NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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中忍選抜試験 本戦2

 うずまきナルトと日向ネジの対戦が始まる。シャナは知らないが実は、ナルトにとってこの戦いは死んでも負けたくない試合。

 予選にて、日向ネジは、従妹である日向ヒナタに対して、精神的に追い込みを掛けながら、彼女を瀕死にまで追い込んだ。才能という絶対的な運命を盾に、ヒナタを苦しめ続けた。

 

 ナルトは倒れていったヒナタの努力と意地に誓い、日向ネジを必ず倒すと宣言していた。

 

「何か言いたそうだな」

「前にも言ったろう。ぜってー勝つ!」

 

 ナルトの宣言に、ネジは柔拳の構えを取りながら、白眼を発動する。そして、ナルトの目を見て自分を信じ切った目だと認識。

 

 ナルトはネジに勝つつもりでいる。それは間違いない。だがネジとて、うずまきナルトに負けるつもりは微塵もない。彼を倒し、その後に控える対戦相手を倒さなくてはいけないのだから。

 才能は、絶対だ。過去に敗れたのはネジの能力が未発達だったから。今の自分なら第四班の人間にだって負けはしない。その自信があった。

 ネジを破れるのは、それこそネジ以上の才能を持った奴らだからこそだ。少なくとも、悪くはないが、落ちこぼれだったナルトに負けることなどない。

 

「そうこなくてはな。その自信に満ちた目が、どう変わるのか楽しみだ」

「ごちゃごちゃいってねぇで、始めようぜ」 

 

 ナルトの声と共に、試合開始の合図が出され、ナルトは影分身の印を結ぶ。

 30人近い数の影分身を繰り出したナルト。その瞬間会場中が、大いに興奮の渦に包まれる。影分身は上忍クラスの術であり、それを下忍のナルトが使いこなし尋常でない数を出したことで、木ノ葉の忍達も驚いている。

 

「ほう、影分身とは考えたな」

 

 影分身は本体と同じ分身を作る術。故に白眼の能力をもってしても本体を見極めることはできない。そして本体でなければ、柔拳は効果がなく、術の阻害も意味をなさない。

 

「「「「「俺を舐めんなってばよ!」」」」」

 

 30人近い影分身と共に、ナルトはネジに向かって攻撃を仕掛けた。

 

――――――――

 

 だがナルトの攻撃は、効果がなかったのだった。一斉に襲い掛かったナルト達だった。何人かの攻撃を回避し、体捌きで往なすがとても処理しきれなくなったネジ。そこで、彼は全身のチャクラ穴からチャクラを放出しながら体を高速回転させることで、ドーム状の高速回転するチャクラの盾、日向一族に伝わる秘伝の奥義・八卦掌回天を披露。

 その防御力はまさに鉄壁であり、ナルトの影分身を全て消し去る。そして、影分身が全滅させられ、本体であるナルトの渾身の拳も回天によって弾かれ、大きな隙を晒してしまう。

 

「んな」 

「お前はあの女の弟らしいが、予想通りの出来損ないだな」

 

 体勢を崩されたナルトに急接近したネジ。ナルトは影分身を追加しようとするも、既にネジの距離となっていた。

 

「柔拳法・八卦六十四掌!!」 

 

 ネジはナルトに対して全身の点穴をついて、チャクラを一切練れなくする日向一族の奥義を食らわせる。ネジの技を受けたナルトは、吹っ飛び地面に倒れる。どうにか、生来の頑丈さでもって立ち上がるがチャクラが一切練れず、絶体絶命に追い込まれる。

 既に勝負あったと見たネジは、ナルトを見下しながら、「降参しろ」と伝える。

  

「これでわかっただろう。お前は火影になんてなれない」

「急になんだってばよ」 

「この目があると分かってしまうんだ。その人間の素質というやつが。いいか、火影というのは一握りの才能に選ばれた者だけがなれるものだ。誰しもが努力すれば成れるというものではない」

 

 ネジはさらに続ける。これ以上ナルトに攻撃するつもりはないのか、ナルトの心を折ろうとしている。

 

「それが運命というものだ。お前だって本当は理解しているし、身に染みてわかったはずだ。越えられないものがあると。落ちこぼれは、所詮落ちこぼれ。人は決して変わりはしない」

 

