蛇と獣、その二つの怪物をトルネとヤマトに任せた。
二人なら、相手を撃退しているはずだ。そう信じてシャナは第三の刺客と対峙している。
「ここは通さない。卑留呼様が完全になる邪魔をさせはしない」
「でっかい鳥」
巨大な鳥に足だけ融合した男が、シャナとコダマを通せんぼしている。コダマは今日は面白いものをいっぱい見られると興奮している。あの鳥も焼いて食べたらおいしいのかなとシャナに尋ねていた。
だが一番厄介な相手は此奴だろう。
シャナとコダマ目掛けて、巨大な鳥は、自身の羽根を飛ばしてくる。その羽根を飛んで躱した二人だが、地面に刺さった羽根が起爆札の様に爆発した。
中々に威力と殺傷能力の高い攻撃と、空中にいることで攻撃方法が限られる。
「コダマ、頼むってばね」
「いいよ。すぐに終わらせるから、先行ってて」
飛行能力を持つコダマを除いては、だが。コダマは自分のツインテールを翼に変える。黒い翼を広げたコダマに対して、怪鳥が起爆羽根を発射する。それを撃退するようにコダマの翼から羽根を飛ばし、空中でぶつかった両者は爆発する。
同じタイプの攻撃に驚く男だが、コダマは両腕を獣化し巨大化させて戦闘準備を整える。
地面を蹴り、翼で羽ばたくことで飛翔したコダマは、一直線に怪鳥に接近する。男は鳥を操作し、コダマとの空中戦を繰り広げる事になる。
先に進もうとしたシャナに羽根を飛ばすが、迎撃するようにコダマが羽根の弾幕で援護する。
「おじちゃん。コダマとあそぼうよ」
「なめるな餓鬼!?」
互いに羽根を飛ばし、空中を縦横無尽に飛び回りながら戦う。飛行速度ではコダマの方が優位らしく、相手を翻弄していく。
「ええぇい!」
「ひひ」
背後に回り込まれた男は、コブラのような空中機動でコダマの背後を取る。背後を取られたコダマに羽根を放つ。だがコダマも相手の動きをコピー。羽根を躱して回避。そのまま背後を取ると急加速して、怪鳥に掴みかかる。
翼を掴まれたことで飛行能力を失った怪鳥は、コダマと一緒にきりもみ回転しながら地面に落下した。
「ぐ、ぐぅうう」
怪鳥はすでに動けず、融合していた男もダメージを負っていた。一方、攻撃を仕掛けたコダマは、ガッツポーズをしながらピンピンしていた。もう男に抵抗する術などないと思って喜んでいたコダマが目を離した隙に、相手は何やら巻物を取り出していた。
コダマに気付かれないように巻物を開いた男は、自分の吐血を使って新たに口寄せの術を使った。
「え?」
ぼふんという音と共に、突如現れたのは、先程の城門にいた男と女がそれぞれ使用していた獣と蛇そっくりの口寄せ動物。新たに呼び出された二匹を見てコダマが、男の目に目線を合わせる。
心を読んだコダマは、相手のやろうとしていることに気が付いた。だが好奇心が勝った結果、最悪の事態を引き起こした。
「鬼芽羅の術!!」
怪鳥に融合していた男が術を発動すると、スライム状の物体が発生し、獣と蛇、怪鳥を取り込み一つの怪物。巨大キメラへと変貌した。獣の胴体、怪鳥の翼、蛇の尾を持つ怪物は全身を装甲に覆われたまさに生物兵器。
そのチャクラ量は絶大で、コダマの目から見ても手強い生き物と映った。そして男は完全に取り込まれたことで自我を失ったのか、コダマを殺すという意志だけで巨大キメラはそこに立っていた。
「すごいね。ぐぅ」
その姿に見とれたコダマを、巨大キメラの前足が捉え、壁に叩きつける。壁にめりこむような威力で殴られたコダマの小さな体は、すさまじいダメージを負う。
巨大化した両腕でガードしたのにもかかわらず、体中から出血するコダマ。
合体したことで暴走しているが、その分、パワーも素早さも、頑強さも突出している。
「負けないもん!」
空に飛びあがり、キメラの羽根と炎を回避しながら接近したコダマは渾身の右ストレートをキメラの顔に叩きこむ。だが、少しよろめいたのみで、ダメージになっていない。何発も巨大化した腕で殴りつけるが、頑丈な鎧に罅が入るのみですぐに回復されてしまう。
そして、巨大な蛇の尾がコダマを丸のみにしようと口を開く。
コダマは慌てて空中を飛び回るが、巨大キメラが飛翔し、コダマを追う。
「うぉおお!」
「グァアアア!!」
空中で羽根の応酬。互いに羽根を飛ばして攻撃しながら、急接近。キメラの前足の一撃とコダマの剛腕がぶつかる。弾き飛ばされたのは、コダマだった。
地面に叩きつけられ、吐血するコダマ。生まれて初めて、フィジカルの面で相手に押し負けたのだ。
「ぐっ、いった。いたいよ、うぇええん、いたーーい!!」
