだろう。それがわかれば、戦いようもある。とはいえ、コダマの身体能力は、人間離れしておりそれと戦うなら、目を見ないという縛りを課すのは無謀だ。
(そんなに目が見たいなら)
「見ろってばね!」
「あ」
シャナは、瞬時に万華鏡写輪眼を使用。万華鏡写輪眼の幻術でコダマを縛り付ける。幻術にかかったコダマは、慌てて目を瞑るが遅い。コダマの怪力から解放されたシャナは、自由になった両手でコダマの腹を殴り、追い打ちに顎を殴る。
相変わらず体が硬く、殴ったシャナの手が痛むが、確かな手ごたえがある。
「雷遁・雷掌」
すぐに印を結び、雷遁を両手と足に纏わせる。そのまま、顔から血を流すコダマに掌底と蹴りを食らわせる。
「いったぁ!! や、いや、やめてぇ!」
体が頑丈でも、雷遁の痛みは感じるようで、酷く痛がる。そして、続けざまに何度も雷遁を纏った掌底と蹴りを繰り出す。一撃必殺ではなくとも、電撃を浴びせ続けることで相手の動きを阻害する忍術だった。
「粒遁・天刃」
体が痺れたのか、動きの悪いコダマ。だがしっかり目を開けて青い写輪眼でシャナを睨む。すでに幻術返しを使っているのか、体内のチャクラが激しく循環していた。もう幻術は効かないぞとシャナの万華鏡写輪眼を睨むコダマ。既に頭の羽は再生し、顔の出血も止まりかけていた。
だがシャナも両手にクナイを持ち、粒遁の刃の二刀流の構えを取る。シャナの構えを見たコダマは、獣の腕を構えながら、羽をはばたかせ、いつでも飛翔する準備をする。
シャナは、自分の動きを確かめるように、2刀を振るう。
「なにそれ、かっこいい」
「そう。けど、そんな余裕もなくなる。私の本気を見せてやるってばね」
コダマは、能天気だが、シャナは相手の力量を見極めた。コダマは強いと。その身に宿るチャクラ量は、弟であるナルトより多く、研ぎ澄まされている。見た目通りの年齢だと思わない方がいい。
(先見の写輪眼)
シャナは一度、万華鏡を解除し通常の写輪眼に戻した。そのうえで未来視を使い、あまたの可能性を手中に入れる。ここから先は、すべての事象がシャナの掌の上となる。
先に飛び出したのは、コダマだった。翼をはばたかせ、羽根を発射。羽根の弾幕と同時に飛びあがり、シャナに襲い掛かる。シャナではなく、シャナの足元に刺さった羽根が、コダマのチャクラによって爆発する。爆発の中心にいたシャナは飛び上がり回避。
だが空中で鋭い爪でもって襲い掛かるコダマ。
「あれ? なんで」
必中のはずの爪が、シャナが空中で身を捻ったことで回避される。だがそれで終わることなく、何度も空中で旋回しながらシャナに襲い掛かるコダマ。だけれど、攻撃はシャナに一切当たらない。全てが当たる寸前に回避される。
写輪眼で捉えているのに、シャナの動きはそれすら超えてくる。明らかに動きが洗練され、隙一つなくなっていく。速度ではコダマが圧倒しているのに、追いつけないのだ。心を読もうにもシャナは的確に視線を逸らす。
「なにしてるのかしらないけど!」
コダマは、尾骶骨のあたりから黒い毛におおわれた尻尾を出し、それを鞭のように振るう。だがシャナは距離感をあらかじめ知っていたように一歩後ろに下がり回避。すぐに前に飛び出してくる。
巨大化した両腕で、シャナをプレスしようと振るうコダマ。その動きを待っていたとばかりに、シャナが、両手のチャクラ刀を振り下ろす。火遁の効かない頑強な腕だが、粒子刀の切れ味は、それを上回る。
「うわああああ」
巨大化した腕を根元から切断されたコダマは激痛に悲鳴を上げる。両腕を切り落とされたことで、シャナの接近を防ぐ方法がない。苦し紛れに翼から羽根を飛ばすも、飛んでくる軌道が解っているシャナはすでにその軌道上に居ない。
上空にジャンプしたシャナは、影分身の印を結び3人に分かれる。左右に別れた影分身が一気に距離を詰め、上空にいるシャナが粒遁・天輪をチャージする。
「なんちゃって」
万策尽きたと思われたコダマは、斬られた腕を数秒で再生。巨大な腕が急に眼前に迫ったシャナの影分身たちは、その鋭い爪に腹部をつらぬかれ消滅。残った本体だったが、シャナの足に地面を掘り進んだコダマのしっぽが絡みつき、その体を地面に叩きつけた。
地面に叩きつけられたシャナに畳みかけるように、コダマの巨大な腕が振り下ろされた。
激しい一撃に、シャナの体が血に染まり、手足が明後日の方向に向いていた。
―――――――――
(という展開だってばね)
全て未来視で見ていたシャナ。尻尾で地面に叩きつけられたのは影分身だった。本体はといえば、粒遁・天翔で後方に下がっており、勝ち誇ったコダマに最大限チャージした粒子砲を発射した。
シャナのチャクラを感じ、空を見上げたコダマに粒子砲が迫る。時間をかけて要した天輪は、コダマの体を蒸発させるのも容易いだろう。
「んが」
コダマが抵抗しなければだが。
口を大きく開いたコダマ。口から赤いチャクラの塊を発射する。発射されたそれは、シャナの天輪の術と同じチャクラの粒子を集束したものであり、二つの粒子砲が空中で爆発。互いに相殺する。
(粒遁!?)