 だからもう諦めろと。決して超えられない才能の壁が立ちふさがる。それに無理に挑む必要はないともとれる言葉。それはナルトというよりも自分に言い聞かせているように聞こえたナルト。

 

「だからもうやめておけ、お前に恨みはない」 

「うるせー、俺にはあるんだってばよ」

 

 才能の壁。そんなものはわかってる。ナルトだって自分が才能ある忍だとは思っていない。天才のサスケや、それをはるかに上回る姉。そんな人間達と一緒に過ごして、才能の壁を感じないわけがない。

 

 そのたびに劣等感が襲い、必死に追いすがるも二人はどんどん離れていってしまう。誰よりもナルトはそれを理解しているだからこそ努力した。

 

「逆に聞くけど、何でお前はそんなにつえーのに、全部見透かすような目をして、あんなに頑張ってるヒナタを精神的に追い込むような真似した!」

 

 ナルトの怒りはそこだった。実力で倒されるなら仕方ない。だがネジはあえて不必要なまでにヒナタを精神的に追い詰めた。

 

「お前には関係のない話だ」

「ヒナタを馬鹿にして、落ちこぼれだと馬鹿にして、宗家だか何だかしんねぇけどな。人を落ちこぼれ呼ばわりするくそ野郎は俺がぜってぇ許さねぇ」

 

 ナルトからすれば到底許せるはずもない。その言葉を聞いて、ネジは渋々ながら日向一族の恨みの歴史を語り始めた。

 

 日向一族の宗家と分家の格差。宗家により刻まれた呪印は、まさに呪いであり、鳥籠。自由などなくただ宗家のために生きていくしかない運命。そしてその運命により、父親が犠牲となった過去。それらを話しながらどれほど宗家を恨んでいるかを語る。

 真に運命に翻弄されるものであるネジ。その言葉を聞いてナルトは、彼に対する認識を改めさせられた。

 

「わかっただろう。運命には抗えない。大人しく負けを認めろ。お前の傷だって軽い訳じゃない」

「いいや、お前には、絶対に負けねぇ。自分の言ったことは曲げねぇ。それが俺の忍道だ」

「聞いた事のある言葉だな」

「お前みたいな運命だなんだの、そんな逃げ腰野郎に、負けねぇ」

 

 ナルトの強情さにネジが冷静さを欠いて、柔拳で攻撃を繰り出す。胴体に一発貰ったナルトは、内臓へのダメージで吐血する。そして地面に倒れ、ネジがこれで終わりだと立ち去ろうとした時、再び意地だけで立ち上がる。

 

「お前は、わからないのか。人間には生まれた時から避けられない運命というものが存在することを」

 

 これ以上やれば死ぬだろう。だから最後の警告のつもりだった。

 チャクラも練れず、ダメージもひどい。正直立ってるのがやっとのナルト。頭を巡らせように、才能の壁という強大な敵を前に、どうすればいいかわからない。

 諦めたくない。その思いがあるのに今一歩踏み出せない現状。だが、観客席で自分を見守っているシャナが目に入る。

 

 シャナは声を出さずに、口だけ動かして彼に言葉を伝えた。

 

『それだけなの?』

 

 明らかに侮蔑の目だった。興味などないと言わんばかりの目。非常に冷たい目がナルトに向けられる。だがナルトには彼女の真意が読み取れた。

 シャナはこう言っているのだ。そいつを倒して、自分の所に来いと。さもなければナルトは一生その立ち位置から動けはしないと。

 このタイミングで応援でなく、発破をかけるあたり、実に姉らしいと感じた。けど折れかけていたナルトの心に火がともる。

 

「お前の言うこと、わかるってばよ」

「なら」

「んで、それが、なに? カッコつけんじゃねぇよ。お前だけ特別じゃねぇんだ。ヒナタだってお前と同じように苦しんでたんだってばよ。宗家なのに認められない自分を必死に変えようとして、血反吐を吐きながらお前と戦ったんだ。

 お前だってそうだ。宗家を守る分家が、試験だからってヒナタをあんなにして、お前だって運命に抗おうと必死だったんだろ」

 

 運命に翻弄されたのが自分だけだと思うな。逃れられない運命にナルトはいつだって抗ってきた。運命という言葉で全部諦めてしまうネジには、やっぱり負けたくない。

 

(化け狐。力を貸しやがれ!!)

