トネリに里の戦争の話をすれば、彼は何と愚かなと呆れていた。どんな生活をすれば、木ノ葉の里の戦争を知らずにいられるのかと悩むシャナ。
「本当に愚かな。何故チャクラを戦争にしか使えないんだろうね」
心底戦争をする人間の気持ちが理解できないトネリ。その筆頭で戦争をしていたシャナの事を悪く言うような発言と態度にシャナがむくれる。
「いたい、いたい」
「お前はいつも、忍がどうのというが、その筆頭は私だと忘れていないかってばね?」
「君の事を悪く言ったつもりは」
そう言っているのだから仕方ない。反戦主義だか知らないが、側面しか見ていない彼の言葉は、戦うことが大好きなシャナにとっては癪に障る物だ。シャナは反撃にトネリの傷跡を突き続ける。
「チャクラは忍術の為にあるものだってばね。そりゃ戦争に使うってばね。術とは戦いの中で進化してきたんだから」
「違うんだ。チャクラとは本来」
「それに、私は好きだけど、戦争っていうのはさ、皆がしたい訳じゃない」
シャナが話し始めると、トネリはシャナの放つ新鮮な言葉に耳を貸してくれた。シャナが彼の一族の嫌う最も卑しい存在だと理解したうえで。
「皆が皆武器を持ちたくて持ってるわけじゃないってばね。自分勝手な奴、勘違いした奴、どうしようもない奴が勝手に始めたんだってばね」
シャナがシャナなりに考えた戦争の仕組み。戦いたい人間などいない、などということはない。だが戦いたい人間は少数だろう。だが、その少数が存在するせいで武器を持つことを強いられた人間は多いはずだ。戦わなければ奪われ、虐げられるからだ。
抗うためには力が要る。なら武器を手に取るしかない。そして抗い抗い、抗い続けた末に、戦いたくない人間と戦いたい少数の争いの規模が大きくなり、戦争になるんじゃないかという考え。
ある段階を超えたことで、守ることも攻める事もごちゃ混ぜになり、今の戦乱の世が生まれたと語るシャナ。思想や感情、過去や未来、あらゆる要素が重なり、戦乱となってしまった。
チャクラを戦争に使うことを嫌悪するトネリの意見はまっとうだが、まるで星の人々が全員争いを求め、自分たちで滅びる事を望んでるように言うのはおかしいと彼の考えを否定するシャナ。
シャナが思いのほかしっかりとした考えを持っており、思ったより思慮深い一面に、底知れない不安を覚えたトネリ。
「君は、そこまで考えているのに、戦いを止めないんだね」
「私は、好きだとはっきり言えるから。強くなることも、力を振るうのも好き」
だとすれば、矛盾の塊はシャナということになる。戦いは愚かだと見ている反面、愚かでも、そんな自分を誇りに思っていると。シャナにとって許せないのは、弱い自分。
すべて奪われたからこそ、取り戻すために必要だった力。奪われないために、求めたのが力なのだから。その力を実感できる戦いが、好きだ。
シャナは、酷く達観した表情で、戸惑いを隠せないトネリの瞼を撫でる。この無垢な青年は、シャナの中に燃える黒い炎を知りはしない。シャナの人生は、託された弟を守るためと、九尾と仮面の男への復讐で出来ている。今話した両者の側面を持っているのがシャナなのだ。
今こうして彼に向けている感情は何だろう。シャナという女性にとって必要のない寄り道のような時間。八雲たちと過ごしているかけがえのない時間であっても、シャナの本来の目的の邪魔となるなら、彼女は切り捨ててしまう。
いつかは自分から壊れてしまう存在、それがシャナだ。けれども矛盾を抱えながらも、今を必死にあがき、悩み、誰よりも美しく生きているのもシャナなのだ。
自分を見上げながら、怪しく笑う彼女にトネリが惹かれて仕方ないのは、その泥にまみれた中でも美しく一際輝く彼女の輝きに無い筈の目を奪われたからだろうか。
「野蛮だなんだというトネリも、どう考えても喧嘩の痕だらけだけど?」
「それは、その、うん」
今度はトネリが話を始めた。彼も、自分の一族の決まりに異を唱えたという。そして、父と喧嘩になり、ほぼ一方的に敗北する形となったという。ただ、一族の掟に反した彼を許さず折檻した父だが、鳥籠の中から、一時的にでも扉を開けようとした息子の事を、誇りに思うと言っていたらしい。
(なんで、ここまでボコボコにするんだってばね?)
