NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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開眼、先見の写輪眼

 ナルトの出産日が迫り、波風一家は、里から離れた洞窟で生活していた。

 

 暗部の護衛と厳重なまでの結界に守られた要塞。その場所で、後は生まれるだけの赤ちゃんを待つだけだった。

 

 夫婦だけなら問題はなかったが、二人の子供であるシャナの処遇をどうするか三代目火影との話し合いの末、シャナも一緒に連れていくことが決まっていた。

 

 そこでの生活も数日と経った後、ついにクシナの陣痛が始まる。

 

「お母さん!」

「これ! 離れておれ」

 

 三代目火影の妻と助産師の医療忍者の両名が、クシナの出産の手助けをはじめ、ミナトは封印術でクシナの中にいる九尾を抑え込む。九尾の妖狐、尾獣と呼ばれる膨大なチャクラを持った怪物であり、クシナはそれを体内に封印する役割を持つ人柱力なのだ。

 九尾を封印できるだけの膨大なチャクラを持ったクシナだったが、出産の際は、封印のチャクラが赤子へ移るため封印が弱まる。だからこそ、里から離れた場所で厳重な下準備をしたのだ。

 

 苦しそうな母の声を表情に、シャナは不安になるが、幼子の世話をする余裕のない大人達。

「シャナ、わたしは、だいじょうぶ、ぐぅうう、あぁあああ!!」

「少しだけ離れているんだシャナ(早く出てこいナルト。九尾は出てくるな!)」

 

 全身汗だくのクシナと同じく汗だくのミナトを見て、シャナは洞窟の入り口付近で風にあたろうと洞窟の出口に向かった。

 

 

「あれ、おじちゃんたち……え?」

 

 洞窟から出たシャナの前に広がっていたのは……護衛として派遣された暗部の忍達。身を隠していた彼らを写輪眼で見つけてしまったシャナは何度か話しかけ、飴を貰ったりなどしていた。顔見知りだった彼らの無残な死体だった。

 洞窟の前の水脈が血で染まり、ピクリとも動かない姿を見てシャナは本能的な恐怖を感じる。

 

【ほう。小娘も居たのか】

「!?」

 

 恐怖から父と母の所に引き返そうとしたシャナだったが、突然男性の声が聞こえそちらを振り向く。

 

【運が悪かったな】

 

 シャナの前に現れたのは、黒いフードで全身を覆い、右目だけが覗くお面をつけた男だった。彼は、仮面越しに赤く光る写輪眼でシャナを捉えていた。その目を見た時、シャナは金縛りにあったかのように動けなくなった。

 忍者になりたいと修行を頑張ってきたシャナだが、3歳の少女には、本当の殺気と向き合う経験がなかった。故に全身が震え、息が出来なくなる。

 

 自然と涙がゴーグルの中で流れ、心の中で(お父さんお母さん)と両親を呼び続ける。でも二人は、ナルトの出産と九尾の封印で精いっぱいで、外の異変に気が付かない。

 

【痛みはない。一瞬だ。……死ね】 

 

 仮面の男の声に殺気が乗り、男が手を伸ばしてくる。暗部の精鋭たちを殺した男なら、シャナの細い首を一ひねりであの世に送れるだろう。幼子と言えど目撃者は生かさないと冷酷な襲撃者は、シャナの命を刈り取ろうとする。

 

(恐いよ、助けて、おとうさん、おかあさん……)

 

 恐怖で目を瞑ったシャナ。死ぬ、そう感じた。

 

 

 だが、シャナの中に眠る生存本能がそれを許さなかった。彼女の忍としての血が、マグマのように心臓から全身に巡り、膨大なチャクラを精製。それらが全身に行き渡り、やがて写輪眼が赤い光から、青い光へと色を変える。咄嗟に目を開いたシャナ。

 すると、膨大な量の未来がシャナの目の前に現れ、彼女の瞳は、その中で自分の死を見た。

 

