NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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4本目

 

 崩落した洞窟から自力で脱出していたウラシキ。彼は空高くに飛び上がりながら下界を見下ろす。

 

「失敗しましたね。まさか狐がこれほどとは」

 

 彼はナルトを拘束。動けない彼の中の九尾の妖狐を引きずり出そうと、封印式の中に入った。そこで無理やり九尾の封印を解き放とうとし、その力によって弾き出された。

 

 運の悪いことにはじき出される瞬間に九尾の封印を少し緩めてしまい、封じられた九尾のチャクラが漏れ出したことでナルトの様子が激変。

 

 苦しみながら赤いチャクラの衣に包まれ、チャクラの尾の数が一気に4本目に達した。その瞬間、ナルトの皮膚は剥がれ、理性は消失。朱い血のようなチャクラが体表を再構築。荒れ狂う獣となって襲い掛かってきた。

 

 咄嗟にガードしたウラシキだったが、ナルトの4本の尾が追撃にと襲い掛かり、その衝撃波で洞窟が崩れてしまった。そこから抜け出し、九尾がどうなったのか確認すると、彼はにやりと笑ってしまった。

 

 

「これはこれは、面白いことになってますね」

 

 ウラシキが晴れた土煙の中に見た光景は、明確な殺意を持ってナルトと戦っているシャナの姿だった。

 

ーーーーーーーーーー

 

 洞窟の崩落に巻き込まれたシャナは須佐能乎を使い瓦礫を粉砕。無傷で地表に出たのだが、シャナの頭にはウラシキの存在やナルトの救助なんて考えは消え去っていた。

 その写輪眼はこれまでで一番憎しみに染まり、怒りと抑えきれない衝動で歯を噛みしめ、爪で自分の腕を血が出るまで引っ搔いていた。自傷しなければ、痛みがなければシャナは自分が自分の制御を失うと本能的に察していた。

 

 洞窟で感じたチャクラ。間違うはずがない。チャクラに混ざった悪意と憎悪。あのチャクラをシャナは一瞬たりとも忘れたことがない。忘れられるはずがない。

 

 シャナからすべてを奪い、弟であるナルトの中でのうのうと生きている害獣。シャナの人格を歪める原因となったあの、畜生の存在を。そして、大人しくナルトの中にいればいいものを、こうして隙を見て外に飛び出してきた獣。

 

「はぁ。はぁ……、はは、ふふ……きゅぅうううびぃいいいい―――――――――!!!!!!」 

 

 うずまきシャナ、うちはシャナ、いや波風シャナの宿敵である九尾の妖狐がナルトを突き破って這い出ているように見えた。シャナは人柱力と戦った経験はない。故にナルトの今の状態を知る事が出来ていなかった。

 ナルトの封印が解け、九尾が表に出てきたようにしか見えなかった。さらにシャナの写輪眼では、今のナルトのチャクラが九尾のチャクラにしか認識できず、弟が死んでしまったかのように感じていた。冷静さを保とうとしていた理性が消え去る。

 

 ナルトが殺されたと思い込んだ彼女は、九尾をこの場で殺す事しか頭になかった。理性を失い、10数年も心の奥で燻っていた黒い炎が表に現れる。これまで須佐能乎の第2形態までしか披露していなかったシャナだが、憎しみが臨界点を超え、第三段階へと到達。

 尾獣クラスの巨大な須佐能乎がシャナの力によって具現化する。シャナの怒りを象徴するように阿修羅型の須佐能乎は、憎悪の面を被っていた。

 

 4本の尾を持った状態のナルトは、自分を見下ろす須佐能乎を見上げ呆然としていた。しかし、野生の本能からか迎え撃つべく、チャクラを口の前で凝縮していく。膨大なチャクラの巨人に対して膨大なチャクラの塊を放ったナルト。

 発射された尾獣玉と呼ばれる尾獣たちの奥義は、シャナの須佐能乎の拳によって粉砕される。だがナルトは無尽蔵ともいえるチャクラでもって高速で移動しながら尾獣玉を何発も発射していく。

 

「ちょこまかと、潰れろ!!」

「---!!」

 

 巨大な須佐能乎を使い、6本の腕で尾獣化したナルトを九尾だと思い込み捻り潰そうとするシャナ。守りは厚く、攻めは苛烈なシャナの須佐能乎は、使用者の怒りを表すように嵐のように暴れる。

 しかし、須佐能乎は使えても完全に使いこなせていないシャナの体は、須佐能乎によって細胞レベルで負荷を負っていく。通常なら気絶してしまうような痛みの中、血涙を流しながら、シャナは戦い続けていた。

 

 あまりの怒りによって痛みが麻痺。目の前の九尾を殺す事だけに意識が集中。対峙する九尾の力に呑まれたナルトも手強いためか激戦へと至ってしまう。

 

理性を失ったシャナと意識のないナルトの姉弟喧嘩は、互いの存在を否定するように苛烈になっていく。その様を上空で見守っていたウラシキだったが、さすがに九尾が殺されてはまずいとナルト側に加勢しようとした。

 背後に回り込み釣り針を使うことでシャナの力を奪おうとしたのだ。

 

「失せろ」 

(なんて才能だ)

 

