弟と同時期に中忍試験を受けるにあたり、ナルトからある宣言をされた。
「姉ちゃんも試験の最中はライバルだってばよ! 俺と戦うことになっても全力でやってくれってばよ」
という可愛いお願いをされたことで、シャナは泣く泣く弟と距離をとる事になった。ナルト曰く、シャナにも見せたことのないすごい術を開発してやると意気込んでおり、結局試験の日まで別々の部屋で過ごす徹底ぶり。
試験の申込期日に、何故か幻術で階を偽った建物を普通に通過した第四班。
何事もなかったかのように願書を提出。
一番乗りで試験会場に入ったシャナ達。ぞろぞろと他国の忍達や、先輩の木ノ葉の忍達も教室に入ってくる。だが、シャナ達の顔を見るなり距離を取って様子見に徹している。どうにも居心地が悪いと愚痴るシャナ。
「なんか、すごい見られてるってばね」
「本当だね。なんでだろう」
「わからない。警戒されているようだが……まぁ気にしても仕方ない」
三人共、自分たちが有名になっている自覚はない。試験開始まで時間があり、雑談をする3人。
「今年の試験、ナルト君たちも受験するんだよねシャナ?」
「うん。張り切ったナルトに、接近禁止令出されたってばね」
「あぁ。なんとなくわかるな。シャナ試験中でもナルト君の為に、手助けしそうだし。保護者と一緒に試験、やだな~」
「姉離れが早い。あと10年は待ってほしい」
(22歳を超えて姉離れできていないのもどうなんだ)
口に出せば面倒なことになると分かっているトルネ。だが何となく顔を見たことで考えが読めたシャナが肘で彼の鳩尾を突く。その攻撃にむせ返るトルネ。
「でも、入ってこないね。ルーキーの子達、結構そろってるのに」
「あ、今度はトルネの弟弟子が入ってきた」
リー、テンテン、ネジの三人が会場に入ってくる。シャナ達の姿を見たリーとテンテンが走ってくる。
「シャナさん、八雲さん、お久しぶりです。お二人も今年は受験なんですね。私も初めての試験で、お互い頑張りましょうね」
「うん。頑張るってばね」
「よろしくね」
「トルネ先輩! お久しぶりです!」
「久しぶり……。リー、お前表蓮華を使ったのか? 包帯が外れている」
トルネに腕に巻いた包帯の乱れを見破られ、この人はやはり侮れないと畏敬の念を抱くリー。試験前に腕試しをしようとして、ある相手に挑んだという。
思ったよりも相手の力量が高く、戦いにのめり込んでしまい、つい表蓮華を使いかけたという。だが途中でガイ先生に止められたという。
(よく見ると、顔面と脇腹に打撲の跡がある。リーに体術でダメージを与えられる相手か)
リーも無傷では済まない相手。そんな奴が居るのかと思ったトルネ。一方残されたネジは、なんとも言えない微妙な表情で八雲たちを見ていた。
「なんだってばね?」
「俺はあの時より強くなった。この試験で、あんた達には負けない。そう宣言しに来たんだ」
「せいぜい頑張るってばね。もし私と戦うことになったら、油断しないことをおすすめする」
「こちらの台詞だ」
シャナはネジの事を許していない。八雲を侮辱したころの記憶が消えていないのだ。とはいえ、虐めるのは大人げないと警告で済ませておく。
3人は、シャナ達へのあいさつを終えるとそれぞれ離れた席に着席する。
今度は、砂の3姉弟が現れる。我愛羅の存在感は際立っており、注目が集まるが、その目を見て戦意を喪失する受験生たち。
我愛羅は、その中で平然と自分を見返す紫の瞳に気が付く。
「木ノ葉の青い閃光、あんた達と同時期に試験を受けられて幸いだ。俺は強い奴を望んでいる」
「我愛羅だったってばね? よろしく」
シャナが手を伸ばし、握手を申し込む。我愛羅はその手の意味が解らず、シャナを睨む。だが怖いもの知らずのシャナは、我愛羅に「握手」と伝える。
シャナは秘かに我愛羅を気に入っていた。敵として。好敵手かはわからないが、血の匂いがする瓢箪を持ち、その目にある殺意と狂気。実力はまだ測れないが、歯ごたえのありそうな相手だからだ。
