NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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里抜け

 

 シャナ達が長い時間をかけて木ノ葉の里に戻った時、里は大きく変わっていた。

 新しい火影が就任しており。その五代目火影は、千手綱手、伝説の三忍の一人である医療忍者だった。

 

 里に帰るなり彼女へと顔出しを強いられたシャナ達。シャナは新しい火影という彼女が気に入らず、機嫌が悪かった。だがそんな感情など、関係ないとばかりに、ある事実が火影によって知らされた。

 

「なんて言ったってばね?」

「先日、うちはサスケが里を抜けた。それにより下忍による追跡班がサスケを連れ戻しに向かった。だが思ったよりも敵の戦力が強く困難を極める。すぐさま、応援に向かってくれ」

 

 綱手の命令を聞くより先に、シャナは火影室を飛び出した。下忍の追跡班にナルトの名前があったからだ。そして相手は、大蛇丸の部下であるという。シャナは大蛇丸を知っており、部下の技量もある程度把握している。下忍だけでは、とても相手にならない。早く助けに行かなければ、そしてサスケを連れ戻さねばとシャナの足が動く。

 シャナの後を追うように、八雲をおんぶしたトルネが追従する。

 

「シャナ、やみくもに探しても見つからないよ!!」

「ナルトとサスケの位置ならわかるってばね!! 早くいかないと取り返しがつかないことになるってばね!!!」   

 

 酷く興奮したシャナは、八雲とトルネに先に行くと伝え、粒遁を発動。空を亜音速で飛びながら、未来視で見た終末の谷へと向かう。シャナの未来視では、ナルトとサスケが殺し合う未来が映っていたのだ。

 

なぜ殺し合うことになったのか。それは、サスケの中にある闇が原因だろうか。うちはイタチとの再会は、サスケの中に眠っていた闇を呼び起こさせた。

 

 イタチはサスケに殺されるために、弟を追い込むようなことをしている。そんな馬鹿なことは止めさせるはずだった。サスケには、兄殺しなんて言う悲しい道を歩ませたくなかった。

 だからこそ、鍛え上げた。うちはの闇なんて求めなくても良いように。

 けれど、サスケは大蛇丸の所に行くことを選んだ。それは、彼が力を求めたが故に。

 

 ナルトは、サスケを心の底から止めたかったのだろう。友達でありライバルであり、兄弟であるサスケを助けたかったのだろう。

 

 未来視の中で、ナルトとサスケの闘いの風景が映り込む。互いに忍として。繋がりを絶たせないため、繋がりを断ち切るために、死力を尽くして戦っている。 

 

「こんなことの為に、お前たちを鍛えた訳じゃないってばね!」

 

 ナルトとサスケ、二人の弟子のあまりに悲しい忍組手。

 空模様が変わり、雨が降り始める。粒遁での長距離移動によって、チャクラが少なくなったシャナは、地面に降りて終末の谷を目指す。

 

――――――――

 

 九尾のチャクラによる衣をまとったナルトと、呪印状態2になったサスケの螺旋丸と千鳥のぶつかり合いは、僅差にてサスケが勝利。額当てに一筋の傷をつけられるも、ナルトの意識を刈り取ることで、サスケが勝利した。

 

 互いに谷を流れる滝に落ちるが、意識のあったサスケが岸にナルトを引き上げる。 

 本当にナルトとは奇妙な縁だった。いつも突っかかってきて、好き勝手するこいつの事が鬱陶しかった。けれど、何時からか、俺の黒く染まった世界に、こいつが居るようになった。

 気が付けば、常に隣にいた。それが何時しか悪くなくなって、いつも見下していた此奴の事を、頼もしいと思えた。

 

 俺たちは知らずのうちに、友だったのだろうか。お前は俺を友だと言った。里を捨て、全てを断ち切ろうとした俺に、お前は友だと言った。そして兄弟だと。

 

 その言葉を笑うことは、出来なかった。

 