 シャナは、九尾と対峙しながらノールックでウラシキの釣り針を須佐能乎の腕で掴み取り、油断していた彼に須佐能乎で作り出した巨大な大玉螺旋輪虞を叩き込んだ。一切の躊躇なく叩き込まれた技にウラシキは全力でガードをするも瓦礫へと吹き飛ばされてしまう。

 理性を失いながらもシャナは、ウラシキの存在を意識から外してなどいなかった。弟が九尾に飲み込まれた原因であるウラシキは必ず殺すつもりで九尾の後に取っておいただけ。そして、突進してきた九尾を須佐能乎の腕で受け止め、その尾を残った腕で掴むと、九尾を地面に何度も叩きつける。

 

 何度も振り回されチャクラの尾が千切れたことで九尾は吹き飛ばされた。

 

「ウォオ」

 

 土煙を払いのけた5本目の尾が飛び出そうな九尾と向き合うシャナ。赤黒い体を覆うように骨のようなものが形成され始めている。

 

 対峙するシャナは両目から血を流し、口や鼻などからも流血が止まらなくなっていた。

 

(もうお前だけ、九尾ぃ)

 

 酷使された体とは裏腹に、抑え込んでいた感情の発露が伴う解放感がシャナを包み込んでいた。ようやく復讐が叶うという喜びからか、口には笑みが浮かび上がりそうになる。憎い相手と対峙しているのに、溌溂とした気持ちになる。

 ふと自分のほほに触れたシャナは自分が血まみれなのを知る。

 

「ふふ、はは、あはは」

 

 闇に落ちるのは一瞬だった。闇こそが揺りかごであるように、シャナは黒い感情の中で穏やかになっていく。ようやく九尾を殺す事が出来る。その羨望の前では、ナルトが死んだかもしれないという悲しみを感じる事が出来なかった。悲しみよりも憎しみが勝ってしまった。

 もう誰も止められないかと思った時、ナルトが螺旋丸の修業で綱手より貰った胸元の首飾りとシャナの腕に巻かれたトネリに渡された数珠が緑の光を放つ。まるで共鳴するかのように放たれた力は、九尾の動きを縛り、優しい光でシャナを覆う。 

 

 戦闘中に光に包まれたシャナは、動けなくなってしまう。一方で光によって縛られている九尾は藻掻いているがシャナの持つ数珠と共鳴した初代火影の首飾りの力に抗えない。両方とも太古から存在する宝具の様なもので、首飾りは尾獣の力を抑え、数珠はシャナの心の闇を払う。用途は違うが、奇跡のような偶然が二人の戦いを止める。

 うちは一族の事をよく知っていたトネリから贈られた数珠は、彼女の心が闇に落ちかけた時、自動で働くよう術式を組まれていた。光り輝く月と水紋一つない水と言う幻術がシャナの前に現れる。

 

 ほんの一瞬だけだが、戦闘と復讐から切り離されたシャナの意識。 

 

(私は、何をしてたってばね。いや、そんなことより、ナルトは?)

 

 九尾の事よりもナルトに意識が向いた時、シャナの先見の写輪眼が発動。ナルトの未来を映し出す。これはナルトが生きている事を表している。

 

 先程とは違い、復讐よりもナルトの救出に意識を向ける事が出来た。すると幻術が解除され、激痛と共に目の前に九尾によって苦しむナルトの姿が目に入る。

 

「トネリ、ありがとうだってばね」

 

 とんでもない事を仕出かしかけた。自分の手でナルトを殺しかけた事をシャナは、一生忘れられないだろう。だが手遅れになる前に救ってくれた存在に感謝を述べながら数珠に口づけするシャナ。

 初代火影の首飾りの力も弱まり、やがて九尾が暴れ出す。それより先にとシャナは、胸に手を当てる。

 

「解!」

 

 戦闘用ではなく、シャナの魂に眠る巫女のチャクラを開放。シャナの体から無数のチャクラの鎖が生成され、それらが5本目の尾を出したばかりの九尾を縛り付ける。粒遁封印術・金剛天鎖が尾獣化したナルトから邪悪な九尾のチャクラだけを吸収していく。

 

「ギュオオオ、、、オォ」

 

 元々魔獣を封印する巫女のチャクラは、完全に封印が解けていない状態の九尾であれば、瞬く間に封じてしまえる。九尾のチャクラを吸い取りながら強度を上げていく鎖の前に、ナルトは尾が2本になっていた。まだ意識は戻らず本能のまま暴れているが、これ以上の暴走の可能性は低いだろう。

 

「ごふ、ごふ、あれ? からだ、が」

 

 だが、須佐能乎の限界を超えた使用の代償が響いてくる。身動きが取れなくなり、口から血を吐いて咳き込むシャナ。膝をついて立ち上がれなくなった彼女から伸びる鎖が砕けてしまう。

 

「ウォオ!!」

(体が、動かない。ナルト、ごめん)

 

 縛りが無くなり隙を見て襲い掛かってきたナルト。シャナは迎え撃つことはできず、ナルトの鋭利になった爪で貫かれそうになる。一度殺そうとしてしまった後悔からか、シャナは本能からくる反射行動すら封じてナルトを受け入れようとした。

 もう目の前の存在を九尾とは認識していない。自分の弟が苦しんでいるのだから、助けなくてはという思いだけだった。 

 

 そして、血が舞い上がった。

 

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