NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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うちはの集落

 

 少女が波風シャナとなってから時が経ち、いろいろな事が変わった。

 まず第一に、シャナの存在は里に正式に認められた。

 

 難民扱いで、波風夫婦の養子となる流れは比較的スムーズに運ぶ。三代目の手助けが功を奏した結果ともいえる。

 そして、問題となっていた写輪眼を持つことについて、クシナは、友人であるうちはミコトからうちは一族のまとめ役であるうちはフガクへと報告した。

 

 おそらく写輪眼を持っていること。

 それは通常の写輪眼ではないこと。

 なるべく穏便に事を進めてほしいこと。

 

 それらを伝え、個人的にうちはの血筋かどうかも調べてもらうこととなった。その要望が通り、うちは一族の家庭へと尋ねることなる。

 

 

―ーーーーー

 

 波風家。居間。

 

「イーーヤーーー!!」

 

 拾われた時から、栄養状態も良くなり、少しふっくらした少女、波風シャナ。彼女は、布団に籠って、必死に抵抗していた。何故抵抗しているかといえば、うちはフガクとミコトの家に尋ねることになったからだ。

 その際、自分の目を見てもらう必要があり、前日から嫌がっていたのだった。

 

 トラウマを幾つも抱えたシャナ。少しづつ改善し、我儘も言えるくらいには信頼というものを持っていた。擦れ違いも多く、叱られたり、怒ったり、褒められたりと、名実ともに波風夫婦の娘としての生活を送っていた。

 少しづつ心の傷と向き合っていた彼女だが、どうしても自分の目を相手に見られることだけは拒んだ。それは、木ノ葉の医者や波風夫婦相手にも徹底していた。

 

 二人が優しいことはわかっていた。だが、彼女の心の奥深くの一番大きな傷が、自分の目を見た相手の反応なのだ。今は優しい二人が突然冷たくなったら?その疑問を振り払えるほど、彼女は強くない。

 

 得てしまったからこそ、失うことに憶病になってしまった。

 村の生活を悪夢で見ることがあったが、最近では、ミナトとクシナに捨てられる悪夢に魘される日々が続いた。

 その悪夢を見た日に、目を知らない人間に見られるということで、昨日は渋々ながら了承した予定を嫌がっていたのだ。

 

 

「ほんとうに、大丈夫だってばね! 私たちは、見ないから」

「そうだよ、シャナ。嫌がることは絶対しないから、布団から出てきてくれないかな?」

 

 駄々をこねる我が子の成長を喜ぶも、約束の時間が迫るので、どうしたものかと悩むミナト。クシナも少しだけ布団を引っ張りながら我が子を説得する。

 

「変ていうってばね!」

「言わないってばね! それに、今日行くのは、あなたと同じ目を持ってる人たちなの」 

 

 ずっと一緒にいたクシナの口癖が、あまり会話をしたことのなかったシャナに移ってしまったのは必然だった。ぐずぐずとしていたシャナだったが、やがて観念してベッドの枕元に置いてある ゴーグルに手を伸ばした。

  

 紫の色付きゴーグルを装着したシャナは、ようやく布団から這い出す。

 

 目隠しをしたままでは日常生活が出来ないということで、クシナとミナトは色々思案し、最終的にマジックミラーの色付きゴーグルをするという形に落ち着いた。シャナのトラウマの発動条件が、自分の目を見た相手の反応であったがため、ゴーグルで目を見られなくすればいいと、ミナトの部下の一人がくれたものだ。

 その対策が思いのほか効果的で、シャナは世界を見ることができるようになった。

 人の視線を最初は怖く思っていたが、周囲の人間が敵意を持った目をする事がないため、クシナと一緒なら里を出歩けるようになっていた。

 依存していることには変わりないが、少しだけでも症状が改善しているのは確かだった。

 

 

「……おはよう」

「ん。もうお昼前だけどね」

「顔、洗ってくるってばね」 

 

 シャナはクシナが布団を片付けている間に、洗面所で顔を洗う。そして、しっかりゴーグルを装着したのを確認して、恐る恐るリビングを覗く。

 ひょっこりドアから除く娘の視線に気が付いたクシナ。

 

「顔洗ったってばね?」

「洗ったってばね」

「もう。あたしの口癖真似しちゃだめだってばね。まぁいいわ、髪の毛やってあげるからこっち来て」

 

 自分の真似をするシャナに嬉しさ半分といった表情で髪の毛を梳いてあげるクシナ。シャナが本来は人懐っこく、甘えたがりな性格だということはこれまでの生活で理解した。櫛で少しだけ伸びた髪を梳いていると、シャナは目を瞑りながらも気持ちよさそうにしていた。

