NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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終戦

 

 大蛇丸の用意した穢土転生で蘇った千手柱間と扉間を相手にし、怪我と術の後遺症で倒れたシャナ。

 3日間も眠りについていた彼女は病院の一室にあるベッドの上で目を覚ました。

 

「姉ちゃん!」

「シャナ!」

 

 シャナが目を覚ますなり、彼女の手を握っていたナルトが涙を流しながら、飛び込んでくる。シャナは、突然弟が飛び込んできたことで驚くが、自分の無事を心底喜んでいる姿にほっとしてしまう。

 

 ナルトは、三代目の葬儀を終えてからも目を覚まさなかったシャナの病室に寝泊まりしていた。死んでしまうかもしれなかった姉の姿を見て、失うことに憶病になっていた。

 姉が目を覚ましたことで安堵し、大粒の涙を流していく。泣きじゃくる弟の頭を撫でながら、シャナは病室を見渡せば、目を真っ赤にはらした八雲がいた。

 

「馬鹿シャナ。無茶して、こんなボロボロになって」

「八雲、何があったってばね?」

 

 状況がさっぱりのシャナ。あの後どうなったのか尋ねれば、八雲とナルトが、木ノ葉崩しの顛末を説明。戦争は木ノ葉の勝利で終わり、砂隠れは降伏したという。ナルトもサスケを止めに行く任務中に、おそらく人柱力である我愛羅と戦闘。激戦のすえ、勝利を収めたという。

 今回の戦争で多くの忍が亡くなり、三代目火影も命を落としたと伝えられる。三代目が死んだと聞き、シャナは「三代目は死んだか」と特に興味なさげだった。

 彼が死ぬことはわかっていた。これは避けられない流れだった。問題は三代目が、初代と二代目に敗れた後、解き放たれた火影たちが木ノ葉を襲う未来だったのだ。

 そうなれば、シャナがどう頑張っても、被害を避けられない。だからこそ、二人まとめて倒す必要があったのだ。

 

 だから概ね、上手く行った。最後まで戦えず、三代目に命を救われたことだけが悔しくて仕方なかったが。

 

 そして、木の葉崩しが終結した後、病院に運ばれたシャナを心配して八雲とナルトが病室に交代で泊まり込んでいたという。他にもお見舞客が居たのか、部屋中に果物などが置かれていた。

 泣き止もうとしているナルトの頭をポンポンと撫でながら、シャナは、彼を安心させようと話し始める。

 

「姉ちゃんは絶対にナルトの前からいなくならないから。少なくとも、ナルトが必要ないと言うまでは」 

 

 心配で仕方なかった。目覚めてくれたことが何よりうれしかったナルトは、誰にかまうこともなく泣き続けた。その声につられて八雲もまた泣きそうになった。シャナが目覚めず、彼女もシャナとの別れを思い浮かべ、何度も涙をながしたのだ。

 だが、シャナは帰ってきた。

 

 八雲は、上半身を起こしたシャナを抱きしめる。急に抱き締められたシャナが困った表情になるが、人をあれだけ心配させたのだから、困ればいいと思った。そしてこれだけは言いたかった。

 

「おかえりシャナ」

「……ただいまだってばね」

 

――――――――

 

 泣き疲れて眠ってしまったナルト。彼の寝顔を久しぶりに見たシャナは、慈愛に満ちた表情で弟の成長を喜んでいた。

 

 そして、リンゴを剝いてくれる八雲に目を向ける。

 

「それで、中忍試験はどうなったんだってばね」

 

 戦争で中断されてしまった試験。八雲の夢である一族の復興が遠のいてしまったのではないかと心配する。木ノ葉では中忍試験はしばらく開かれないだろう。となれば、八雲の体調を考えると、何年後になるかわからない。

 だがシャナの心配をよそに、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

 

「私とシャナとトルネ君は、中忍昇格だって。後は、奈良シカマル君も」

「え」

「戦争中の活躍と、試験の内容と、戦争中に、カカシ先生達からの緊急昇格もあって、そうなったらしいよ」

 

 特例中の特例だったが、一時的に中忍になった彼女たちの活躍は、里の上層部も無視できるものではなく、一時的ではなく正式な昇格が決まったらしい。特に今の木ノ葉は戦力が低下しており、それを補う面でも第四班を昇格させるしかなかった。

 ネームバリューもあり、戦争中に一騎当千の活躍をしていた八雲とトルネ、大蛇丸の撃退に貢献したシャナ。彼女たちを下忍にしておくことは、里にとってデメリットしかないらしい。

