八雲から聞かされた話では、テムジンとトルネは概ねトルネが優勢だったらしい。だが、テムジンは、次第に能力を開花し始め、トルネと激しい体術戦となったらしい。
そんな状況下で、突然敵の要塞から砲撃が始まり、八雲は傍にいた我愛羅の守りによって無事だったがトルネとテムジンの両名が爆撃に巻き込まれ、渓谷を落下。行方不明となった。
その話をしている八雲は終始泣いており、シャナが慰める事となった。
「トルネなら問題ないってばね、砲撃で死ぬような奴じゃないから」
「でも、でも」
「嘆いていても何も始まらないってばね。トルネを探すしかない」
シャナが励ましていると、話を聞いていた我愛羅が話しかけてきた。彼の傍には連絡用の伝書鳩が控えており何かのメッセージを受け取ったのだろうか。
「敵を見失ったことから、砂から一人増援が来る。誰かを探すことに関しては、うってつけの奴だ」
「増援?」
「お前達なら知っている奴だ」
我愛羅にそう言われ、我愛羅の仲間を思い出すが、探索に向いている人間が居たのだろうかと首を傾げる。その後、意外な人物と遭遇したシャナ達は、渓谷で行方不明になったトルネの捜索を始めたのだった。
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一方。渓谷での戦いで爆撃に巻き込まれたトルネは、渓谷の下に流れる川に落下していた。そして、下流まで流された彼は、偶然通りかかった流れのキャラバンの住人に拾われ、命を救われていた。
キャラバンの統率者である老人の指示で治療を施され、全身包帯姿になったトルネ。彼の治療を担当してくれた女性が、トルネの手袋を外そうとしたところで、制止する。
「外さないでほしい。俺の手は毒がある」
「あ、はい」
非常に驚かれたが、自分でも変な体質だと思うのでその反応は、気にしていない。むしろ、見ず知らずの自分を介抱してくれたことに感謝しかない。だが仲間の事が心配で早くこの場から離れなければという考えが頭をよぎる。
そして、何よりも警戒しなければいけないのは、自分の隣で包帯を巻かれて眠っているテムジンと呼ばれた騎士の存在だろう。
どうやら彼もトルネと同じく砲撃に巻き込まれ、川に流されたのだろう。仲間からの容赦のない砲撃に晒されていた。その時の表情は哀れで、酷く同情もしてしまった。
忍たるもの、任務の為なら、仲間を犠牲にしなければいけないこともあると理解はしている。だが、実際に見せられると、辛いものがある。
やがて、夕飯の時間となりトルネは、キャラバンのリーダーらしき老人と食事をすることとなった。
「お前さん、木ノ葉の忍かね」
「はい。そうです」
「木ノ葉の里は少し前に戦争があったと聞いたが、まだ続いているのか?」
移住の民である彼らは、寄る町々で情報を得るため、最新の情報を知らないのだ。トルネはすでに戦争が終わり、別の任務中に戦闘に巻き込まれたと説明。もう一人の少年がその相手だと伝える。だが、中立を宣言した老人は、キャラバンにいる間は、争いごとはなしにしてくれと懇願してきた。そうしてくれれば、二人とも別々の村に連れていくと約束してくれた。
村につけば、木ノ葉との連絡手段もあるだろうと説明された。
「お前さんも、頼むぞ」
「……」
老人は、眠っていたはずの騎士、テムジンに話しかける。彼は目を覚ましており、武器を探していたが、老人の話を聞いていたためかトルネと争うつもりはなくなったらしい。彼も仲間の元に戻らなければいけないのだろう。
だが、仲間達から攻撃されたことはまだ、彼の心にしこりを残しているようだった。
第三者の介入で、停戦せざるをえなかったテムジンとトルネ。仕方なく同じ鍋の料理を食べていると、テムジンはトルネを観察していた。
「なんだ?」
「……お前に聞きたいことがある」
テムジンは、トルネと向き合いながら質問をしてきた。敵であるテムジンの問いに答える義務はないが、このキャラバンに助けてもらった以上、下手に刺激しない方が争いにならないと判断。
「答えてもいい。だが、俺の質問にも答えてもらう」
情報を交換することが条件だというトルネ。少しテムジンの表情が硬くなるが、すぐに頷いた。
「なぜ、俺を庇った?」
いきなり核心をついてくる質問。その答えは、なんといえばいいのかトルネを悩ませた。戦闘中、トルネはテムジンを倒す直前まで追い込んだ。不思議な力を使うが、研鑽度合いで言えばトルネの方が圧倒的に上だった。
しかし、戦闘中、テムジンの乗っていた地上要塞からの砲撃が始まるなり、呆然と立ち尽くしていた彼を見たトルネ。
酷く傷ついたような、信じられないといった表情で戦闘中にもかかわらず立ち止まっていた。そのままではあっという間に砲撃に晒され死んでしまう。放っておけばよかった。そのはずなのに、トルネは、砲撃の雨を搔い潜りながら彼を助けてしまった。
その結果が今の状況なのだが、何故助けたかと聞かれれば、一つしかない。
「お前が哀れだったからだ」
「っ」
自覚があったのだろう。戦闘中にショックで固まってしまった自分に。プライドが高そうだと思ったがそのようで、不機嫌な表情になっていた。
「今度は俺の番だ。お前たちは何ものだ」
「我々は」
そこから、テムジンの語りが始まった。彼は、海を渡ってきた異国の住人だという。彼は、ハイドという名の指導者の下に集まった同志たちの組織であり、戦争のない理想郷を作るために海を渡ってきたという。
(戦争のない理想郷。そんなものが本当に可能だと思っているのだろうか)
「お前達が使っていた力、あれはなんだ?」
テムジンからの質問。チャクラや忍術のない文化圏出身の彼には、忍の存在そのものが珍しく見えるのだろう。チャクラについて説明したのち、彼の持つゲレルという力についても質問した。
ゲレルの石という鉱石の持つ力であり、それを用いる事で強大な力を得られるという。テムジンの肉体にもゲレルの石が移植されており、それにより力を得ているという。
「お前、これからどうするつもりなんだ」
「俺はハイド様の元に戻る」
「殺されるかもしれないぞ。実際お前を切り捨てた奴だ。死んだことにして、新しい人生を歩むのも可能なはずだ」
トルネがそういえば、テムジンは激昂しトルネの胸倉を掴んだ。
「ハイド様は、そんなお方ではない。きっと事情があったんだ。……それに俺は、戻らなければならない。仲間が待っている」
その言葉に嘘はないだろう。トルネは、必死な表情の彼に謝る。
「お前もハイド様に会えばわかるはずだ。あの人は偉大なお方なんだ。お前たちの持つ不思議な力にも興味がある。どうだ、俺と一緒に行かないか?」
「無理だな」
命の恩人であるトルネに提案をしたテムジンだが、すげなく断られる。断られると思っていたようで、それ以上は何も言ってこないテムジン。そんな彼とトルネの話を遠くで聞いていた老人は、飄々としたいつもの表情から一変。
深刻な表情となっていたが、その事実に気が付く者はいなかった。