 そして、髪の毛を整えると、再びゴーグルを装着していた。 

 

 昼食を終えた3人。約束の時間になる前に、うちはの集落へと足を向けていた。

 キョロキョロと里を見渡すシャナ。

 

「ふらふらしてたら迷子になるってばね」

「手を繋ごうか」

 

 ミナトとクシナ両方と手を繋いでシャナも歩く。

 里を歩いていき、木ノ葉の警務部隊のあるうちは一族の集落へたどり着く。 

 

「ここが、うちはの?」

「そう。この団扇のシンボルがあるところだよ」

「ミコトの家は、もうちょっとだってばね」

「あれって、おせんべいだってばね……あ!」

「え?」

「あ、こら」

 

 3人でうちはの集落の門をくぐる。そして、少しだけ集落を進んだところで、シャナが突然走り始めた。ミナトとクシナは、好奇心で走り出したシャナを追う。

 

 だが、二人に追いつかれるより先に、シャナは、煎餅屋”うちはせんべい”の前でちょうど買い物をしている人物に抱き着いた。

 

「ごふっ」

 

 2歳の子供とは言え、本気のタックルを腹部に受けた人物は転倒。目を回していたが、すぐに復帰。タックルしたシャナに怒る。

 

「なんだよ急に!って……シャナ?」

「うん。そうだってばね、オビト兄ちゃん」

 

 シャナを強制的に受け止めさせられた人物は、シャナとは色違いのオレンジのゴーグルをした少年だった。その名をうちはオビト。波風ミナトの部下の一人であり、両親以外ではシャナが一番懐いている人物だった。

 

 ゴ-グルでなく薄い布で目を覆い、買い物の最中に里で迷子になったシャナを集合場所に向かっていたオビトが見つけ、一緒に親探しをしたのが出会いだった。

 最終的にオビトの上司がミナトだとわかる。シャナが迷子になったと慌てて伝えに来たクシナと任務前に娘が迷子と聞いて捜索しようとした二人の前に、大泣きしながらおんぶされてるシャナとオビトが現れたのだった。

 家族以外では、初めて接した人だったオビト。心から心配し力を貸してくれた彼は、シャナにとって大好きなお兄ちゃんになった。

 

 ミナトの任務帰りや修行中に、何度かクシナと一緒にお迎えやお弁当を届ける度に会っていた。今のタックルも何時もの挨拶なのだ。

 

 

「シャナ、お前今日もかわいいな~、ほらほら」

「きゃー」

 

 シャナを抱っこしたオビトは、彼女の体ごとぐるぐると回って振り回す。自分に懐いたシャナをオビトも実の妹のように可愛がっており、いつも遊んでいた。二人で回っていると、クシナとミナトが歩いて追いつく。その姿を見てオビトが止まる。

 

「ミナト先生、それに……」

「やぁオビト」

「なんだってばねその目。クシナ様と会えたのに、不満でもあるのかしら?」

 

 嫌そうな表情でクシナを見たオビト。拳を構えるクシナ。二人はいつも小競り合いする中なので、ミナトもシャナも何も言わない。どちらも口では文句を言うが、仲がいいのは見てわかるのだ。

 

 

「先生達、シャナを連れてうちはの集落に何の用なんだ?」

「警務隊長のお宅に用があってね」

「フガクさんの? やっぱり写輪眼の事で?」

 

 オビトの問いにミナトは頷く。シャナを下ろして、オビトは足元に落としていた煎餅の袋を拾う。そして、袋の中から煎餅を一枚シャナにあげ、頭を撫でている。

 ミナト班の人間は、シャナの血継限界の事を知っていた。特にオビトは、エリートであるうちは一族の彼は、自分より遥かに年下のシャナが写輪眼の開眼者である事実を、複雑に捉えていた。偶然、シャナの目が写輪眼になるところを見た際は、さすがに驚き、嫉妬してしまう。

 だが、ミナトやクシナから目のせいで心に傷を負っている事を聞かされ、自分だけは絶対に味方でいてあげようと考えた。写輪眼についても、持っている知識をミナトに伝えていたので、事情をよく理解していた。

 トラウマに対しても、自分の御下りのゴーグルをプレゼントすることで、シャナに日常生活を送れるようにしてあげた。

 

「オビト兄ちゃん、おせんべい、ありがとうだってばね」

「おう」

「優しい所あるってばねオビト」

「う、うるせー、うるせー」

 

 クシナにからかわれたオビトが拗ねる。そのあと、オビトと別れ、うちはフガクとミコト宅へ足を運んだ。オビトに会ったことで緊張のほぐれたシャナは軽い足取りで家の敷居を跨いだのだった。

 

 

 

 

 





 
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