NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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温泉街事件2

 

 旅館の一室で待つ間にシャナはトネリの格好がひどく目立つことから浴衣に着替えさせた。温泉街を逃げる場合浴衣姿の方が自然だろうという案に彼は困惑していたが、「はやく」というシャナの言葉に従う。

 

 そして敵の動向がわからない以上、相手の出方を伺っていたシャナ。トネリの正体も不明なので、シャナは色々と質問した。

 意外にも、トネリはシャナの質問に答えてくれた。

 

「僕は遠い所に住んでいてね。稀に父と一緒に、この地に訪れたんだけど、父と意見が食い違って……その、あの」

「家出したと?」

「そんなところかな」

 

 意外な理由でシャナはトネリを観察する。どちらかというと大人しそうなタイプなのに、意外と行動力があるらしい。だが無鉄砲で衝動的な行動なのだろう。父親と離れ一人山奥に向かって突き進んでいたら、知らない女性に赤ん坊を預けられたと。

 そして術についても、軽く話していた。

 

「僕の一族は忍ではない。けれど、チャクラを扱う事が出来るんだ。僕のこの心眼も、一族独自の技術だ」

「どこまで見えてるんだってばね?」 

 

 閉じられた瞳を覗き込むように近づくシャナ。シャナの顔が近くなるとトネリは、視線を外す。少なくとも、シャナの顔はばっちり見えているのだろう。

 

「君が思っているより見えていると思うよ。後近いよ」

「ふーん、色は?」

「色は難しいかな。感じ取れてはいるけれど、君の見ている色と僕の感じる色は違うかもしれない」

 

 輪郭などは見えるが、色の判別が健常者とは違うという。とはいえ、非常に便利な術だなと思った。逆にトネリもシャナの目が気になった。自身を見つめる写輪眼の存在。写輪眼を見たことがない事もあるが、シャナの目に何故か引き込まれる。

 その感情が何なのかトネリにはわからない。

 

「シャナの目も珍しいんじゃないのかい?」

「激レアだってばね」

 

 写輪眼の希少価値はすごいだろう。うちは一族が滅んだ今となっては、正統継承者の数は極僅か。シャナの青い写輪眼に限れば、現状二人しか開眼者が居ない。

 じーと眺められるシャナは、そんなに変だろうかと考える。

 

「変?」

「そんなことはないよ。綺麗だと思っただけさ」

「他には?」

 

 この際、トネリの術を教えてもらおうとしていたシャナ。実力は不明だが、忍術ではない術を使う青年。彼の術には興味があったからだ。

 

「僕もまだ一族の全てを学んだわけじゃないけど、出来ることと言えばこういうのかな」

 

 トネリが掌から無数の小さな光の玉を作り出す。それはチャクラでできた球体であり、写輪眼で観察したシャナはまるで泡のようなチャクラの球体を自在に操る様も見る。シャナは似た術を使うが、トネリが今やっているように球体を複雑にコントロールすることは叶わない。

 球体を自在に操り、部屋中に循環させるトネリ。見事なコントロールにシャナが素直に感心する。

 

「これ何遁?」

「そういえば知らない。名前あるのかな?」

「そんなことあるってばね? 私だったら粒遁とか自分でつけてるけど」

 

 名前のない術なんかあるのかと、シャナは彼の目の前でチャクラの粒子を放出する。それを集束して幾つかの球を作り始める。シャナの得意とする術の模倣。完璧にコピーできない術でも似たような術を作り出せる彼女は、粒遁を応用して、トネリの泡の術を真似する。血継淘汰である粒遁だが、トネリの術を見れば水遁の性質が混ざっており、それにあやかって水遁のチャクラも混ぜ込んでいく。

 そして2つほど小さな光の玉を作ったシャナは、ゆっくりだがトネリを真似て、動かしていく。あらかじめセットして軌道を決めておく天輪と違い、体から離れた粒遁を手動で操作するのは難しい。苦手な水遁ということもあり難易度が高い。

 

 第一チャクラ性質を4つ混ぜ合わせる芸当を即座にやってのける事が異常。血継淘汰を超え、血継制覇ともいえる高難易度の術。

 

「すごいねシャナ。僕の一族の技を一度で」 

「これ、くそ難しい。だめだってばね」

 

 すぐに割れてしまったチャクラのシャボン玉。実用には程遠いとシャナが疲れた様子で評価を下す。だがトネリは、シャナの事を凄いと評価した。彼の一族でもない者が、それを模倣し、近づいた。

