正体不明のラビリンスとの交戦で、いつもより早い撤退を選んだシャナ。シャナは直ぐに浜まで上がり、先行したシャナを連れ戻そうとしていたトルネたちに合流。
「もしかして砂の襲撃だったの?」
「また戦争をする気なのか?」
シャナが一応無事だったため、シャナの交戦した相手について考察していた。シャナも相手が結界忍術に近い技を使うことと、青い写輪眼を持っていることを伝えたが、何のヒントにもならない。
ただ、砂隠れの襲撃ではないと思えた。シャナが手古摺るほどの実力者を木ノ葉崩しの際に投入しないのは変だし、写輪眼の事を本当に知らなそうだった。何より姿恰好が、砂隠れのある風の国の文化とはかけ離れている。使った術にしても、何かがおかしい。
濡れた体をタオルで拭きながら、シャナの誘導で3人は、砂隠れの里に向かう。
シャナの感じていた嫌な予感の正体はあれだったのだろうか。
シャナが撤退した理由は相手の未知数さゆえであった。見たことのない系統の結界忍術を使い、それを攻防一体に仕上げるスタイル。さらに万華鏡写輪眼を宿し、瞳術は謎のまま。さらに青い写輪眼という特徴から、何らかの能力があると、シャナとコダマの例から導き出される。
(一つ分かるのが、あの女は、私やコダマと同じくらい強いと言うこと)
戦ってみてわかった。不意打ちなどの戦略も豊富で、戦闘技術にも隙がない。攻防一体の術を高いレベルで扱い、うちは一族の切り札も使える。あろうことか須佐能乎に関しては、シャナの須佐能乎よりもパワーがあると来た。
先見の写輪眼を使う手も考えたが、女の背後に、何か武装した巨大軍艦のようなものも見えており、女一人に全力を出せば息切れしてしまう。
故の撤退であり、シャナとしては苦渋の決断だった。だがあそこで戦えば、余計な被害が増えるとも言えた。一先ず砂隠れに向かうことに決めた。
可能であれば外洋から武装勢力が来たことを伝えようとも考えた。
唯一の気がかりが、自分の右足にある空っぽのホルスター。
(みんながくれたダガーなのに)
誕生日にもらったチャクラ刀のダガーをラビリンスに取られたことが悔しい。完全な不意打ちで投げてしまったが、仕留める事は出来ず、回収されてしまった。あれはシャナの宝物でもあり、取り戻したいと考えていた。
あくまで勘だが、あの女とも近いうちに戦うことになるはず。
3人で砂に向かっていると砂隠れの海岸線があわただしい。夜だというのに、騒がしく、戦闘を行っている様子だった。それも大勢が戦っているらしい。
「戦闘してるの?」
シャナ達から見て砂の忍達が戦っているのは、異国の大型鎧を纏った人間離れした巨体の兵士たち。武器も巨大なメイスやハンマーであり、なかなかお目にかからない武装をしていた。その軍勢と砂の忍達が交戦していた。
戦闘状態の他国の忍達に加勢するかどうか悩まれた。
明らかに劣勢な砂の忍達が徐々に押され始める。相手の兵士たちは命が惜しくないのか、特攻を繰り返し、砂の忍達は相手を警戒しながら徐々に前線を下げられている。このままではあっという間に劣勢となるだろう。
「シャナ、八雲!!」
シャナと八雲が戦闘を観察していると、遥か遠くから跳躍してきた異国の兵士がハンマーを振り下ろしてきていた。瞬時にトルネが渾身の拳を鎧兵士の胴体にお見舞いする。鍛え上げられた剛拳は、金属の鎧を陥没させ、その巨体を数十メートル吹き飛ばす。
だが殴ったはずのトルネは、その感触に違和を感じていた。鎧の中が何と言うか、まるで粘土のようで、内臓や骨といった人間として必要な器官を備えていなそうだったのだ。
トルネが盛大に敵を撃破すると、砂の忍達もシャナ達に気が付く。そして、敵国の兵士たちもシャナ達に向かって襲い掛かり始める。
