NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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次で温泉街事件は終わり予定です。
中忍試験の準備期間だと忘れそうになりました。今思うとタイトルのわりに最終戦争並みの人材対決してますね。


温泉街事件4

 ジゲンは、シャナ達が意識して攻撃をむけなかった森へと辿りつき、そこに安置されていた赤ん坊を見つける。

 

「やはり、ここか」

 

 二人の攻撃頻度の最も少ない場所から割り出したのだが、それはドンピシャだったらしい。ジゲンは、特製の毒を内蔵した黒い杭を構える。

 

 それを赤ん坊に向けるより先に粒遁で加速したシャナが立ち塞がる。ジゲンの攻撃から赤ちゃんを守るように、背で庇う。

 

(お前なら、そうすると思ったよ)

 

 ジゲンは端から赤ん坊に攻撃するつもりはない。生意気な小娘であるシャナなら、赤ん坊を狙えば身を挺して守ると踏んでいた。だからこその行動。ジゲンは黒い棒をシャナの背中に突き刺すべく、掌から射出。完全にシャナの背中を捉えた。

 

(この毒はチャクラの流れを狂わせ、全身の筋肉を麻痺させる猛毒。2分もあれば肺や心臓が止まる代物だ。お前が時間を戻せたところで、その術には繊細なチャクラコントロールが必要なはず、なら、これで終わりだ)

 

 ジゲンの放った黒い毒の杭は、赤ん坊を庇ったシャナの背中、ではなく、更にそのシャナを庇ったトネリの腹部に突き刺さった。腹を貫かれたトネリだが、シャナ達に刺さらないように両腕で杭を止めた。

 だが刺さった瞬間に猛毒がトネリを襲い、口から血を流しながら膝をつく。

 多少の毒物くらいなら耐えきる自信があったトネリだが、この毒はまずいらしい。チャクラが掻き乱され、全身の経絡系を通りチャクラが細胞を自己破壊しているようだった。

 

「ぐく、がは」

「トネリ。お前なんで、私を庇ったんだってばね」

 

 自分を身を挺して庇ってくれたトネリに駆け寄るシャナ。その様子を見ていたジゲンは少し意外そうな表情をしていた。

 シャナが毒を食らうと思っており、大筒木一族のトネリが身を挺するとは一切考えていなかった。

 だが、予定に変わりはない。

 

「その杭は特別製でな。刺さったものに猛毒を流す。今そいつは自分のチャクラに全身の細胞を破壊されているんだ。いくらお前でもチャクラを練れなければ、時間は戻せまい。それを見抜いてか、そいつが身代わりになったのだろう」

「トネリ……何の毒だってばね!」

 

 シャナが威嚇するように睨めば、ジゲンは懐から青い液体の入った小瓶を取り出す。

 

「毒については言うつもりはない。だが、取引を提案しよう。だからそうだな、その忌々しい写輪眼を解除してもらおうか」

「駄目、だ、シャナ、ゆだんしたら」

「まだ話せるのか。流石に頑丈だな。だが、お前の命は持って後、2分。それまでにこの解毒薬を飲まねば死ぬ」

「ち」

「卑怯とは言わないでくれよ。これも大義の為だ」 

 

 ジゲンの言葉に、シャナは躊躇しながらも万華鏡写輪眼を解除する。紫の瞳になったシャナを見て。ジゲンは掌の小瓶を見せびらかしながら、シャナに取引を持ち掛けた。

 トネリは何とか立ち上がろうとするが、全身の激痛とチャクラの暴走で、意識が飛びそうになる。

 

「まぁいい。これでフェアな取引が出来るというものだ。何難しい事ではない。いたってシンプルだ。その赤ん坊とこの解毒薬を交換だ」

「ふざけるなってばね!」

 

 非人道的過ぎる取引。ようは、トネリの命を取るか赤ん坊の命を取るかという選択肢を迫られる。

 

「ふざけてはいない。悔しいが今の俺ではお前を殺せない。だからこそのフェアな取引だ。俺自身お前と二度と関わりたいと思わない、だから偽の解毒剤なんかを渡し、変な恨みを買うのもごめんだ」 

「この子が欲しいだけで、悪意はないと?」

 