 

 部隊長クラスな中忍の素質についてだが、トルネの人間性と冷静な判断力は、隊長に必要なものであり、八雲は、体力面に難があるも、経験豊富でシャナという猛獣を飼い馴らす才能もあり、適格。

 性格に難のあるシャナだが、彼女の場合は、一度受けた任務は、何が何でもやりぬく責任感は評価されており、やはり特出した戦闘能力は、上も無視できない。

 

 そして、八雲からさらに話を続けられる。

 中忍に昇格した八雲たちだが、里では特別上忍の推薦が来ているらしい。里もなりふり構っていられないのだろう。

 

「めんどいから辞退するってばね」

「もったいないよ」

「お金に困ってないし、下忍でも十分なの。でも、中忍になっちゃったか」

 

 特別上忍などめんどくさい。それが本心ではあるが、中忍昇格は、避けられないだろう。けれど、八雲が無事に昇格できたことは、不幸中の幸いだと思った。八雲の願いであった衰退した鞍馬一族の復興は、順調に進んでいるのだ。

 素直におめでとうと伝えれば、彼女もお互いにねと返してきた。 

 

 その後、目を覚ましたナルトは木ノ葉の任務で里の復興の手伝いがあるからと、家に帰ってしまった。一月ぶりの弟との触れ合いが終わったシャナは、病室のベッドの上で酷く落ち込んでいた。

 そして、更に彼女を絶望の底に陥れる事態が発生するのだった。

 

―――――

 

 シャナが目を覚ました次の日、里の復興作業を手伝っていたヤマトやトルネが見舞いに訪れた。里の復興に駆り出されたヤマトは、少しげっそりしていたが、病室の扉をノックして、中に入る。

 

「シャナ、目が覚めたんだって……え」

 

 ヤマトが見たのは病室のベッドに腰かける八雲の腹部に抱き着いているシャナの姿だった。何をやっているのかわからず混乱するヤマト。思わず隣にいたトルネに尋ねてしまう。

 

「あの二人ってそういう関係だったけ?」

「いや、違うと思いますよ」

「違うんだよね。そうだよね」

 

 見てはいけないものを見た気持ちになったヤマトだったが、トルネが冷静になるよう言い聞かせる。ヤマト達が入ってきた事に気が付いた八雲が振り返って「あ、二人とも」とシャナの頭を撫でながら出迎える。シャナは未だに、八雲から離れず一言も言葉を発していない。

 病室の椅子に腰かけた二人に八雲が説明を始める。明らかにおかしいシャナの様子には理由があった。

 

「実は、ナルト君が自来也様と里を離れる事が決まっちゃって。弱り切ったシャナが、甘えてくるようになったんです」

「うー」

 

 八雲に密着して、唸り声をあげるシャナ。全力で八雲に甘えており、八雲は身動きが取れずに「はいはい」とシャナの背中を摩っていた。

 とことんポンコツ化した理由は一つだった。大蛇丸との戦いで不覚を取り、大怪我をした屈辱や後遺症による不調、さらに追い打ちのように、ある人物が見舞いに来た。

 その人物は、ゲコ仙人こと、自来也。

 彼は、八雲やナルトが帰った後、静かに病室を訪れた。見舞いのため、手土産を持っての登場だったが、病室に入った自来也を見るなり、シャナは写輪眼を発動。この場で殺してやろうかと、螺旋輪虞を発動。小型だが、病室内でそんなものを食らえば、自来也とてただでは済まない。

 

 部屋に入る前から、シャナに襲われることを予期していた自来也も掌に、チャクラの球体を作り出す。それは、シャナの父であるミナトが考案した術。螺旋丸であり、シャナが何度も再現しようとした術である。螺旋輪虞も螺旋丸を習得しようとした結果生まれた術であり、シャナの最も欲していた術だった。

 それを自来也が披露したことに、シャナは驚愕する。

 

 螺旋輪虞と螺旋丸の双方が衝突。威力が互角だったためか、お互い相殺する形となる。相殺されたことで自来也の顎を殴ろうとしたが、全身の経絡系と関節に激痛が走り、写輪眼が解除されてしまう。

 そして、体に力が入らずに前のめりに倒れる。

 

「おっと」

 

 病室で倒れそうになったシャナを抱えた自来也。動けなくなったシャナをベッドに寝かせ、自分も病室の椅子に腰かける。シャナが戦えなくなった状況だからこそ、落ち着いて話をするべきだと思ったのだ。

