NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

9 / 152
九尾

 シャナのチャクラに異常が起き始めていた。チャクラが光を放ち、洞窟内で輝き始める。その異変にシャナは気が付いていなかった。

 ようやく父と母の居る部屋の光が見え、赤ん坊の大きな泣き声が聞こえた。

 

「……、……!」  

 

 その声が、生まれたばかりの赤ちゃんだとわかった。会いたかった弟のナルトの声だとわかった。けれど襲撃者がいる以上、逃げてと叫ぼうとしたシャナ。だけれど、声が出ない。仮面の男によって喉が潰されていたからだ。

 

 そして、中から悲鳴と共にミナトの声が聞こえる。

 

(あのひとが、中にいる。お父さんに伝えないと)

 

 慌てて駆け込んだシャナが目にしたのは、赤ちゃんを抱えた仮面の男。その魔の手を金髪で顔に髭のような文様のある赤ちゃん。シャナの弟であるナルトに向けられていた。

 

【さぁ人柱力から離れろミナト。さもなければ、この子の寿命は数分で終わる】 

「なる、と、ああああ」

(まずい、九尾が)  

 

 子供を産んだばかりでクシナの封印が弱まり、中の九尾が出てこようとする。さらに人質に取られた息子という状況に、ミナトは身動きが取れなくなる。

 

「落ち着け」

【俺は落ち着いているさ。誰よりも】

 

 仮面の男は、ナルトを放り投げて懐から出したクナイを以て切り掛かる。シャナは、もう未来予知できる状態でなかった。写輪眼も通常の状態に戻り、先を読むことができない。

 だけれど、優れた動体視力を以てして、ナルトの未来がどうなるかわかってしまった。

 

(っざけんなってばね!)

 

 ナルトが奪われると分かったシャナ。既にミナトが動こうとしていたが、シャナの火事場のくそ力がシャナの先見の写輪眼とは違う力を発現させる。

 瞬身の術を使い高速で移動したミナトの隣を、青い光となったシャナが飛び出し、ナルトを突き刺そうとした仮面の男の体を蹴って、空中にいるナルトをキャッチ。 

 

「……(ナルト。無事だってばね)」

「シャナ! まだだ!」

 

 想定外の速度で迎撃と人質奪取を行ったシャナだったが、すぐさま飛んできたミナトに抱えられ、ミナトはナルトに巻かれた布をはぎ取る。

 

【その通り】

 

 仮面の男は、10回も攻撃を食らったことでシャナが自分の術を克服していることはわかっていた。だからこそ、閃光となって訪れたシャナの攻撃を片手でガードし、すぐにナルトに巻かれた布に仕込んだ起爆札を爆発させた。 

 

【飛んだか。やはりミナトは、一筋縄ではいかない】

 

 爆発する直前、ミナトが抱いたシャナとナルトと一緒に消える。さすがというか、動けないクシナの居る此処ではなく、起爆札ごと飛んだことは称賛に値する。

 だが仮面の男の狙いは、ナルトでもミナトでもなく、ましてやシャナでもない。

 封印の弱まった人柱力であるクシナただ一人だった。

 

「あなた、なに、もの」

【俺は誰でもない】

 

 仮面の男は、クシナを右目の穴から吸い込み、自身もすぐに渦のような次元の歪みに吸い込ませた。

 

――――――――

 

 起爆札を回避するために、飛雷神の術で二度飛んだミナト。一度目は、家に設置した特製クナイのマーキングに飛び、その後は緊急用の里の外れにあるシェルターに飾ってあるマーキングへ飛んだ。

 

「…、…っ! げほげほ」 

「シャナ。喉が、あの男にか?」

 

 喉が痛くて話せないシャナを労わり、赤ん坊のナルトをベッドに寝かせる。

「戦ったのかい?」

 