自分のオリジナルの術をコピーされたことに驚くが、粒遁はシャナしか使えない血継淘汰だ。写輪眼を持っていてもコピーなどできない。出来る理由があるとすれば、シャナと同じチャクラを持っている可能性だ。
未来視ならすでに終わっているはずだったのに、死に瀕したコダマが本能的に行った行動のせいで未来が大きく変わってしまう。
急激に増えた情報量に、シャナの脳が悲鳴を上げる。
「なんか出た……なにこれ」
コダマも自分が咄嗟に行った技に驚いていた。けれど、戦闘に意識を向けてすぐに構えを取る。シャナは頭を片手で押さえながら、変わってしまった未来を少しづつ纏めていく。すぐに必勝のパターンを導きだそうとするが、コダマの方が早かった。
一気に前に飛び、シャナの心を読もうと目を合わせる。
「あれ? 心が読めない」
(なんだ、未来視が)
しかし、シャナとコダマの未来視と読心の両方が機能しなくなる。二人の粒遁のぶつかり合いの後、空中に飛散する紫色のチャクラ粒子を浴びた二人。その青い写輪眼が、色を変え、赤い通常の写輪眼となっていた。
互いに相手の目を見て、相手の変化とその瞳に写り込んだ自分の目を確認する。
(コダマの目もまっかになってるーーー!!)
(何をされた?)
驚愕しながらも剛腕を振るうコダマ。その一撃がシャナの体を捉える。両腕でガードしたシャナの体を軽々と殴り飛ばし、彼女を吹き飛ばす。
攻撃が当たり、ここが畳みかけるところだと追撃に走るコダマ。
一方不意打ちを受けてしまったシャナ。ギリギリでガードは出来たが、両腕の骨が折れ、肋骨も折れている。印を結べなくなり、術の発動に支障が出てきた。その状態で更にコダマが剛腕を振るってくる。
「くらえ!!」
「くらうかってばね!」
巨大な獣の腕での拳。その一撃を受け止めたのは、万華鏡写輪眼を再び使ったシャナがチャクラの巨人を展開する。巨大な骨の巨人は、コダマの右ストレートを巨大な腕で受け止める。
シャナの術は、うちは一族に伝わる術であり、万華鏡写輪眼を両眼に開眼したものだけが使える秘術・名を須佐能乎。その力は、コダマの怪力を軽々と受け止めるほどだった。
「ふぇえ」
「お返しだってばね」
須佐能乎でこぶしを握り、コダマに殴り掛かる。だがコダマも巨大化した獣の腕で須佐能乎の拳を受け止める。互いに拳を受け止め、硬直状態となる。
「ふぬぬぬ!!」
「須佐能乎と力比べできるとか、馬鹿力過ぎるってばね。けど」
須佐能乎相手に力で勝負し始めたコダマ。ギシギシと骨の巨人が軋み始める。だが、シャナの須佐能乎は、6本腕の阿修羅型。残った腕を使い、コダマの体をぶん殴る。殴られたコダマは、ピンボールのように木々を跳ね返りながら吹き飛び、岩に体を打ち付けて倒れる。
ガードすら許さない一撃は、コダマに大ダメージを与える事が出来た。
さらに一撃加えようとした時、シャナの体中に激痛が走る。
「ぐあああああああ、ぐうう」
全身の神経が焼けただれるような痛みに、膝をついて苦しむシャナ。須佐能乎が徐々に小規模になり、右腕と胴体以外消滅してしまう。だが腕が動かない以上、須佐能乎を解除する訳にはいかない。
「もう、もういや!」
戦闘の余波に耐えられなくなった女性が、慌てて逃げようとする。それを見て居たコダマが、起き上がって頭の翼から羽根を飛ばした。コダマの勝利条件は、シャナに勝つことではない。血まみれになりながらも痛む体を動かすコダマ。
彼女の頑強さと体力には、シャナも恐怖を抱く。
シャナが須佐能乎を手を伸ばすが、一本だけ届かず女性に迫る。
「木遁の術」