 

「どのつらさげて、きたってばね」

 

 病み上がりで無理にチャクラを使ったことで、体調が悪化したシャナ。動きたくても動けないので、悪態をつくしかない。精いっぱい恨みを込めて自来也を睨み付けるが、彼はシャナの殺気に怯まない。孫娘の反抗期を見守るような目で見つめる。

 

「ボロボロだのォ」

「……」

「お前が言いたいのは、ナルトに九尾のチャクラの使い道を教えたことか」

 

 その通りだった。ナルトの中の九尾は、シャナにとって不倶戴天の敵。その力をナルトが使った原因は自来也だ。もしかしたらナルトが九尾に乗っ取られる可能性もあり、ナルトが九尾を求める可能性だってある。そうなれば、シャナの復讐は果たせなくなる。

 ナルトから九尾を引き離すことがシャナの目的の一つだった。だがナルトは九尾を抜かれれば死んでしまう人柱力である。故に方法を模索している最中なのだ。

 

 なのにシャナの九尾に対する感情を知っている自来也が、ナルトを九尾と接触させた。

 

「なんで、よけいなことするってばね。私の気持ち知ってるはずなのに!! なんで、九尾なんか、あんな化け狐なんかの」

「それが、ナルトの為だからだ」

 

 自来也は一切躊躇することはない。明確にナルトにとって必要な事が何かを考えていた。

 

「そんなこと、ないってばね」

「いやある。お前の気持ちはわかっている。だが、ナルトは人柱力だ。あの子の中にある九尾の力、あれはナルトにとって最大の武器となる」

「いやだ。絶対ダメ。だめ。やだ、そんなの、だめ」

 

 九尾がナルトの中にいるのも耐えられないのだ。なのに、それをナルトが使用する。まるでナルトが穢されていく感覚なのだ。憎さと怖さ、この世にあのおぞましいチャクラが溢れ出るだけで、鳥肌が止まらない。

 シャナの心の病は、九尾のチャクラを見たことで深刻なレベルになっていた。

 ナルトが強くなるために九尾の力を使う意味は解っている。理性では、ナルトが九尾を利用することは、おかしい事ではないと分かっているのだ。けれど、3歳のあの日、シャナの胸に宿った黒い炎が身を焦がす。おかしいという自覚がある事が、余計にシャナを苦しめる。

 

 シャナの狼狽えた姿を見て、自分の予想より遥かに悪化しているシャナの症状を理解する。うちは一族は心に闇を抱えやすいとは聞いていた。だが、シャナのそれは、危険な領域だった。

 幼き頃のシャナを知る自来也。人見知りで、怖がりで、泣き虫で、優しかった彼女の姿。初めて出会った時、自分の姿を見て、町中に響くくらい大泣きした光景は、今でも思い出深い。 

 そんなシャナが、変わってしまった。力を求め、憎しみに振り回され、誰に対しても敵意を抱く。九尾事件や環境が、あの優しかった少女を今の状態に追い込んでいる。

 

 弟であるナルトに対する愛情は本物だが、このままでは成長するナルトとシャナは必ずすれ違ってしまう。もし本当に行き違った場合、シャナの心は完全に壊れてしまうかもしれない。そうすれば、シャナはうちはの例に漏れず、力を持ったまま悪に染まるかもしれない。

 

 自来也は、シャナの頭をその大きな手で撫でた。慰めるような、大好きだった自来也の手。シャナの様子が少し安定し始める。

 

「ナルトの事を真に思うのなら、九尾のコントロールは必須だ」

「……なんで、そんなこというんだってばね」

「四代目の封印式を見たが、あれはナルトに九尾の力をコントロールさせる目的があった。お前の父もナルトなら九尾をコントロールできると信じていたんだろう」

 

 四代目の名前を出せば、シャナが少しだけ暗い表情になる。だが、シャナにナルトが九尾をコントロールする修行の面倒を見させるのは酷というもの。だからこそ、自来也は今日ここに来たのだ。

 

「ナルトを、ワシに預けてみんか?」

「?」

「お前がナルトを愛し、育てていることは知っている。だが、お前はお前であり、ナルトはナルトだ。お前の方法だけでは、あの子の成長を妨げることになる」

 

 一族の違いは、大きい。血が全てとは言わないが、うちはの血の濃いシャナは自然にうちはとして力をつけた。だからこそ、うちはでないナルト向けの修行というもが難しいのだろう。弟子を奪う形になってしまうが、自来也は、自分が責任をもってナルトを育てるという。

