予定日から一週間遅れで第四班は、木ノ葉の里に帰還した。
護衛対象である女性も無事、送り届ける事に成功。再びコダマの襲来を警戒していた面々だが、何事もなく任務を完遂する。
そして何事もなく里に帰った面々。それぞれ解散して自宅に向かう。シャナだけは、サスケとナルトの修行の成果を見せてもらおうと訓練場に向かった。
「あ、姉ちゃん! 帰ってきてたのかってばよ!」
修練場の木の天辺にいたナルトがいち早く、シャナの姿を見つける。ナルトの声に反応し、同じく木の頂上に立っていたサスケもシャナを見つけて二人とも降りてくる。
「ただいまだってばね。木登り出来るようになってるんだ?」
「おう!」
「退屈していたところだ。次の修業を教えろ」
二人とも得意げにしているが、二人が手を使わず登れるようになったのは、昨日なのだ。本当にギリギリのタイミングで修行を終えていた。
ナルトとサスケは、冷ややかな表情の陰で冷や汗をかいていた。
(あっぶねぇ。あと一日早かったら、絶対馬鹿にされてたってばよ)
(正直イルカには感謝だな)
二人は、木登りの行に難航していた。だが、アカデミーでナルトが木登りの行を行っていると、アカデミーの教師であるイルカがそれを見て、アドバイスをくれた。
そのアドバイスを試したところ、少し高く登れたナルト。ナルトに頼まれたイルカは、休み時間にナルトにコツなどを伝授。ナルトが一人上達しているのに気が付いたサスケはナルトからコツを聞き出し(一楽のラーメンおごりで)二人とも修業をやり遂げたのだ。
二人の成長を素直に喜んだシャナは、いつも通りに修行をしようと言った。
「行くってばよ姉ちゃん!」
「本は読まないのかよ」
今日は本を読もうとしないシャナにサスケが挑発的な笑みを向ける。
「今日は、ちょっと厳しめに行こうと思ってる。……写輪眼。術も使っていいってばね」
印を結び、写輪眼を発動する。青い写輪眼に睨まれた二人は、合図もなくチャクラを足に集中。そして反発させることで加速する。
二人のチャクラの動きと、取り囲むような連携を写輪眼で追うシャナ。
(いい動きしてる。きちんとモノにしたんだ)
少し頬が緩みながらも、襲ってくるサスケとナルトに容赦のないカウンターを決めていく。ナルトの鳩尾に膝を入れ、後ろから上段蹴りを放ってきたサスケには、攻撃をしゃがんで回避、後に頬に肘を入れる。
一瞬で二人とも殴り飛ばされ、苦しむ。痛めつける趣味はないが、甘えさせる気は一切ない。
「どうした。終わりってばね?」
「…、まだまだだってばよ!!!」
「負けてたまるか」
すぐに起き上がった二人。怪我はしていない。だが立ち上がったのなら、もう一度叩きのめす。
「一発でも当てたら、修行は終わってラーメン奢ってやるってばね」
だからかかってこい。そう言ったシャナ。そうは言いつつも、負けるつもりなんて微塵もなかった。
―――――――
数時間ものあいだ、何度倒れても立ち上がった二人。だが全身ボロボロで満身創痍と言ったありさまだった。
少し呼吸を整えるシャナと距離を取りながら、ナルトとサスケはシャナに聞こえないように作戦を立てていた。
「かすりもしないとはな」
「写輪眼本当に反則だってばよ。……ん!」
全てを見抜く写輪眼。その攻略法を考えていたナルトは、ある方法を思いつき、サスケに耳打ちした。
「馬鹿な。あの術をやるつもりか?」
「イルカ先生にも効いたスゲー術だってばよ。あれならいけるってばよ」
「いや無理だろ。絶対に上手く行くわけないぞ」
それでもやるといったナルトに渋々従うサスケ。すかさずクナイを投擲し、火遁の印を結ぶ。そのサスケの前をナルトが爆走する。
ナルトごと火遁で焼くつもりかと、シャナが困惑する。飛んできたクナイを回避し、ナルトに向かって水遁を放つ準備をする。
すると、サスケは火遁を発動せず構えだけを取っており、シャナに接近したナルトが印を結んでいる。
「いくってばよ」
(何する気? あの印は、変化だったはず)
謎の行動にシャナは先見の写輪眼を発動した。未来視を使ってナルトの行動を先読みしようとする。だがそれが悪手だったのだ。
「おいろけの術!!」
ナルトは、変化の術を使った。そして、金髪ツインテールのセクシーな美女に変化した。そして、色っぽくシャナに微笑みかけた。
この術はナルトが開発した術であり、スケベな相手に使うと鼻血を噴き出して倒れるという必殺忍術だった。しかしこの術には致命的な弱点があった。
男性にしか効果がないのだ。女性のシャナには一切効果がない。そう思われた。
先見の写輪眼を使って、おいろけの術を見抜いていたシャナ。彼女は、セクシー美女になったナルトを見て、噴き出した。
「ぶっ、あはははははははははははは!! 何その変な術!! あはは、うふふふ」
彼女にしては珍しく大声で笑い、腹を抱えながらヒィヒィ言っている。
「おらあ!」
「ははは、ぐっ」
あまりに奇抜な術にツボに入ってしまったシャナは、涙目になりながら膝を叩いて笑っていた。だがその隙にナルトがシャナの顔面に一発入れる。殴られたシャナは、仰向けに倒れて空を見上げる。
「ぷっ、あははは……あ」
殴られても笑い続けるシャナ。彼女の無敵の瞳術。先見の写輪眼の意外な弱点が発覚した瞬間だった。未来を実際に見て学習する事が出来る術、見る事で発動する幻術などは効果がない。しかし見るという関係上、見た情報は全て記憶に残るのだ。
つまり膨大な情報量でナルトのおいろけの術を見てしまい、シャナにとって面白い術であるために、回避できない術となってしまった。見れば見るほど面白おかしい術で、シャナのツボにはまった結果、腹が痛いほど笑ってしまい、ナルトの一撃を貰ってしまった。
先見の写輪眼は集中力が大事。なのに集中して見てしまうと集中力が乱れるほど爆笑してしまうのだ。しかも、先見の写輪眼を使う以上、見ないということはできない。まさに天敵。
自分が殴られたことに驚くシャナだが、何度も思い出し笑いしてしまい、地面をたたきながら、笑い転げる。
「おれってば、やったってばよ!」
「馬鹿な。あんな術で」
サスケは驚愕していた。馬鹿笑いしているシャナの姿もだが、一撃入れたナルトに。そして、おいろけの術の威力に驚き、無意識に変化の印を結びそうになっていた。
(いや、んなわけあるか!)
危うくおいろけの術を習得しそうになったサスケだが、理性が総動員して拒否した。あの術でイタチと戦うのは嫌だし、あの術で復讐が成功するのも嫌だ。
「うそだぁああ、あははは。あんな術に、ぷふ」
先見の写輪眼まで使ったのに、完敗したシャナは、悔し涙を流しながらも少しの間笑い続けた。その後、約束通りラーメンを奢ることになったシャナ。恐ろしい忍術を開発したナルトに、術について聞き取り調査をしながら、シャナもおいろけの術をマスターしたのだった。
この姉弟は、どうなってるんだと横で冷ややかな視線を送るサスケを無視して、悔しがりながらラーメンを啜る姉と術の効力を自慢する弟。
後に意外性ナンバーワンのドタバタ忍者と呼ばれるナルト。その武勇伝の一つとして、先見の写輪眼を正面から打ち破ったという伝説が追加されたのだった。
衝撃の弱点。いや笑劇の弱点。