うずまきシャナは、得体のしれない相手と戦闘に突入していた。
白い肌に、独特の衣服。そして白眼のような目をしている男。何処かトネリと似た格好で、空に浮かびながら、魚籠から色んな属性の術を放ってくる。そして執拗に手に持ったチャクラで作ったであろう釣竿で背中を狙ってくる。
そのチャクラと存在感故に、先見の写輪眼での未来視を用いて戦闘を行う。こいつは許せないし、背後には、倒れているナルト。何故ナルトが森にいるのかはわからないが、こいつに襲われた事は間違いない。
背後から釣り針に刺される未来を察知。すぐに粒遁の刃で払いのけると、男は訝しげな顔になっていた。
「このオレの技を初見で見抜くなんて、あなた何者です?」
「答える義理はない」
無数の手裏剣を投擲。先見の写輪眼で相手の動きを観察するシャナ。チャクラで作られた釣り竿で、シャナの投げた360度から迫る手裏剣の穴に針を通し、全て空中に固定する。チャクラ糸で固定された手裏剣を竿捌きでシャナに返す男。
「銅輪転生爆」
「おや、それはあの人の」
手裏剣を迎撃するために、泡遁の弾幕を張るシャナ。全ての手裏剣を撃ち落とした時、手裏剣の隙間を縫って赤い釣り針がレーザーのように迫る。
(これに捕まるとチャクラを抜かれるってばね)
先見の写輪眼はあえて攻撃をくらった未来を映し出し、その攻撃の危険性を知らせる。僅かに胸を反らすことで釣り針と糸を回避。お返しにと両手を合わせ、粒遁・天輪を発射。
「おっと」
男は、ギリギリで攻撃を回避したが、頬から血が流れている。その事実に驚きながら、挑発的な笑みを浮かべる。
「流石ですね。麗しいお嬢さん、あなたに興味が湧きましたよ」
「黙れ」
「少し本気で遊んであげましょう」
男はそういうと、目をかっぴらいた。そして、男の白眼のような目が変化。赤い眼球全体に波紋のような文様と写輪眼のような勾玉が浮かんでいた。今まで見たことのない瞳術にシャナも最大限の警戒を現し、ゴーグルの中で写輪眼を万華鏡写輪眼に変化。
得体も知れず、内包するチャクラも異質で膨大。そんな相手に油断をするシャナではない。
男の背後に突如空間の裂け目のようなものが発生。それに男が飛び込むと、周囲から男の気配が消える。万華鏡写輪眼で注意深く観察するが、男がどこに行ったのかわからない。警戒しながら周囲に粒遁の粒子を散布する。
(時空間忍術。仮面の男と少し違うが、似たような術だってばね)
シャナは、九尾事件の時の仮面の男を思い出し、脳が一切の感情を排除。チャクラ刀を右手に構え、相手を殺すことに全意識が集中する。あの時の男とはチャクラが違う。だが、似通った術を使い、写輪眼のような目を持っているコイツを無関係だとは言い切れない。
シャナが全意識を集中していると、シャナの背後に音もなく空間の裂け目が出来、男が今までで一番早い速度で竿を振るう。
シャナの顔面に背後からの奇襲攻撃が迫るが、シャナは振り返ることで紙一重で回避。お気に入りのゴーグルに男の攻撃で罅が入るが、シャナの両目の万華鏡写輪眼は、不意打ちを回避されたことで表情の固まる男を捉えている。隙を逃さないと、男の展開した空間の裂け目にチャクラ刀を差し込んだ。
男は、目を狙ってきた一撃を後ろに回避し、異空間の入り口を閉じようとした時、シャナが火遁を異空間に放つ。入り口を閉じたものの、自分の空間が炎に覆われ、たまらなく飛び出した男。
シャナから距離を取った場所に開いた異空間の裂け目だったが、男の想定とは裏腹に、シャナの先見の写輪眼の前では、時空間忍術の効果が薄い。
不意打ちは食らってから躱し、当たる攻撃だけを行う。それが許された彼女は、男にとって天敵だった。異空間から顔を出した男。シャナが居ないことに気が付き、周囲を探ろうとしたが遅い。
「粒遁・螺旋輪虞!」
「うえ!」
