シャナを連れた一行は、うちはフガクの家の玄関でチャイムを鳴らした。
すると、家から2人の声が聞こえる。
「イタチ、お客様を出迎えてくれる?」
「うん母さん……いらっしゃい」
女性と子供の声が聞こえ、玄関をイタチと呼ばれた子供が開けてくれた。ミナトとクシナに頭を下げた後、シャナの姿を見て笑いかける。
奥から少年の母親であり、母クシナの友人であるミコトが現れる。
「クシナ、それにミナトさん、いらっしゃい」
「おじゃましますだってばね」
「ハハ、おじゃまします」
顔見知りの大人達はすぐ馴染んでいたが、初対面のシャナは少し様子見していた。その様子に気が付いたミコトが微笑みながらシャナの目線に合わせて屈む。恐怖心を抱かせないようゆっくりとした動きでミコトはシャナの頭に手を置く。
そして撫でることで、警戒心を解く。
「貴方がクシナの言っていたシャナね」
「うん、そうだってばね」
「本当に可愛いわ。クシナが自慢するのも当然ね」
「ありがとう」
少し照れるシャナとそれを誇らしげにするクシナだった。だが、いつまでも玄関で待っているわけにもいかず、イタチとミコトの案内で客間へと案内される。
(おうち、全然違うってばね)
洋風な波風家と違い、うちは家は和風であり目新しいものが多いシャナ。
「あなた、波風さん一家が来ましたよ」
「あぁ」
部屋から渋い声が聞こえ、中に通されると客間には、威厳に溢れた表情をする一家の主、うちはフガクが居た。
「よく来たな」
フガクに迎え入れられて波風夫婦は、客間の席に座る。だが、シャナはフガクの顔を見て怯えてしまって部屋に入れない。
(むりだってばね。こわいってばね! おこってるってばね)
かなり強面なフガクに固まってしまったシャナだったが、ミコトたちはその様子を見て「ふふ」と笑っていた。
そして、イタチは「大丈夫、父さんは、顔は怖いけど、怒ってるわけじゃないよ」とシャナを案内する。
「あなた。だから仏頂面じゃ怖がらせてしまうって言ったじゃない」
「そうか。すまないな。生まれつきこういう顔でな、怖がらせようとしたわけじゃない」
「こっちにおいでシャナ」
ミナトが手招きし、彼に抱かれるようにしてフガクと向き合う。イタチとミコトが客間から離れるのを見てフガクが腕を組みながら話しかけてくる。
「ミナト君。その子が、三代目の言っていた子だな」
「はい。オレとクシナは、この子の目を見て写輪眼であると判断しました」
「そうか。見たところ、一族の特徴はあまり受け継いでいない。木ノ葉設立より前に分かれた分家の可能性もあるな。
そのゴーグルを外してもらえるかな?」
シャナは外そうかと悩みながら、動けない。いざ本番となると、どうしても怖いという感情が全身を支配し、石のように動かなくなる。
フガクは、動けないシャナを見て「そうだったな。先に君に見せておくとしよう」と前置きし、顔の前で片手で印を作る。
(あれって)
そして、目にチャクラを込めた瞬間に、彼の黒い瞳が赤く瞳孔の周囲に黒い巴模様が複数現れる。これこそが写輪眼という血継限界の本来の姿だった。
先に写輪眼を見せることでシャナの心配を取り除いてくれたフガク。遠回しに、シャナの目は、おかしくなどないと教えてくれているのだ。
その意図をくみ取ったシャナは、怖がりながらもゴーグルを外してフガクと向き合う。
赤い写輪眼と薄紫の瞳が向き合いながら、シャナはどうすればいいのかわからずミナトの袖を引く。
「シャナ。自分の目を変化させてみて」
「えっと、ん-、こう!」
幼いシャナは、チャクラの練り方が良く分かっていなかったが、本能的にチャクラを練られる子供だったため、目にチャクラを貯める。フガクを真似して印を組みながら、自分の目を写輪眼へと変える。
「ん! ほう、本当に写輪眼のようだな。そして、青い」
フガクは内心驚いていた。幼くして才能に溢れた息子のイタチですら、写輪眼は開眼できていない。なのにもかかわらず目の前の更に幼い少女は写輪眼を開眼している。それも3つの巴を伴った完成された写輪眼を持っていることに驚いた。
写輪眼は、その瞳力は開眼者の精神……心の闇ともいえる感情に深い関係がある。わかりやすく言えば、恨みや怒りの感情である。邪悪な面ばかりでなく、強い愛情や仲間を守りたいという面でも開眼する写輪眼だが、辛い感情が瞳力を強化するのも事実。特に戦場のような環境でこそ、写輪眼は育ちやすい。
問題は、大の大人たちが戦場のような強いストレスに置かれた環境で開眼、強化される写輪眼を、2歳半ばの幼子が完成させている点だ。
虐待の話は聞いていたが、写輪眼を見ればそれがこの小さな体にどれほどの重荷だったのか窺い知れる。同じ一族として、血のつながりのある少女の境遇に胸を痛める。
だがそれが写輪眼であるか、詳しく調べなければいけない。この少女の写輪眼は、通常とは大きく違う青く輝く写輪眼なのだから。
「今からいくつかテストをしたい。怖いことや、痛いことはない、俺の言うとおりにしてくれ」
「……はいだってばね!」
大きな声で返事したシャナ。ミナトは、娘を信じ切った表情。クシナはどこか心配そうにしていた。
「まずは、俺の指の動きを目で追ってくれ。そして指を真似できる限り真似してほしい」
そういうと目にも止まらぬ速度で印を結ぶフガク。その速度は、戦場で使う印結びより遥かに早いものだった。
(嘘。全く見えないってばね。こんなの目で追えるの?)