 

 うちは一族である証拠、写輪眼を持つ少女。知れば知るほど興味深く、トネリは、彼女の力を評価していた。

 

(ハゴロモの子孫。うちは一族の姫か。ハムラの子孫である僕とは相容れない筈なのに、関ってはいけない筈なのに)

 

 自分の一族に伝わる戒律。その掟や理念を思えば、シャナとの接触は間違いである。けれど、一族の目的に疑問を感じ、反抗したことで父から逃げた彼は、今のこの時間を運命だと感じていた。

 父や一族に伝わる教えに逆らってしまった自分の前に現れたのは、その教えによって裁くべき対象であるハゴロモの子孫。彼女のことを知れば、何か答えが見つかるのではないかと感じた。

 

「トネリ。監視の人数が増えたってばね。けど、仕掛けてこない」

「僕らの正体がわからないから、様子を見てるんだろうね」

 

 誘い出す作戦は、シャナ達がただ待てばいい。敵は、人数を増やし、シャナ達を包囲する気だろう。そして、タイミングを見て宿から抜け出し、逆に叩く。忍者ではないと言い張るトネリではあるが、泡の球体の術からしても、森でシャナを追いかけた身のこなしも、中忍クラスは優に超えている。

 足手纏いにはならないだろう。シャナのアンテナは、トネリの事を強いと感じ取っているのだから。

 

 シャナは、布団ですやすやと安心しきって眠る赤ちゃんのお腹を優しくポンポンと撫でる。

 

「貴方は運がいいってばね。安心して、お眠り」

 

 運命があるのなら、この赤ん坊の引き寄せたのは豪運だろう。最強のシャナと未知数のトネリに守られる赤ん坊の身は、世界で一番安全ともいえる。シャナもトネリもこの子の為に命をかける理由はない。けれど、見捨てるつもりは皆無だった。

 成り行きではあるが、関ってしまった以上、赤ん坊を見捨てるのは人間の行いではない。

 特にシャナは、大人の都合で振り回される苦しみを知っている。だからこそ、見捨てられないのだろう。

 

 横になり、赤ん坊の様子を見ているシャナ。その姿を見ていたトネリは、窓枠に靠れかかりながら、あるアドバイスをする。

 

「シャナも少し眠ったらどうだい? 長丁場になるかもしれないし」

「うーん、そんなに時間はかからないってばね」

 

 なぜそう言い切れるのかと尋ねれば、「内緒」と言われ、肩をすくめるしかない。けれど声色に動揺も嘘も感じ取れず、「そうか。信じるよ」と答えた。

 

 妙に余裕のある態度に子ども扱いされてる気がしたシャナ。だが自分の言葉をこうも信じる彼が心配になっている自分も居た。待っている間にトネリからもシャナの身の上の質問があった。

 

 シャナも問題のない部分は話した。木ノ葉の忍である事、うちは一族であること、弟がいることなどを。かなり熱く語りながらも、トネリの泡遁(シャナ命名)の球を一つ作って遊んでいたシャナ。

 

 粒遁よりもさらに難しい術だが、ものに出来ればシャナの大きな武器となるからだ。

「シャナ、少しチャクラの流し方が違うよ。こうやるんだ」

「なるほど」

 

 トネリがシャナの手を取り、自分のチャクラを流しながらチャクラの遠隔操作の方法を教えてくれる。これをマスターできればシャナは粒遁を発射後に曲げたりすることが出来るかもしれない。

 

 トネリに教わりながら、チャクラのシャボン玉を操作するシャナ。苦手な水遁も少し練習しなければと修行の必要性が出てきた。

 

「こうだってばね?」

「上手いよ。一時間も経ってないのに、基本をマスターするなんて」

 

 時間つぶしの意味もあり、トネリも優しくも真剣にシャナに指導していた。忍者であれば術を他者に教えることは少ない。だが忍でない彼に、一族秘伝の術を教える事に対する抵抗はない。

 シャナも誰かから忍術を教わるのは、久しぶりだった。自来也に教わった時は見事に失敗し、修行に対するモチベーションが低下していた。

 けれど、シャナは忍術の修行が好きだった。何より好きだったのがシャナが上手にやれば褒めてくれる両親が好きだった。

 ある程度完成してしまったシャナに、その感覚を思い出させてくれた。そして何より今は強くなる感覚がたまらなく好きなのだ。

 