 シャナの問いにうなずくジゲン。だがトネリに残された時間は短く、猶予はほとんどない。そして、ジゲンの言葉は彼の本音だった。全力が出せない上に、能力の相性が今生最悪の敵とあえて戦う趣味はない。

 

「好きなだけ悩めばいい。だが時間は多くない。それに余計な手出しをすれば、解毒剤は、なしだ」

 

 ジゲンの機嫌次第で少名毘古那により解毒剤の入った瓶は、消えてしまうだろう。シャナの御年神の発動も一度万華鏡写輪眼を解除したことで使えない。唯一出来るのは、未来視による選択肢の結末を見る事だ。

 だが不思議と赤ん坊を渡す選択肢はない。ここでこの子を見捨てれば、シャナはなりたくもない木ノ葉の大人たちのようになってしまうと思ったからだ。

 あんな下種になって生きるなら死んでしまった方がましだ。だがトネリを見捨てるのも人の道に反している気がした。

 

「後、30秒もないぞ」

 

 時間があまりに足りない。こんな理不尽な状況になるとシャナは、何もかも投げ捨てて目の前の男を殺したい欲求が沸き起こる。赤ん坊もトネリも無視し、不愉快極まりない存在を踏み潰したくなる。シャナの中に宿るうちはの血による病か、父と母が死んだ際の心の傷か、ナルトを奪われた際の憎しみか、その正体はわからないが、シャナの中にいつまでも渦巻く黒い感情が顔を出し始める。

 いつもはその感情が出た時、必死に振り切ろうとする。何故なら大切なものを失ってしまうから。

 

 けれど今はどうだろう。見ず知らずの赤ん坊と、昨日会ったばかりのトネリ。優先度は限りなく低いのではないか。見捨てようが巻き添えにしようがシャナの生活に影響はない。

 

 可笑しな言い訳が頭の中に流れる。それを否定しなければシャナの心は流されてしまう。なのにシャナの考えを否定する材料がない。

 黒い衝動に突き動かされるように、シャナは手に抱いた赤ん坊をその場で手放しそうになる。必殺の一撃をジゲンに叩きこむ。そのことだけが頭の中にめぐる。シャナの目が据わり始め、その目が写輪眼に変化しかける。

 

(何もかもどうでもよくなかったか。意外ともろいな)

 

 掛かってくるというなら、相手せざるを得ない。面倒なことに変わりなく、残された時間でシャナ一人なら打倒できるかは微妙という状況ではあるが。

 赤ん坊を投げ捨て、ジゲンに襲い掛かりかけたシャナ。だがふと彼女の視線の先に、ふわふわと浮かぶしゃぼん玉が映り込む。

 その緑に輝く優しい光にシャナのどす黒い感情が引いていく。そして、意識がはっきりとしたシャナは、赤ちゃんを落とさないよう抱きなおし、ジゲンから距離を取るように後ろに飛んだ。

 

「ほう、逃走を選んだか。なら、この解毒薬は二度と手に入らない」 

 

 シャナの理性が勝った結果、赤ん坊の命だけでも守るという行動を見て、ジゲンは残念だと言いながら掌の上にある解毒薬の入った小瓶を少名毘古那で縮小しようとする。

 シャナに自分の選択の愚かさを見せつけようとした瞬間、まさにその隙を見逃さなかったのは、トネリだった。

 

「金輪転生爆」

「くそが、この死にぞこないが」

 

 完全なる不意打ち。瀕死のトネリが命を燃やして発動した術。トネリの特殊なチャクラが金色のチャクラ刀となってジゲンの手首から先を切断した。

 どうせ助からないなら足搔いてやろうというトネリの意地が、ジゲンに一矢報いた瞬間だった。腕を切り落とされたジゲンは激昂し、トネリを睨み付け、止めを刺そうとする。

 

 この不意打ちをトネリはあらかじめシャナにシャボン玉のチャクラ球で伝えていた。シャナの意識を闇から救った光は、トネリの仕込んだ幻術の一種であり、彼の言葉を伝えたのだった。

 右腕を斬り落とされ、頭に血の上ったジゲンは、残った左腕から黒い棒を生やし、トネリの心臓を貫こうとしていた。

 

(僕もただでは殺されない)

 

