いよいよ中忍選抜試験の本戦当日。
木ノ葉の里で開かれる大規模なイベントには、各国の大名や忍、観光客なども集まり、非常に盛況な状態となっていた。
ただし、里の中に他国の人間が溢れかえると言うことで、警備の面では非常にデリケートな状態となり、現場はピリピリしていた。
観客たちは、会場に足を進めながら今日の本戦の内容について会話している者たちがほとんどだった。
今年は粒ぞろいということで、本戦の内容を予想した賭け事も行われており、その予想が非常に難しいとギャンブラー達にとっても興味深い催しとなっていた。
今年は誰が勝ち残るか、そんな話が里中で起こっていた。特に有名人となった第四班のメンバーは、人気が高く、砂漠の我愛羅率いる砂の忍達も人気が高い。
だが、観客たちが一番見たいと思ってきたのが、うずまきシャナとうちはサスケの対戦だった。うちは一族の名は、一族が滅んだ後も色褪せることなく人々の評価に残っており、その生き残り2人の対戦という、一生に一度しかないような対戦は、観客たちの期待を大いに高める。
天才と言われる、うちはサスケと元うちは一族であり、青い閃光と呼ばれるシャナの対戦は、それだけで人気が高い。
そして、本戦開始前に会場にたどり着いたシャナ。先にたどり着いていたトルネと八雲と遭遇。そして、第四班の隊長であるヤマトも3人を見送りに来ていた。
「あ、ヤマト」
「いい加減、隊長ってよんでくれないかな。まぁいいや。三人共、今日は頑張るんだよ。僕は任務で試合が見れないけれど、君たち三人なら必ず合格できると確信してる」
かなり時間的にギリギリだがヤマトは三人の晴れの舞台に足を運びたかったのだ。
「はい。頑張りますヤマト隊長」
「うん。八雲、待ちに待った舞台だからね、悔いのない戦いを」
頷いただけのトルネと「優勝するってばね」と勝利宣言をするシャナ。二人の様子を見て安心したヤマトは任務に向かってしまう。
「トルネ久しぶりだってばね」
「そうだな。ほとんど一月ぶりか」
シャナはトルネに話しかける。
「また強くなったってばね?」
シャナは写輪眼でトルネの姿を観察する。全体的にチャクラの流れがスムーズであり、体格も少し良く、身長も伸びているようだ。なにより体術型のトルネの身体能力の向上は、全体的なステータスの上昇を意味する。
実際トルネもほとんど山籠もりのような修行で、自分の腕を磨いていた。
何故なら自分と同じスタイルのリーが、シャナにはかなわなかった事実。それが彼に更なる精進を決意させた。
「当然だ。お前や八雲に、俺は後れを取るつもりはない」
「楽しみだってばね」
「シャナ。私たちはまず第一試合を勝たないと当たらないよ? それにサスケ君との試合なんだから。油断してたら、負けちゃうかもよ」
「天地がひっくり返ってもありえないってばね」
自分の弟子とはいえ、あんまりではないかと思うが、おそらく彼女の予想通りなのだろう。油断しているわけでもなく、ただ事実を述べている。
超実力主義のシャナらしい回答。
ただ、シャナの様子から全く期待してない訳ではなく、サスケの成長を心から望んでいる様子だった。
「時間だってばね」
「行くか」
「うん。二人とも、絶対に負けないからね」
八雲の珍しい挑発にトルネは、「自信満々だな」と答え、シャナは「ま、期待してるってばね」と挑発し返す。なんやかんやで相性のいい第四班は、待ちに待った中忍試験本戦へと進んだのだった。
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試合会場にたどり着いたシャナは、歓声で沸く観客を無視して他の参加者たちを眺める。
その中にはドスがおり、シャナを見るなり深く頭を下げてきた。そして我愛羅は、戦いたくてうずうずしているのか、少し興奮気味にも見えた。
そして、木ノ葉のルーキーたちもそろい踏みであり、ナルトに向かって手を振るシャナ。シャナに気が付いたナルトは、口を尖らせながら、明後日の方向を見る。
「な、ナルト」
弟に無視されたことで膝から崩れそうになるシャナ。慌てて八雲とトルネに腕を掴まれ、起こされる。こんな晴れの舞台で何をやってるのかと小言を食らう羽目になる。
どうにか立ち直ったシャナだが、弟子であるサスケが居ないことに誰より先に気が付いていた。
「サスケ君いないね」
「謎」
なぜ来ていないのか。あの子の性格なら逃げるなんてことはない。なのに、何かあったのではと、不安がよぎる。サスケを狙っている人間、大蛇丸が居る以上、可能性がないわけではない。
だが、10日に一回見た未来視では、サスケの表情からそんな様子は見受けられなかった。
さすがに詳細はわからず安否の確認だけしか出来ないが、無事ではあったはず。
(探しに行った方がいいってばね?)
