「では、ロック・リー対うずまきシャナ。始め!」
見合うリーとシャナ。その試合に会場中の全員が注目していた。他里にまでとどろく閃光の名を持つシャナの戦い。第三試験で戦うことになるライバルの力量を見定める必要があるからだ。
既に会場中がシャナの勝利を確信している。リーには悪いが、誰も彼が勝つとは思っていない。
彼と彼の師を除いては。
シャナが動かないことで、リーがクナイを構えながら相手との間合いを測り始める。シャナの戦闘スタイルを多少は知っているリー。距離をとっても無意味だというのはわかっている。
けれどもシャナの本気を見たことがない以上、うかつには飛び出せない。
まだ試合が始まったばかりだというのに、既にリーは緊張から汗をかいていた。
「リー君」
「え、あ、はい」
「3分間だけは、私から攻撃しないってばね。好きに掛かってきなさい」
シャナの突然の発言に審判が「それはさすがに」と言いよどむ。だが誰よりもショックなのがリーだった。
「それは、どういう意味でしょうか」
「意味? わからない?」
「それは、僕なんかには、実力を出すまでもないと言うことでしょうか?」
「それ以外にあるかってばね?」
リーが走り出す。そしてクナイを構えた手でシャナに攻撃を始める。シャナはその動きを洞察しながら、回避する。すれすれで回避するシャナを追うように、リーが木ノ葉旋風などの体術を連携させ、攻め始める。
素早い動きでシャナに連撃を繰り出すが、シャナは息一つ乱すことなく、避け続ける。
そして彼の動きが荒くなった時、態と足を出すことでリーの足をかけ、バランスを崩させる。
(やられる!?)
咄嗟にガードしたリー。だが、シャナはリーの隙を放置。そのまま彼が体勢を立て直すまで何もしない。試合会場全体が今ので終わったと思ったが、シャナは自分の言葉を守り攻撃しない。
「な、舐めないでください!」
自分が侮られていることに腹を立てたリー。彼の目標は、日向ネジだ。だが目の前の女性はネジすら超える天才。落ちこぼれだった自分が劣るのは自覚している。だが、舐められっぱなしは腹が立つ。
リーは再び攻めの手を強めるが、焦りからか技の連携が荒くなり始める。
荒くなった攻撃は、シャナを捕らえる事など不可能。
「リーさん、なんで体術だけで戦ってるんだろう。幻術とか忍術も織り交ぜなきゃ、絶対に当たるわけないのに」
試合を観戦するサクラは、二人の力量差を感じとり、そんな言葉を口にする。それを聞いていたガイはそれを否定する。
「リーは、忍術を使えないんだ。あいつは、忍術のスキルがない。だからあいつに出来るのは体術のみだった」
「そんな」
「だから忍者として唯一残された体術、それに全てを捧げた」
会場でシャナを捉えきれないリー。やがて距離を取るように、ジャンプして会場に備え付けられた印を結ぶ腕のモニュメントに着地する。そこで息を整える。
「リー! 外せ!」
「でもガイ先生! それは複数名の大切な人を守る時だけと」
「かまわーん。俺が許す!」
このままだと劣勢だと感じたガイは、リーに課していた制限を取り払う。シャナの実力を前に、このままでは勝てない。それはリーの努力を無に変えてしまう。
だからこそ、リーに今できる最大の力を発揮させる必要があった。
ガイの許可を得たリーは、自分の足に付けられた重りを外した。そしてそれを投げ捨てる。
重りをつけた修業。あまりにもベタなそれだが、八雲とトルネは知っていた。その重りの重さを。
重りは床に激突すると地響きを起こし、土煙を上げる。
八雲はトルネに小さな声で尋ねた。
(あれってトルネ君のやってたやつ?)
(あぁ。もうやっているとは思っていなかったが、ここからがリーの速度の見せどころだ)
トルネは自分の弟弟子が、本当の速度を出すと理解。だがそれでもシャナ相手にどこまで通用するか、わからない。煙と共に駆け出したリー。その速度は、見る者の視界から消えるほど。
大勢が見失う程の速度でこぶしを突き出したリー。だがシャナの青い写輪眼は、その拳を見ていた。そして、片手で受け止めてしまう。
(止めた!?)
(ゲジマユの動きでもダメなのかってばよ)
軽く受け止めたシャナだが、リーも不敵に笑っている。
「どうやら、防御はしてくれるみたいですね」
「うん。滅茶苦茶速かったから」
シャナに防御をさせた段階で、リーは自分の動きならシャナを捉えられると判断。再び消えるように加速。その素早すぎる動きで会場の視線を置き去りにする。唯一捉えているのは、シャナと写輪眼を使っているカカシ、ガイなどの実力者のみ。
全くノーマークだった選手の想定外の動きに会場が沸く。
「まだまだぁ!!」
高速移動による体術。回避が難しくなったのか、シャナはガードを織り交ぜながらリーの蹴りや拳をいなしていく。的確にガードと往なしを用いてまるで舞うように戦うシャナ。徐々に速度が上がっていく中でも、シャナの動きは洗練されていた。
(リーさんの動きに対応してる)
そんな芸当が出来るのも、写輪眼の恩恵と言える。裸眼のままならシャナは動きを追えていなかった。だがまだ先見の写輪眼は使用していない。
(この人、本当に強い。ですが、これならどうです!)