トルネが八雲を抱え、シャナと一緒に砂の忍達のリーダーらしき男の所に飛ぶ。
「お前たちは?」
「木ノ葉からの協定の意見書を持ってきた忍だってばね」
「君たちがそうか。すまないが、今は正体不明の敵との交戦中だ」
それはそうだろう。敵の規模も決して小規模ではない。本格的な侵略と見ていいだろう。シャナはトルネに目配せすると、トルネは八雲を下ろして、砂の忍に交渉を持ち掛ける。
「我々も加勢したい。奴らは無差別の攻撃を繰り返している。どうか砂での戦闘許可をいただけないか?」
低姿勢で頼むトルネ。迎撃は自己防衛で行うが、撃退は別。他国の忍であるシャナ達が好き勝手暴れれば、戦争の火種になりかねない。そう言った面は苦手なシャナは、トルネに交渉を頼んだのだ。
現在劣勢であり、国境線を突破される危機に瀕する砂の忍達。木ノ葉からの使者は、青い閃光、毒蓮華、幻術姫の三名。木ノ葉崩しの際は、砂と音の忍に痛手を負わせた彼らだが、善意での協力を持ち掛けてくれている。
自国を守るためには、例外となる決断も必要。
「是非お願いしたい。どうか、ご協力を」
「了承した。シャナ暴れていい。八雲はどうだ?」
シャナはトルネの指示に従い、夜に輝く閃光となって戦場に舞い降りた。恐怖心が全くない鎧兵士だが動きは単調。何体集まろうとシャナの敵ではない。粒遁の刃を纏ったチャクラ刀で次々に両断されていく。
暴れるシャナの一方で相手の異質さゆえに、八雲の幻術が効果があるのか尋ねたが、八雲は首を横に振る。どうやら相手は、幻術の効かない存在らしい。そうなると著しく戦闘能力が低下する八雲。
だが八雲はトルネに「心配しないで」といって、親指を少し噛み切って血を流し印を結ぶ。
「忍法・口寄せの術」
八雲が地面に手を押し当て口寄せした生き物は、巨大なシャコガイのような生き物であり、強固な貝殻に無数の棘が備え付けられていた。人一人を軽く呑み込めそうなほどの巨大な貝を口寄せした八雲。
「口寄せ? いつの間に」
「中忍試験用だったんだけどね。見せる間もなく終わっちゃって」
元々、準備期間の一か月の間に、自分の弱点克服の目的で探し出した口寄せの契約動物である。卑留呼から引き継いでしまった血継限界はリスクが高いので、本戦でシャナ達と戦うならこの子を使うつもりだったのだ。
幻術使いで有名な忍に、二代目水影の存在がある。彼はハマグリのような口寄せ動物で幻術を使ったと言う。一流の幻術使いが、幻術を使う貝類を口寄せする例は多いらしく、八雲も感知能力を生かして見つけ出したのだ。
「あの鎧の兵士を倒して、七宝」
八雲の契約した口寄せのシャコガイの名は、七宝と命名された。言葉は話せないが、知能が高いらしく八雲の指示を聞き、彼女を守るように口内に匿うなり、全身の棘を発射した。
発射された棘は、人間サイズのものであり、軽々と鎧兵士の体を貫通して地面に縫い付ける。そして発射した棘は、すぐさま再生をはじめ、次弾を装填した。
どうやら全く問題ないらしい。防御力も高く攻撃能力も十分という便利な口寄せ動物に守られる八雲は安全だろう。本来なら、シャコガイも幻術を使う蜃気楼も出せるらしい。
「敵を減らす必要があるな。一気に行くとしよう」
毒はおそらく効果がない。なら剛拳で粉砕するしかない。トルネは、足の重り代わりの鉄芯を外し、瞬身の術でシャナの後を追う。そして、迫りくる鎧兵士を次から次に拳で制圧していく。
シャナ達が加勢したことで、流れが変わる。一気に侵入者を押し出す流れとなり、更に増援も駆けつけてきた。
浜辺一帯の砂が一気に舞い上がり、意思を持ったように鎧兵士たちを襲い始める。その術を見たことのある面々は、国境線の戦いに馳せ参じた人物、砂瀑の我愛羅の姿を捉える。