男の須佐能乎とシャナの須佐能乎ががっちり取っ組み合う。未来視が使えない状況では、万華鏡写輪眼の瞳術を効果的に使えないシャナは、あえて封じていたのだが相手が万華鏡となれば、そうもいかない。
「この時代に須佐能乎まで使える使い手とはな」
「お前はさっきから何を言ってるってばね!」
次で決めようと、男が前髪で隠れた左目にチャクラを集中し始める。一方でシャナは、男の動きを観察する中で、ある事に気が付き始めている。チャクラの質や年齢、体格などは違うが、シャナが間違えるはずがない事実があった。
でもそんな筈がないと、考えを振り切り、須佐能乎を解除。男の懐に潜り込みながら、粒遁螺旋輪虞を叩き込もうとした。
「神羅天征」
回避不能で、須佐能乎ごと破壊しようとしたシャナだったが、気が付いた時には螺旋輪虞が消し飛び、シャナの体も不思議な力によって吹き飛ばされ、背後の大木に激突した。そのダメージから動けなくなり、意識が飛びそうになる。先見の写輪眼を使わなかったことで、不意打ちをもろに食らったシャナ。
唇を噛みしめながら、意識を保とうとするが、体が動かない。
謎の力を使った男もチャクラ切れがちかいのか、ふらついて左目を押さえている。
「ま、まけた、くない、もっと、もっと」
ナルトではないが、ボルトの存在も守るべきものとして認識しているシャナ。自分が倒れれば、守れない。動かない体に鞭を打って、無理やりチャクラと力を引き出そうとするシャナ。だが男が動けないシャナに近寄る方が早い。
「やめておけ、無理にチャクラを引き出せば、最悪死ぬぞ」
「……偉そうに、……、どのつら、さげて、いう、ってばね、………サスケ」
「何を」
意識を保つことに集中するシャナは、ほぼ無意識に男に対して言った一言が、彼の動きを止めるに至った。シャナの呼んだ名前、それはサスケだった。つい先日里を抜けたはずの彼が帰ってきているはずがない。それもシャナよりも強く成長した姿で。
だが動きの癖や、術から見てもサスケの面影が常に過っていた。
「悪いが、俺はお前の知っている、うちはサスケじゃない。そして、俺はお前を知らない」
シャナの予想は当たっていた。男の正体は、うちはサスケ。だがシャナの知るサスケではなく、未来のサスケだった。それも、シャナの居る世界とは別の時間の流れから来たサスケ。
ボルトを助けてくれた事には礼を言うと告げ、シャナの記憶を消そうとした時、サスケの懐から『警告・警告』と音声が聞こえる。
サスケがシャナの記憶処理を止め、懐から亀のような道具を取り出す。
「なんだ、カラスキ」
『うちはサスケ様、一つお伝えすべきことがありました。この時代から帰るために、チャクラを充填する必要があり、待機状態になっていましたが、この時代は、サスケ様の居た未来とは別の次元に存在し、時間移動の為のチャクラを収集できません』
カラスキと言われた亀は、未来でウラシキの手によって時間移動を行っていたが、時間移動中のウラシキとの戦闘が激しく、座標が大幅にずれ、過去は過去でもシャナ達の居る次元に迷い込んだという。本来の時間軸から離れたことで、カラスキの機能にも影響が出ているという。
時間移動のチャクラの充填が出来ず、このままでは未来に帰る事も出来ないという。
「他に方法はないのか?」
『あります。この時代で唯一、時間軸の違う存在のチャクラを頂ければ、可能です』
そんな存在を探すことは不可能に近い。実質サスケは元の世界に帰れないことを意味している。
『そちらにおられる、大筒、いえ、うずまきシャナ様は、時を超える魂を持っております。彼女のチャクラを充填してもらえれば、本来の運用が可能です』
「時を超える? 待て、お前はこの時代の人間と関わるなと言っていなかったか?」
サスケの質問に無機質な声でカラスキが回答する内容は、サスケの想定外の答えだった。
『大筒、いえ、現うずまきシャナ様は、未来を見る事の出来る、時の流れに逆らうチャクラの持ち主です。唯一の例外として、彼女は未来を伝えても、タイムパラドックスが起きない特異点となっています。彼女に協力を得る事がサスケ様やボルト様が未来に帰れる条件となっています』
未来を見る能力、信じられない力だが、現に過去に来るという不思議体験はしているのだ。なら、未来を知る能力者が居てもおかしくないだろう。
問題は、その協力者を倒してしまったことだろう。
カラスキの話を聞いていたシャナは、別の可能性を歩んだサスケの姿を眺めていた。そして、里を抜けた後のサスケの未来にも、目の前の彼のように強くなる未来があるのだと考えていた。
「で、どうする、ってばね」
カラスキの話から、圧倒的に優位な立場だと分かったシャナは、困惑気味の顔をしているサスケに嫌らしい笑みを向ける。シャナの知るサスケではないが、サスケはサスケ。別の時間軸だろうが年上だろうが、関係ない。
弟分の扱いなど、百も承知しているのだ。
「うずまきシャナ、た、頼む。俺達に協力してくれ」
「ため口?」
「うずまきシャナさん、俺達に協力して、くだ、さい」
苦虫を嚙み潰したような表情のサスケに、気分をよくしたシャナは、笑いながら気絶した。サスケは、気絶したシャナの様子に溜息を吐きながら、彼女を背負う。
(俺の居た木ノ葉にはいないくノ一、不思議だが、こいつの写輪眼は、あの男を思い出させた)
未来のサスケは、15年も前の戦争を思い出し、其処で戦った強敵の姿が、シャナと被った事を思い出していた。背中にある軽い体に降りかかるであろう重荷に、同情しそうになる。
だがサスケの居た世界とは違うため、彼女や木ノ葉の歩む未来が同じとは限らない。だが、なんと言うのか、妙な感覚を感じたのだった。