NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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 おそくなりました。仕事の都合で投稿頻度がしばらく下がると思います。


大激突 8

 

 その後、テムジンとトルネの二人は移動するキャラバンに同行させてもらっていた。驚くことに一晩で傷が治癒してしまったテムジン。

 その治癒の早さに、ゲレルの石というアイテムの存在が本物であると確信したトルネ。

 

 無事に近くの村まであと少しというところまで来た段階で、キャラバンは、野生の狼の群れに狙われてしまった。

 

 大人達が木の棒などの武器を持って追い払おうとするが、当然効果が薄い。

 命を救われた恩があるためトルネは怪我を庇いながらも、狼たちと追い払うと伝えた。

 

「きゃー!!」

 

 しかし、タイミングが悪かったのか、大人達に交ざってダチョウを安全な場所に移動しようとしていた子供が居た。狼に驚いたダチョウが暴走し、子供を背に乗せたまま、キャラバンから離れてしまう。その光景を見ていた狼達が一斉に追いかけ始める。

 

 いくらダチョウが速いとはいえ、子供を乗せたままでは、長くは逃げきれないだろう。

 

「俺が行く!」

 

 トルネが追いかけるというより先に、白銀の鎧に身を包んだテムジンが飛び出した。その後ろをトルネも追いかけるが折れている肋骨が痛むため、いつもの速度が出せない。数分間テムジンの後姿を追いながら、トルネは森の中で横たわるダチョウの死骸を目にする。

 間に合わなかったと思ったが、すぐさまテムジンが動いた。

 

「木の上だ!」

「たすけてーー」

「生きていたか」

 

 子供は、木の上に登ることで如何にか逃げ延びていた。だが狼たちは腹を空かせているのか、木の上にいる少女を囲んでいた。

 剣を抜いたテムジンは、素早く狼たちの懐に入るとその首を次々に切断していく。

 トルネも毒手を解放し、一撃で狼たちを沈めていく。やがて、生き残った狼たちは、トルネとテムジンに恐れをなして逃げ出した。

 

 狼が居なくなったことで子供が木から降りてくると、テムジンが怪我の有無を確認していた。

 

「怪我はないか」

「うん、こわかった。こわかったよー」 

 

 なきじゃくる子供に戸惑っている様子だったテムジンだったが、子供を慰めるように頭を撫でていた。その姿を見ていたトルネは、彼が悪人ではないと感じた。

 

(根はこちらなのだろうか。なら、奴の言うハイドという存在が怪しいと見える)

 

 彼から聞かされたハイドという存在。理想を語る一方で、実力行使を厭わないという。テムジンを含む配下には、ゲレルの石の移植による改造を行い、適合しない者は、別の装置を用いて、遠隔操作式の兵士とするらしい。

 それも子供ばかりを徴用しているらしい。軍の規模にしては大人が圧倒的に少ない。

 

 泣き止んだ子供を連れ、徒歩でキャラバンへ戻ることになった。疲れたのか子供が寝てしまい、テムジンは子供を抱えながら歩いていた。

 

「新たに一つ聞いてもいいか」

「なんだ」

「お前たちの求めているのは、争いのない理想郷だと言っていたな。実際にお前はそう望んでいるんだろう。だが、お前たちのやり方は戦争を助長するだけだ。それがわからないのか?」

「何かを成すためには多少の犠牲はつきものだ。大義を成すための尊い犠牲、ハイド様はそうおっしゃられた」

 

 そう言いきったテムジン。だがその顔には迷いがあった。頭で理解していても、納得できないところがあったのだろう。

 

「お前自身はどう思っているんだ」

「なに?」

「それはお前の主の言葉だろう。納得していない様子だったからな」

 

 テムジンは不機嫌そうな顔になる。トルネ自身も敵である彼と何を話しているのだろうかと感じたが、言葉を止めるつもりはない。

 

「平和のために犠牲を必要とする理想郷、俺は御免だ」

 

 どの世界にも似たような思想はあると感じた。大勢を生かすために、少数を切り捨てる。だがそんなことを続けても平和などこないだろう。忍として生きてきたトルネには、それがわかっていた。

 

――――――

 

 キャラバンに戻る最中に、異変に気が付く。何故か火が上がっており、何者かに襲われた様子だった。動物たちは全て倒れ、キャラバンの住人たちは一か所に集められた状態でテムジンの仲間である騎士たちに囲まれていた。

 キャラバンの長は、髪の長い鎧姿の女に捕らえられており、その横にはシャナを苦戦させたラビリンスという青い写輪眼を持つ女もいた。

 テムジンが仲間の元にかけていく。トルネは咄嗟に身を隠して様子を窺うことにした。

 

「フガイ、ラビリンス、何故ここに」

「テムジン。生きてたのか。しぶとい奴だねぇ」

「テムジン、どれだけ心配したと思っているの。お姉さん、一瞬たりとも安心できなかったんだから」

 

 フガイと呼ばれた長髪の女は、テムジンの姿を見て意外そうな顔をしていたのみだが、ラビリンスは違った。すぐにテムジンに駆け寄ると、彼の無事を確認していた。

 

「俺はなんともない。それよりも、どうやってここがわかったんだ。それに、何をしているんだ」

 

 聞き耳を立てていたトルネは、テムジンたちの会話を聞いてしまう。

 ラビリンスと名乗った女の能力で、ゲレルの鉱脈の位置を記された書物との縁を辿っていった結果、このキャラバンに辿り着いたらしい。テムジンとの再会は全くの偶然だという。

 

 ラビリンスは、同郷であるテムジンの捜索をしたがっていたらしいが、何度も何度も砂の忍との戦闘が勃発。本来の目的であるゲレルの鉱脈を知る一族の探索を最優先にさせられたという。 

 

 そして、偶然にもトルネとテムジンを救った彼らこそが、ゲレルの鉱脈の手がかりを知る一族だという。

 故にキャラバンの長老である老人が、手荒な方法で情報を聞き出されているのだ。

 

(助けに行こうにも、今の状態で、何処までできるか)

 

 恩人である上に、強力な兵器に転用できるゲレルの石の鉱脈をテムジンたちに回収されることは、木ノ葉の忍として、その大陸に住むものとして見逃せない。

 だが、怪我は治っておらず、敵にラビリンスが居る段階で、勝機は薄い。どうするべきかと悩んでいると、フガイと呼ばれた女が鼻を動かしながら、隠れ潜むトルネの方向を見た。

 

「おや、ネズミが居たようだね」

 

 匂いで場所を探知されたことで、トルネは戦闘態勢に入った奴らに完全に狙われることになった。僅かな迷いで、奇襲の機会すら失ってしまった。

 

 心臓の音が、いつも以上に高鳴り、冷や汗を流しているのを感じた。

 

 


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