森からヤマトの声が聞こえ、逃げようとした女性を守るように木の盾が完成する。コダマの羽根は木の盾に突き刺さるも女性には届かない。
「無事かシャナ!」
「シャナちゃん!」
「おそい、ってばね」
「君が早すぎるんだよ。だが、よくやったよ。木遁の術!」
トルネと八雲も現場に駆け付けた。その後ろにはヤマトがおり、印を結びながらコダマに木遁の術を発動する。ヤマト達を見たシャナは、一歩も動けなくなる。コダマは、自分の足場から生えた木に体を拘束されかかるも、怪力で振り払いながら女性を殺そうと突進する。
「すごいなこれ。トルネ、八雲、やるよ」
「はい!」
「準備します」
木遁の次から次に生える木々に鬱陶しそうにするコダマだが、彼女に向かって手袋を外したトルネが急接近する。突進するコダマに合わせて、前に飛び出したトルネは、コダマの巨大な腕を狙い自分の毒手を当てる事に成功する。
毒虫がコダマの巨大な腕を紫に染め、毒が蔓延する。
「いっ……へっちゃらだ!」
「くっそ」
激痛に顔をゆがめたコダマだが、すぐに己の毒で毒虫を中和してしまう。正確に言えば、コダマの毒素が毒虫を殺してしまう。自分の毒が効かない相手の存在に、トルネがうろたえていると、コダマがトルネの手を掴んで、ヤマトの方向に投擲する。
巨大な腕で投げられたトルネは、ヤマトに激突する寸前に八雲によって受け止められる。
「す、すまな……やくも!」
トルネを受け止めた八雲は、トルネに触れてしまった手から毒虫が感染し、激痛に顔をゆがめている。その様子を見たトルネが慌てて毒虫の感染した部位に触れ、毒蟲を抽出する。少しずつ顔色が戻り始めた八雲だが、顔は汗だくで毒のダメージは残っているようだった。
自分の毒で仲間を傷付けたことに狼狽えるトルネだったが、八雲は彼の肩に手を置く。
「大丈夫。トルネ君。先生の所に行って」
「しかし」
「私たちは仲間なんだもん。やらなきゃいけないことがあるよ」
八雲の言葉に、トルネは迷いを一時的に捨て抗戦するヤマトの応援に向かった。ヤマトは木遁の術でコダマの攻撃を迎撃するが、怪力と素早い身のこなしに苦戦する。
ヤマトは、現在赤くなっている写輪眼に気が付き、警戒の色を強くする。
(写輪眼を持っている子か。そしてこの腕。なんなんだ)
「隊長!」
「トルネ。八雲は?」
「解毒しました。時間を稼いでくれと」
「わかった。一気に行くよ」
ヤマトは、コダマを閉じ込めようと木遁・木錠壁を発動。3重にも展開された木遁の檻がコダマを封じ込める。だが中で大暴れするコダマのせいで地響きがおき、木錠壁にひびが入る。
ひび割れた木遁・木錠壁から這い出したコダマだったが、トルネが再びコダマの顔面と頭の羽に毒手を打ち込む。
毒虫は確かにコダマの細胞を破壊しようとするが、数秒で彼女の毒で死に絶えてしまい効果が薄い。
「きかないって言ってる!」
「ぐあ」
トルネを尻尾で叩きのめしたコダマは地上では分が悪いと空中に飛びあがる。空を飛んだことにヤマトは驚くが、護衛対象である女性だけを狙い羽根を飛ばすコダマ。
木遁の木々が攻撃を遮るが、羽根は鋭く威力が高いため、貫通するのも時間の問題となる。
空中にいるコダマは、ヤマト達からの攻撃手段が限られる。
「これでどうだ」
コダマは口を大きく開き、粒遁・天倫と同じような粒子砲を発射しようとする。その威力は、第四班が良く知るところであり、溜めていくチャクラの量がヤマトの木遁ごと周囲を吹き飛ばさん威力となる。
「じゃあね。あれ? あつーーーーーーーーーい!! いやーーーーーーーーーー!!!!!」