(本気で印結んでるな、フガクさん)
ミナトとクシナは、フガクの手の動きを見て各々感想を頭で述べるが、シャナは真剣に目で追っていた。
青い写輪眼の眼差しを、同じく赤い写輪眼で観察していたフガクは思った。
(これは、目で追えているな。手の動きに合わせて瞳孔が動いている……驚いたな。印を結ぶ前に、写輪眼で軽い幻術もかけたのだが、瞬時に解いた)
やがて印を結び終えたフガクが自分の術発動寸前まで練っていたチャクラを霧散させる。目の精度を測るため実践の動きをしたフガク。
「やってみなさい」とシャナに指示を出せば、シャナは「うん」と頷いて……。
フガクの動きを再現してみせたシャナ。速度こそ劣るも、通常の印より遥かに速く正確に結んでいく。そして、最後の虎の印まで結んでいたシャナ。
クシナとミナトもその光景に驚いていたが、一番驚くことになるのはフガクだった。
「ぶぅ?」
「なっ!?」
「えぇ!!」
「きゃあ!!」
フガクの火遁豪火球の術を見て、真似してしまったシャナ。シャナの瞳力は、フガクの想定以上であり、彼のチャクラの動きまでも完璧に捉えていた。結果、彼の言葉通りに真似をしてしまった。チャクラの動きから性質変化まで真似(コピー)してしまった。
やがて、肺に溜めたチャクラの行き場をシャナは考えていなかった。そもそも忍術を使ったことのないシャナが忍術の途中停止の方法を知るはずがなかった。
結果、シャナの口から炎が噴き出すことになった。炎は、フガク目掛けて飛び、写輪眼を発動中のフガクは回避するが炎が壁に命中する。
クシナとミナトも突然娘が火を噴いたので驚愕する。
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ミナトが素早く動き、すぐに鎮火したが、壁が少し焦げていた。
「うぇええええーんうぇええん」
不本意に口から火遁を発動、さらに強面の男性の家を燃やしてしまったことで大泣きしていた。びっくりした事と怒られるとの思いから、クシナの胸で大泣きしているシャナ。騒ぎを聞きつけたイタチとミコトも客間へ飛び込み、泣きじゃくるシャナを泣き止ませようとしていた。
「ご、ごめんな、さい」
「本当に申し訳ない」
「いや、いいんだ」
ミナトが謝罪し、クシナの後ろに隠れながらシャナも謝る。フガクも気にするなと謝罪を受け入れる。うちはミコトとイタチは、珍しく冷や汗をかいて呆然としていたフガクの姿を愉快そうに見ていた。フガクも威厳を保つこともできず、小さい子を泣かしてしまった大人でしかなかった。
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「寝ちゃったってばね」
「本当だね。じゃ、そろそろお暇させてもらおうか」
消火の後、イタチとミコトにお菓子をもらったシャナは、機嫌をよくしていたが眠ってしまった。そして夕方になったこともあって、帰宅することになる波風夫婦。
うちは一家の3人に玄関で見送られる際に、フガクからミナトへ言葉があった。
「ミナトくん、その子の事だが、間違いなく写輪眼を持っている」
「やはり。何か気を付けることはありますか?」
「副作用はない。ただ、何かあれば、また訪ねてくると良い。その子は遠縁ながら、うちはでもある。なんでも相談に乗ろう」
うちは一族の長として、フガクはシャナを認めた。そして、シャナを波風夫婦が育てることも一族として許可した。これによって波風家とうちはでの亀裂はなくなるといってもよかったのだった。
そして、日が暮れる木ノ葉の里を、父の背におぶられたシャナが寝息と共に進んでいくのだった。温かい家へと。