砂が津波となって鎧兵士たちを襲い、砂の忍達の盾となっている。
砂を操るのは砂隠れの我愛羅だった。彼は砂に乗って移動しながら、戦場で好き勝手に暴れているシャナ達を見つける。
砂を足場に螺旋輪虞を連発しているシャナの傍に近寄る。
「何故お前達が戦っている」
「私たちも襲われたんだってばね。戦闘許可は貰ってるから問題ないでしょ?」
「……不運だったな」
砂に派遣された直後に襲われているシャナ達を気遣ったつもりだった。だがシャナはその言葉を強く否定する。
「運が悪いのはあいつらだってばね」
シャナの言葉を聞いた我愛羅は呆れるように鼻で笑い「そうだな」と返す。シャナ達に続き、我愛羅まで参戦したことで敵は撤退に追い込まれる。
鎧兵士たちが次々に海に飛び込んで消えていく。その様子に砂の忍達は大声で歓喜の声を上げる。だが我愛羅は何故か、違和感を覚えていた。
そんな彼の肩をシャナが叩く。
「まだ終わってない。最大限で浜を防御するってばね。はやく!」
シャナの指示に従い我愛羅は、砂浜の砂を巻き上げ、巨大な砂の盾を形成する。その判断は正しかった。我愛羅の盾が完成すると同時に、沖合に停留していた巨大な異国の戦艦から大砲が撃ち込まれたのだった。次々に打ち込まれる大砲の前に、砂の盾が破壊され、大勢が吹き飛ばされていく。
その中で、シャナは発射される弾丸を粒遁・天輪で迎撃していくが、砲撃の数が多いため、捌ききれない。八雲は、口寄せ貝の七宝の独断で、地面に潜り身を隠すこととなった。
残ったトルネは、飛んでくる弾丸を側面から殴ることで、軌道をそらしていた。それでも敵の攻勢は激しく、部隊長の指示に従い、撤退を余儀なくされた。
撤退することが決まり、シャナが地面に潜った八雲を大声で呼べば、砂浜に潜っていたシャコガイが現れ、八雲を口から出した後に消える。
シャナが八雲の手を取り、二人で砂の忍に続いて撤退する。砂の忍達が撤退したのを見たのか、海からキャタピラを携えた山のような兵器が上陸する。その兵器の動きは早く、下手すればキャタピラに踏みつぶされてしまう。
「なんなのあれ?」
「皆目見当もつかないってばね」
シャナと八雲が走っていると、砂に乗った我愛羅が「乗れ」と指示してくる。厚意に甘え、我愛羅の砂に乗ることで素早く移動する事が出来た。見たことのない兵器に逃げるしかできなかったシャナ達。
―――――――
一夜が明け、昨日の戦闘の激しさを砂浜の惨状が語っていた。上陸した兵器は、途中にあった村や町を引きつぶしながら進み続けていた。その様子を砂の忍達が追跡しているが、今現在連絡がない事から、追っ手は消された可能性があった。
シャナ達は、砂隠れの忍達が緊急で用意した前線基地に案内される。
そこでは、老人姉弟が実質的な責任者だった。彼らはシャナ達を見るなり深く観察していた。
緊張した面持ちの八雲の様子を見るなり、老人の弟が話しかけてきた。
「すまんな、木ノ葉の使者の方」
「いえ、こちらこそ、とんでもないタイミングで訪れてしまって」
八雲が老人の謝罪を断るなり、老婆の方が「本当にタイミングが悪いの」と嫌味を言う。その態度に腹を立てたシャナが前に出る。
「ほう、うちはの生き残りか」
「婆は引っ込んでろってばね」
「あのナメクジ娘よりも生意気な娘じゃな」
八雲を馬鹿にするような態度に立腹のシャナ。シャナの言葉を聞いた老婆は、笑う。
「ワシらとて隠居していたいんじゃがな、誰かのせいでおちおち隠居もしてられんのじゃ」
誰かといっているが、それはおそらく木ノ葉のことを言っているのだろう。この老人は木ノ葉を心底嫌っているらしい。目を見ればわかる。明確な敵意と悪意を持って接している。この老婆の世代なら、第二次忍界大戦の経験者といったところだろう。