 

 チャクラが練れないなら、ある所から持ってくればいい。ナルトは、印を結びながらチャクラを引き出そうと足搔く。その様子を見たネジが「馬鹿か」と侮辱するがそんな言葉を気にしている暇はない。

 

 ナルトは何度も九尾に話しかけながら、必死にチャクラをひねり出そうとする。

 

【いいだろう】

 

 ナルトの声に九尾が答えた。その瞬間、堰き止められていたナルトの経絡系に暴力的なチャクラが流れ込み、点穴をこじ開ける。突然チャクラが巡り始めるさまを白眼で観察していたネジは、ナルトの体にめぐる生きているようなチャクラに驚愕する。

 本来ならあり得ないことに、普段冷静なネジは、慄いていた。

 

「なんだ、お前は」

 

 全身から赤いチャクラを迸らせ、それが九尾の尾の形を取り始める。そのオーラのようなチャクラを纏うナルトは、チャクラだけで周囲に風を巻き起こし、ネジに向かって拳を突き出す。

 

「いくぞ!」

(なんだあれは、あれがチャクラなのか)

 

 見たこともない力。その力を前に、ネジは最大限の警戒を露にする。そして、ナルトが今まで以上の速度で横に駆け出し、ネジに手裏剣で攻撃を仕掛けた。

 

ーーーーーーーーーー

 

 観戦場所でナルトの様子を見ていたシャナは、ナルトの体中にめぐるチャクラを見て、その表情を凍らせていた。

 

「シャナ、血が出てるよ」

「おい、どうした」

 

 シャナが無言でナルトを見ている際、手すりを握っていた手に力が入り、握りつぶすほどの握力が発揮されていた。それはシャナの恨みと憎しみの表れであり、制御できない感情の暴走で握りつぶした手すりの破片で出血していた。

 八雲の言葉に気が付いたトルネがシャナの手を手すりから離そうとするが、外れない。

 

「シャナ。どうしたの。トルネ君」

「わかってる」

 

 多少力づくでシャナの腕を解放したトルネ。シャナは、ナルトを殺してしまいそうな目で睨みながら、二人の戦いを見届けている。

 シャナの豹変に、八雲はとんでもない気配を察知。すぐにシャナの目を手でふさぎ、彼女を落ち着かせるために、観戦室の奥に連れていく。

 

「シャナ。歯ぐきからも血がでてる。お願い落ち着いて」

「……なんで、封印が弱まった? いや、ちがう、なんで、何で、あの力を、ナルトが自分から、……」

 

 シャナはナルトが九尾の力に手を出したことに戦慄していた。そして、すぐにでも封印しようと考えたが、ナルトが自分の意志でそれを引き出したことに、彼女の価値観が大きく揺らいでしまった。

 今まで九尾に触れることなく育ててきたはずなのに、ナルトは九尾を認識し、チャクラを引き出すことに成功している。

 なぜだ。

 誰かが教えなくては、そんなこと思いつくはずがない。ナルトが両親を殺した化け狐の仲間になったようで、シャナの中の大切な弟が憎き仇に染まっていくような感覚を感じる。

 

 シャナの勝手な感情ではあるが、シャナにとっては明確な裏切りだった。

 中忍試験など関係ないと、ナルトをすぐに半殺しにしてしまいそうになった。九尾なのかナルトなのかわからなくなり始めた。九尾や仮面の男に対する感情をシャナ自身も甘く見ていた。

 

 九尾のチャクラを見ただけで、大切なものが無価値に変わりかけ、破壊したい衝動に襲われた。自分はやはり狂っていると思った。トルネと八雲が引き離してくれなければ、何をしていたかわからない。

  

「まさか、自来也……あいつか」

 

 最近ナルトの修行を見ていたのは、ゲコ仙人こと自来也。彼がナルトに九尾の力を引き出すことを教えたというなら納得がいく。そして同時に、シャナを裏切った裏切りものだと言うことになる。

 黒い感情が止まらなくなり始めた時、八雲が優しくシャナを抱きしめる。八雲の胸に包まれ、景色が一変し花畑のような場所に変わる。八雲の温もりと花の香りに、シャナの意識は少しだけ穏やかになり始める。

 

