NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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湯の国

 コダマとの戦闘を終えた第四班。 

 幸いにして、重傷を負っていたシャナだったが、湯の国の医療忍者による治療を受けたことで、大方完治していた。だが、無理は禁物ということで、依頼主である大名家の女性の厚意もあり、温泉旅館に宿泊していた。

 

 生まれて初めての高級旅館にテンションの上がっていたシャナ。

 大名家の女性は、Cランク任務にも関わらず、命を懸けて戦ったシャナに感銘を受けていた。死んでいった護衛達の弔いもあり、一週間は湯の国に留まることになった。

 

 シャナと八雲は、旅館の温泉に浸かりながら、疲れを癒していた。露天風呂に浸かりながら、二人して湯治を楽しんでいる。

 

「いい湯だねシャナちゃん」

「ご飯も美味しいし、もうここに住むのもいいってばね」

 

 鹿威しの音が聞こえる風流な温泉。疲労回復と、骨折に効くという効能を肌で感じる二人。

 

「ご飯も美味しかったけど、シャナちゃんが戻しちゃったのはびっくりしたね」

「白子ってあそこまで苦手だと思わなかったってばね。うー気持ち悪い」 

 

 初めて食べる食材の中で、どうしても白子だけは受け入れられなかったシャナ。食べた途端感触と味に嫌悪感を感じ、食べきれなかったのだ。

 ちゃぷちゃぷと湯を楽しんでいるシャナを眺める八雲。

 普段は男の子のような服装でわからないが、年齢の割に顔と体も大人びており、正直美人だと感じる。八雲も同じく美人でスタイルもいいほうであるが、隣の芝は青いのだ。

 

(セクシー系も行けるねシャナちゃん。悩殺できそう。ていうか、でかい。今度服屋に一緒に行こう)

 

 

 ジーとシャナの肢体を眺めていた八雲だが、シャナは全く我関せずと言った表情だった。同年代で同性ならいろいろ気にするものだと思うが、シャナは男の子寄りの感性なのだろうと肩をすくめる。

肩をすくめながらも、何故かシャナの胸部に手を当てる八雲。

 

「なんで胸触るってばね?」

「あわよくば、ご利益ないかなって」

 

そんな会話をしながら、しばらく温泉を満喫した二人。

 

 

「いいお湯だけど、あんまり長湯はダメなんだよシャナちゃんは」

「残念だってばね。……そういえば、トルネは?」

 

 シャナの質問に、八雲の表情が暗くなる。その原因は、温泉に浸かっていた八雲の右腕にある。戦闘中のハプニングとはいえ、仲間に毒蟲を感染させてしまった責任を感じたトルネが塞ぎ込んでしまったのだ。

 全く会話がないわけではないが、事務的な会話を終えると、彼は部屋に閉じこもってしまったのだ。

 食事のたびに、顔を出しては八雲やヤマトに謝り、部屋にこもるの繰り返し。

 

「まだ整理がつかないみたい」

「やっぱり一発殴って」

「なんでシャナちゃんは、殴る事から始めるの~」

 

 拳を構えたシャナを止める八雲。コミュニケーションの方法が変だと指摘され、シャナは首を傾げていた。

 二人は、温泉を後にし浴衣姿でお店を巡る事になった。

 

「トルネ君にも何か買っていこうか?」

「お饅頭売ってるってばね」

 

 シャナが饅頭屋さんを見つけ、そこでお土産として買った分とは別に、買い食いしたがったシャナの提案で買った饅頭。

 それがあんな悲劇を引き起こすとは思っていなかった。

 

 

ーーーーーーー

 

 少し時間が過ぎ、トルネの部屋にヤマトが訪ねていた。

 

「入るよ」

「どうぞ」 

 

 部屋に入ったヤマトは、部屋の隅で両ひざを抱えているトルネを見つける。彼を刺激しないように傍に胡坐をかいて座るヤマト。

 

「そろそろ、気持ちの整理がついたのかと思ってね」

「隊長……俺はやっぱり暗部に行くべきだったんでしょうか?」

 

 トルネは、元暗部であるヤマトにそう尋ねた。

 トルネは第四班に配属される前に、根のダンゾウの元に引き取られる予定だった。それが突然三代目のおかげで、通常の下忍となった。

 だが、本来トルネの術は暗殺向きであり、人を殺すための力だった。

 

「確かに。君の能力なら暗部でも活躍出来ただろうね」

「……俺は、誰とも組めない人間なんです。今回の事だって…、俺は役立たずなうえに、八雲に苦痛をあたえてしまった」

仲間を守りたかった。なのに自分の力が仲間を傷付けてしまった。

 

「この班なら、俺もやっていける。そう思っていたのに……俺は、俺は」

 

 トルネの悩みは深い。

 