全身傷だらけで泣き始めるコダマ。だが地面に降り立った巨大キメラは、巨大な前足で何度もコダマを殴りつける。すぐに翼と巨大な腕でガードするが、何度も上から叩きつけられる攻撃に、コダマの体が悲鳴を上げる。
そして、全体重をかけた巨大キメラの一撃によって、コダマの体は地面にめり込み、動けなくなる。
(あぁ。これ、あぶないやつだ)
傷が再生を始めるが、それでも死ぬときは死ぬ。このままでは、巨大キメラに殺されてしまうだろう。元々フィジカル勝負などせずに写輪眼に頼って戦えば勝機はあった。
だが好奇心に負けてしまった。つい力比べをしてしまった。
だがこうなっては仕方ない。ペインによりコダマの命が危機に瀕した場合のみ、許された力がある。
「グォオオ!!」
怒りに任せるように、巨大キメラがその巨大な前足を振り上げる。
コダマはその光景を見ながら、あるワードを口にする。その名で自分を呼べば、僅かな間、コダマはコダマでなくなってしまう。ペインから与えられたコダマという名前。
それを否定してしまうのが悲しくて仕方ない。
けれど、ペインの野望を見届けるのが自分の仕事だ。だから死ぬわけにはいかない。
「 サ ト リ 」
その言葉をつぶやいた時。コダマは目を瞑る。コダマの脳裏に獣の顔が4面についた黒い巨大な箱のイメージが巡り、その中に広がる恐怖と絶望を思い出す。だがその中から救い出してくれたのがペインなのだ。
だから怖くない。
コダマの体が大きく変化した。振り下ろされた巨大キメラの腕を受け止めるさらに巨大な腕。
小柄な少女の体から、巨大キメラよりも巨大な黒く不気味な怪物へと変化したのだ。50mを超える体躯と巨大な黒い翼、両手両足は、獣のようで、胴体は非常に細く、人間でいえば胸部に巨大な口がある。頭部はなく、尾てい骨から長い尻尾が生えていた。
過去、忍の祖が存在していたころの生物兵器サトリが現代に蘇ったのだ。
尾獣にも匹敵する巨大な怪物となったコダマは、巨大キメラに向かって咆哮を上げる。大地が揺れ空がざわつく異形の登場に、本能のみの巨大キメラは狼狽える。
巨体に似合わぬ高速移動をしたコダマだった怪物。巨大キメラが炎を吐くも、ギリギリで回避しながら巨大な拳をキメラの顔面に叩きこむ。その威力たるや、巨大キメラの顔面を陥没させるほどだった。強烈な一撃を受けたキメラはたじろぐが、すぐに持ち直し、空へ飛翔しようとする。
(させねぇよ!)
普段のコダマとは違う荒い口調で、巨大キメラの背後に先回りしていたコダマだった怪物。飛んで逃げようとする巨大キメラに馬乗りになり、翼を力に任せて引きちぎる。飛翔能力を失ったキメラは、残った足で暴れまわるが足を掴まれ怪物の胸部にある巨大な口で食いちぎられる。
痛みに悲鳴を上げる巨大キメラだが、捕食者であるコダマには、慈悲はない。暴れる手足を次々引きちぎり、咀嚼していく。
そして、残った蛇の尾を踏み潰す。何度も何度も執拗に踏みつぶし、顔だけが残った巨大キメラ。
(あぁ。いい気分だ)
虫の息だった巨大キメラに何度も拳を叩き込み続けるコダマだった怪物。既に絶命していても面白がって殴り続ける怪物。
(今度はそうだ街に行こう。街の奴らを一人一人ちぎって食べてやろう)
あふれ出る凶暴性に思考が支配されそうになった時、サトリに飲み込まれたコダマの意識に声が響いた。
【お前は今日からサトリではない。コダマだ。この俺の崇高な目的を見届けるもの。暁のコダマだ】
これは過去の記憶。サトリにされた少女がコダマになった時の記憶。
―――も、し、……、ぼく、を―――こ――――、して…ーーーりゅう、ぜ―――やく、そ―――――す、なか――――――つた―――――く―――れ―――
そのほかにも古い記憶が蘇る。箱の中で一緒に居た誰かに頼まれたことがあるような。そんな曖昧でかすれた記憶。他にもいろんな記憶が頭を巡り、やがて意識が覚醒する。
気が付けば、コダマは人間の姿に戻っており、体中の傷も完治していた。目を開き青い写輪眼が空を見上げる。
「コダマ、もっと強くなりたいなぁ」
三角座りで、一人反省会を行うコダマ。だが数年ぶりに全力を出せた解放感も感じていた。けど自分より強い相手は、沢山いるのだ。
そうシャナが立ち向かう相手も強いのだろうか。
「って! シャナ姉ちゃん死んじゃわない!? 部下の此奴もめっちゃ強いよ! ボスの強さヤバイってば」
せっかく見つけた家族を殺されては敵わないと、コダマは走って山を登る。先に行ったシャナを追うために。
劇場版、怪獣対決。勝者はサトリ(コダマ)です。
今回はコダマの正体判明回です。とはいえ、コダマの体の秘密に半分だけ近付いたってだけですが。