第二試験が始まり、20分ほど過ぎた段階。
「た、たのむ、ころさないで」
「じゃ、巻物よこせってばね」
木ノ葉の受験生。シャナ達よりも年上の3人組は、完全制圧され、一人を残して縄で拘束されていた。
残った一人もズタボロにされ、涙ながらに命乞いをしていた。
「渡す。渡すよ。でも地の書だぞ」
「受験者の間引きだってばね」
シャナに顔面を踏みつけられながら懐から巻物を渡す受験生。その巻物を確認したシャナは、火遁の術で巻物を燃やしていく。自分たちの合格の条件を失ったことで涙する木ノ葉の忍。
だが、シャナ達に襲い掛かってきたのは此奴らだった。名ばかり有名になり生意気だと因縁をつけて挑んできた3人だったが、八雲の幻術のみで制圧され、シャナによってボコボコにされたのだ。
シャナから仲間を連れて森の入り口付近に戻っておけと命じられる。もし姿を見かけたら、殺すと告げて。
このチームを含めてシャナが脱落させたチームは、現在で5組。まるで辻斬りの様に全力で駆け抜けるシャナとトルネが高速で相手を武力制圧。殺しはしてないが、致命傷を与える事もあり、取りこぼした相手を幻術に嵌める八雲。
中には、シャナ達の姿を見た瞬間、気を失った者たちも居た。元々トルネ、八雲、シャナの3人は、サバイバルの経験が浅い。なので無理に罠を張ったりせず、積極的に戦闘能力で周辺の受験者たちを狩っていく事にしたのだ。
どうせ眠るならゆっくり眠りたいと、手当たり次第に参加者を減らしている。それもド派手な戦闘を行い、あえて受験生を引き寄せてすらいる。
木ノ葉の忍達が泣きながら、入り口に向かったのを眺めながら、シャナは出だしが好調なので気分が良かった。
「すごい怨み買ってそう。すんごい目で睨まれてるけど、大丈夫なの?」
「どうせ、あの実力じゃ死ぬだけだってばね。早々に退場させてあげただけ、優しいと思うけど?」
力に自信のあるシャナらしい傲慢な意見。この子、活き活きとしてるなと感じる八雲。だが、八雲は、自分たちを見ている何かの気配を感じた。
「また、来たよ」
「わかってる」
シャナがそういうと、既に隣にいたトルネはおらず、森の奥で打撃の音と、呻くような声と共に3人の忍達が吹っ飛んでくる。
「はえぇ」
「かほっかほっ」
(化け物だ。この人達全員)
トルネによって潜伏先から引き摺り出されたのは、音隠れの忍だった。包帯姿で蓑を纏った男と死の文字が3つ縦に並ぶ服を着た男、かかとまで届く黒髪の女、その三人だった。
音隠れの下忍であり、今回唯一の音の参加者だった。
大暴れするシャナ達の様子を伺いに来た彼らだが、八雲に感知されてしまった。元々八雲は感知タイプではなかったが、卑留呼と一瞬だけ融合してしまった影響か、チャクラの感知能力を得てしまった。
そのセンサーに掛かったため、トルネによってたたき出されたというわけだ。口に出さずとも八雲は幻術で二人に位置を説明できるため、完全な奇襲をくらったのだ。
「どうする? 私達と戦う?」
「舐めんなぁ!? ぐぅ」
「ザク、止せ! 僕らで勝てる相手じゃない、ツチも動くな」
死と書かれた服装の男が、両手の掌をシャナに向ける。両手の平に空けられた穴から超音波と空気圧を混合した技を放とうとしたが、噴射口である掌にシャナからクナイを投げつけられ、苦悶の表情となる。強制的に術の発動を止められたザク。
シャナは青い写輪眼で彼のチャクラを観察しており、一切の抵抗を許すつもりはなかった。だが冷静に実力を分析した包帯の男、ドス・キヌタは、仲間たちを制止する。
「もしかしたら、私たちに一矢報いる事が出来るかもしれないってばね」
自分を見下ろしながら、抵抗してみろと挑発するシャナ。その目に怯えの表情を見せるドス。だが実力差を肌で感じ、この人には絶対に勝てないと感じる。だが不思議と悔しさを感じなかった。シャナがあえて助かる道を用意してくれているからだろうか。
