湯の国の任務からしばらくして、ヤマトとトルネは、ある人物を訪ねるために、木ノ葉の里の団子屋に向かっていた。
そこで待ち合わせをすることになっていたからだ。
約束の時間よりかなり早く到着した二人だったが、待ち合わせ場所には、先にその人物がいたようだ。
「お、早かったなヤマト」
「ガイさん。お待たせしてすいません」
その人物は、逆立ちで腕立てをしており、太い眉とおかっぱ頭、全身緑のタイツを着ている変わった人だった。だがこの人物こそがトルネがヤマトに会いたいと願い出た相手である。
逆立ちを止め、トルネを見た人物。それは木ノ葉の忍の中でも体術のスペシャリストである上忍、マイト・ガイだった。
「ヤマトから話は聞いているぞ。俺に体術の稽古をつけてほしいんだったか?」
「はい!」
いい返事をしたトルネに、歯を見せながら笑うガイ。
「ヤマト。この子を預かっていいのか?」
「しばらくは任務もないので。出来る限りでかまいませんがね」
ヤマトは、湯の国の一件以来、トルネに体術の指導を頼まれたが体術が優れているわけではない彼は、どうせならと自身の先輩であるカカシにガイへと取り次いでもらった。
後は頑張るんだよとトルネに伝え、ヤマトは自身に与えられた任務の為にその場を後にする。
「ところで、生まれは油女一族だったか?」
「はい」
「あの一族の人間が、体術を極めるのは珍しいと思うんだが、理由はあるのか?」
ガイの質問はもっともだ。蟲使いの一族であり、戦闘のすべてを蟲で行う彼らは、体術を鍛える必要性が低い。だがトルネは一族でも特異体質であり、近接戦闘がメインだと伝える。そして、自分がガイに師事したかった理由も伝えた。
仲間たちと一緒に戦うため、彼女たちを守るため、自分は前に出て戦いたいのだと。安心して彼女たちが戦えるように。湯の国での失態も併せて説明する。
静かにトルネの胸の内を聞かされたガイ。彼はトルネが話を終えるとサムズアップする。
「お前の気持ち。よーくわかった。静かなタイプかと思ったが、いい青春してるなお前!」
「…青春ですか?」
「そうだ。お前を鍛えるにあたって、幾つか言うことはあるが……俺の修行は厳しいぞ」
トルネの覚悟を試すガイ。ガイの質問にトルネは間髪を容れず答える。
「覚悟の上です。どうか俺を強くしてください」
「(冷静ながらも胸に秘めた思いは熱い。いい子じゃないか)。よし、それなら手始めに修練場を30周だ。それも一周一周ペースを上げていく」
「はい!」
覚悟のほどはわかった。この子は途中で投げ出すような子ではない。なればこそ、全力で応えるのが自分の役目だとガイは理解した。
油女トルネは、体術のスペシャリスト、マイト・ガイの弟子となった。
ガイの熱心な指導とトルネの努力は、彼の体術の実力をメキメキと伸ばす切っ掛けとなった。彼との修行の日々は、彼が班員を持つまで続けられた。
ーーーーーー
一方で鞍馬八雲はと言えば、トルネが本格的な修行を始めたと聞いて、元より自分の指導をしてくれていた人物。夕日紅の元を訪ねた。
木ノ葉の誇る幻術使いである彼女なら、自分の弱点を解決してくれるはず。正直言えば、会いたくない相手でもある。
もし八雲が下忍になれなかった場合、八雲の術は彼女によって完全に封印される約束だったのだ。
故に八雲は二度と彼女に会うことはないと思っていたのだが、自分から彼女を呼び出すことになるとは思っても居なかった。
先に待ち合わせ場所にいた八雲に声をかけてくる人が居た。
「や、八雲」
「紅先生」
八雲が紅を先生と呼ぶと、彼女は複雑そうな表情を取った。
「まだ、私を先生と呼んでくれるのね」
「……正直、私は先生を、許しきれてません」
「それはそうよ。貴方に言ったこと、行おうとしたことは、私を恨んでしかるべきことだもの」
八雲の専任教師だった紅は、ある理由から八雲の忍としての道を諦めさせようとした。だが三代目が最後のチャンスを与えてみると言い、彼女は見事に下忍になった。
自分では八雲を忍にしてあげる事が出来なかった後悔と、彼女の力を封印しなければいけなくなった後悔が紅の表情に影を落とす。
まだ八雲の中にあった問題については、根本的な解決をしていない。けれども仲間と一緒に生活する彼女は、自分の中に闇を溜め込まなくなっていた。そして班員に、八雲の力を封じ込める事のできるシャナが居るのも大きかった。
むしろ今の楽しそうに生きる彼女の表情を見れば、八雲の可能性を諦めた紅に掛かる誤った選択の責任は重いのだろう。
「今日はどうしたの? 私に会いたいだなんて」
「実は、お願いがあるんです」
「お願い?」
自分の胸に手を当て、頭を下げながら八雲は紅に「私に幻術を教えてほしいんです」と頼んだ。
「わ、私に? でも八雲の幻術は、十分以上に強力なはずよ」