 残り10秒。暴れまわるチャクラ以外の残った全てのチャクラをカウンターの金輪転生爆に向ける。刺し違えてでもこの、自分と同じ大筒木一族の男を仕留める。その覚悟で迎え撃つトネリ。

 

「トネリ。お前は私が助けるってばね」 

 

 逃げたはずのシャナ。それが一人で舞い戻っていた。正しくは、シャナが影分身を使い、赤ん坊とトネリの両方を救う道を選んだ。何故なら、シャナの未来視では、どうあってもトネリの反撃という未来はなかった。

 なのに、トネリは赤ん坊を救い、トネリ自身を救う未来を切り開いた。シャナに準備する時間を与えた。

 

(また、見つけたってばね。運命を変える人)

 

 これまでの、ナルト、八雲に続く三人目の未来視の結末を変えた人間。

 そんな人間を簡単に殺される訳にはいかない。赤ん坊は、影分身が安全な場所に移動させた。なら後はジゲンを倒し、トネリを救うのみ。

 

 とはいえ、シャナのチャクラも残り少ない。粒遁・螺旋輪虞も決定打にならない。ではどうするか。

 

「トネリ。借りるってばね」

 

 シャナは、トネリがシャナにメッセージを伝えた泡遁のチャクラ球をつかみ取り、それを螺旋輪虞の要領でシャナのチャクラを混ぜ込みながら高速回転させる。

 

 頭が沸騰する寸前までシミュレーションした未来視で唯一完成した新術。ぶくぶくと膨張を繰り返す泡遁のチャクラ球が完成する。緑色に光り輝く球体をシャナは、ジゲン相手にぶつける。

 

「くらえ! 泡遁・螺旋輪檻(らせんりんかん)!」

 

 背後からの奇襲攻撃。それをまともに受けたジゲン。

 反射的に少名毘古那で体を縮小することで攻撃を受け流そうとしたジゲン。だが、気が付けば彼の体は緑に輝く謎の空間に囚われていた。

 

「なんだここは?」

 

 ジゲンは、自分を包み込む緑の空間の壁を殴りつける。だが高密度でザラザラとした強固な壁に弾かれる。何が起きたかわからないジゲンだったが。ようやく自分が結界のような術に囚われていると気が付いた。

 

「まずい、元のサイズに戻らねば、いや、待て」

 

 ジゲンのパワーでも簡単に脱出できないシャボン玉の檻。元のサイズに戻ろうにも、檻が破壊できなければジゲンの体が圧力で潰れてしまう。そして、檻を小さくしようにも、少名毘古那を使えば、ジゲンを取り囲もう檻全てが縮小し、やがて彼を押しつぶしてしまうだろう。

 さらに、空間そのものが高速回転を始め、ざらざらの鑢のような壁が少しづつ縮小してくる。

 土壇場でジゲンを無力化する術を完成させたシャナ。彼女はジゲンの切り落とされた右腕の傍に有った解毒薬を回収し、宙に浮いている緑の光を放つ新術、泡遁・螺旋輪檻を見つめる。

 

 これはシャナの持つ術では珍しい封印術。泡遁の膜で取り込んだ相手は、強固な壁に閉じ込められ、シャナの螺旋輪虞のエネルギーを伴った内壁によって最終的に削り潰される。

 

「ふざけるなぁ!!!!」

 

 泡遁・螺旋輪檻の中で大暴れするジゲン。彼の力なら脱出も十分可能だろう。だが、それを許しはしないのが、トネリだった。

 

「金輪転生爆!」

「おのれぇ!!」

 

 小さなシャボン玉に囚われ、逃げ場のない彼に対して文字通り決死の金輪転生爆を放った。回避不可能の状態で、トネリの大地すら穿つ威力のチャクラ刀を受けたジゲン。必死に抵抗するも、木っ端みじんに消し飛んでしまった。

 

「ふ、おわった、ね」

「トネリ!」

 

 毒が回りきり、地面に倒れ伏しそうになった彼をスライディングで駆け付けたシャナが支える。

 




男を見せたトネリ君でした。大筒木対決は、早すぎる。
しれっとシャナが新術を使ってますね。
ジゲンの声イメージしてたら、忍よ。卑怯とは言うまいな が浮かんできました。斬られたのジゲンなのに。
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