積み重なった恨みは、晴れる事はない。
「自業自得だババア。お前らが力も無く嚙みついた結果だってばね」
「止せシャナ」
協定を結びに来たというのに、目の前の老婆とシャナの相性は悪い。このままでは戦争の火種になってしまうとトルネが止める。一方で老婆の弟だという人物も「姉ちゃんや、其処らへんにしとけ。今は木ノ葉と争ってる場合じゃない」と姉を嗜める。
「チヨバア。問題は、あの鎧どもだ。敵をはき違えるな」
「偉そうじゃな我愛羅」
「過去の遺恨よりも今の敵だ」
話を聞いていた我愛羅の後押しもあり、話が進められる事となる。シャナ達の持ってきた意見書は、無事受理された。一応は任務完了となったが、木ノ葉に帰ろうにも、今現在敵対勢力の正体がわからず海岸線から木ノ葉に帰るのは危険ということになり、渓谷を通るルートを勧められた。
砂としても木ノ葉と争うわけにはいかず、彼らを無事に帰す必要があったのだ。
だが、戦争とは非情なもので、今シャナ達が待機している前線基地に敵の巨大兵器がまっすぐ向かっていると伝令が入る。それも避難経路として指定された渓谷側から。今現在、前線基地の戦力は万全とは言い難く、それでも食い止めようと忍達を向かわせているが、敵の中に手練れがいるらしく、戦況は芳しくない。
伝令を受けた我愛羅が「俺が行く」と宣言。
「仕方ないから、私たちも行くってばね。どのみち渓谷の方角に向かうためには、あのデカい兵器を蹴散らさないといけないってばね」
撤退するために攻勢に出るというシャナ。どのみちラビリンスという女の事も気になっている手前、調査もしたかった。自分と同じ青い写輪眼の正体も気になって仕方ない上に、愛用のダガーを取り戻さないといけない。
ついでにと、シャナは自分が戦った敵についても情報を開示した。すると、話を聞いていたチヨバアと呼ばれた老婆が思い当たる節があると口にした。
「第二次忍界大戦のおり、岩隠れに間宵一族という結界使いの一族がおった。お前の戦った相手がそうとは限らぬが、似通っておる」
「あぁ。おったな姉ちゃん。でも、あの一族は、二代目火影と戦って絶滅したんじゃなかったか?」
老人二人は懐かしいというように語る。結界を使う既に滅んだ一族。その一族とうちは一族の血を継いでいるのだろうか。気に入らない相手だが、戦争を経験し、シャナから見ても実力者である二人の言葉は注意深く聞いておくシャナ。
しかし、その一族を亡ぼしたのがこないだ戦った二代目火影というのは運命だろうか。偶然にもシャナには、ラビリンス及び間宵一族の使う結界忍術に対する答えが浮かんでいた。
結果的に我愛羅と共に、地上を走る兵器の破壊を許可されたシャナ達。特例ではあるが、砂としても渡りに船であった。条件としてはシャナ達の自己責任という形だが、木ノ葉に帰るためには他国の勢力を叩くしかないのだ。
我愛羅と行動を共にすることになったシャナ。
シャナは、我愛羅の顔を覗き込むように見ていた。その視線に気が付いたのか我愛羅が疑問をぶつけてくる。
「なんだ?」
「なんて言うか雰囲気変わったってばね。憑き物が落ちたみたい」
シャナが素直に感想を述べれば、彼は空を見上げながら「そうだな」とつぶやいた。我愛羅が変わった原因は一つだ。木ノ葉崩しの際に仲間を守るために命懸けで挑んできたうずまきナルトの影響だろう。お互いに尾獣を宿す人柱力であり、相手の痛みを理解したうえで、自分の仲間を死んでも守ると言った彼の言葉に心を動かされたのだ。
自分を殺せるほどの強者を殺すことでしか生を実感できなかった我愛羅は、他者を思いやることを学んだ。