発射寸前になったコダマだった。しかし、突然体中が発火し、業火に体中が焼かれる。本来火遁でも燃えない体毛で覆われた腕や羽、尻尾まで燃え上がり、苦しみ続けるコダマ。あまりの熱さに粒子砲を解除してしまう。
火を消そうと空中をむちゃくちゃに飛び回る。ようやく火を消したところで、全身火傷でただれている。涙を流し苦しむコダマにさらに追い打ちが起こる。
「なんで、また毒が、いったああああああああああ!! もうむり!!!」
体中に突然トルネの毒が回り始めた。効かない上に解毒したはずの毒が回り始め、その激痛にコダマは耐えられなくなって、その場を離脱するように高度を上げ、消える。
――――――――
コダマが全身にやけどを負い、痛みに耐えかねて撤退した姿を見ていた第四班。
彼女の気配が消えたことで、木の上に立った状態の八雲はようやく術を解除する。コダマを襲った炎と毒は、実は八雲が彼女にかけた幻術だった。
コダマのチャクラが多く、写輪眼を持っていたために準備に時間がかかったが、術は成功。炎に焼かれる痛みと、直前で受けたトルネの毒の痛みを再現したのだ。
特にイメージではなく、直前まで感じていた痛みの感覚は、ダイレクトにコダマに伝わり、彼女が撤退する理由となった。知っている苦痛の数だけ、あたえる苦痛がより強くなる八雲の幻術。
「やりました先生」
「ご苦労様。今は休んでくれ」
幻術に全チャクラを注ぎ、遠距離にいるコダマに大ダメージを与えたが、殺すことはできず撤退させるだけにとどまった。だが、直前に毒を受け、チャクラのなくなった八雲は気絶。コダマのしっぽを顔面に受けたトルネも気絶。
シャナは、須佐能乎の代償でボロボロだった体を酷使し、同じく気を失う。
残ったのはヤマトと、護衛対象の女性のみ。とてもではないが、国境は越えられず、湯の国に療養に向かうしかなくなる。
「初の里外任務で、こんなことになるなんてね」
ヤマトは木遁分身を出し、女性の護衛と班員3名を湯の国に運んだ。幸い大名家の女性の理解もあり、幾つも部屋を貸し切ってもらえることとなった。
里に向けて伝書鳩を飛ばし、第四班の帰還が遅れる事を知らせたのだった。
―――――――――
撤退したコダマは、空を飛びながらも力尽きて落下。ふらふらと地面に向かって落ちる寸前。ふわりとコダマの体が浮き上がる。重力に逆らってゆっくりと落ちる彼女の体を、地上で待機していたオレンジの髪に輪廻眼を持つ男、ペインが優しく抱き上げる。
疲れ切り、傷だらけのコダマを眺めるペイン。彼はコダマの頭を何度か撫でると、背後にいたゼツに話しかける。
「コダマがやられる程の相手が居たのか?」
「そうだね。見た感じは下忍のフォーマンセルだったんだけど、恐ろしく強い奴が居たんだ」
「軽い任務のつもりだったが、ここまで追い詰められたか。逃げればよかったものを」
「張り切ってたからね。ペインから任務貰えたって」
ゼツは迷子になっていたコダマに道案内をした時のことを思い出し、そう告げる。無表情のペインは、輪廻眼で小さなコダマの寝顔を見る。
「しばらくコダマは任務に出さない」
「一回失敗しただけでダメなの?」
「鍛えてやるだけだ。痛みを知ったコダマは、さらに強くなる」
コダマを回収したペインとゼツは、その場から消える。
ペインがコダマに抱いている感情は、まだ本人もわかってないですね。
第四班の任務の結果は、護衛は成功。けれど重傷者が出てしまう結果になりました。シャナとコダマが全力で戦った場合、7対3でシャナが勝ちますが、今回は色んなイレギュラーの結果とコダマの本能に翻弄されたって感じですね。
次回は、木ノ葉の里視点です。