リーは、八門遁甲の第一の門を開け、一時的に能力を強化。シャナの顎を蹴り上げようと急加速する。突然の加速にシャナは視界からリーを見失う。
表蓮華の最初の一撃、蹴り上げを行ったリー。だが両腕で顎への蹴りをガードされる。だが、シャナの軽い体は衝撃で浮き上がり、リーの奥義の流れに問題はない。蹴り上げられたシャナを追い影舞踊で迫るリーは腕に巻かれた包帯でシャナを拘束しようとした。
「く」
だがトルネも使う表蓮華を受けるシャナではなく、リーの腕の包帯を掴み、強引に引っ張ることで彼の体勢を崩し、リーの体を土台に飛び上がった。
リーはそのまま床に叩きつけられ、シャナは軽やかに着地した。
背中を強打したリーはすぐに起き上がろうとするが、八門を開いた代償で体が動かせなくなっている。
「やはり、表蓮華は無理ですか」
「見慣れちゃったからね。目をつぶっても回避できる」
(俺のせいで、リーのハードルが上がってしまったか)
表蓮華が通用しない相手。発動すら封じられる始末。なによりも表蓮華の代償を払っているリーを未だに放置する余裕のあるシャナ。むしろ回復を待たれている。
リーは自分の不甲斐なさに血が出るほど奥歯を噛みしめていた。遠いのだ。あまりにシャナとの力の差が遠い。
「あと一分だってばね。どうする?」
(ガイ先生申し訳ありません。でも、ネジやサスケ君、そしてナルト君たちが本戦に行く。なのに、僕が此処で負けたくないんです。 どうか認めてください)
シャナの実力を前に、リーは体中のチャクラを活性化させる。それは八門遁甲をさらに開く必殺の奥義。代償は表蓮華の比ではない。けれど、そんな代償を払わなければ、シャナには決して届かない。だからこそ、使うと決めた。
本来はネジに対抗するための切り札だった。けれどもネジよりも強いと言われる彼女に出し惜しみなどできない。ここで全力を出せない自分が、どうやってこれからも戦っていくと言うのか。
リーの肌の色が赤く染まる。そしてチャクラがほとばしり始める。周囲の空間を震わせるような気迫と共にリーは八門遁甲の門を開き始める。
(今こそ、自分の忍道を、貫き守り通す時!!)
「第三 生門・開!!」
天才と言われる相手に努力だけで勝利する。努力しかできないリーの辿り着いた目標。
「第四 傷門・開!!」
体中に痛みが走る。そして、鼻から血が流れ、全身が悲鳴を上げている。だがそれでいい。今目の前の相手を倒すのに、この程度の痛みでは安い。
全身のリミッターが外れ、リーは地面を蹴った。その瞬間床が砕け散り、これまでとは比較にならない最高速度が出た。表蓮華の次の段階。裏蓮華が始まった。
狙うはもちろんシャナ。手加減されているのはわかっている。けれど、今自分が相手を倒すなら今しかないのだ。
シャナはリーの動きを見て「あは」と笑ってしまった。想定外の収穫。トルネですら出したことのない八門遁甲の次の段階、シャナはすでに万華鏡写輪眼を使用していた。そして、決死の覚悟で挑んでくるリーを敵と認めた。
「君は私の敵にふさわしい」
だからこそ先見の写輪眼を使用し始め、自分よりも早くなったリーに対抗して瞬身の術を用いてスピード勝負を始めた。
突然消えたシャナとリー。その光景を見ていた下忍は、彼らを見失う。上忍たちが唯一戦いの一部始終を目に焼き付けていた。
「馬鹿な、リーの速度と張り合っているのか」
「いや、リー君の方が速い。だがシャナは、何か術を使うつもりだ」
ガイが試合会場を縦横無尽に走り回るシャナとリーの動きを見て驚愕する。が、写輪眼でより注意深く見ていたカカシが否定する。
リーとの体術によるスピード勝負では、シャナが惨敗している。明らかに速度で劣り、チャクラコントロールによる制動力で翻弄しているだけで、ギリギリの攻防が続いている。だがシャナはリーの攻撃を避けながら、両手を合わせていた。
「粒遁・天翔」
速度で劣っていたシャナは、粒遁を用いてリーを一気に引き離した。光となって亜音速に近い速度で天井に移動したシャナ。突然のスピードアップにリーは驚くが、全速力で追いすがる。追いつかれたシャナがさらに粒遁で加速。その追いかけっこは、上忍連中ですらついていけない規模だった。
最高速度ではシャナが勝つが、あくまで直進しかできず、術のタイムラグのあるシャナは、常にトップスピードのリーを引き離せない。
だがリーも体を限界状態で使用し続けることはできない。この追いかけっこが続けば、先に倒れるのはリーだ。
「これが人間の動きか?」