やりすぎではないだろうかと思案するが、トネリはどこか納得しているので話を聞く。初めての反抗に思うところがあったのか、父から地上に降りる許可は貰えたらしい。何が掟に違反したかについては、シャナの考えは、ジゲンとの戦闘だと思っていた。
実際は、既に決められていた約定による彼の結婚相手についてだった。
あろうことか、一族最後の末裔にして残された最後の一人であるトネリ。彼は、彼の一族にとっては、認められない宿敵のような一族、六道仙人、大筒木ハゴロモの子孫である、うちは一族の娘に好意を抱いてしまった。
それはあからさまで、報告を受けた父に問い詰められ、白状した。叶わぬ思いであり、先祖を裏切る行為であると、忘れるよう進言した父だが、トネリは拒否。次期当主である息子の我儘に教育を施すも、父の知らない頑固さのあったトネリは、反抗。
一族と父親としての葛藤から「勝手にしろ」という言葉が出て以来、トネリは自由だった。
今の痛みの代償に、会いたくて仕方のなかった彼女に会えるのだから、安いものだと思うのがトネリだった。
二人で話を続けていく。前と同じく、シャナはトネリから泡遁の術を一つだけ伝授されていた。今回に限っては、シャナからではなくトネリからの提案だった。起爆札で大怪我をしたシャナの心配をして、泡遁の盾を教えると言ったのだ。
それはありがたいシャナだが、いくら何でも明らかに血継限界を幾つも伝授されるのは忍びない。盗むならまだしも、丁寧に指導されると申し訳なさが出てくる。
それを伝えれば、トネリは首を横に振る。
「君が怪我をしないことより、大切な事なんてない」
「えぇ~。うーん」
なんかとても恥ずかしいことを言われている気がするシャナ。正しい返しを思いつかず、結局技を一つ伝授してもらうことになった。熱心に指導され、チャクラの泡の盾を使えるようになったシャナ。
そして、トネリの帰る時間となった。短い時間だけど会えてよかったと微笑むトネリ。今度はいつになるかわからないが、また会いにくるというトネリの姿を見て、シャナは咄嗟に彼の胸ぐらを引っ張った。屈むような体勢になったトネリは、唇に感じたことのある感触とシャナの香りを感じる。数秒後に解放された彼は酷く狼狽える。
「シャナ、きみ、え、また」
「へへ。私も会えてうれしかったってばね」
「と、きみって、ほんとうに、もう……あ!」
少し照れ臭そうな顔のシャナは、呻きながら月の光に消えていくトネリを見送る。
こういうお礼の仕方を映画や昔家で見たことのある彼女。それを真似してみたのだが、光に消えていく彼の顔が真っ赤になっているのを見て、酷く満足感を得ていた。
他の人間にならこんなことしない筈。いや、弟にはしたいと思うが、今すぐにでもしたい。
(私、トネリを、ナルトと同じ弟と思ってるってばね?)
思考が斜めの方向に向かいかけたが、ほんのり赤い頬と普段とは少し違う心臓の鼓動が、シャナに語りかける。それが何なのかを。シャナも本心では気が付いていた。
(んな、訳ないってばね)
トネリがどうやったのか消え、一人になったシャナ。公園で一人になった彼女は、誰も居ない場所で一人呟いていた。
「お母さん、私、お父さんみたいな優男系がタイプだったってばね」
母が居たら爆笑してくれただろう。父は隣で落ち込んでいそうだ。そんなことを考えながら、家に帰る彼女の姿は、月に愛された女神のように綺麗だったと通行人たちが語ったという。
トネリとシャナの暴走が止まらないです。ついにシャナの自覚回になったのかな。トネリ出てくると大体甘い展開になる気がする。
シャナは、トネリをドキリとさせる行動が多いですが、基本、クシナとミナトのせいです。
堕とそうと狙ってやっている訳でもなく、本能的にやりたいことしてるだけですね。