NARUTO 先見の写輪眼   作:ドラギオン

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血の呪縛

 

 シャナの前で血が飛ぶ。その血液はシャナのものではなく、シャナとナルトの間に割り込んだボルトの血だった。

 

「何やってんだってばさ、父ちゃん」

 

 無防備なうえに、ナルトを受け入れようとしていたシャナを庇い、九尾化したナルトの爪で手の甲を切り裂かれたボルト。痛みにも負けず、ナルトの胴体を抑え、目を覚ますように声をかけている。だが暴れ出したナルトに力で負けて弾き飛ばされてしまう。

 

「うわぁ」

「ボルト! やめろナルト」

 

 狙いをボルトに変えたナルトが追撃しようと迫るが、雷鳴と共に駆け付けたサスケの蹴りによって吹っ飛び、すぐに起き上がろうとするも、背後に忍び寄っていた自来也が札を額に貼り付けるなり、九尾のチャクラが霧散する。

 自来也があらかじめ用意していた封印術が効果を発したのだ。九尾のチャクラが無くなったナルトはその場で意識を失い、自来也に受け止められる。

 

 無事にナルトが保護されたのを見て、シャナも前のめりに倒れそうになる。それをサスケが受け止める。

 

「ナルトにやられたのか?」

「……違う。……」

 

 血まみれのシャナを心配するサスケ。しかし、ナルトにやられた傷は一つもない。全て自分の感情を抑えられずに起こした自傷に他ならなかった。目からの出血や吐血の痕跡を見たサスケは、シャナの出血が須佐能乎による負荷であると見抜いた。

 ナルトを誘拐された彼らは、激しい戦闘を繰り広げたシャナの須佐能乎を見て駆け付けた。だがサスケは失念していた。シャナが須佐能乎を使えようとも、この時代にうちは一族が少ない以上、須佐能乎の代償を打ち消す事の出来る万華鏡写輪眼。肉親の万華鏡を移植することで覚醒する永遠の万華鏡写輪眼を発現しているはずがない。

 シャナは須佐能乎を使えはするが使いこなせない。ならば、須佐能乎について説明する必要があると考えた。

 

 その後、ウラシキの安否を探ったが、奴は消えておりシャナも仕留めてはいないと報告した。おそらく機を窺うつもりだろうとサスケと自来也も納得する。

 

 

―――――――

 

 ナルトの安全を確保し、ボルトの治療を終えた一行は、ナルトが目を覚ますまで森で休んでいた。小川の水で血を洗い流したシャナの傍には自来也が居た。深刻な表情をしているシャナから話しかけてくるのを待つ自来也。

 

「自来也」

「もう昔みたいには呼んでくれんのかのぅ」

 

 視線が気になり声をかけたシャナだったが、子供の頃からの呼び方をしてくれなくなったシャナに、時が経つには早いものだと茶化す自来也。この人は昔からこういう人だと諦め折れたのはシャナだった。

 

「私が何のために生きてきたか、知ってる?」

 

 岩の上で体育座りをしたシャナはか細い声で尋ねる。知らぬはずがない。自来也はシャナをよく知っている。幼いシャナに降りかかった不幸とその後の人生を。もし自分に役目がなければ、引き取っていた。それほどまでに自来也はシャナを大切にしていた。

 だからこそ、知らぬはずがない。

 

「ナルトの為、ミナトとクシナの遺言の為、そして……復讐だな」

 

 正解だ。 

 

「私はさ、全部やり遂げるつもりだった。だから強くなったし、ナルトも取り返したし、守ってきた。全部全部、上手くやれる自信があった。私にはその力があるんだって。

 

 なのにさ、私、ダメだった。九尾化したナルトを見て、何もかも壊したくなった。ナルトを守るって言ってたのに、私は、私は、自分の手でナルトを殺しかけたんだってばね!!」

 

 自分の腕を顔を決して上げないが、シャナは泣いていた。ぽっきり折れてしまったのだ。自分の中の大切な柱が。普段なら吐き出さないような弱音をシャナは吐きだし続ける。それほどまでに、自分がナルトを殺そうとしていた事実がショックだった。

 憎しみの炎に呑まれ、大切な物ごと焼き尽くそうとした自分の黒い感情が何より恐ろしかった。

 

 自分の体を自分の手で抱き啜り泣いている彼女の姿は、自来也からとても小さく見えた。

 

「お前はナルトを殺そうとした訳じゃない」

「同じだってばね。うちはのみんなが変わっていくのは何度も見た。けど、わたしなら、自分なら制御できるって思ってた。なのに、なのに、無理だった。自分がおかしくなってるって分ってたのに」

 

 頭の片隅にあった理性は消え、復讐を果たせる喜びを感じていた。父と母を殺した九尾を殺す達成感を前にして、二人の死に際の言葉は消え去り、なによりも愛している弟の死を望んでしまった。既にナルトは死んでしまったと思い込んだとはいえ、冷静になれば、わかったはずなのに。

 弟の安否よりも、復讐が勝った。父と母に加え弟まで奪った九尾に対する憎しみがシャナの全てを支配した。

   

 そうなってしまったら、もう自分では止まれなかった。うちは一族の大人達が、大切な人を無くし、変貌する様を見て育った。どこか冷めた目で見ていたシャナだった。自分も昔とは大きく変わったと思いながらも、闇に呑まれても一線だけは越えない自信があったのだ。

 結果は散々だ。むしろ何故うちはが闇に染まりやすいのかを身をもって知ってしまった。

 

「自分が怖いってばね。自分の中にある血が怖い。なんで、私はお父さんとお母さんの本当の娘に生まれなかったんだろう。二人の本当の子供なら、こんなことにならなかったのに」

 

 滝のように涙を流すシャナ。そんな彼女の隣に静かに腰かけた自来也。

 

「だが、お前は自分の闇に勝った。だからナルトは無事だった」

「……私の力じゃない。助けがあっただけだってばね」

 

 たとえそうだとしても、シャナの優しさが最後には、ナルトを救ったのだと自来也は続けた。確かに写輪眼の瞳力に比例した闇をシャナは抱えている。けれど、その闇を払うだけの心の強さ、それをシャナは持っていると感じる自来也。

 この子が本当に復讐だけに生きていたなら、ナルトは九尾ごと死んでいただろう。

 うちはの血が怖いというシャナの言葉がそれを物語っている。

 

「お前は、確かにうちは一族だ。だがのォ、お前の此処には」

 

 自来也は、頭を起こしたシャナに見えるように自分の胸を指さして見せる。

 

「ミナトとクシナの想いがしっかり宿っている。胸を張れ、お前は誰が何と言おうが、二人の子だ」

 

 誰だって失敗はする。落ち込みだってする。だがシャナはそんなことで潰れてしまう子ではない。だからこそ、自身が過剰すぎるくらいのシャナに戻る事を彼は望む。

 自来也の大きな手で頭をワシワシと撫でられたシャナ。彼女は何も言い返さず、励ましをくれた彼に心で感謝した。

 

「それにウラシキの目的はまだ成就していない。奴を倒さん限り、ナルトの安全確保や修行の旅どころではないからな。お前には、しっかり働いてもらわんとな。なによりピチピチのお姉さんの店におちおち飲みにも行けんからのォ」

「台無しだってばね。……ありがとゲコ仙人」

 

 自来也とシャナはサスケとボルトの元へ戻るのだった。

 





エロ仙人書くと、いい人過ぎて困る。
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