 泡遁の修行をしているシャナとそれを見守るトネリだったが、時間が流れることで敵の準備が整ったらしい。シャナがようやく2つのシャボン玉を操作できるようになった段階で、彼女から修業の終わりを告げられる。

 

「トネリ。来たってばね」

「あっという間だったね」

 

 コンコンと部屋のドアをノックされ、シャナ達が黙っていると勝手にドアを開けて女将さんが入ってきた。だがその様子は明らかにおかしく、顔色は真っ青で目の焦点が合っていなかった。

 

「おまえ、たち、は、なに、ものだ」

「……女将さんを操ってどういうつもりだってばね」

 

 シャナの写輪眼は女将さんのチャクラがおかしいことを見抜いている。幻術かとも思ったが、その肌に浮かぶ斑点が何らかの術でもあると理解した。 

 

「なに、ころしはしてないさ、ただ、このしゅうへん、の、にんげん、には、ねむって、もらわ、なければ、な」 

「シャナ。どうやらそいつの言うことは確かみたいだ。まだ夜になったばかりなのに、静かすぎる。温泉街ってもっと賑わうものだよね?」

 

 トネリが心眼で周囲を確認すれば、温泉街の人間たちのほとんどが眠りについているようだった。

 

「起きてるのは私達とお前達だけか」

「そうだ。あかんぼうを、わたせ。そうすれば、おまえたちはみのがす」

「この子の親がお前なのか?」

「いや、ちがう。ただ、わたしのもくてきのため、そのこをほっしているだけだ。きみたちともあらそう気はない。ねむって、いたまえ」

 

 そういうと女将さんは口から黒い霧のようなもの吐き出し始める。

 シャナの写輪眼がそれを見抜いた。瞬時に女将さんから離れ、赤ん坊を抱く。

 

「毒みたいなものだってばね!」

「外だね」

 

 室内で毒を食らっては敵わない。トネリが、泡遁でシャナの抱く赤ん坊を包み込み、更に生み出したシャボン玉で旅館の壁を爆破。その風穴から二人が避難する。

 

 部屋で毒を吐いた女将さんは、その場で倒れる。そして、彼女の吐き出した黒い煙が人型を取り始める。そして、それは分身のように男性の姿となる。辮髪で修行僧のような姿をした男は、体に刻印のようなものを刻んでおり、逃げていった二人の方向を眺めながら、自分の動きを確かめていた。

 

「楔も使えず、引き出せてせいぜい、10パーセントと言ったところか。うちはの娘に謎の男。これでも十分か」

 

 男は、シャナ達を追って静まり返った温泉街を飛び出すに至る。不気味な雰囲気の男は、シャナ達の追跡を始めた。

 

―――――――――

 

 毒にまみれた部屋から赤ちゃんを抱えて飛び出した二人。背後から感じるプレッシャーにいち早く反応したのは、トネリだった。

 

(なんだ、この悪寒は)

 

 シャナを危険な目に遭わせないため、自分だけで相手した方がいいかと考えるが、シャナが「面白そうなやつが釣れたってばね」と笑っていた。

 強者を求める酷く野蛮でありながら、美しい笑み。トネリは、自分が最も嫌う戦争を止めない野蛮な存在である人間、その最たる例である戦闘狂のシャナの姿を見て、美しいと感じてしまった。 

 なんて自由で、活き活きとした姿なのだろうと。

 

「トネリ! この泡は頑丈だってばね?」 

「あぁ。相当頑強だよ。……応戦する気か?」

「どのみち、この子の親の場所を知ってるのはあいつだけ。この子を森に隠して、やるってばね」

「わかったよ。だが、その子優先だ。相手は僕らより強いかもしれない(本当に、僕も馬鹿だな)」

 

 トネリの言葉を聞いて、シャナが「いいね。こういうの待ってたってばね」と答えるも。シャナも赤ん坊を優先する気らしい。両親に会わせてあげるという気持ちは強いようだ。

 だが甘くはないだろう。敵の気配は、大筒木トネリも警戒しなければいけないほどなのだから。

 

「君からは目を離せないな、本当に」

「ん?」

「では、僕も実力を見せるとするよ」

「頼りにしてるってばね」

 

 二人は、自分たちを追う存在を迎え撃つべく、温泉街から離れた場所にある森に面した草原を目指した。

 




奴の登場。早すぎる気もしましたが、登場させました。
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