 シャナは頷く。幼い娘が、謎の男と戦って生き残ったことを喜ぶべきか、怒るべきか。それとも娘の危機に気が付かなかった自分の不甲斐なさを責めるべきか悩む。だが今は悩んでいる時間はなかった。敵の狙いは、クシナであった以上、すぐに戻らなければいけなかった。

 狙いが九尾である可能性が高い。

 

「シャナ、俺は母さんを助けに行かなきゃいけない。ここは安全だ。この薬を飲んで、待っていてくれ」

「……、!」

 

 必死に何かを伝える娘だったが、声が出ていない。ミナトは、シャナの喉を薬を浸み込ませた包帯で巻いてあげると、シャナの頭を撫でる。

 

「ここなら安全だ。シャナ、ナルトを頼むよ。強いお姉さんのシャナにはできるよね」

「(うん)」

 

 自分に出来ることはない。赤ちゃんのナルトを守ることが、ミナトが全力で戦うために必要な事だと悟る。だが伝えなければいけないと、ミナトの手のひらにひらがなで指文字を書く。

 

「? す、け、る、あたら、ない、さわる、あたる」

「(お母さんを助けてお父さん)」

 

 仮面の男の情報を伝えたシャナは、安心してしまう。すると、どっと疲労感がシャナを襲い、倒れそうになる。だけど、必死に足に力を入れて弟の眠るベッドに座り、ミナトを見て頷く。

 

「行ってくる!」

 

 ミナトがシャナの前から消える。時空間忍術である飛雷神の術でクシナに付けておいたマーキングへ飛んだのだった。残されたシャナは、ベッドで眠る弟の姿を見た。

 

(初めましてだってばねナルト。やっと会えた)

 

 ナルトが寒くないように、布団を掛けなおしてあげるシャナ。そしてナルトの頭を優しくなでていると、ナルトが指を小さな手で掴んできた。そして怯えて泣き始めた弟のお腹を優しく撫でてあげる。

 

(ナルト。大丈夫だってばね、お父さんがお母さんを連れ帰ってくれる)

 

 言ってあげたいことがいっぱいあるのに、仮面の男のせいで喋れない。けれど、無事に生まれてくれた弟の事をシャナはとても愛おしいと思った。

 少し疲れたと、シャナも横になってナルトの顔を眺めていた。小さくあくびをしている弟の頬を突いてしまう。

 

 するとミナトがクシナを抱えて現れた。一瞬敵かと思い体を起こしたシャナだった。今度はミナトの置いていったクナイを両手で構える。

 

「オレだよシャナ。少し手伝ってくれるかい?」

 

 クシナをベッドに寝かせるため、シャナもミナトの手伝いをする。ベッドに寝かせられた。クシナの様子は正直言って最悪と言える。シャナの写輪眼は、クシナのチャクラが激減している事を見抜いていた。

 明らかに弱り切った様子であり、いつもの活力は皆無だった。

 

「ナルト。……シャナ、おいで」

  

 震える手でナルトを抱き、涙を流した母。そしてシャナにも手を伸ばす。シャナも母に近寄ると、二人して抱き締められた。

 

「ミナト、ありがとう、ふたりにあわせてくれて」

 

 クシナがミナトにそういうと、ミナトは拳を強く握りしめ、「すぐ戻る」と伝えた。

 そして、クローゼットから四代目火影と書かれた装束を纏い、その場から消えた。

 

「シャナ。……あなたに説明しておかなきゃね」

(うん)

 

 母がシャナに今起きていることを伝える。自分が九尾の人柱力であったことも、そしてこれからシャナとミナト、ナルトが送る人生について。母の想いが籠った言葉を聞いてるうちに、シャナは嫌な予感がした。

 

『けがなおってから、でいい』

 

 指文字で書くも、クシナは力なく首を横に振る。そして、シャナの頬に手を添える。

 

「お母さんは、もう長く生きられない」

(いやだ。いや、いや)

「だからもしもの時は、ナルトの事お願いねシャナ」

 

