NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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中忍選抜試験 本戦3

 ナルトとネジの戦いは、大いに盛り上がり非常にやりにくい状況の中で、ドスは試合会場に立っていた。

 形だけの仲間だった二人と結局会うことはできず、人知れず身を隠していた彼だが、会場の中に大蛇丸がいる事は予想していた。

 

 安否はわからないが、シャナの言うことを素直に聞いておいて正解だというのは、理解できた。

 そのことに恩を感じないほど、彼は無礼な人間ではない。同時に自分を裏切り使い捨ての駒にした大蛇丸に対する憎しみは本物だった。

 

 今回の試合相手は、鞍馬八雲。幻術使いの忍で、その腕前は見事という他ない。他の面は伸び悩んでいるが、幻術のスキルの面では、木ノ葉一といっても差し支えない。

 

 そんな彼女だが確かに、来ていたはずなのに、姿が見えない。先程まで姿を見たのだが、第一試合を見ているうちに見失ってしまった。なにやらシャナと騒いでいたのは聞こえていたが、よく見るとシャナやトルネもその場にいなかった。

 会場も選手が出てこないことで困惑している様子だった。

 

「すいません!」

 

 少し遅れるようにして八雲が走って駆け付け、遅れたことを審判に詫びていた。

 そして、ようやく試合が開始されようとしていた。

 

「試合前に聞きたいのですが、写輪眼の方は、なにかあったんですか?」

「え? あ~。大丈夫だよ。よろしくね」

 

 音隠れの人間がシャナの身の心配をすることに違和感を覚えたが、悪意のある声色ではなく純粋に心配しているようで八雲は無事を知らせる。実際シャナは落ち着きを取り戻し、平静を取り戻していた。少し一人にしてほしいと言うので、試合が迫っていた八雲は、彼女の言葉を聞いたのだ。

 

 そして、試合開始の合図が出されるなり、二人はおのれの武器をそれぞれかまえる。ドスは、シャナに壊された後新調した音響忍具を構え、目を瞑る。そして、目を瞑ったドスの姿に指輪を引き抜こうとしていた八雲の手が止まる。

 

「あ、そういうことか」

「えぇ。僕は音だけであなたの位置や動きがすべて把握できる。僕の耳は特殊でしてね。幻術使いのあなたと戦うにあたって、僕は視覚に頼らない。そして」

 

 幻術使いの八雲に対して、目を瞑ることはある意味効果的だ。幻覚に位置する幻術は、主に相手に対して幻を見せる事で幻惑する。だがそれを封じられれば、音や別の感覚に向けた幻術を使うしかない。その段階で幻術使いの手札は数多く減らされることになる。

 さらにドスは、自分の音響忍具を指で弾き、自分の全身に微弱な音波を流し始める。

 

「これは、幻術返しの音版です。これで音による幻術は僕に効かない。行きます」

 

 視覚と聴覚による幻術を防いだドスは、八雲の心音目掛けて走り始める。八雲は指輪を外して炎の幻術を見せるも、ドスはそれを無視して突っ込んでくる。ドスと八雲ではドスの方が動きが早く、瞬く間に距離を詰めてくる。

 だが途中で立ち止まる。すぐさま本命の幻術を発動しようとしていた八雲が固まる。

 

「え」

「僕だって期間中何もしなかったわけじゃない。僕は木ノ葉中に潜みながら、音による情報収集を欠かさなかった。そして、あなたの五感を操る幻術の事は調査済みです。距離を取れば問題ない」

 

 幻術使いの弱点は接近戦だと言われるが、八雲にはそれは当てはまらない。だがドスはあらかじめ行った情報収集にて、弱点を探っていた。

 対策をきっちり行い、八雲を相手に勝ちに来ている。そして音の中距離攻撃を八雲に行うことで、勝負をつけに来た。

 

(もらった!)

 

 ドスが音響忍具を弾こうとした瞬間、彼の耳に八雲が印を結んでいるような音が聞こえる。ここにきて忍術かと警戒するが、音の方が早いと高を括るドス。

 

「迅遁・先駆。鋼遁・金剛」

 

 音で八雲の位置を察知していたドスは、彼女の心音を見失う。そんな筈があるかと自分の耳を頼りに八雲の意図を探そうとした瞬間、彼の腹部に衝撃が走る。

 

「が」

 

 たまらず目を開けたドスの視界に映ったのは、鋭い蹴りを自身にお見舞いしている八雲の姿だった。信じられず幻術かと思った矢先、八雲は目にも留まらぬ速さで動きながら、ドスに体術を叩き込んでいく。僅か数秒の間に何発も、女性とは思えない鈍器のような拳と蹴りを貰い続けたドス。

 リサーチには一切なかった八雲の体術。動きはお粗末なものだが、速さと手足の硬度からくる打撃は、ドスに反撃を許さない。

 

 当然驚いていたのは、ドスだけでなく、会場にいた木ノ葉の忍たち全員である。

 衝動を抑え込み、平静に戻ったシャナとそれに付き添っていたトルネも、八雲の動きを見て困惑していた。

 

 会場中が驚いている中で、八雲はドスの顎を蹴り上げた。その動きはまるで、表蓮華の初期動作であり、力はないが、その速さでもって彼の顎を砕かんばかりの威力となり、彼の意識を完全に刈り取った。

 

 ドスが抵抗すらできずに、体術のみで圧倒され、審判が動かなくなったドスと両手両足が黒く染まっていた八雲を見る。幻術使いとばかり聞いていた少女の動きにゲンマの判断も遅れる。だが唯一理解できるのがこの光景が幻術ではないと言うことだろう。

 審判が勝利宣言をしてくれず、両手両足が通常の肌の色に戻った八雲は、恐る恐るクナイを構えて、攻撃した方がいいのかとゲンマを伺う。

 