「私の幻術は、時間がかかりすぎるんです。できれば素早く幻術を掛けられるようになりたいんです」
必殺の幻術も、常にシャナとトルネが戦ってくれているからこそ、発動できるだけ。もし一人になった場合、八雲は一番無力だろう。
「つまり、幻術で幻術の為の時間稼ぎがしたいってことね?」
「そうです。トルネ君もシャナちゃんも、一人一人がものすごく強くて、いつも守ってもらってるだけになって。二人は私の事を凄いって言ってくれるけど、私はもっと強くなりたいんです」
(あの頃の八雲は、もういないのね)
まっすぐに自分を見つめ、頑張りたいという八雲。体が弱く自分に自信がなかった頃の少女はもういない。
「いいわ。任務の合間になるだろうけど、それでも良ければ教えてあげる」
「本当ですか!」
八雲は喜んだ。きっと第四班の二人はもっと強くなる。だから自分も決して置いて行かれないように食らいついて行きたいのだ。
ちょうどトルネと同時期に八雲も紅からの指導を受ける事になった。
幻術使いとして有名な紅は、八雲の覚悟に応え、実戦的な幻術の使い方を伝授していった。
――――――
一方その頃。シャナはと言えば、サスケとナルトそれぞれに術を指導していた。
二人のチャクラ属性を見るために、紙を渡し、チャクラ性質を確認した。結果、ナルトの紙は斬れ、サスケの紙は燃え、しわくちゃになっていた。
結果的にナルトは風遁。サスケは火遁と雷遁の性質を持っていることが分かった。
そこで影分身を行い、それぞれ別の術を教える事となった。サスケには、シャナが得意とする雷遁・雷掌を伝授することになった。
威力は低いが相手を痺れさせる性質上、サスケのテクニックにさらに磨きがかかる。効力と利便性を聞いたサスケは、その修業に取り組んだ。
案外気に入ったのか、力の入りようが違った。
「あのさ、あのさ。俺にはどんな術教えてくれるんだってばよ」
ナルトは姉を見上げながら、新術について目を輝かせる。シャナはそんなナルトの前で、掌を出した。
「風遁・
シャナの掌に風遁のチャクラが渦巻いた球が完成する。それをシャナは隣にあった木にぶつける。すると、木の一部がスレッジハンマーで殴られたように潰れる。
「何その術」
「私が考えた術だってばね。まだまだ完成には程遠いけど、不意打ちにはなる。威力も体術よりははるかに高い」
シャナがその術を開発した経緯は、亡き父だ。父の修行風景を見たことのあるシャナは、どうにか父の使っていた術を再現しようとした結果生まれたのだ。だが父の術を見よう見まねで再現しただけで、威力も何もかもが違う。
本来なら教えてほしかった術であるが、父にまだ早いと断られた。だからシャナが再現するしかない。
父の跡を継ぐのは自分だと思っていた。故にシャナは父の術を全て会得したい。けれど今はもういない父に師事を仰ぐことはできず、自分で開発するしかない。
「すっげーすっげーってばよ」
「ふふ。けど性質変化の修行は難しいってばね」
チャクラの多いナルトなら、この術も威力が上がるはず。シャナは粒遁があるため、旋風玉は使わない。けれど父の息子であるナルトにこの術を教えられるのは、なんという運命だろう。
「よろしくお願いしますってばよ!」
「いいだろう。だが長くなるとは思っておくってばね」
長丁場の修行になる。けれど、ナルトにとって確かな武器になるのなら、教えるしかない。幸い印もいらず、発動できるため、初級にはいいだろう。
そして、ナルトとサスケの修行を影分身に任せたシャナは、一人で修行を行う。シャナに術を教える事の出来る人間はいない。故に、自分の力で強くなるしかない。
うちはの修練場の地下に苦手な土遁で作った地下室。そこでチャクラを研ぎ澄ませ、修行を続ける。何度も何度も自分の影分身を倒しては、さらに強くなった分身を倒す独自の修行法。
(あの狐と仮面の男を殺すには、まだまだ術が必要だってばね)
地下室の壁には、狐の壁画と、仮面の男の壁画が血で描かれており、恨みの深さが突き刺されたクナイで窺い知れる。
平和な生活。新しい仲間や弟子、家族に囲まれたシャナの心の中には、いまだに消える事のない闇の炎がしっかりと燃え盛っていた。
どうにかしてナルトから九尾を引きはがし、そして九尾を狙って現れた仮面の男を殺す。それはシャナに刻まれた使命だから。ナルトを守るために。
青い写輪眼が万華鏡に変わり、シャナが自分の瞳術を目覚めさせる修業が始まった。
(力が全てだってばね。あのコダマとかいうやつも、次は仕留める)
誰にも知られない中で、少女の闇はより深くなっていた。
実はうちは病、進行してるのはシャナでした。後、シャナの風遁の術ですが、忍空の空圧拳ですね。岸影様は螺旋丸に変化させましたが、シャナはミナトの螺旋丸を見て、空圧拳にたどり着いてしまいました。