 まるでお別れのような言葉にシャナは、首を横に振り続ける。未来視を使いそうになるも、もしそれで死が確定していたら、そう考えると母の死など見たくない。

 感情が乱れ、写輪眼が涙で潤っていく。

 その瞬間、とてつもない振動と莫大なチャクラ、獣の遠吠えが聞こえる。

 

「クシナ、シャナ、掴まれ!」 

 

 突如、シェルターが崩れ始めるが現れたミナトがシャナ達を抱えたまま、時空間忍術で飛ぶ。シェルターから少し離れた位置に飛んだシャナ達。

 彼らの元居た場所には、怪獣とも言えるほど巨大な九尾の狐が現れていた。

 

「(あのチャクラって)」

 

 あまりに馬鹿でかいチャクラと体にシャナは目を見開く。だが、ナルトを抱えた両親は、どちらも息が絶え絶えだった。ミナトは背中に大きな傷を負っており、さらにチャクラ不足に陥り、クシナは生命の限界が近づいている。

 

「早く、九尾を封印しないと(結界を張らなければ、だがチャクラが)」

「ミナト。ナルトとシャナをお願い。私が九尾を連れていく!」

 

 クシナが抱いていたナルトを彼に手渡し、死力を尽くして全身から光の鎖を発生させる。

 クシナの旧姓、うずまき一族に伝わる封印術である金剛封鎖の術だった。鎖はすぐに九尾の狐の体中に巻き付き、周囲一帯を鎖の結界で覆う。

 

(すごい)

 

 九尾は、金剛封鎖を破ろうと暴れるも、クシナの文字通り命を懸けた鎖を引きちぎれない。

 

「クシナ」

「このまま、九尾を引きずりこんで死ぬわ……そうすれば、九尾の復活時期を延ばす事が出来る。残り少ない私のチャクラであなた達を助けるにはそれしかない。今まで、色々ありがとうミナト」

 

 母に手を伸ばしたシャナ。シャナの手を握り、自分の頬との間に挟むクシナ。

 ミナトは、唇をかみしめながらクシナに伝える。

 

「クシナ、君がオレを……四代目火影にしてくれた。君の男にしてくれた。

 

そして、この子達の父親にしてくれた……」

「…泣かないでミナト。私は嬉しいの」

 

 涙をこらえるミナトにクシナは精一杯笑いかけながら言う。

 

「私は、あなたやシャナに愛されている。

 

 それに、今日はこの子の……、誕生日なんだから……。

 何より、もし私が生きてたら家族4人で暮らしてる未来を想像したら、幸せだって事以外、想像できないんだもん。

 ただ……心残りがあるとすれば、大きくなったシャナやナルトを見てみたかったぁ」

 

 死が迫る中、大人になったシャナやナルトの姿を想像する。もう叶わないけれど、大きくなったシャナに恋愛相談されている自分、悪戯ばかりのナルトを叱っている自分、その光景を笑ってみているミナト。色んな想像が頭を巡る。

 そんな彼女を見てミナトも一つの決心をする。

 

「君が九尾と心中する必要はない。オレの残りのチャクラで、君の残りのチャクラを分けてナルトとシャナに封印する。そして、屍鬼封尽で九尾をオレに封印する。人柱力でない俺が尾獣を封印するにはそれしかない」

「でも、あの術はリスクが」

「そして、封印するのは九尾の半分だけだ。物理的にすべて封印は出来ない上に、九尾が消えたとなれば、他国との均衡が崩れ、また戦乱が始まってしまう。

 だから屍鬼封尽で九尾を半分だけ永遠に封印し、残りの半分をナルトに封印する。八卦封印でね」

 

 ミナトの言葉を聞いてクシナが驚く。ミナトのやろうとしていることは、自分の命を懸けた封印術であり、使えば彼が死ぬことが確定するからだ。 

 ミナトは今回の黒幕を倒しきれなかった。だからこそ、自来也から聞いていた予言の子であるナルトに全てを懸けることにした。九尾の人柱力となり、世界の破壊と変革の運命を担う存在、それが自分の息子であると確信していた。