 ならどうすればいいか。シャナは知っていた。未来を変えるしかないのだと。頭で考えるより先に、シャナは写輪眼の動体視力で男の腕を見切って回避。髪の毛を整えるために付けていたヘアピンを抜き取り、男の腹に突き刺した。 

 小柄の少女と言えど、鋭い針を男性の体に突き刺すくらいは出来る。 

 

【何】

 

 まさかの反撃を受けた男は腕を大きく振るってシャナを殴り飛ばそうとするも、その未来を写輪眼で見て、分析していたシャナはしゃがんで回避。男のアキレス腱にヘアピンを突き刺す。2発も反撃を食らった男の次の行動を未来視したシャナは、男が本気の蹴りでシャナの首をへし折る前に飛び退いて回避する。

 自分の行動を思考より先に回避された仮面の男は、少しだけシャナを警戒する。

 

「……」

 

 シャナの息が乱れる。だが死が迫ったことで、実際に死ぬ世界線の自分を見続けることで、極限の集中力を持って対処している。目の前の男が持つ能力をまだシャナは見ていない。だが、未来で体験する事実を、未来視で先取りした彼女は、男に攻撃が当たらないと知っていた。

 同時に、自分の次の行動が導く未来の結末を何度も見る、写輪眼の瞳力で何度も観察することで、男に有効打を与える方法を識った。

 未来で何百回も殺される中で、男の攻撃の瞬間のみ、男に触れられる。

 

(みえる。ぜんぶ) 

 

 実戦経験のないシャナであったが、未来で試行錯誤の結末を見られること、写輪眼の力で通常の何百倍もの情報を深く得られる恩恵、全てが合わさって膨大な経験値となっていた。

 

 全ての忍に対する天敵となった少女、術を使う前に全て見切り、研究し、克服する。

 後に、<先見の写輪眼>と呼ばれる血継限界であり、木ノ葉の青い閃光と呼ばれる少女の力が、開花した瞬間だった。

  

「わたしは、しなないってばね」 

 

 だが、幼い少女の脳は、沸騰寸前だった。写輪眼を日常から使えるチャクラ量のあるシャナだが、戦闘中に未来視をする事などなかった。常に膨大な量の未来を経験値にする能力だったが、受け皿である脳が限界に近づいていた。

 そして、チャクラの消費量も膨大なものであり、長く使い続けることは不可能。情報量を減らせば、その分負担の減る能力だが、初めて開眼した力を危機的状況ではコントロールできない。

 

 そして、シャナには膨大な量の経験値がなければ、男に瞬時に殺される。

 

 未来を見て、男の投げるクナイの雨の軌道を識ったシャナは、絶対に当たらない位置を見つけて体をその隙間にねじ込む。当たってから回避する、を行える彼女は、1分近く仮面の男と戦っていた。

 

 男の攻撃前のタイミングで、反撃することで男の攻撃が自分をすり抜けることも知った。当てたいときは、男の攻撃中にカウンター。回避したいときは、男の攻撃が当たる前に攻撃。少しづつ仮面の男を攻略していく。

 

【何故お前が俺の力を知っている?】

 

 明らかに自分のすり抜け能力を攻略しているシャナに、男の苛立ちが声に籠る。抵抗されるなど考えてもいなかった。

 

(小娘のうちはの血をなめ過ぎていたか)

 

 実力差は圧倒的なのに、シャナに触れられない。ギリギリの紙一重で全て回避される。小柄ゆえに死角に逃げ込み続ける少女を捉えられない。

 フェイントも仕掛けるが、フェイントには見向きもせず、的確にカウンターだけを貰っていく。やらしいことにシャナのヘアピンでのカウンターは、全て急所を突いている。普通の人間なら、動けなくなるほどダメージを負っている。 

 だが、男は規格外の体をしており、シャナの攻撃も驚きこそすれ、ダメージとは言い難かった。

 

 シャナも自分の攻撃が効果が薄いと感じ、仮面の男の投げた手裏剣を幾つか回収していた。クナイ投げは、筋力の関係から避け、投げやすい手裏剣で牽制する。少女が思い出すのは、カカシの手裏剣術。カカシの雷を纏った雷遁手裏剣をコピーして繰り出す。

