NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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中忍選抜試験 3

 イビキによって指定された席に座った受験生たち。青白い顔で試験に臨む2人の姉弟。

 

 ルールが説明された。3人1組が共同体で、3人にそれぞれ10点づつ持ち点が追加。試験終了時に合計点数が15点以下の班、そして0点の人間が一人でも出た班は失格とする。

 カンニングは試験官側に発見され次第、2点減点とする。もし5回見つかったら即失格。

 

 問題は全10問で10問目は白紙であり、試験開始から時間がたってからイビキから内容が伝えられるという。

 そして試験が開始され、答案用紙を見たシャナは、何一つ理解できなかった。

 

(勉強とかしたことない。まさかこんな罠が、あらかじめわかってたら、対策したのに)

 

 シャナは、頭を抱えながら未来視を禁止した八雲を少し恨んだ。

実際のところ、シャナでは問題文を未来視しても、自力で答えにはたどり着けず、八雲に聞けば怒られ、トルネも回答できない。知り合いも少ないため、答えは得られない。さらにカンニングを疑われる始末。

調べようにも問題文は全て応用のため、答え合わせも出来ない。

完全に詰みな状態だった。

 

そして試験内容から、シャナが点数を取れなければ、失格が決定している。

 これはさすがに怒られる。二人に怒られる姿が目に浮かび、さらに思考がマイナスに働いていく。

 何年も待ったのに、シャナの学力不足のせいで落ちるなんて事態、最低以外の何物でもない。

 

 もはや試験に一切向き合わないシャナ。そのせいで試験の本質に気が付いていなかった。

 シャナは一切勉強をしていないので正しく理解できていないが、この問題、下忍に解けるものではなかった。 

 

(この試験は、情報収集能力を試す試験だ)

 

 誰かが心の中で確信した。元々解ける問題ではなく、試験官側が用意した正解を知る者からカンニングを行うこと。それが試験の内容だったのだ。

 

 通常ならカンニングは失格なのにチャンスが五回もある事自体がおかしい。

 それぞれ下忍達は自分の持つ手段でもって、カンニングを行っていく。ただ、あまりに拙いカンニングは次々に減点され、何人かが失格となっていた。納得がいかない奴らもいたが試験官側に力で制圧されていた。

 そのことでナルトとシャナはカンニングすらできない精神状態になっていた。

 

(拝啓。お父さん、お母さん。シャナは元気です……)

 

天井を見上げながら、天国の父と母に語りかける。

 

 シャナの様子を見て、もはや解答用紙すら裏返している様から、後ろの席の八雲は彼女の考えを察した。

 

(諦めちゃってる……)

 

 八雲が指輪を外し、シャナに幻術を掛ける。

 

「シャナ。驚かないで聞いてね。声も出さないで」

 

 シャナの視界に、試験官のコスプレをした八雲が現れ、黒板を使って授業を始める。

 

(ついに幻覚まで。シャナはもうダメかも知れないってばね)

 

「はい、天井見ない。これ幻術だから。説明するね」

 

シャナは八雲の幻術に説明を受ける事で試験の趣旨を理解した。

 とんでもない試験だと試験官を睨むシャナ。

 

(許せん)

 

そして、自力で8割は問題を解いていた八雲から、幻術内で答えを教えてもらう。既にトルネにも教えている為、合計点数はおそらく15点以上になると伝えた。

 

 そこまで聞いて、テスト中不安で仕方なかったシャナは、涙を流しながら感謝していた。

 もう八雲の家に足を向けて寝られないと本気で考えていた。

 

(危なかった)

 

 それが八雲の正直な感想だった。だが、残る10問目があるのに安心しきったシャナが眠り始めてしまう。八雲が問題を解く時間ずっと、精神的に追い詰められている影響が出たのだろうか。

 

 それか10問目が出ても、八雲なら解いてくれるという安易な考え故か。

 

(俺の試験中に居眠りする奴が居るとはな)

 

 あまりに大物な態度に、イビキが感心する。この精神的に追い詰められる状況下でリラックスする様子に底知れぬものを感じ取っていた。

 本当は、八雲任せの無謀な安心なのだが。シャナが寝息を立てているのを見て、八雲が驚愕する。

 

(あの子、全責任を私に放棄した!?)