「勝者、鞍馬八雲」

「よかった~」

 

 会場がドン引きした試合。幻術姫と呼ばれる八雲の幻術を使わない強引な戦闘にやや空気がおかしいことになっていた。

 八雲は、会場の人々に頭を下げながら、観戦室へと戻っていった。 

 

―――――

 

 上から八雲の試合を見ていたシャナとトルネは、八雲の術を見たことがあった。

 

「シャナ。お前は見えたか?」

「ばっちり見たってばね。待って、八雲がなんであの術を?」

「あの事件以降、感知タイプになっただけかと思っていたが、どうやら隠し玉を持っていたようだな。それも、とんでもないものを」

 

 トルネは額から汗を流していた。八雲が使用した術と印は、間違いなく卑留呼の取り込んでいた血継限界そのもの。卑留呼より遥かに精度は落ちているようだが、それでも見間違えるはずがない。

 どうやら、卑留呼に取り込まれかけた八雲は、少なからず卑留呼のスキルを宿すことになったようだ。

 八雲の試合前の自信に溢れた態度は、この隠し玉があってのものだろう。だが、二人にとっては頭を抱える内容となっている。

 

 八雲の幻術を食らわないために、速攻勝負を考えていたのに、八雲は速度についてこられる。これは厄介なことこの上ない。

 

「あ、二人とも、私、試合勝利したよ」

「おめでとう八雲。とんでもない手札を隠し持っていたな」  

「うん。二人が考えてそうな事はわかるからね。二人との試合まで内緒にしとこうと思ってたんだけど、あの音隠れの人、徹底的に対策してきたからつい」

 

 文字通り二人を倒して、優勝する気だった八雲。手の内を明かさず、切り札にするつもりだったらしい。だがシャナだけは八雲の体を心配して、彼女の姿を写輪眼で観察している。

 

「体は大丈夫なの?」

「大丈夫って言っても、シャナは誤魔化せないか。私もこれが出来るって知ったのは、最近なんだ。それで当然、リスクもあるよ」

 

 現に八雲は、今凄く体調が悪い。元々持っていなかった血継限界を使っている代償なのか、チャクラの消費量も桁外れであるし、なにより持続時間が10秒ほどなのだ。

 

 だが、そんなリスクを負ってでもシャナやトルネの横に並べる事がうれしく、修行を積んだ。八雲にとってのライバルとは二人の事だったから。

 

「けど、私に手加減はいらないよ。正面から叩き潰してあげるから」

 

 二人が八雲の体調を気にして手を抜いたら、絶対に許さないと脅す八雲。もとより手加減をする余裕はなく、二人とも目を見合わせて頷くしかない。

 

 その後、カンウロウvs油女シノの試合は、カンクロウが辞退したことで不戦勝となり、八雲の対戦相手がシノとなる。

 

 そして、シャナとサスケの試合が繰り上がってきたが、サスケはまだ会場に到着しておらず、本来なら失格という扱いになるはずだったのだが、風影や観戦客たちの圧に負けた火影が順番を一試合だけずらすと宣言。

 そして、奈良シカマルとテマリの対戦が行われる。

 

 結果は、巧みな戦術を駆使したシカマルが勝利目前まで迫るも、ギブアップするというまさかの結果に終わる。

 シャナからすれば、非常に興味深い分析と戦略タイプの忍だったので、戦いたかったのだが、彼曰く「勝ってもこの後化け物しかいねぇ」とギブアップしてしまった。

 

 そして、いよいよシャナの試合の番が回ってきた。名前を呼ばれたシャナが試合会場に出向いていくと、そのタイミングを待っていたとばかりにサスケとカカシが登場。

 

「いやー遅れてすいません」

 

 カカシが審判や観客に謝罪し、遅れてきたサスケを見たナルトが会場まで下りてきて、サスケに「おせーってばよサスケ」と口にした。ボロボロだが、溌溂としたナルトの表情を見たサスケは「その面、勝ったのか」と尋ねる。

 

「もちろん」

 

 ナルトはそう答えた。サスケもナルトが日向ネジに勝てると思っていなかったのか、素直に「やるな」と答える。そして、サスケはシャナを写輪眼で睨み付ける。サスケの対戦相手は、シャナであり、ナルトはサスケの肩に手を置きながら、最大限の激励を送った。

 

「ぜってー、勝って、上がってこいってばよ」

「あぁ。待ってろ、ウスラトンカチ」

 

 そう言いながら、ライバルとの対戦を宣言する。だがサスケにとっては、この試合こそが最大の関門。下忍最強であり、自分の師。うずまきシャナとの試合なのだから。

 ナルトが観戦室に戻っていくなり、シャナはナルトが応援してくれないことに目を伏せながらも、サスケを青い写輪眼で睨む。

 

「震えて、怖いのかってばね? 棄権するなら、今のうちが良いってばね」 

「ほざけ。これは武者震いだ。ようやく、この場に立てた。お前を超えて、俺は、一人前になれる」

 

 師を超える戦い。修行ではなく明確な敵としての争い。怖さよりも期待がサスケの心を満たしていく。会場も、うちは一族、写輪眼同士の世紀の対戦に、ヒートアップし、サスケとシャナのコールが始まる。

 

「舞台は整った。いくぞ、シャナ!」

「胸を貸してやるってばね。出し惜しみなく、全部出し切れってばね」

 

 試合開始の合図がなされ、二人の忍は、ぶつかり合うのだった。

 

 




 すいません。シカマルの試合飛ばしました。まぁ内容は原作と同じです。
 八雲に卑留呼の能力が残ってる理由としては、火の意思を継ぐものの時と違い、皆既日食の時に行ったことが原因です。
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