NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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 今回からはある意味番外編です。


温泉街事件

 八雲が帰ったため一人残されたシャナは、案外温泉街を満喫していた。見たことのない食べ物には飛びつき面白い見世物は見学していた。

 

 ただ女の一人旅であるからして、温泉旅行に来た男性から声を掛けられ、酒の席に呼ばれるなどのナンパも多く、それだけが面倒だった。

 

 あらかじめ八雲から、ナンパされたら額当てを見せて忍者だと言えば、ある程度は回避できると教えられていたので、その方法で撃退することが多く。

 中には他国の忍もおり、忍者であるシャナに臆することもないバカもいたが、体に触れようとした瞬間に写輪眼で幻術を掛けるなどして撃退を繰り返していた。

 

 温泉卵を購入し、温泉街から少し離れた場所にある秘湯スポットに食べながら向かっていたシャナ。パンフレットには載っておらず、宿の女将さんに聞いた場所であった。

 

「結構遠いってばね」

 

 割と遠い距離で、思ったより時間を食ってしまう。温泉卵も平らげてしまい、早く着かないかなと考えていた時だ。人通りの全くない山奥で、かすかにだが「ふぇぇ」と赤ちゃんの泣き声が聞こえる。

 

 こんなところで聞こえるはずがないと思いながらも、気になってしまう。赤ちゃんの泣き声は、シャナにとっていい思い出がない。一時は、心の傷を広げる原因にもなってしまった。だが、シャナは、森の奥で泣いている赤ちゃんを放置するような人間ではなかった。

 様子を確認しに行くことに決める。何もなければそれでいいし、何かあれば何とかしなければいけない。そう決めた彼女は浴衣姿のまま、森の中を駆け抜けた。

 

「居た!」

 

 声はあまり離れておらず、すぐに赤ちゃんの姿を捉える事が出来た。おくるみに包まれた赤ちゃんを抱いているシャナと同年齢くらいの青年が居た。銀髪の端正な顔立ちをした美青年であり、シャナも素直にかっこいい顔立ちだと感じた。

 袈裟のような服を着ており、三日月に包まれた太陽のような紋様が背中にあった。どこかの一族かと思ったがシャナの記憶に該当する文様ではない。

 

 端正な顔立ちながらも、目を閉じたまま、泣きわめく赤ちゃんに右往左往しているのが一目瞭然だった。

 

「な、泣き止んでくれ」

「おい」

「誰だ!?」

 

 あまりに無茶苦茶なあやし方に、赤ん坊の泣き声が大きくなる。その様に腹が立ったシャナが声をかければ、青年は警戒心を露にする。だが、敵意を向けていないシャナに困惑している。

 シャナは、青年が立ち上がった事でより苦しい体勢になった赤ん坊を彼から取り上げた。

 

「なにを」

「お前、赤ちゃんをなんだと思ってるってばね! 赤ちゃんはこう抱くんだってばね」

 

 シャナは、赤ちゃんを無理のない姿勢でかき上げ、泣き止ませようと少しだけ揺らしながら、あやしていく。目の開いた赤ちゃんはシャナの穏やかな表情と「もう、大丈夫、怖くないってばね」という落ち着いた声に安心したのか、泣き止む。シャナは、だいぶ昔、1歳未満だったサスケをあやした時の記憶を思い出す。当時、シャナは赤ん坊の泣き声にトラウマを刺激されていたが、稀にサスケの両親やイタチも任務に出る事になり、シスイの家で預かることがあった。その時、泣いているサスケをあやしていたのはシャナだった。その時を思い出した。

 泣き止んだ後に、涙をハンカチでふき取ったシャナは、赤ちゃんを不安にさせないよう抱いたまま、青年を睨む。

 

「お前この子の、お兄さん?」

「いや、違う」

「なら、この子の両親はどこだってばね」

 

 もしかして誘拐かと考える。明らかに青年は赤ちゃんの扱いに精通しておらず、人気のない山で二人というのもおかしい。疑いの目を向けられた青年は目を閉じているのにもかかわらず、シャナの視線に引いていた。

 

「それが、僕もわからないんだ」

「は?」

「僕も一時間ほど前に、突然女性にこの子を預かってくれと渡されて、困り果ててたんだ。本当だよ。誓って嘘じゃない。けど、この子を渡した女性が戻ってこなくて、赤ちゃんも起きたら泣き出して」

 

 本当に困っていたらしい。その言葉に嘘を感じ取れない。本当に突然赤ちゃんを渡されたのだろうか。そして、赤ちゃんを抱いたこともない青年は、困り果てていた。そこに偶然シャナが現れたのだという。

 本当に助かったと礼を言われる。

 不思議な雰囲気を纏い、独特の魅力を持つ青年は、シャナの疑う目が緩んだことで「ありがとう、信じてくれてと」と微笑んだ。

 

「それで、どうするんだってばね? 赤ちゃんをこんなところに放置する訳にはいかないってばね。ミルクだって飲ませないといけない」

「正直、僕は此処に来たのも初めてで、どうすればいいのかわからなかったんだ」

 

 なんだこの箱入りの男はと、シャナが呆れる。こんな男に赤ん坊を預けた人物の目的も判らない。だが、放置することはできない。自分の指をしゃぶっている赤ちゃんを見て、一先ず温泉街に戻ろうと決める。親が帰ってくる可能性もあるが、何らかのトラブルがあった可能性もあり、赤ちゃんの保護を優先させてもらう。

 

「とりあえず、私の泊ってる宿まで戻る。温泉街なら、赤ちゃん用のミルクも買えるはずだってばね」

「そうか。ならそうしよう」

「お前もついてくるのかってばね?」

「駄目かい?」

 