ドスは、自分の懐から天の書を取り出して、シャナ達の前に置く。そして、土下座のような体勢になりながら頭を下げた。
「これで見逃してくれませんか。僕たちは、貴方達と敵対しないと誓います。だから、見逃してください」
ものすごいプレッシャーから頭を上げられないドス。だが自分たちが抵抗すれば、彼女は自分たちの首を刎ねるだろう。この圧倒的なプレッシャーは、自分たちの里の長であるあの方をも凌駕する。
生殺与奪を握られた以上、相手の気に障ることをせず、判決を待つしかない。
「どうするのシャナ?」
「うーん。土下座してるお前、名前は?」
名前を聞かれたドスは、すぐに答える。
「ドス・キヌタです」
「いいよ。見逃してあげる。ちょうど、天の巻物も欲しかったし、行けってばね」
見逃されたことでドスは、彼らに頭を下げながら仲間と共に去っていく。珍しく相手を許したシャナの行動に疑問を持った八雲。何故逃がしたのかと聞かれたら、シャナは嬉しそうに答えた。
「あいつ、めっちゃ強くなりそうだった。ここで潰すのは惜しいと思ったってばね」
シャナがそう評価した。今は雑魚だけど、警戒心と引き際をわきまえ、何より力の差を感じ取れる勘の鋭さ、それらが揃ってる人間は珍しいという。強くなることが好きなシャナは、同時に戦える相手を望んでいる。
年を重ねるごとに強くなっていくシャナの成長速度は異常だろう。だからこそ、珍しく強敵だった卑留呼との戦いを機に、強敵を求めるようになった。強敵の基準も自分より幻術に優れる八雲や体術のエキスパートであるトルネなどの、実力者とハードルが高い。
だからだろうか、シャナは育てる方面に意識が向き始めていた。里から滅多に出られない以上、里の中で自分の好敵手を作る。それが楽しみになってしまっている。
不敵に笑うシャナを見た八雲。
「ちょっと、話しようかシャナ」
「え?」
「最近のシャナちょっと血の気が多すぎだと思うよ。ナルト君不足だからって、暴れまわるのは、やりすぎじゃないかな?」
戦闘狂になりつつあるシャナだったが、八雲が阻止する。卑留呼戦以降、シャナの戦いの意識が変わった事に気が付いている八雲。並の相手との戦闘時はつまらなそうで、強い相手と戦っているときは楽しそうなのだ。
けれど、そんな癖をつけたら、シャナはどこか遠い所に行ってしまう。そんな予感がするのだ。
「確かにちょっと、不安定かもしれないってばね。うーん、反省するってばね。けど、第二試験で終了作戦は、やりたいってばね」
「疑問なんだがいいか?」
「何?」
一刻も早く終わらせたいシャナ。トルネは、ずっと思っていた質問をシャナに投げかけた。
「ナルト達に遭遇したらどうするんだ?」
「そりゃもちろん。巻物を奪って戦闘不能にするってばね。あたりまえじゃん」
容赦ないな此奴とトルネが思った。言葉にした以上、シャナは実行するんだろう。シャナの思考は、中忍試験に合格することに向いている。第一が弟の身を守るというスタンスに変化はないが、ナルトを合格させるつもりはない。
ナルトの合格と、八雲やトルネとの合格を考えれば、後者を選ぶ。
「それなら安心だ」
「そういうトルネ君こそ、リー君とかに会ったらどうするの? 可愛がってるんでしょ?」
「同じだな。あいつは手を抜かれたら余計怒る。全力で叩き潰すさ」
トルネとて、覚悟はできている。師であるガイの教え子達と戦う覚悟はできている。兄弟子としてしてやれるのは、それくらいだ。
その後、死の森に入った参加者の数多くが、入り口付近で無念そうに試験終了まで過ごすという事態が発生。試験官側も何があったのかと尋ねてみたが「青い写輪眼」「黒い影」「おぞましい幻術」と恐怖の象徴のようにつぶやく人間が多数だった。
「……十中八九、あの子達ね」
さすがのアンコも呆れるほかなかった。
ドス結構好きです。考え方とか、いろいろ好きです戦い方も。