 力をつけたナルトなら、あの男の野望を止めてくれる救世主になると。

 

「ミナト、でも」

 

 クシナの制止を聞かず、ミナトは屍鬼封尽の印を結び、術の発動態勢をとる。屍鬼封尽は、うずまき一族秘伝の忍術であり、死神を召喚し、その死神の腕で対象と術者の魂を永遠に死神の腹の中に封印するという術だ。

 代償はもちろん術者の命。

 

「貴方が死ぬことなんてないじゃない!! シャナとナルトの成長を見守っていてほしかったのに、私なんかの為に、ナルトが犠牲になる必要なんてないじゃない!! あなたが犠牲になる必要なんて」

「国を捨てる事、里を捨てる事、それは子供を捨てるのと同じだよ。国が崩壊した君なら良く分かるだろ?

 国を持たない人達がどれほど過酷な人生を強いられるか。

 それに俺達家族は、忍だ」

 

 四代目火影として、里も家族も守るための方法がそれしかなったのだ。父の言葉を聞いたシャナは、父にも手を伸ばす。それを受けたミナトは、シャナを抱きしめる。

 

「ごめんよシャナ。オレは、皆を救わなくちゃいけないんだ。それにナルトの中に封じ込める九尾をコントロールできるのは、写輪眼を持つものだけ。だから、シャナにナルトを託したいんだ」

(なんで、なんで、みんな、いなくなっちゃうの)

 

 声が出ない。けれど涙だけは止まらない。別れが迫っている。ミナトを抱きしめる力が強くなる。ミナトも涙を流し、シャナを抱きしめる。これが父親として娘にしてあげられる最後の抱擁。

 本当にシャナと出会ってから楽しい日々だった。新米パパと新米ママとして、十分とは言えなくても全力で取り組み、色んな思い出が出来た。この子との出会いは運命だったのだと感じる。

 

「何よりも守りたいのは、お前たちの未来。里の未来なんだ」

「どうして、そこまで」

「短い時間であっても、母親として子供たちに伝えられることがあるはずだ。それは俺にはできない。だけどね、子供達の為に死ぬことは、父親でも出来ることだ。むしろ、命を懸けて子供たちを守る。それがオレの役目だ」

 

 ミナトは、シャナを下ろし、印を結ぶ。すると儀式用の台座を口寄せし、封印術の準備に取り掛かる。そして、シャナにナルトを預ける。

 

「四代目火影から、幼いくノ一に対する指令だよ。弟を守ってくれ」

(……)

 

 そう告げると屍鬼封尽を開始。シャナが台座にナルトを寝かせるのを見る。

 死神の腕がミナトの腹を通して九尾に伸びる。死神の腕は、九尾のチャクラをつかみ取ると、それを引きずり出し、ミナトの腹部に封印の刻印を刻む。

 

(全身が岩のように、なんて重いチャクラなんだ)

 

 チャクラの半分を封印された九尾は、大幅にサイズダウンを起こす。すぐに封印に取り掛かろうとしたが、体が思うように動かない。九尾との戦闘で負った傷も此処にきて重荷になり始める。

 

 そして、最悪のタイミングでクシナの体調が悪化。金剛封鎖の鎖が次々と砕けてしまう。

 そのタイミングを見ていた九尾の狐。己を赤ん坊に封印しようとした波風夫婦に怒り狂い、解放された腕を振るってナルトを殺しにかかった。

 

 その鋭い爪がナルトに触れるより先に、クシナとミナトが彼を守るように立ち塞がる。その鋭い爪は、二人の胴体を貫通、二人が踏ん張るも爪は止まらない。

 

 咄嗟にシャナは、ナルトを抱き上げて、庇おうとした。そして、目の前に迫る鋭い爪は……ザクっという音を立てて止まった。

 

 

 




 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。