 シャナは青年は、別に要らないと考える。だが一応巻き込まれた彼にも事の顛末を知る権利はあるのだろう。第一、目を一切開けないこの男を森の奥に放置するのも不安だ。ついて来いと告げる。

 

「というか、目を開けろってばね」

 

 流石に目を瞑りながら森を歩くのは一流の忍でも危ない。だが青年は悲しそうな表情のまま、「僕は目が見えないんだ」と告げた。

 

「けど、チャクラを使って周囲を感知する術を持ってるから、問題ないよ」

「お前、忍か?」

 

 チャクラを扱う術という言葉に、シャナは裸眼から写輪眼に切り替える。そして、青年のチャクラを見て驚いた。今まで見たことのないチャクラの質をしており、その量も強大だった。影分身で半分になっているとはいえ、今のシャナよりも遥かに多い。だが、何処か優しく、切なさを感じる。

 その正体がわからないが、忍である以上警戒するに越したことはない。

 

「僕は忍なんてものじゃないよ。あんな野蛮な人種と一緒にしないでほしいな」

「私も野蛮な人種って言ってるんだってばね?」

 

 目の前の忍者に対して、随分な言いようだと怒気を込めて言えば、彼は慌てて「いや、君の事じゃないよ。すまない! 怒らないでほしい」と謝罪を口にする。シャナの怒気に反応してか赤ちゃんがぐずり始めたので、すぐに戦闘態勢を解除する。

 

「ごめん、ごめん。いい子だから、泣かないでね」

「君は、とても優しい女性だと思うよ」 

「うるさい。とりあえず宿に向かうってばね。ついてこれる?」

「問題ないよ」

 

 シャナが赤ちゃんを怖がらせないように、なるべく速度を落としながらも木々を駆け抜ける。その後ろにぴったりとついてくる青年。彼は興味深そうな顔で、シャナの後姿を追っていた。

 

「そういえば、君の名前を聞いてなかったね」

「何、ナンパだってばね?」

「ナンパ……って何だい?」

「なんだろう?」

「えぇー」 

 

 どうやら箱入りは確定の様子。ナンパとは何かと聞かれたシャナも、実は良く分かっていない。彼の質問に頭を捻りながら、八雲の言葉を思い出す。とりあえず、シャナは相手の誘いに乗らない方がいいと言われていたが、何故ダメなのかは、聞いていない。

 声をかけるのがナンパなのだろうか。永遠に答えの出ない状態となり、シャナは考えるのを一先ずやめた。

 後で宿の女将さんにでも聞いてみようと思った。

 

「シャナ。うずまきシャナだってばね」

「シャナ。いい名前だね」

 

 名前を褒められるとは思わなかった。だが、父と母に与えられた名前を褒められるのは、素直にうれしい。ありがとうと返せば、彼は、シャナの顔を見て少し視線をそらした。目は開けていないのに、何故かそらされた気がしたのだ。

 そして温泉宿が見えた時、彼は静かにシャナに名を告げた。

 

「僕は、トネリ」

「トネリ? 変な名前だってばね」

「そ、そうかな?」

「冗談だってばね。いい名前だと思うよ。よし、先に赤ちゃんのミルク買わないといけないってばね」 

 

 温泉街の入り口に到着した二人。シャナは早速赤ちゃんの食料の確保のため、売店へと向かった。シャナに付き添うようにトネリも売店に入り、ミルクやおしめを購入する姿を見て、若い夫婦だと言われたシャナ。

 さすがにそれはあんまりではないだろうかと顔に出してしまう。その様子をチャクラの心眼で見ていたトネリが笑い、シャナはそれを睨み付けていた。

 シャナはトネリを連れ、温泉宿の女将さんに、八雲の分のチケットを渡し、今から二人と赤ちゃん一人で使うと告げた。シャナの後ろで優しく赤ちゃんを抱くトネリ。女将さんに笑みをむければ、年甲斐もなく見惚れていた。

 

「あら、彼氏さんとその妹さんなのね」

「あ、うん。お願いしますってばね」

「お世話になります」

 

 言い訳が面倒になったシャナは、その誤解を解く手間を考えれば、もうそれでいいと思えた。そして、3人で旅館の一室に入り、シャナが用意した寝床に赤ちゃんを寝かせる。

 ポットからのお湯で粉ミルクを溶かし、水で冷ましたうえで赤ん坊の口元に持っていけば、お腹が空いていたのだろう。ごくごくと飲み干し、お腹いっぱいになった様子。げっぷをさせ、ようやく安心した赤ちゃんは眠ってしまう。

 

「はぁ」

「ふぅ」

 

 ようやく落ち着いたシャナとトネリ。二人は、お茶を飲みながら、一息をついていた。だがシャナは写輪眼で窓の外を見ており、トネリもお茶をすすりながらも、宿の外に意識を向けていた。

 

「トネリ、お前滅茶苦茶強いってばね?」

「どうだろうね」

 

 だったら気が付いているんだろうという言葉は発しない。温泉街に入った直後、シャナは視線を感じていた。明らかに敵意のあるそれ。トネリも同じく感じていた様子で、この赤ん坊に関する問題がある事が発覚する。

 どうやらトラブルに本格的に巻き込まれたと感じる二人。相手の気配の隠し方から、雑魚ではない。殺気は感じとれても正確な位置がわからない。

 

「誘い出す方向で行きたいってばね」

「同じ意見だ」

 

 二人の飲む茶飲みには、それぞれ茶柱が立っていた。

 




 あのキャラ登場です。月の一族との早期遭遇ですね。

 
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