「お前の弟のおかげだ」
「ナルトの? ふーん」
何があったかは詳しく知らないシャナ。だが血生臭い狂人だったが我愛羅はどこにもいなくなってしまった。一度戦ってみたかったのだが、今の我愛羅は無駄な戦いはしないだろう。中忍試験で戦っておけばよかったかと後悔していた。
「まだ私と戦うつもりあるってばね?」
「ないな」
我愛羅が釣れない性格になってしまい悲しいシャナ。だがシャナとは違い自分の闇を乗り越えた彼を、シャナは評価していた。みんなそれぞれの道を進んでいくのに、シャナだけは過去から抜け出せないのだから。
―――――――
我愛羅に連れられ渓谷にたどり着いたシャナ達。まだ敵の巨大兵器の姿は見えていないが、探すことに苦労はしないだろう。渓谷の険しい道も我愛羅の砂のエレベーターで軽く乗り越えた一行。
便利な術だなと感心していた八雲。何度も礼を言いながら、運んでもらっていた。
そして、敵を探しながら進んでいると、渓谷にかまえられた村が焼き払われている現場に遭遇する。そこには鎧兵士もおり、巨大な陸上兵器も存在していた。
侵略者になすすべもなく蹂躙されていく村人が逃げ惑う。だが、鎧兵士たちは攻撃の手を止めない。
しかし、その巨大なハンマーが赤ん坊を抱いた女性の頭部を潰すより先に、砂の盾が砂の兵士の攻撃を阻む。我愛羅は、村人たちを庇いながら戦いに参戦する。
「村人を避難させる。お前たちは、奴らを減らしてくれ」
守りに関しては誰よりもうまい我愛羅。彼の指示にうなずいて第四班は戦闘を開始する。砂が逃げ惑う人々を守り、燃える村を消火していく。
シャナ達が現れたことに気が付いた鎧兵士たちは、ターゲットをシャナ達に変更。トルネとシャナの二人は速度で彼らを圧倒。速すぎて反応できない鎧兵士たちに起爆札をつけたクナイを投擲する。
痛覚や臓器がないとはいえ起爆札の爆発は防げないのか、次々に戦闘不能となっていく。
「あ、ありがとう」
「礼はいい。戦いの邪魔だ。避難しろ」
村人から感謝の言葉を受けた我愛羅だが、彼らが居れば全力が出せないのでそっけなく対応する。そして、村人たちが戦闘区域から避難したのを知ると、鎧兵士が守る巨大な兵器への攻撃を開始する。
「流砂瀑流」
両手を合わせ、チャクラを多大に消費することで膨大な砂の奔流を巨大な兵器を飲み込める規模で放つ。その質量と範囲は反則級で、地形すら変える術にシャナ達第四班も戦闘を中断して退避する。
砂の濁流によって進路を塞がれた巨大な兵器は、なすすべもなく呑み込まれかける。だが、突如発生した巨大な結界によって砂は阻まれてしまう。
「なんだ?」
突然、砂が何かに阻まれたことで我愛羅が警戒心を強める。唯一その結界を目視出来たのは、写輪眼を持つシャナだけ。チャクラを目視出来るシャナでなければ見えない結界という術を見たことで、彼女はにやりと笑う。
「
シャナの笑みに答えるように、突然空から緑色の雷のようなエネルギーが降り注ぐ。シャナ達はそれを回避し、我愛羅は砂の盾で降り注ぐ膨大なエネルギーをガードする。そして雷による攻撃が止むと同時に、巨大兵器から、白銀の鎧を纏った少年とラビリンスと名乗った女が現れ、その背後にも鎧姿の女性二人が現れる。
先ほどまでの鎧兵士とは違い、こちらが本隊なのだろう。明らかに全員が異質なチャクラのようなエネルギーを身に宿している。シャナの写輪眼からは、そのエネルギーは人間の練るチャクラとは違ったものに見えた。
「あらら、あなたは昨日の」
「ラビリンス」
「覚えてくれてたのね。お姉さん嬉しいわ。またあなたに会えて」
ラビリンスは、シャナを挑発するようにシャナから奪ったダガーを見せびらかす。