獲物としてシャナを認識した我愛羅に対して、シャナは良い対戦相手としてしか見ていない。明らかに失礼な態度をとる我愛羅に対しても、強さゆえの傲慢さを理解するシャナは寛容だった。もちろん八雲やトルネを侮辱すればこの場で再起不能にするつもりだが、強さを見極めているこの少年は、そんなことはしない。
「砂隠れには、握手の習慣ないってばね?」
「……はぁ」
我愛羅が握手に応じた。その光景に彼の姉兄は驚いている。
「もし、強い相手がお望みなら私の所に来るってばね。いつでも歓迎だってばね」
「ふ、ははは。そうか、楽しみだ」
握手に応じた我愛羅を、彼にしか聞こえない声で挑発するシャナ。その傲慢さには我愛羅も苦笑するしかない。だが手から伝わった殺気は本物であり、我愛羅の生命を脅かすほどの実力者であることは間違いない。
身震いしていることに気が付いた我愛羅は、少しご機嫌だった。自分の実力を試すためバトルジャンキーの気があるシャナと強い相手を殺すことで生を実感するサイコキラー。意外と相性は良かった。
「シャナ。なんであの子と仲良くするの?」
「ん? なんか、目が、私やナルトに似てるんだってばね。だから、かも」
どこが? と感じたトルネと八雲。だがシャナは感じ取っていた。あの目の奥にある寂しさに。だからこそ手を差し伸べたのかもしれない。
「後、なんか可愛いってばね。やんちゃ盛りって感じで」
「本気で聞くよ。何処が?」
そうして八雲と話していると、シャナは自分に向けられた舐め回すような視線に反応。青い写輪眼でもってその人物を睨む。その人物は、草隠れの長髪の忍だった。
明らかに下忍のものではない異質な気配に、シャナはその人物を睨みつける。そうして視線が交差したが、相手が頭にかぶった笠を下ろすことで視線を外す。
「どうした?」
「あの草隠れの忍、気を付けるってばね」
シャナは酷く真面目だった。彼女の言葉を聞いた二人も、その人物に対する警戒を強める。
(あら、私からこぼれた僅かな気配に気が付いて、睨み返してくるなんて。流石は、うちはの姫。これはうかつに近寄れないわね)
草隠れの忍は、シャナを正しく評価した。うかつに近寄れば、ただでは済まないと。
シャナと草隠れの忍による睨み合いをしている間に、既にナルト達、第7班は到着していた。ルーキーたちで集まり、その騒ぎを収めに来たメガネをした木ノ葉の先輩忍者に試験について説明され、脅された。その結果。
「俺はうずまきナルトだ!! てめぇらには負けねぇぞ!! わかったかぁ!!」
目立ちたがりのナルトらしく、大きな声で受験者全員を敵に回したのだった。そして、ナルトの発言に「うずまき? うずまきってあの閃光の?」「いや、それはあのゴーグルをした女だ」「血縁者なのか?」などとシャナのネームバリューが影響し、強く警戒されることになった。
宣言を終えたナルトはすっきりしており、サクラが激怒していた。けれども怒りに任せてちょっかいを掛ける奴は、いなかった。
何故なら、その生意気な奴の姉が、其処にいるからだ。
空気が殺伐とした時、試験会場に煙と共に怒声が響く。
「このくそ野郎ども!」
多くの木ノ葉の忍を引き連れて現れたのは、試験官の森乃イビキ。彼は、忍達に警告を述べていく。許可のない戦闘や殺人は認められない。
名前を呼ばれたものから受験票を提出。指定された席に座れと。
「早くしやがれ、第一の試験は筆記試験だ」
そう宣言したイビキ。その発言にこの世の終わりのような声を上げたものが二人いた。一人はアカデミーで筆記の成績がドベのナルト。
そしてもう一人。
「勉強とかやったことないってばね!!!?」
うずまきシャナ。アカデミーに通わず、学業に時間など割いたことのない女性だった。
うずまき家に訪れた最大の敵、学力テストの猛威が、今振るわれるのだった。そして彼女の班員は、それぞれ家庭での教育は終了しており、一般的な学力はあった。
(そういえば、シャナは、勉強をしたことがあるのか?)
(もしかして、シャナ。教科書も読んだことないんじゃ?)
まさかの盲点。第一試験こそがシャナにとっての最大の敵だった。
史上最大の試練。