NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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うちは

時空間忍術によって移動した男とシャナ。男は瞬時にシャナを払いのけ距離を取りながら、移動した場所を確認している。

 

 シャナは、木ノ葉の忍が救援に来ることで足手纏いが増えるのを防ぐ。シャナの粒遁・天門は、シャナのチャクラ粒子と自分を入れ替える事で瞬間移動する忍術。

 

 父である四代目火影や開発者の二代目火影と違い、マーキングの必要がなく。戦闘で粒遁を使用すれば、その段階で移動先を精製できる。ただ弱点としてマーキングの必要がないという事は、マーキングそのものが出来ないという事。

 

 直接教えられた術ではなく、自己研鑽の結果編み出した術故の問題点。父のようにあらかじめマーキングした箇所に飛ぶという事が出来ない。シャナの粒遁は、空気中では時間がたてば消えてしまう消耗品。

 

 なので、マーキングへ移動をすることで退避や誘導が出来た飛雷神とは、違う。だが、シャナの粒遁を残しておく方法を開発した。

 

 ランプのような器具に粒遁の粒子を集め、外気に触れさせなければ保存できる。それをシャナは、自室とこの場所にだけ、配置していた。どちらも一回きりの移動となってしまうが、それで十分だった。

 

「なんだこの場所は」

 

「安心しろってばね。ここは木ノ葉の増援なんて来ない。今は閉鎖された、うちはの修練場だってばね」

 

 かつて、ここで修行していたシャナ。共に修行した仲間との思い出がある場所。シスイは死に、イタチは一族を亡ぼし里抜け、サスケも里を抜けた事で、この場所を管理するのはシャナだけ。故に里からの応援はこない。

 

 つまりは好きなだけ暴れられるという事。そして、ボルトから引き離す目的も成功している。 

 

「うちはの修練場だと?」 

 

 

 

 男は今自分が居る場所を聞き驚きながら、周囲の様子を眺め、手裏剣の跡が残る木を見て、何か物思いにふけっている。しかし、戦闘態勢に入ろうとしているシャナを警戒し、刀を構えざるを得ない。

 

 彼からすれば、ここでの戦闘は全く本意ではない。だが木ノ葉の忍としてシャナが戦う必要があるのは理解している。

 

 

 

「何故お前がこの場を」

 

「私が、管理してる土地だからだってばね」

 

 

 

 シャナが管理しているというと、実に不思議そうな視線でシャナを見る男。

 

 

 

「なぜ、滅んだ筈のうちは一族の土地をお前が管理している」

 

「私がうちは一族だからだってばね」

 

 

 

 シャナが青い写輪眼状態になると、男が目を大きく開きながら狼狽える。シャナとしては、かなり他国にまで名前が売れている自覚があったのだが、目の前の男は、知らないらしい。

 

 しかし、木ノ葉に侵入した相手が、木ノ葉の里の不祥事である、サスケの里抜けで、うちはの生き残りがシャナだけになったニュースを知らない違和感。

 

 

 

 現にシャナが近頃、木ノ葉から離れられないのも、唯一残ったうちはの血筋を保護するためだ。

 

 

 

「うちはの生き残りだと? 俺、いや…うちはサスケが最後の生き残りではなかったのか」

 

「ある意味では、そうだってばね」

 

 

 

 シャナの言葉に男の表情がこわばる。

 

 

 

「元うちは、今の名は、うずまきシャナ。そういう意味では、うちは一族は壊滅してるってばね」

 

「うずまき、シャナ?」

 

「もう話は良いってばね。いざ」

 

 

 

 ここでようやく男は、自分の抱いていた違和感の正体にたどり着いた。だがそれを整理するより先に、手裏剣を両手に構えたシャナが、攻撃を開始する。手裏剣を投擲、それらを避けた男だったが、手裏剣にかけられたワイヤーによって木に拘束される。

 

  

 

 うちはに伝わる操手裏剣の術と青いとはいえ、見事な写輪眼を見て、男はシャナが真にうちはであると理解した。ワイヤーを刀で切断、拘束から抜け出すが、シャナの猛攻が止まらない。瞬時に印を結び火遁・豪火球の術を放つ。