シャナやナルト達がおろおろしていると、本戦の試験官である不知火ゲンマが注意を促す。
「おろおろすんな。しっかりと胸を張ってその顔を、客に見せ付けとけ。この本戦、お前らが主役だ」
ナルトは、罵倒や侮蔑の目以外で、大勢の人間の注目を集めるのは初めてだった。今日この場に限りナルトを見る目は、九尾の化け狐ではなく、中忍試験本戦まで勝ち進んだ忍に対するものだった。
そのことに胸を熱くしたナルト。
そして、シャナは全く違う受け捉え方をしていた。
(まるで見世物だってばね。反吐が出る。こいつらの生活の為に、ナルトやお父さんお母さんが犠牲になったと思うと、やりきれないってばね)
木ノ葉の人間に対する感情は、似ているようでいて正反対な姉弟。弟は、木ノ葉の住人に認められたいという思いを持つ中、姉の方は、恨みの対象としか見ていない。シャナの裏切られに裏切られ、翻弄され続けたが故に出来た心の傷は、決して癒えないものだ。
かつてダンゾウが危惧していたように、シャナの実力が向上するほど里に対する脅威となるリスクも増大しているのは事実だった。
彼女を木ノ葉に繋ぎ止めているのは、弟の存在と僅かながらにも強固な仲間達の絆のみ。里に対する思いやりや、忠誠心は皆無。
そして彼女の恨みの根源ともいえる木ノ葉の上層部。そのトップである火影を睨む。
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火影と風影に用意された特等席にて、三代目火影は試合会場に並ぶ忍達を眺めていた。そして、自分を睨み付けるシャナの視線に気が付いた。
「火影様を睨むなど、少し注意してきます」
火影の護衛についている上忍の並足ライドウは、火影の護衛役ということもあり神経を張り巡らせていた。そして火影に殺気を向ける存在が、本戦出場者のシャナだと気が付き、注意しに行こうとしたが、煙管をふかしている三代目に止められる。
「止さんか。それに、あの子の恨みは当然の事。儂はシャナの恨みは甘んじて受け入れるというておろう」
確かに三代目は護衛達にそう報告していた。それだけのことをしたのだ。木ノ葉を守るためという大義名分を笠に、少女の心を引き裂いてしまった。
実際に手を出すわけではない。その程度の理性はある。なら思う存分、感情をぶつける対象になってやらねば、シャナは本当に爆発してしまうだろう。
(すまんな四代目。こんなことくらいしかしてやれんで)
シャナの殺気を肌に浴びていると、ようやく砂隠れの長、風影が到着する。
「これはこれは風影殿」
火影として同盟国の長である風影を迎え入れた三代目。その後、中忍試験を始めるにあたって、うちはサスケの不在が取り上げられたが、予定通りに進め時間に間に合わなければ、失格にすると言った。
そして、いよいよ中忍選抜試験が開催された。ルールは予選と同じ、何方かが負けを認めるか死ぬまで。そして審判が勝敗の宣言をするまで。
「それでは、第一試合。うずまきナルトと日向ネジ以外は、下がれ」
審判の指示に従い、参加者たちがぞろぞろと試合会場から離れ、天才、日向ネジと元落ちこぼれ、うずまきナルトの対戦が今始まったのだった。