「僕は君がこの班を大切にしてるのも知ってるし、君の責任感が強いのも知ってるよ」

「正直どうすればいいのかわかりません」

 

 自分のコンプレックスがそのまま重く伸し掛かる。自分ではなにも守れない。むしろ守ろうとすることこそ間違いだった。考えがどんどん暗いものに変わっていく。

 ヤマトはトルネの様子を見かねて、肩に手を置こうとした時、トルネの部屋のドアをガンガン叩く音が聞こえる。

 ヤマトは、おそらくこの騒がしさからシャナだと思った。

 

「八雲! やめるってばね! さっきから様子が変だってばね! 止まらない!」

 

 どうやら違うらしい。ドアを激しく殴っているのは八雲らしい。むしろ声からしてシャナは止めているのだろう。鍵が掛かっていないことに気が付いたのか、ドアノブを回して入ってきた二人。

 必死に八雲を羽交い絞めにしているシャナだが、ズルズル引き摺られている。

 

 馬鹿力を発揮してはいってきた八雲。浴衣が着崩れており、表情も艶っぽく頬に赤みがさしていた。そして何より重要なのは、目が据わっている事だ。

 

「おい~! いい加減うじうじしてないで、こっちみなさいよ!」

 

 八雲は、彼女の変貌に固まっているトルネの胸ぐらをつかみ上げ、ブンブン振り回す。ヤマトは八雲の変貌に驚愕していた。

 

「なによ。ちょっと失敗しただけで、もうだめだとか! ふざけんじゃないわよ」

「や、八雲、急に、どうし」

「どうせならいろいろ観光したいのに、閉じこもってさ。気にしないでって言ってるのに、ずっとずーーーっと気にし続けて! こっちまで気になるわよ!!」

 

 ガクガクとゆすられるトルネ。シャナが懸命に八雲を引きはがそうとしているのに、八雲はびくともしていない。

 そして、シャナの買い物袋から既に開いている箱が転がり落ちる。

 

「シャナ。これを八雲は食べたのかい?」

「そうだってばね! おすすめの饅頭食べたら、八雲がやっぱり腹立つ、ぶん殴るって走っていったんだってばね」

 

 ヤマトは、箱のパッケージを見て、八雲の様子を理解した。箱には【酒まんじゅう】と書かれていた。アルコール度数が少し高めである。飲酒を子供は出来ないが、食べ物に入れるなら問題ない。旅行中にお酒を飲めない子供たち向けに少しだけ大人な味を体験できる商品だった。

 それを食べた八雲は、酒乱状態になっているのだろう。普段から抑圧されたストレスを発散しているのかもしれない。

 

「本当に済まない」

「だから謝るな! トルネは何もしてないのに謝ってくるな!」

「しかし、俺のせいで、ぐっ」

 

 謝るなと怒っているのに謝るトルネに頭突きをした八雲。唖然とするトルネ。もろに入った頭突きにシャナとヤマトも言葉を失う。

 

「私はね。トルネに守られるだけの役立たずじゃないの。私だってあなたを守ってあげられるし、一緒に戦ってるの。

それに私の怪我は私の責任なの! なのに勝手に背負って、勝手につぶれないでよ馬鹿」

 

 八雲の言いたかったことはこれなのだ。何故自分の怪我の責任をトルネが背負うのか理解できない。この間、トルネが言っていたように、仲間なのだ。自分だけで背負わないでほしい。

 それは仲間を大切にしているのではない。仲間を信用していないのだ。

 

「私は、一緒に戦いたいの。守ってほしい訳じゃない。それに、毒が通じなかったからって、トルネが無力なわけじゃないでしょ!

 

もういい加減にしてよぉ。ばかぁあああ」 

 

 酒に酔い、滅茶苦茶な会話だが、心の声をぶつける八雲。 

 感極まったのか、泣き出してしまう八雲。泣かせたくなどなかった。今の自分の不甲斐なさが八雲を泣かせてしまったのだ。

 

「……すまな」

「あ?」

「いや、ありがとう。君の言葉に助けられた」

 

 トルネは、八雲の声を聴いて、自分の中の迷いに向き合うことに決めた。少なくとも自分を仲間だと思い泣いて怒ってくれる彼女と共に強くなりたいと思った。

 泣きじゃくる八雲の頭を撫でながら、トルネは自分の新しい目標を考えていた。

 

 

「何だってばね、この展開」

「うーん、若さかな」

 

 おいてきぼりのシャナとヤマトは顔を合わせながら、酒まんじゅうの箱を静かに隠したのだった。八雲に食べられないように。

八雲は酒乱という新しい発見は、後に木ノ葉の毒蓮華として他里まで名を轟かせる忍の誕生に繋がるのだった。




木の葉の毒蓮華。誰に師事したんでしょうね。

木の葉の青い閃光、木の葉の毒蓮華。後は何になるかな。
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