 自来也は、四代目の師であり、その力はシャナもよく知っている。そして、シャナが今現在不安定なのは、シャナが一番よく知っている。

 

 一時的だが、ナルトを自分に預けろという自来也の言葉にシャナは、少し思案した。自来也が言うには、五代目火影候補である綱手を探す旅にナルトを同行させたいという。そこでナルトに修行をつける事と、今後ナルトの中の九尾を狙う組織の話を知らせた。

 里からの許可は出ているが、彼はシャナの元に訪れた。それが礼儀でありシャナの気持ちの整理をつけてやることが自分の役割と思ったからだ。里に振り回され人間不信になったシャナを、自分まで裏切りたくはなかった。

 

「さっきの術」

「ん? あぁ螺旋丸か」

「螺旋丸……、お父さんの術」

 

 ようやく名前の知れた術。シャナは自来也がその術を使った事に驚くが、自来也もミナトと似通った術を使うシャナに驚かされていた。

 

「それをナルトに教えて」

「ん? なぜだ?」

 

 螺旋丸をナルトに教えろというシャナの言葉に疑問を感じる自来也。

 

「今のナルトには絶対使えない術だってばね」

「ほう」

「ナルトに螺旋丸を教えられたら、認めてあげるってばね、ゲコ仙人」

 

 絶対に不可能な難易度の術。それを教える事が条件だというシャナ。出来ないことを出来るようにさせる。この奇跡のような所業を行えなければ、九尾の使い方を教えるなど不可能だ。

 シャナは彼を試しているのだ。自来也が、自分やナルトの事を考えてくれていることはわかった。けれど感情の整理がつかない。だから条件を出した。自分を納得させるために。

 

「ふむ。いいだろう」

「だったら、もう行って。私今はゲコ仙人、嫌いだってばね」

 

 嫌われてしまったらしい。だが、シャナの許可も下りたことで、自来也は病室から出ていこうとして、思い出したかのように、懐から本を取り出した。

 それをシャナの足下に置いた。

 

「しばらく入院生活だからな、ワシの著書だが、ミナトも好きだと言ってくれた一冊だ。読んでみたらどうかのォ」

「お父さんが?」

 

 シャナは、渡された本を眺め、表紙にある文字を読んだ。

「イチャイチャパラダイス?」

「え!? ちっがーう! 間違えた。これは間違いだ」

 

 真剣に渡す本を間違えた自来也。慌てて【ド根性忍伝】と書かれた本を手渡し、イチャイチャシリーズを回収しようとするが「こっちも面白そう」と言われ、返してもらえない。

 

 何度言っても返さないシャナに「18歳未満は、読んじゃいけねぇの」と言ったため、シャナは「じゃ18歳になったら読むってばね」と答えた。

 

 その言葉に複雑そうな表情で、渋々部屋を出ていった自来也。その日、シャナは気持ちの整理をしながら、夜空を眺めて過ごした。

 

―――――――

 そんなことがあり、八雲が訪れたタイミングで全力で甘えているのだ。

 気が強いと言われるシャナだが、本来の性格は、人懐っこい性格だった。普段はそんな姿を見せないが、自来也との話や、ナルトとのしばらくの別れ、怪我や体調の悪化などが重なり、甘えたがりの性格が表に出てきた。

 弱ると甘えたがるシャナの弱点を知っていた八雲。これまでも何度か八雲にだけ見せていた弱点。

 その面倒を見る八雲と甘え続けているシャナの姿が、ヤマト達が見たものだった。弱れば弱るほど、甘えん坊になるシャナの特性から、今現在は本当に弱り果てていると八雲は言う。

 

 そんな様子を見ていたヤマトは、何とか納得。お見舞いついでに伝える事があっただけだからと、用件だけ伝えてすぐにトルネと共に復興に向かった。

 

 シャナの体調が回復次第、第四班はツーマンセルでしばらく、任務を受ける事になると伝えられた。主に男性陣と女性陣で分かれると伝えられた。

 

 弱っているシャナには、八雲が必要だろうとヤマトも判断した。

 

「ヤマト、ごめんだってばね」

「隊長だよ。とは言わないから、今は体と心を休める事だけ考えるんだよ」

 

 そう言ってヤマトは、部屋を出たのだった。

 シャナが回復したのは、1週間後だった。そして、里に訪れたうちはイタチの存在、はたけカカシとうちはサスケの両名が意識不明となった事実が人づてに伝えられたのだった。

 

 

 

 

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