(八雲、頑張ってくれ)

 

 勝てない戦いはしない。無理なものは避け続ける。そんな思考のシャナ。

 そして、シャナが深い眠りについている間に、ついにイビキによって第十の試験内容が発表された。

 

 10問目は、解けなければその時点で不合格。それどころか今後の中忍試験の受験資格も失うというもの。受験生たちに緊張が走る。9問目まででもカンニング必須な試験なのに、10問目は自分の人生を左右する責任が伴われる。

 棄権する事も出来るが、その場合、チームメイトも道連れになる。

 そんな極限状態の選択肢を与えられ、数多くの受験生が棄権を選んでいく。

 

「もう、棄権する奴はいないか?」

 

 10分ほどしか経っていないが、受験生たちの神経を削るような難問。悠久の時にも感じられた時間の中、一切起きないシャナ。熟睡しているのか、彼女を見ていた試験官が「大丈夫か?」と心配していた。

 

 一方で一問も解けていないのは、うずまきナルトだけだった。二度と中忍になれないという絶対に嫌な条件を前に棄権しそうになる。

 だが自分の忍道を思い出した彼は、バンっと机をたたく。

 

「なめんじゃねぇ! 俺は逃げねぇぞ! 受けてやる。もし一生下忍になったって意地でも火影になってやるから別にいいってばよ!!」 

 

 啖呵を切ったナルトに、イビキは尋ねる。間違えたら一生下忍だぞと脅す。

 

「関係ねぇ。俺は自分の言葉は曲げねぇ」

 

 ナルトの言葉を聞いて残った受験生たちが、全員その勢いに吞まれる。もう誰も棄権なんてしないと判断したイビキたち試験官は、その時点で第一試験の合格を言い渡した。

 

 この試験は、9問が情報収集能力が不足している者を振るい落とすための試験で、10問目は実際の任務でよく起こる理不尽な逃げる事のできない二択にも挑めるかを試す課題。

 ようは困難に挑む度胸を試すものだったのだ。

 

 その点で言えば、今ここに残った全員は合格だった。イビキは合格者の彼らに、自分のバンダナの奥にある拷問の跡を見せ付け、情報は時に命よりも重いということを語った。そして、忍として生きるなら、決して避けられない任務というものがある。

 中忍という部隊長クラスともなれば、理不尽な場面に直面しても、みなを率いて窮地を切り開く資質が必要なのだ。そう試験の本当の意味を伝えたイビキ。

  

 そこまで説明したとき、教室の窓を突き破って一人の女性が入ってきた。

 

「あんた達、喜んでる場合じゃないわよ。あたしは第二試験官、みたらしアンコ。次行くわよ次!」

 

 急に現れた女性は、気の強そうな美人であったが、どうにも空気を読めないらしい。すぐに周りとの温度差に気が付いたのか、顔を少し赤くしていた。

 だが試験官である彼女は残ったメンバーを見て、不服そうであった。全部で40組、120人残った受験生たちを見ながら、「次の試験で半分以下にしてあげる」と宣言していた。

 

「って、何この子? 熟睡してんの?」 

 

 明日から行われる第二試験の場所は担当の先生に聞けと言ったアンコ。受験生たちは、皆仲間たちと一次試験の合格を喜んだりしている、しかし、前の方の席で熟睡し、自分の髪の毛を食べているシャナを見て、イビキに「なにこれ?」と尋ねる。

 イビキはお手上げだというようなジェスチャーを取って、答える。

 

「シャナ。起きて」

「むにゃ、うん、なに?」

「第一試験終わったの。いい加減しゃきっとして」

「はい。いた、いたたた、八雲!? 八雲さん!?」

 

 体を伸ばしてコリをほぐすシャナ。その様子に呆れているのか八雲がシャナの耳を掴んで引っ張っていく。どうやらお説教が始まるらしい。

 

「八雲、あまり、厳しくするのは」 

「トルネ君?」

「がんばれシャナ」

 

 止めようとした矢先、八雲に微笑まれたトルネは、シャナを見捨てた。二人の関係性が変わり、力関係ははっきりとしている。そして八雲が遠慮しなくなった関係か、若干トルネも怖くなっていたのだ。

 素直に怒られた方がいいだろうと、トルネは達観した。

 そして、イビキとアンコの視線に気が付いた八雲は、頭を下げながら涼しい顔でシャナの耳を引っ張りながら教室から出ていった。

 

「あの子達よね。最近噂になってる」

「あぁ。第四班だな」

「全員修羅場をくぐってるのね。いい目をしてるわ。ぞくぞくしちゃう」

 

 そう彼らを評価したアンコ。イビキはまた悪い癖が出たなと呆れていた。 

 





一人は白紙。一人は爆睡。
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