男の出現場所を未来視で割り当てたシャナは、粒遁版、飛雷神の術である天門で空間移動。男の出現地点の真上の粒子と入れ替わり移動。真下に現れた男に螺旋輪虞をクリティカルヒットさせた。
はずだったのだが。シャナが仕留めたはずの男は、螺旋輪虞が抉った地面の何処にもいない。僅かに頭痛がし、それに意識を取られたタイミングでシャナの胸を赤い針と糸が貫通する。身動きが取れなくなったシャナは、僅かに動く首を動かし、自分の真横で竿を振り下ろした男を睨む。
男は、拍手しながらシャナの健闘を褒めたたえる。
「素晴らしい。実に見事なものでしたよ」
確かに当てたはずなのに。分身でもなく本体に当てたのだ。だが、男は気が付けば別の場所にいた。まるで何事もなかったかのように。シャナを見下ろす男の目は、先程までの赤ではなく青くなり、勾玉も消失していた。
目を切り替えているように見えたシャナ。相手の能力をなんとなくだが、理解し、ほくそ笑むシャナの姿に男が訝しげな眼を向ける。
「何がおかしいんです?」
「おかしいってばね。だって、こんな偶然早々ないってばね」
釣り針で男がシャナのチャクラを抜き取る寸前。シャナのゴーグルが砕け散り、青い万華鏡写輪眼が姿を現す。そして右目の瞳術である御年神《みとしのかみ》を発動。右目の万華鏡写輪眼の文様が回転し、シャナの姿が霞のように消える。
僅かに時を巻き戻す能力により、男の攻撃をなかったことにしたシャナ。攻撃をなかったことにされ隙の出来た男に、右腕だけ展開された須佐能乎の右ストレートを叩き込んだ。
しかし、男も手練れ中の手練れ。竿で須佐能乎の攻撃をガードすると、空中へ飛びあがって距離を取った。男はシャナの青い写輪眼を見て、とんでもないものを見たという表情になっている。
「これは、何という事でしょう。青い写輪眼ですか。一族でも、ほとんどいない突然変異のはずですが……それにオレと同じ系統。モモちゃんなんかよりも、はるかに有望ですねぇ。一族にあなたがいてくれたら、親役になりたいくらいですよ」
「は?」
「いえ、こっちの話です」
シャナは男の表情を見て、男が自分の能力に気が付いていると悟る。シャナも男も、同じ『時』を操る瞳術使いなのだ。系統は違うようだが、互いに似たようなことが出来る。だからこそ両者揃って、相手の攻撃を無効化して見せたのだ。そして、自分の能力があるからこそ、時間の巻き戻しなんて発想に最初に行きついている。
何かを考えている男。シャナも次の手を考えている。先見の万華鏡写輪眼のおかげで戦えているが、タイムリミットは30秒もない。チャクラ消費よりも情報量で脳が沸騰寸前になっている。はやく決着をつける必要があるのだ。
「貴方を攻略するのは骨が折れそうです。能力の相性的にも最悪でしょうしね。一先ず引いて差し上げます。私の目的は、あくまで狐ですからね」
「逃がすと思うってばね?」
「えぇ。本気になれば、オレが勝つに決まってますからね。でも、本当に貴方には興味が湧きました。またお会いしましょう」
男はそう言い残すとその場から消える。後を追う気力はシャナに無く、万華鏡写輪眼を解除。元の瞳に戻しチャクラの回復を急ぐ。少なくともナルトをあの男から守れたのだから。
そう思い、気絶して横たわっているナルトの様子を見ようとしたシャナ。
「え、えぇ、ええぇ!!」
自分が命懸けで助けた人物は、黄色い髪に頬に髭のような跡などナルトの特徴を残しながらも、ナルトとは違う子供だった。弟を愛してやまないシャナが、初めてナルトを間違えた瞬間だった。
まさかの人違いに、困惑するシャナだが、倒れている子供を見捨てる事も出来ない。
「とりあえず、家に飛ぶってばね」
少年を背負い、シャナは自分の部屋に試験的にストックしているチャクラ粒子へ、天門の術を発動した。その瞬間、少年ごとシャナの姿は、木ノ葉の森から消えた。