「だが、俺は、お前との繋がりも、捨てる。あの男を殺すために」

 

 何気ない日々を幸せだと感じていたサスケ。復讐者として生きてきた筈なのに、その復讐心が薄れていた。このまま風化してしまうのではないかという程に。

 

 だがそんな甘い夢はすぐに冷める。ナルトを迎えに来たという、イタチの登場。消えかけた復讐心に火が付き、全力でもって挑んだが、俺の積み重ねてきた時間など、アイツの前では塵に等しかった。そして、奴は俺に、俺という存在の意味を、再認識させてきた。

 悔しいが俺は、イタチの言う通りに、復讐にしか生きられない。ナルト達と木ノ葉で修行して、イタチを超えられる未来など来ない。

 

 何故なら、うちはの最強の瞳術、万華鏡写輪眼を持つイタチ相手には、同じ目を持つしかない。だが、その為には、最も親しい友を殺す必要があった。

 

 俺にとって、それはナルトでしかない。

 

「ナルト」

 

 力尽き、動かないこいつの首を少し絞めれば、その息の根を絶てる。そうすれば、俺はイタチと初めて同じ世界を目にする事が出来る。腕が少しづつナルトの首に伸びそうになるが、すぐに止めた。

 頭に浮かぶのは、父さん母さんの記憶、そして、うちはイタチへの復讐心。だが、アイツの思い通りには、ならない。

 

(俺は、俺の方法でアンタを超える)

 

 どんな手を使っても必ず。そう決め、国境を越えようとした時、背後に気配を感じる。大雨で、正確な正体はわからない。だが何故だろう。俺にはお前だと、確信があった。 

 

「早かったな、シャナ」

 

 俺にはもう一つ断たなければいけない繋がりがあった。ナルトに駆け寄り、その姿を見たシャナからの殺気で、身動きが取れなくなる。ナルトの事を、何より大切にしているこいつだからこそ、俺を許せないんだろう。

 だから、こいつの留守を狙った里抜けだったんだが。

 

「そこから一歩でも先に進めば、殺す」

「お生憎様、俺はもう後戻りできない」

 

 一歩進む。すると、何かが俺の頬をかすめた。僅かな痛みと血の流れる感触が頬を占める。こいつが帰ってきたのは想定外だ。今の俺にシャナに抗う術はない。

 

「里に戻れ。拒むなら、お前の全身の骨を砕いてでも、連れ帰るってばね」

 

 こいつら姉弟は、同じようなことを言いやがる。特にシャナは本気で言っているんだろう。今にも巨大な何かに握り潰されそうだ。振り返ることはできない。今後ろにいるシャナの顔を見る勇気はない。

 

「サスケ。なんでナルトをここまで」

「俺は復讐者だ。家族だの、仲間だの、友達だの、俺には必要がないものだった。全部、全部、全部!」

 

 だからやった。俺の中の迷いを消し去るために。

 

「俺は大蛇丸の所に行く。そして、うちはの仇である、イタチを殺す! その邪魔は、お前にだってさせない」

 

 もう止まらない。決して止まる事などあってはならない。たとえお前に今殺されようとも、俺の意思は変わらない。俺が俺として生きるためにも、うちはイタチを殺す。それが全てだ。

 

 シャナの警告を無視し、前に一歩踏み出し振り返った。さぁどんな顔をしている。怒りに満ち、俺を殺そうとしているのか。だが俺を鍛え上げたお前には、俺が力の使い方を間違えたとして裁く権利がある。

 

 俺の後ろにいたシャナは、泣いていた。青い写輪眼で俺を見ながらも、涙を流していた。その表情は、耐えきれないと言ったようで、酷く、痛ましいものだった。

 

 なんでお前が、そんな顔をするんだよ。なんで、俺みたいなやつの為に、泣いているんだ。

 今まで見たことのないシャナの顔。その哀れみにも似た感情は、俺に対して向けられている。

 