試合を観戦していた我愛羅が零した言葉。それは試合会場全員の心の声だった。
「これで最後です! 第五 杜門・開!!」
あと一歩追いつけないスピード勝負。シャナに追いつくため自分の限界を引き出したリー。代償に骨が折れ、筋肉の繊維が切れる。だが粒遁で天井に着地したシャナがさらに粒遁を使う前に追いついた。後は一撃、裏蓮華の一撃を決めるだけでいい。
本来は裏蓮華は連続コンボの体術だが、もはやこの一撃にかけるしかない。
「リー君。君は十分楽しませてくれたから、お礼に見せてあげるってばね。粒遁・螺旋輪虞!」
リーの渾身の拳を未来視で知ってたシャナはそれを回避。非常に小型の螺旋輪虞を掌の上に作り出したうえで、カウンターとしてリーに叩きこんだ。ちょうどそのタイミングが指定した3分を過ぎた頃だった。
渾身の一撃を避けられ、螺旋輪虞を食らったリーは、吹き飛び、地面に叩きつけられる。
「ぐぁあああ!!」
だがリーの体に食い込む螺旋輪虞は威力を失っておらず、彼の全身の骨を砕き始める。そして、螺旋輪虞は、残された攻撃、輪っかの拡散がまだ控えている。
シャナは、戦いの高揚感に支配されたまま、指を弾こうとしてしまう。もし指を弾けば拡散した輪っかがリーを真っ二つにしたうえで高威力の本体を受けてしまうだろう。
慌てて飛び出したガイが螺旋輪虞を手刀で弾こうとしていた。他の上忍たちもシャナを止めようとしていたが、間に合わない。
「姉ちゃん!! やめるってばよ!」
唯一、誰よりも先に飛び出していたナルトだけがシャナに飛びつけた。天井にいたシャナに飛びついたナルトは、姉の表情から悪い予感がしたことで、試合中にもかかわらず制止に走ってしまった。
「え? ナルト?」
急に弟が飛びついてきたため、シャナは虚を突かれてしまう。シャナの未来視にナルトの乱入はなかった。シャナが戦闘から意識がそれたタイミングで、試験官である月光ハヤテから試験の終了が宣言される。その瞬間にリーを押さえつけていた螺旋輪虞が消滅。気を失ったリーに駆け寄るガイ。
裏蓮華の代償で全身ボロボロだが、シャナの螺旋輪虞の威力が小規模であったこともあり、致命傷に至ってはいなかった。
ナルトと一緒に地面に着地したシャナは、酷く驚きながらナルトを見つめている。
「ナルトどうしたんだってばね」
「いや、あのままじゃゲジマユが」
確かに戦いの熱気に酔っていたのは事実。だが殺すつもりはなかったのだが、何処かで自分の中に薄暗い感情があったのも事実。シャナは弟のおかげでクールダウンし、少しやり過ぎたかと後悔していた。
「リー!」
ガイが驚きの声を上げ、シャナが振り返ると満身創痍の状態でリーが立ち上がっていた。腹部に螺旋輪虞を食らった跡があり、手足の骨もズタズタで立てるはずがない。
なのに立ち上がった彼は、気を失いながらも構えていた。
「リー。お前って奴は。そんなになってまで、自分の忍道を」
天才と呼ばれた仲間やライバルに追いつきたい。その意志で立っているだけの彼をガイは、抱き締めた。
まさか立ち上がるとは思っていなかったシャナが一番驚いており、人の精神力が肉体を超越するという事実を見せつけられた。
やり過ぎたと思ったシャナは、リーになんて言葉をかけるべきかわからず、向き合うしかなかった。
だがそれを見ていたガイから「いや、君は悪くない。むしろリーの全力を相手に戦ってくれて感謝する」と告げられた。
ある意味一番盛り上がった予選は、シャナの勝利で幕を閉じた。
その後、音の忍最後の一人である、ドスと秋道チョウジの試合は一瞬で終わり、ドスの本戦出場が決まる。
そして予選が終わり、本戦開始は一か月後と告げられる。予選でライバルの術や戦法を見たことで、それぞれが準備期間を与えられた。
本戦はトーナメントであり、ナルトVSネジ。八雲VSドス。カンクロウVSシノ。うちはサスケVSうずまきシャナ。テマリVSシカマル。我愛羅VSトルネ。という結果になった。
本戦は、各国の大名や忍頭を招集するための時間でもあった。それぞれ体力の回復や修行に打ち込むようにと告げられ、解散が決まった。
シャナは一か月もナルトにかまえない期間が延びたことで絶望の淵にいた。修行つけてあげようかと尋ねても断られ、枕を濡らす羽目になっていた。
そんなシャナを見かねてか、八雲からお爺さんからもらった温泉のチケットで試験の疲れを癒す湯治に行かないかと誘われたのだった。
木ノ葉の蓮華は二度咲いた。単純な走力ならリーが早いですが、素早さに関してはシャナも負けておらず、粒遁込みであれば直線距離はシャナの方が早いです。