「何があったかわからないけど、落ち着いてシャナ。ここには敵はいない、シャナの味方だけだから」

「うぅ」

「シャナにとってはとても大変なことがあったんだよね。それはわかったから、ゆっくり深呼吸しよう」

 

 八雲に促され、深呼吸をするシャナの目からは涙が流れていた。ぐすぐすなくシャナを決して警戒させないように落ち着かせる八雲と、誰も入ってこれないように入り口を見張るトルネ。

 

 不安定になり始めたシャナを支える二人の存在こそが、シャナにとっての切っても切れない絆だった。

 

――――――――

 

 シャナ達が席を外した後、ナルトは、九尾のチャクラで身体強化を施し、高速移動でネジを翻弄する。そして、ネジに対して40人近い影分身を披露。

 

「化け物が」

 

 チャクラを封じたのにチャクラを扱い、あろうことか強くなる存在相手にネジは、八卦掌回天での防御を選択する。だがナルトの影分身は先程よりも攻撃力が上がっているのか一発一発が重く、ネジを苦戦させる。

 だが影分身の攻撃をしのぎ切ればナルトと言えどもチャクラ切れはするはず。その思いから回天を続けるネジに対して、ナルトは影分身たちに風遁・旋風玉を作らせる。九尾のチャクラで強化された赤い旋風玉を構えて、次々と特攻していく。

 

「無駄だ。俺の回天は、絶対に破れん」

「あぁ。お前の回天は、やぶれねぇ。けどな、その回転そのものを止めたらどうなんだってばよ!!」

 

 ナルトの影分身たちが次々に旋風玉をぶつけて消えていくうちに、ネジの回天の速度が急激に落ち始めた。

 

(まさか)

「旋風玉はお前を倒す技じゃなくて、逆回転でお前の回転を止めるようなんだってばよ!!」

 

 影分身によって速度を落とされ始めるネジ。旋風玉の回転は、八卦掌回天の回転とは逆方向であり、それらが衝突することで八卦掌回天が止められる。

 

 その隙を見逃さず本体であるナルトがクナイを持って突撃する。

「日向の憎しみの運命だか何だかしんねぇがな! お前が無理だっていうならもう何もしなくていい。俺が火影になってから、日向を変えてやるよ!!」

「うぉおお!」

 

 ナルトの一撃に、意地でチャクラを放出しながら迎え撃ったネジ。二人のチャクラのぶつかり合いは大爆発を起こし、二人とも吹き飛ばされる。

 

「ぐく」

 

 吹き飛ばされたネジは、どうにか起き上がる事が出来たが、ナルトは地面に突っ伏して動かない。直接ぶつかったナルトより、回天が少し残っていたネジの方がダメージが軽かったのだ。とはいえ、ネジも満身創痍で白眼も解除されていた。

 どうにか立ち上がったネジは、動かなくなったナルトを見下ろしながら、感想を述べた。

 

「悪いがこれが現実だ。お前はよくやったがな」

 

 そう言った時。ネジの足元の地面が割れ、中からナルトの拳が飛び出してきた。ナルトは影分身を地上に残し、本体は穴を掘ってネジの足元に移動。そのままアッパーを繰り出すことでネジを完全にノックアウトした。顎に一撃を貰ったことで、動けなくなったネジを逆に見下ろすナルト。

 全身ズタボロになりながらも、ナルトはあきらめなかった。

 

「からだが」

 

 一歩も動けなくなったネジ。自分が負けたことを実感した。

 

「影分身か、お前の得意忍術だったのに、油断した」

 

 勝ったと思い込み、完全に警戒を解いたところを狙われた。決してあきらめない奴だと分かっていたのに、もう諦めたのだろうと自分の基準で相手を評価してしまった。

 

「俺ってば、アカデミーの卒業試験に落ちてるんだ。何故なら卒業試験の内容が、俺の一番苦手な分身の術だったからだ。

 運命がどうとか、変われねぇとか、そんなつまんねぇ事めそめそ言ってるんじゃねぇ。お前は俺と違って天才なんだから」

 

 ナルトはすでに何度も運命を乗り越えている。諦めない意思こそが運命を変える切欠だと知っているから。

 

 

「勝者、うずまきナルト」

 

 勝利宣言されたナルトは、観客たちの労いの声援を聞き、今まで一度も味わったことのない感情に笑いながら、vサインを返していた。

 

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