 電気を纏った手裏剣が男へと向かう。

 

【無駄だ】 

 

 手裏剣は男の体をすり抜け、明後日の方向に飛んでいく。飛んで言った手裏剣は、重力で落下して川に落ちる。もう手加減はしないと全力で怒涛の連撃を繰り出す仮面の男。その動きも未来で見ていたため、回避しようと軽い身のこなしで往なす。

 

「あぐ」

 

 しかし、4回ほど回避したタイミングでシャナの脳と体に限界が訪れる。激痛が目と体中を襲い、酷い頭痛が彼女の動きを鈍らせる。その隙を見逃さなかった男は、シャナの首を掴み、力を籠める。

 息が出来ず、もがき苦しむシャナ。

 

【手こずらせたな。いい眼を持っている、だがその才能が開花することは、もう、何?】 

 

 シャナの首がへし折れるかというところで、一本のクナイが仮面の男の右腕。シャナを締め上げていた手に突き刺さる。奇襲に驚いた男は、シャナの首から手を放してしまう。

 男が振り返ると、洞窟の入り口に血みどろで息も絶え絶えの暗部の忍が居た。彼の胴体には、2本の手裏剣が刺さっており、僅かに雷遁を纏っていた。それはシャナの投げたものだった。 

 

「にげろ、よんだい、めに、はや、く」

「(ごめんなさい)」

 

 仮面の男から解放されたシャナは、洞窟の奥に逃げていく。それの背中に手を伸ばした仮面の男に、死にかけ暗部の忍がクナイを投げて牽制。男の手はシャナの体をすり抜け逃してしまう。

 

【死に損ないが】

「(実際は死んでたさ。だが、犬死ではない)」 

 

 仮面の男は、自分に突き刺さったクナイを抜いて、暗部の男性の頭部へ投擲。自分の役割は果たしたと消えた少女の後姿を見て暗部の忍は絶命する。しかし、仮面の中の顔に無念の表情はなかった。

 

 実際に暗部の男は死んでいた。仮面の男の不意打ちで死んでいたはずだったが、シャナの投げた雷の性質を纏った手裏剣がAEDと同じ役割を果たし、心臓を電気ショックで動かし一時的に蘇生。仮面の男を追って洞窟に入った所、シャナを見つけて、助けたのだ。

 シャナは、自分だけの力ではどうやっても死ぬ運命に抗おうと膨大なパターンをシミュレーション。結果、暗部の忍を蘇生する案が選ばれた。当然、暗部の忍は再度死ぬことになる。それしかなかった。

 だから実行したのだ。

 

 シャナは、何度もごめんなさいと謝りながら、洞窟の奥に向かって走る。

 しかし、シャナの思惑が成功したのは事実。仮面の男は、何故か生き返った暗部の亡骸を見て、全てを察する。

 そして、畏れにも似た感情をシャナに抱く。

 

(ありえん。未来でも見えているのかあの小娘は。思いついたとしてなぜ試せた。こんな策を)

 

 下忍ですらない幼子の作戦。神業と奇跡の合わせ技。当然理解できるものではない。

 まんまと逃げおおせたシャナの力。それをまざまざと見せ付けられた。

 

(泣き虫だった癖に、強くなったな。シャナ)

 

 仮面の男は、自分が仮面の中で笑っていることに気が付く。だが、すぐに仮面を外し、自分の頬を殴って覚悟を決める。時間を盗られ過ぎたと、仮面を被り目的地へ向かって透過しながら走った。

 

 

 背後から男が追ってこないことを確認したシャナは走り続ける。

 

(もっとはやく、もっとはやく、早く伝えないと。はやく、はやく!)

 なぜ自分はこうも遅いのだろうと、父ミナトの瞬身の術や飛雷神の術を思い浮かべる。

 シャナの焦燥感と共に、洞窟内で青い光がシャナの全身から発せられていた。

 

 

 その夜は、月が良く出ていた。まだまだ夜は長い。 





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