 

 それを迎撃する目的で、刀を地面に刺し、片手で印を結ぶことでシャナより強力な火遁・豪火球の術を放つ。

 

(片手で印を、それに火遁の威力)

 

 二つの豪火球が修練場で爆発。その爆炎にまぎれ粒遁・天輪の粒子砲を発射したシャナ。直撃させるつもりだったのだが、男はシャナの攻撃を見切り、横に回避。刀を拾い、シャナを切りつけてくる。シャナも両膝に装備したチャクラ刀で受け止める。

 

 金属の響く音が修練場に響き、シャナの青い写輪眼は、闇夜で光る赤い瞳と向き合う。

 

 

「お前、その写輪眼、それに黒髪とさっきまでの黒目、やっぱり、うちは一族だってばね」

 

「……手荒なことはしたくなかったが、時間の流れにどう影響するかわからない。お前の記憶を消させてもらう」 

 

 

 

 男が写輪眼で彼より身長が低いシャナを見下ろす。刀を押し込む力が強まり、膂力で劣るシャナが押される。そして、体勢を崩されたタイミングで蹴りを腹に食らう。

 

「ぐぅ」 

 

 男の動きがマントで隠れており、蹴りを見切れなかったシャナ。腹部を押さえながら距離を取る。本格的にシャナを倒すつもりなのか男の猛攻が始まる。自分のマントで体を隠し、見切りにくい攻撃を続けてくる。さらに雷遁を纏い、加速する男。シャナも粒遁で加速し、二人が光の線を描きながらぶつかり合う。

 

 

(悔しいけど、この身のこなし、私より強い)

  

 粒遁の天翔での高速移動は愚か、時空間忍術である天門での奇襲攻撃も、男は見切ってきた。的確に対処されていくシャナの手札。

 

「やはり飛雷神の術か、その年で使えるとはな」

 

 最近、自分より強い相手が多いことに苛立ちを覚えるシャナ。全てにおいて頂点に立つとは思っていないが、自分より優れる格上がいることは、シャナには許しがたい事。常に手段を変え、強敵を打倒してきたシャナだが、そろそろ自分の力不足を感じ始めている。

 

 そして、シャナには決定的な弱みが発生している。

 

 

(長時間の万華鏡での未来視、ここにきて、響いてくるってばね)

 

 シャナの独自の術である未来視は、ウラシキとの戦闘中で酷使した影響で、使用できなくなっていた。無理に使用すれば、脳が限界を超える危険性がある。故にシャナは写輪眼のみで、格上の相手をせざるを得ない。

 

 誰よりも強くありたいというシャナの焦燥感は、写輪眼を使う謎の男との戦闘中に、極限の集中力となって力となる。

 

 シャナの生存本能が、うちはの血が、彼女の瞳力を強めていく。

 

 男の動きを観察し、理解し、模倣し始める。男の方は動きが次第によくなるシャナに気が付いている。

 

「うずまきシャナとか言ったな。ということは、うずまきナルトとは、親戚かなんかか?」 

 

「弟だってばね!」

 

 男の繰り出した蹴りとシャナのコピーした男と同じ蹴りが衝突する。鏡のようにシャナと男が同じ技を振るい、同じ剣術で対等にぶつかり合う。相手が自分より強いなら、自分より強い相手の技術を盗み始めるシャナ。徐々にだがシャナの動きのレベルが上がっていく。

 シャナは気が付いていないが、彼女の能力が爆発的に上昇するのは、命の危機が迫るか、自分より遥かに格上と対峙した時なのだ。

 

(このくノ一、俺の動きをコピーし始めている。早く決着をつけなければ、今の状態ではきついな)

 

 男は自分に課せられたハンデを想定し、ここで決めようと大きく前に出る。その目が六芒星の万華鏡写輪眼へと変質。須佐能乎を発動し、紫色のチャクラの巨人の拳でシャナを拘束しようとする。シャナも同タイミングで万華鏡写輪眼に切り替え、須佐能乎を発動。

 二体の須佐能乎がぶつかり合った。


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