「もう、何を言ってもダメなのかってばね」 

「……あぁ」

「大蛇丸の所に行けば、お前は私の敵だってばね。それが何を意味するか、本当に分かってるのかってばね!」

 

 わかっている。

 シャナは、右手に螺旋輪虞を発動する。この場で俺を殺して始末をつけるつもりだろうな。だがここで引き下がったら、俺は二度と前に進めない。

 

「この、この、この」 怒りに任せて、俺に術を振るおうとしているシャナ。だが、その目と向き合って分かった。やっぱり、この人は、小さかった頃から、俺の事を見守ってくれていたシャナ姉だった。

 

 冷たく、いつも俺の事を避けていたのに、見守ってくれていた。俺が変わり、あんたも変わったと思っていたのに。あんたは変わってなかったんだな。

 

「行かせてくれ、姉さん」

「っ」

 

 俺の言葉で、シャナの動きが止まり、術も霧散する。卑怯だとは思う。だが利用するしかない。シャナは、昔に俺の事を実の弟だと勘違いしていた。正しくは、ナルトに会えない寂しさを、俺の傍にいる事で誤魔化していた。

 だからだろうか、シャナは俺を見捨てたことはなかった。ナルトと暮らす事になった後も、こいつは俺を弟として見ていた。本人は無意識だったのかもしれないが。だから何時も助けてくれたのだろう。アカデミーに入るよりも前、イタチの居ない日、寂しさで泣いていた俺の傍には、シャナが居た。

 

 そして今も。

 

「この、ばか」

 

 シャナは俺への攻撃を止めた。そして、別れを惜しむように抱擁した。再び涙を流しながら、俺の額に触れるシャナ。僅かにシャナのチャクラを感じた。何かしらの術を仕込んだのだろうか。

 

「好きにするってばね。お前を止める気にはなれない。私はナルトを連れて、里に帰る」

 

 シャナは、俺から目線を外し、倒れているナルトの頭を自分の膝に乗せ、静かに撫でていた。見逃されたことに困惑しながらも、俺は音隠れの里に向かう。

 

 背後からすすり泣くような声が聞こえ、静かに「ありがとう」と告げる。俺にはそれしかできなかった。

 

 

ーーーーーーーーー

 

 サスケを追っていたカカシは、終末の谷で弟を抱きしめながら泣いているシャナの姿を発見した。シャナに事情聴取すれば、駆け付けた時、サスケは既におらず、ズタボロのナルトを見つけたという。その様子に気が動転してしまい、サスケの追跡は困難だったと説明した。

 正式な任務ではないが、シャナが任務に失敗した初めてのケースだった。

 

 サスケ奪還のメンバーは、それぞれが生存しつつも痛手を負い、失敗に終わった。皆が自分の力不足を実感し、新たに修行に取り組むこととなる。

 

 大切な存在を救えず、サクラとの約束を守れなかったナルト。止める選択が出来ず、茨の道に進むことを許してしまったシャナ。サスケを大切に思いながらも、その方向性が真逆だった二人。

 

 ナルトは比較的早く復帰。サクラとの約束、サスケを連れ戻す事は絶対に諦めない。そう宣言し、ナルトを鍛え上げる約束をした自来也が「サスケを忘れろと、賢い選択をしろと」告げるもそれを拒否、「サスケを諦めるのが賢いってことなら、一生バカでいい」と宣言。

 

 そのひたむきに諦めない姿に感化された自来也。

 

「バカには不可能でも、大バカになら可能かもしれんな」

 

 ナルトは、自来也の下で3年修行することが決まり、修行の準備が整うまでの間、木ノ葉で幾つも任務を請け負うこととなった。

 

 一方でシャナは、里の戦力低下が深刻な事から、里の警備へと回されていた。下忍が里抜けしたことで、里の警備力不足を知った周辺国からスパイや忍の侵入が懸念される。故に割り振られた仕事だった。

 

 





 サスケ奪還編は、ありません。
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